- マラソンや5000m(長距離種目)のテーパリングは何日前から始めればいいの?
- テーパリングとピーキングの違いは?
- テーパリングでどれくらい効果が出るの?ランニング以外のスポーツでも効果はあるの?
目標としているレース前、感覚で練習量を減らしてテーパリングを行っているランナーの方も多いと思います。効果が出るテーパリング方法が分からない方も多いのではないでしょうか。
その他スポーツでも「どのくらい練習量を落とせば、試合当日のパフォーマンスがあるのか」と悩んでいる方もいらっしゃると思います。本記事はそんな疑問を解消します。
私自身も、書籍を参考にしながらいくつかのテーパリング方法を試してきました。走る距離をやテーパリングを行う日数を変えてみたり等です。
ここでは、レースに向けた適切なテーパリング方法を、私自身の実体験も交えて解説します。特に、トレーニング量、強度の調整方法について紹介します。
適切にテーパリングを行えば、持久性パフォーマンスが向上することが複数の研究で確認されています。Mujika & Padilla(2003)※1 によるレビューでは、平均約3%(範囲:0.5〜6.0%)の向上が報告されており、競技や個人によってはそれ以上の改善が得られることもあります。パフォーマンスへの影響の大きさから、テーパリングも「トレーニングの一環」として捉えるべきだと考えています。
- テーパリングではトレーニング量、強度、種類を適切に調整する
- テーパリングでは筋繊維の代謝能力が向上する。筋グリコーゲンの回復、筋細胞の修復なども得られる。
- トレーニングの【量・強度・期間】が重要
テーパリングとはトレーニング量を減らしてパフォーマンスを高めること
テーパリングとは「競技会に向けて徐々にトレーニング量を減らし体力を回復させつつ筋肉や体力の減退を防ぎ、最高の状態で競技に臨むこと」を示します。
テーパリングは、トレーニング量を減らすによって体力を回復させることを主眼とした調整方法です。
テーパリングとピーキングとの違い
ピーキングは、レースに向けて最高のパフォーマンスを発揮できるように、体調や技術面などを最適な状態に調整することを目的としています。
テーパリングは、主に体力面や疲労に焦点を当てますが、ピーキングは、競技会に向けて行われる総合的な調整であり、体力や技術面などの調整が含まれます。トレーニング内容をレースに向けたものにする調整もピーキングの一部です。
ただし、一般にはテーパリングとピーキングは混在して使われることが多く、明確な区分けが無い、というのが現状です。
テーパリングによって得られる具体的な効果
テーパリングによって機能改善の可能性がある要素は、「乳酸性作業閾値・最大酸素摂取量・有酸素系能力(筋肉と代謝能力)」の3点です。
「最大酸素摂取量」・「乳酸性作業閾値」は変わらない
2023年に発表されたメタアナリシス(Wang et al.)※3 では、テーパリングによってタイムトライアルのパフォーマンスは有意に改善した一方、VO2max(最大酸素摂取量)そのものには有意な変化が見られませんでした。
つまり、テーパリングで「心肺の最大能力」が上がるわけではなく、「蓄積した疲労が取れることで持っている能力を発揮しやすくなる」と考えられています。
なお、テーパリングによって心血管系や呼吸器系の状態が安定するとは言えそう、と結論づけられています。
筋肉の代謝能力が向上し筋グリコーゲン量貯蔵量が増加する
Neary et al.(1992)※4 の研究では、8週間のトレーニング後に4日間または8日間のテーパリングを行ったサイクリストで、筋グリコーゲン量が有意に増加し、酸化系酵素(糖質や脂質を燃やす酵素)の活性も維持されることが確認されました。
一方で、完全安静(運動をまったく行わない)の群では、この酸化系酵素の活性が低下したことも報告されています。テーパリングとは「完全に休む」のではなく「量を絞りながら動き続ける」ことが重要です。
ただ、筋グリコーゲン量に関しては食事面も大きく関係してくる要素ですので、練習量のテーパリング効果だけで語ることは難しい面があります。
Child et al.(2000)※5 の実験では、7日間のテーパリングを行ったランナーは、通常通りトレーニングを続けたランナーと比較して、レース後の血中CK(クレアチンキナーゼ:筋肉の微細損傷を示すマーカー)の上昇が有意に少ないことが確認されました。
CKの値が小さいほど、筋肉の損傷が少なく回復が進んでいることを示しています。適切なテーパリングによって、それまでのトレーニングで蓄積した筋肉の細かな傷が修復されていると考えられます。
このように、テーパリングは、感覚的に「疲労が取れた」と感じる事に加え、体感では感じることが難しい体内部の回復・機能向上効果が得られると言えます。
テーパリング効果例紹介と具体的方法
テーパリングを効果的に進めるためには、トレーニング負荷(強度と時間)を適切にコントロールすることが必要です。
競技や個人によって、適切なテーパリング方法は異なります。その人個人に合わせた方法を、自分で模索していくことが必要です。
※次で紹介する具体的テーパリング法は、あくまで実験においての結果です。
自転車選手に対してのテーパリングテスト
自転車競技の選手が8週間の高強度トレーニング(85%HRmax程度)を行い、その後トレーニング量を50~60%に低減するテーパリングを行いました。
結果は、4日間・8日間のテーパリング方法を採択したどちらグループも、パフォーマンスが有意に向上しました。
この時、定量的なデータとしては、糖質及び脂質を酸化する酵素の増加、筋グリコーゲン量の増加が観察されています。
具体的テーパリング例の考察
トレーニング量・強度・期間についてそれぞれテーパリング条件を変え、効果を確認した結果をまとめた表が下記となります。いくつかの実験を参考にしています。
参考文献: Bosquet et al.(2007)※2 の27研究のメタアナリシスより。
テーパリングにおいては、トレーニングの【量・強度・期間】が重要です。
| カテゴリー | 条件 | 効果量 |
|---|---|---|
| トレーニング量 | <20% | -0.02 |
| 21~40% | 0.27 | |
| 41~60% | 0.72 | |
| >60% | 0.27 | |
| トレーニング強度 | 下げ | -0.02 |
| 維持 | 0.33 | |
| トレーニング頻度 | 下げ | 0.24 |
| 維持 | 0.35 | |
| テーパリング期間 | <7日間 | 0.17 |
| 8~14日間 | 0.59 | |
| 15~21日間 | 0.28 | |
| >22日間 | 0.31 |
テーパリングの実施方法で重要な点は次の通りです。
- トレーニング量:41~60%程度まで落とす
- トレーニング強度:維持する
- トレーニング頻度:維持する
- テーパリング期間:8日間~14日間
しかし実業団選手では「フルマラソンレース前に41~60%まで練習量を落としている選手はほとんどいない」と元GMOアスリーツ近藤秀一さんがnoteで記載しています。
実験データから、効果的だと考えられるテーパリング方法は提案させていただきましたが、最後は結局、自分に合った方法を模索していく必要がありそうです。
トレーニングの特異性を上げていく(ピーキング)
トレーニングをできる限りレースに近いスピードや状況で行うことで体を慣れさせる、「特異性の向上」も重要なテーパリングの内の一つです。
トレーニングを特異的にするタイミングは、2週間前からでは遅いです。1ヶ月以上前から計画し、徐々にレースに近い強度や負荷でトレーニングを行えるようにします。
具体的には、マラソンであれば「マラソンレースペース付近でのトレーニング」、「マラソンと同じ時間走るトレーニング」、などがあります。
自分が目標としているレースに合わせ、トレーニングを特異的なものにしていきましょう。
ランニング以外のスポーツでも効果はあるのか?
テーパリングは、ランニング以外のスポーツでも効果はあると考えています。
筋グリコーゲンの貯蔵量が高まることによるメリットは、マラソン以外のスポーツでも十分にあると考えています。
例えば、90分間のサッカーは筋グリコーゲンを多く消費する種目ですが、試合終盤まで動きのパフォーマンスが維持できる可能性が高くなると予想されます。
テーパリングはトレーニングの一環です。トレーニング量を落とすことに抵抗があるかもしれませんが、それも一つの練習として捉えることができれば、さらなる記録向上に結び付きます。
最適なテーパリング方法は、各個人で違います。今回紹介した方法をベースに、自分にとって最も適切なテーパリング方法を見つけましょう。
参考文献
※1 Mujika I, Padilla S (2003) “Scientific bases for precompetition tapering strategies” Medicine & Science in Sports & Exercise
※2 Bosquet L, Montpetit J, Arvisais D, Mujika I (2007) “Effects of tapering on performance: a meta-analysis” Medicine & Science in Sports & Exercise
※3 Wang Z, Wang YT, Gao W, Zhong Y (2023) “Effects of tapering on performance in endurance athletes: A systematic review and meta-analysis” PLoS One
※4 Neary JP, Martin TP, Reid DC, Burnham R, Quinney HA (1992) “The effects of a reduced exercise duration taper programme on performance and muscle enzymes of endurance cyclists” European Journal of Applied Physiology and Occupational Physiology
※5 Child RB, Wilkinson DM, Fallowfield JL (2000) “Effects of a training taper on tissue damage indices, serum antioxidant capacity and half-marathon running performance” International Journal of Sports Medicine









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