※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。改訂履歴は記事の最後に記載しています。
【ハーフマラソン 1時間30分切り(サブ90)練習法】最速で目標に到達する方法
- ハーフマラソンで1時間30分切りの難易度は?
- ハーフマラソンで1時間30分切を切るための練習メニューが知りたい
- 初心者でも達成できるの?
ハーフマラソンで1時間30分を切ろうと思っている方の中には、初心者の方から、将来的にはフルマラソンでサブスリーを達成したいと思っているような中級者の方まで様々かと思います。
ハーフマラソンで1時間30分を切るためには、ある程度の練習量が必要です。その練習方法が分からない方も多いと思います。
私自身は社会人からランニングを始めた市民ランナーです。月500km程走り、競技志向でランニングに取り組んでいます。
自己ベストはハーフマラソンで1時間12分29秒程度です。
ここでは、ハーフマラソンで1時間30分を達成するための練習法を、初心者でも理解でき実践できるように説明します。
私自身は「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」を参考に練習メニューを組み、記録を向上させることができました。
しかし、本を読んだだけではわからないことも多いと感じます。
例えば、市民ランナーは仕事や家庭との両立が必要です。時間が無い中、記録向上に大事なことへ優先的に取り組んでいく必要があります。
本記事を読めば、ハーフマラソンで1時間30分を切るために必要な考え方を理解し、優先的に取り組まなければならないことが分かります。
また、実際に1時間30分切りを達成するまでの練習法が分かります。
- ハーフマラソンで1時間30分を切るレベルは市民ランナーの上位10.0%
- 月間走行距離は200~300km程度が目安(過去の経歴や才能によって個人差がある)
- ジョギングだけでなく、LT走、インターバル走を取り入れると効果的
ハーフマラソンで1時間30分を切る難易度:市民ランナーの上位10.0%
この記事を読んでいるあなたは、ランニングに本格的に取り組んでおりもっと上の目標を達成したいと思っている方だと思います。
2022年JAAF公認ハーフマラソン主要6大会を集計したところ、ハーフマラソンで1時間30分を切ると市民ランナーの約上位10.0%です。
「記録を達成したいという気持ち」と「継続的な努力」が必要です。
学生時代に陸上歴や運動歴があれば、ジョギングだけ継続すれば達成できる可能性はあります。
しかし、社会人からランニングを始めた方だとすると、ある程度日常の時間をランニングのトレーニングに割かなければ達成できないレベルです。
ハーフマラソンで1時間30分を切るために、才能は必要ないと考えます。努力だけで達成できる可能性が高い記録と言えます。
ただ、運動歴や基礎体力によって、目標に到達できるまでの時間は個人差があります。本気で目標達成したい方は、本記事を読み進めて頂きたいと思います。
ランニングには多くの人に当てはまるトレーニング理論がある
ランニングトレーニングは、個人ごとに最適な方法が異なりますが、その中でも多くの人に対して当てはまるトレーニング理論があります。
私自身「ダニエルズのランニングフォーミュラ」に出会ってから、劇的に記録向上を達成することができました。
また、ダニエルズ理論では、怪我のリスクを抑えたトレーニング手法が紹介されているため、怪我の頻度も減りました。
他には「リディアードのランニング・トレーニング」があります。青山学院大学の駅伝部が採用している理論です。
これらはある程度ボリュームのある本ですが、今後も継続的に目標を上げていきたいと思うのであれば、一回は読んでおいた方が良い内容となっています。
本記事では、ダニエルズ理論やリディアード理論、その他世界のエリートランナーのトレーニング例、私自身の実体験を元にしてエッセンスを説明するように心がけています。
どの程度の練習量が必要か?:月間200~300km
月間走行距離自体に正解はありません。どのくらい練習すれば目標記録に到達できるかは個人差があります。
参考のため私自身の例や友人の例を紹介すると、ハーフマラソンで1時間30分切りを達成するランナーは1か月あたり200km~300km程度は走っているようです。およそ1週間当たり5回程度の練習頻度です。
私自身がハーフマラソンで1時間30分を切ったときは、月間走行距離が250~300kmでした。
ハーフマラソンは距離が長いため、ある程度走行距離を重要視して取り組む必要があると考えています。
ただし、走行距離のうちほとんどがジョギングペースです。
ジョギングはランニングの基本となる練習です。ジョギングをおろそかにしてしまうと、記録が伸びないばかりか、高い強度の練習を行った時に怪我をします。
ハーフマラソンはフルマラソンの半分の距離ではありますが、走行距離の重要性が比較的高い種目です。
普段の生活で気を付けることは?:食事、睡眠、セルフケア
私が普段意識していることは次の3点のみです。
- 規則正しい食生活と睡眠(※細かい栄養計算等は不要)
- 風呂上がりのストレッチ、ストレッチポールによる体のケア
- 体重測定
食生活は、炭水化物、タンパク質、脂質をバランスよくとることを意識していました。
ただ、好きなものは好きなように食べるようにしていました。走っている距離もある程度多いので、少しくらい高カロリーなものを食べても大丈夫だ!と自分自身に言い聞かせていました。
睡眠は意識して7時間は確保することをおすすめします。忙しくて寝ている時間が無い、という方も多いと思いますが、練習することと同じくらい休養も重要です。
体のケアも重要です。怪我無く練習が継続できるよう、風呂上がりケアは習慣化するようにしました。
セルフケアで脚の痛み(ハムストリングス上部付け根)から回復した経験があります。セルフケアとしては、「超音波治療器」と「ストレッチポール」を使っています。
体重測定は毎日行っています。定期的に測定することをおすすめします。
無理な減量をするためではなく、体重を測定することによって、水分は足りているのか?食事が少なすぎないか?などを把握する指標にしていました。
体重はレースの記録とも密接な関係があります。基本的には体重が軽い方が有利です。
毎回測定するタイミングを合わせることで、体重を日毎に比較できるようにします。お勧めの測定タイミングは起床直後です。
エリートランナーの記録と体重の関係性を調査した記事を作っています。体重の適正を知りたい方、体重の目標を決めたい方は是非ご参照ください。
ハーフマラソン90分切り具体的練習方法
「これをやっておけば、間違いなくハーフマラソンで1時間30分を切ることができる!」といった練習法は、残念ですが存在しません。
ただ、ハーフマラソンで90分切りを達成するために重要なトレーニングを提案することはできます。
- 低強度なジョギング
- LT走
- VO2maxインターバル走
- ロングラン
- ウィンドスプリント
ハーフマラソンで1時間40分を切ることが目標の場合は、VO2maxインターバル走の必要性は低いと考えています。
しかし、ハーフマラソンで1時間30分を切ることが目標の場合は、VO2maxインターバル走を取り入れると効率よく目標を達成できると考えています。
以下では、重要なトレーニングについてそれぞれ解説していきます。
基本的な練習は「ジョギング」
普段の基本的な練習はジョギングです。実は、プロのマラソンランナーでさえも、練習の80%がジョギングです。
ダニエルズ理論では、効果的なジョギングのペースとして「軽く他人と話せるくらいのペース」が推奨されています。
「はぁはぁぜぇぜぇ」するようなペースでジョギングする必要はありません。心拍数で言うと、最大心拍数の70%程度です。
最大心拍数は、簡易的に、「220ー年齢」で算出されます。例えば20歳の方ですと、最大心拍数が200bpm、ジョギング時の適切な心拍数が140bpmということになります。
あくまでこれは一例ですので、「これくらいなら軽く話しながら走れるな」というペースを見つけましょう。
ジョギングに推奨ペースがあることには根拠があります。心臓の収縮量が最大となる心拍数がおおよそ最大心拍数の60%から70%程度です。
心適切なきつさに保つことで、心臓の筋肉強化が最も効率よくなる、と言えます。
また、人間のエネルギー産生経路は主に2通りあります。一つは、糖質を利用してエネルギーを作り出していく経路、もう一つが、脂質を利用してエネルギーを作り出す経路です。
快適なきつさで運動している範囲では脂質を使う能力を鍛えることができます。
マラソン等の長い距離を速く走るためには、できるだけ体の糖を使わず脂質を使うように適応していく必要があります。ランニングを継続していると、徐々に脂質を使える体に適応します。
ジョギングで得られる効果については別の記事でまとめていますのでご参照ください。
LT走(ペース走)
ハーフマラソンで目標達成のために最も重要なトレーニングがLT走(ペース走)です。
運動強度を高めていくと、血中乳酸濃度が上昇していきます。ある運動強度を超えたところで、急激に乳酸値が上昇する閾値があります。その閾値を乳酸性作業閾値(LT値)と呼びます。
そのLT値付近で走るトレーニングを「LT走(閾値走)」と呼んでいます。ダニエルズのランニング・フォーミュラではTペース走と呼ばれるトレーニングです。
LT走を走り終えた時の感覚は、「後1kmから2kmくらいは続けて走れる」という感覚です。
走り終わった後に、膝に手をつくくらいきつい状態になってしまったらLTペースよりも速すぎる可能性が高く、ペースとしては不適切です。
少し余裕を持って走り切れるペースで行いましょう。
LT走は練習の再現性が重要だと考えています。毎回同じ距離を同じ設定で走ることで、自分の実力や調子を測ることができるからです。
LT走はきつい練習です。できるだけ平坦で信号がなく、安全が確保できるコースを見つけて行います。
次の記事でLT走の実施方法について具体的に解説しています。
VO2maxインターバル走
ハーフマラソン1時間90分切りを達成するために重要な要素として「最大酸素摂取量(VO2max)」があげられます。
最大酸素摂取量は、運動中における体内での酸素取り込み能力の最大値を示します。
最大酸素摂取量の向上には、高い強度で行うインターバルトレーニングが最適です。
インターバルトレーニングの具体的練習法としては次となります。
- 走る距離:400~1200mを数本
- レスト:1回走る毎に、走った時間と同じくらいかそれ以下をジョギング
さらに具体的に示すと、「1000m×5本 レスト2分30秒ジョギング」等となります。走るペースは5000mレースペース程度です。
次の記事でインターバルトレーニングの実施方法について具体的に解説しています。
ロングラン
目標レースがハーフマラソンの場合は、ロングランの重要性が高いです。
走るペースはEasy~Moderateペースで行い、走る時間は90~120分程度が適切です。
ロングランで得られる効果については、次の記事を参考にしてください。
ウィンドスプリント
ウィンドスプリントは別名「流し」と呼びます。20秒前後の軽いダッシュを数本行います。本数間は1分程度の本当にゆっくりなジョギング、もしくは歩きで休憩します。
ウィンドスプリントをトレーニングに取り入れることによって、速筋繊維への刺激や高強度トレーニング向けた怪我予防効果があります。
ウィンドスプリントについては次の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
具体的なメニュー提案
以下では具体的なメニューを提案します。ハーフマラソン1時間30分切りであれば、通年で同じメニュー構成で練習を継続していけばよいと考えています。
1週間の練習メニュー例①
1週間の練習メニュー例①を紹介します。
- 月曜:OFF
- 火曜:ジョギング 60min + ウィンドスプリント
- 水曜:LT走 or VO2max インターバル走
- 木曜:ジョギング 60min
- 金曜:OFF
- 土曜:ジョギング 60min + ウィンドスプリント
- 日曜:ロングラン 90~120min
基本的に、週1回のLT走+ロングジョグ、残りはジョギング、といったスケジュールです。
ジョギングにはウィンドスプリントを追加します。
この練習メニュー例は、負荷の高いポイント練習を週1回に抑えたメニュー構成になっています。負荷が高い練習がきつい方(回復が遅く疲れが残りやすい方)などにおすすめです。
1週間の練習メニュー例②
1週間の練習メニュー例②を紹介します。
- 月曜:OFF
- 火曜:VO2max インターバル走
- 水曜:ジョギング 60min
- 木曜:ジョギング 60min + ウィンドスプリント
- 金曜:LT走
- 土曜:ジョギング 60min
- 日曜:ロングラン 90~120min
週6回以上トレーニングができる方向けのスケジュールです。週2回のポイント練習を含むので、ハードです。
練習のペース設定方法
ハーフマラソンで1時間30分を切る方の、練習での設定ペースは下記となります。
- ジョギング 4:40~5:00/km
- LT走(5km) 4:10/km
上記は「最終的にこれだけ出来ればいい」という目安です。
練習でのペース設定は、その時の「自己ベスト」から計算します。
実際のトレーニングは上記の設定ペースよりも遅くしたペースから開始します。設定ペースは直近の自己ベスト記録を使ってVDOT Calculatorで計算します。
設定ペースの決め方については次の記事を参考にしてみてください。
同じペースでもきつさが軽減されてきたら、少しペースを上げます。
レース当日の食事、ペース設定
食事と栄養
食事は少なくとも、レースの3時間前までには済ませておきましょう。食事内容は炭水化物中心で消化の良いものにしておきます。
ハーフマラソンでは、エネルギー切れの心配はないため、そこまで沢山栄養を取っておく必要はありません(体重が軽いほうが有利と言われています)。
レース直前も、水分以外は特に気にする必要はないと考えています。
ペース設定
基本的には目標タイムを元にイーブンで走ることを心掛けましょう。後半遅くなってもいいように前半に貯金を作って・・・と考えていると、後半相当きつくなって失速してしまう可能性が高いです。
1時間30分切りを狙うレベルであれば、目標タイムを等分し、同じペースで刻んでいくことが最も良いと考えています(長距離の基本です)。
記録向上に欠かせないアイテム
上記で説明してきた練習法をスムーズに行うためであったり、自分自身のランニングフォームを分析したりするためには、そのためのアイテム(ランニングギア)が必要になります。
私自身が、自分の走りを客観的に分析したり、快適にトレーニングを行うために必要だと思ったアイテムを次の記事でまとめています。
是非、参考にしてみてください。
努力をして目標を達成しよう!
マラソンで記録を出すことにおいて重要なことが、練習を継続して行いコツコツと積み上げることです。体の機能が長距離を走るために適応するのにはどうしても時間がかかります。
特に、社会人になってから初めて運動する、というような方であればなおさらです。
ここまでハーフマラソンで90分を切る方法を紹介してきましたが、目標を達成できるかどうかは、あなたの情熱にかかっています。どれだけ真剣にランニングと向き合えるかです。
自分ができる努力をして目標を達成しましょう!
参考文献:
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