VO2maxの上げ方|科学的に実証されたトレーニング強度と頻度

VO2maxトレーニング
こんな疑問を解消
  • 最大酸素摂取量(VO2max)を効率よく上げる方法が知りたい
  • VO2max向上に必要な運動強度はどのくらい?
  • 心拍数を使ってVO2max強度を管理する方法が知りたい

 ランニングや水泳、自転車競技に取り組んでいて、最大酸素摂取量(VO2max)を上げたいと考えている競技者の方も多いのではないでしょうか。

 私自身も、VO2maxを高めるためのトレーニング方法について考え、実践を継続しているランナーのうちの一人です。ここではVO2maxを上げるために必要な条件と、科学的根拠に基づくトレーニング設計を徹底解説します。

 本記事を読めば、どんな強度・時間・頻度でトレーニングを行えばVO2maxを効率よく上げることができるかを理解することができます。

最大酸素摂取量を上げるトレーニング方法について
  • VO2maxとは1分間に体重1kgあたり取り込むことができる酸素の量(ml/kg/分)
  • VO2maxにできるだけ近い強度で長くトレーニングを行うと効果的
  • 効率よくVO2maxを向上させるためには、90〜95%HRmax(最大心拍数の90〜95%)以上の強度が必要です。

 具体的なVO2max向上のためのトレーニングが知りたい方は次の記事を参考にしてください。

著者:らんしゅー
日比野就一

社会人からランニングを始めました。
理論に基づいたトレーニングで、
どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
競技志向で取り組んでいます。
自己紹介・記録変遷はこちら

血中乳酸濃度や血糖値も測定。
マラソンへ科学的にアプローチします。

★自己ベスト
 1500m 4:25(2022/08)
 5000m 16:01(2022/09)
 10000m 33:44(2021/12)
 ハーフ 1:12:29(2022/03)
 フル 2:40:15(2026/03)

著者:らんしゅー
日比野就一

  社会人からランニングを始めました。
  理論に基づいたトレーニングで、
  どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
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   1500m 4:25(2022/08)
   5000m 16:01(2022/09)
   10000m 33:44(2021/12)
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   フル 2:40:15(2026/03)

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目次

最大酸素摂取量(VO2max)を上げるために必要な条件

 最大酸素摂取量を向上させるにはどんな条件が必要なのかを解説します。

VO2max向上に必要な運動強度:90〜95%HRmax以上

 VO2maxに十分な刺激を入れるために必要な強度は、90〜95%HRmax(最大心拍数の90〜95%)以上です。%VO2maxで表すとおよそ80〜88%VO2maxに相当します。つまり、「最大心拍数の9割以上」を目安に考えるとわかりやすいです。※1※2

 また、5000m以下のレースに向けてトレーニングを行う場合は、95~100%VO2max前後の強度でトレーニングを行う必要があると考えています。

VO2max向上に必要な運動強度(ダニエルズ理論)

 ダニエルズのランニングフォーミュラでは、VO2maxトレーニングでの運動強度が下記のように提唱されています。

VO2maxトレーニングでの運動強度(ダニエルズ)

95~100%VO2max(=96~100%HRmax)

参考→97.5%VO2max:5000mレースペース、100%VO2max:3000mレースペース
(100%VO2maxがどの距離のレースペースに相当するかはランナーのレベルによって異なる

T@VO2maxを最大化する(インターバルの役割)

 VO2maxを上げるためのトレーニングで重要なポイントは次の通りです。

VO2max向上の重要ポイント
  • VO2maxにできるだけ近い強度で運動を行う
  • VO2maxに近い強度でできるだけ長く運動を行う

 最も効率が良いトレーニングは「VO2max付近の強度で可能な限り運動を継続すること」ですが、そのような高い強度でトレーニングを継続的に行うことは非現実的です。

 そのため、VO2maxを上げるためのトレーニングとして一般的なのがインターバルトレーニングです。きつい時間を分割することで、きつさを分散させつつ最大酸素摂取量に近い強度で運動する時間(T@VO2max)を稼ぐことができます。

インターバル 酸素摂取量と時間
インターバル 酸素摂取量と時間

 インターバルトレーニングにおいて、VO2maxに近い速度で走り始めると約2分後に酸素摂取量上限に到達します。

 インターバルトレーニングでは、疾走とレストを繰り返しますが、本数を重ねるごと酸素摂取量が上限に到達するまでの時間が短くなり、2本目以降は2分よりも早い段階で酸素摂取量の上限に到達します。

 最大酸素摂取量にできるだけ近い強度で、できるだけ長く運動(=繰り返し本数の合計時間)することで、最大酸素摂取量の向上が達成されます。

 なお、毛細血管密度ミトコンドリア容量・機能はVO2maxを決める要因の一部であり、低強度トレーニングでも一定程度高めることが可能です。ランニングを始めたばかりの初心者であれば、軽いジョギングでもVO2maxが向上します。しかし、ミトコンドリアの機能は高い強度でのみ適応が進むため、ランニングパフォーマンスを向上させていくためには高い強度でのトレーニングも適度に取り入れる必要があります。

VO2max向上トレーニングの設計方法

 VO2maxを向上させるためのトレーニングとして最も知られているのがインターバルトレーニングです。VO2max向上のためのインターバルトレーニングに必要な運動強度レスト時間の考え方について解説します。

 次の記事では、ランニングにおける具体的なVO2maxインターバルトレーニングメニュー作成方法等を紹介しています。

科学的に最も効果的だったプロトコル:論文紹介

Adaptations to aerobic interval training: Interactive effects of exercise intensity and total work duration」※3

 本論文では、被験者をトレーニング条件毎に4グループ(A~D)に分け、VO2max向上・LT値改善の効果に差があるかを実験しました。

条件毎グループ分けと説明
  • Aグループ:週4~6回の低強度トレーニングのみ
  • Bグループ:週2回の16分×4のインターバル
  • Cグループ:週2回8分×4のインターバル
  • Dグループ:週2回4分×4のインターバル
  • B~Dグループは上記に加え週2~3回の低強度トレーニングを実施

 トレーニング前後での、VO2max値の改善結果を下表に示しています。

スクロールできます
トレーニング
条件
A:低強度B:16分×4C:8分×4D:4分×4
頻度(回/週)4.8±1.24.9±1.24.6±1.24.7±1.2
回数(回/週)1.8±0.11.9±0.11.8±0.1
時間(時間/週)8.5±1.57.6±1.95.7±1.55.7±2.0
心拍数
(%HRmax)
88±290±294±2
血中乳酸値
(mmol/L)
4.9±1.59.6±2.913.2±2.0
A~D グループ トレーニング条件

※心拍数は、インターバルにおける4セット目の最大心拍数を平均した値
※血中乳酸値は、2,4,6週目に、インターバルセッションの3,4セット目に測定した値の平均値

スクロールできます
A:低強度B:16分×4C:8分×4D:4分×4
Lactate Peak
(mmol/L)
14.913.714.813.914.113.413.814.0
VO2max
(ml kg/min)
52.754.551.154.452.858.350.453.2
VO2max
上昇率
+3.4%+6.6%+10.4%+5.5%
Power
4mmol(W)
222239228249241280220238
各グループにおけるトレーニング前後での乳酸ピーク値とVO2max値

 結果としては、「8分×4」のインターバルトレーニングを行ったグループが、最もVO2max上昇効率が良かった、となりました。

グループBグループCの比較

 1週間当たりのトレーニング量は、Bが7.6時間Cが5.7時間と、トレーニング時間が短いのにもかかわらず、Cグループの方が最大酸素摂取量は大幅に向上しています。BとCでの大きな違いはトレーニング強度です。

 トレーニング中の最大心拍数がBでは88%HRmaxだったのに対し、Cでは90%HRmaxです。Cの方が最大心拍数に近い領域でトレーニングを行っています

 88%HRmaxのトレーニングを16分間続けるよりも、90%HRmaxのトレーニングを8分間続けた方がVO2maxの上昇率が高いということが示されています。

グループCとグループDの比較

 一方、94%HRmaxのトレーニングを4分間続けたDグループと比較しても、Cグループの方がVO2maxが上昇しています。

 VO2maxを効率的に鍛えるには、心拍数が適度に「高い」状態を「長く」維持することが望ましいということが示されています。

 練習強度(=運動中心拍数)がある一定以上落ちると、著しく最大酸素摂取量向上の効率が落ちていき、運動強度が90%HRmax未満に下がってしまうと、最大酸素摂取量への刺激が極端に少なくなってしまうということがわかります。

運動強度を維持するための適切なレスト時間

 これまで述べてきた通り、VO2maxを上げるためには適切な一定の運動強度以上でトレーニングを行う必要があります。

 インターバルトレーニングにおけるレスト区間では、時間が短すぎたり強度が高すぎたりすると、疾走区間で必要な運動強度が得られなくなってしまうため、レストを適切に設定する必要があります。

 十分にトレーニングされたランナーを対象に、傾斜度5%のトレッドミルで4分×6本のインターバルをレスト1分・2分・4分の3条件で比較した研究があります。※4

 結果として、レスト時間を1〜4分の範囲で変えても疾走強度への影響は小さく、大きな差はありませんでした。自由にレスト時間を決めさせると、平均で約2分を選ぶことがわかりました。

 このことから、疾走4分に対してレスト約2分、つまり運動と回復の比が2:1が一つの目安と考えられます。

VO2maxと心拍数の関係

 VO2maxを効率よく向上させるうえで、心拍数は最も実用的な強度管理指標です。実際のトレーニングで「今どのくらいの強度なのか」を把握するために心拍数を活用する方法を解説します。

心拍数でVO2max強度を管理する方法

 VO2max向上のための目標強度は90〜95%HRmaxです。自分の最大心拍数(HRmax)を把握していれば、ウォッチの心拍計でリアルタイムに強度を確認しながらトレーニングを行うことができます。

 例えば最大心拍数が195拍/分のランナーなら、目標ゾーンは175〜185拍/分です。疾走中この範囲に入っているかどうかを確認することで、感覚に頼らない客観的な強度管理が可能になります。

 なお、%HRmaxと%VO2maxは1:1の関係ではありません。Swain et al.(1994)※2によると、90%HRmaxはおよそ80〜82%VO2maxに対応します。%VO2maxで管理したい場合はこの換算を念頭に置いてください。

最大心拍数の測定と個人差

 最大心拍数(HRmax)には大きな個人差があり、年齢推定式(220-年齢)はあくまで目安です。実際には同じ年齢でも10〜20拍/分程度の差があるため、実走での最高心拍数を記録しておくことが精度向上につながります

 最大心拍数の実測には、800m〜1000mの全力走の後半に計測する方法が比較的再現性が高いとされています。Garmin等のスポーツウォッチでは自動計測できますが、コース条件や日々のコンディションにより変動するため、複数回の記録から最大値を参考にするとよいでしょう。

最大酸素摂取量(VO2max)とは何か

 最大酸素摂取量(以下、VO2maxと表記)とは「1分間に体重1kgあたり取り込むことができる酸素の量(ml/kg/分)」を表します。

 基本的に、VO2maxが高いほど長距離走・マラソンのレースタイムが良いことが知られています。VO2maxは持久性パフォーマンスを評価するうえで重要な指標です。

 VO2maxを決める要因(Fick方程式・心拍出量・動静脈酸素較差)などについては、次の記事で詳しく解説しています。

VO2max強度トレーニングの位置づけと注意点

 VO2max強度のトレーニングは、レースでパフォーマンスを発揮するための最終調整的な位置づけにあります。

 VO2max強度に近いトレーニングは体への負担が大きく、コストパフォーマンスは低いトレーニングだと言えます。「コスト」とは「疲労」を意味します。

 速筋繊維に刺激を与えミトコンドリアの機能を高めたいのであれば、わざわざ苦しいVO2maxインターバルトレーニングを行う必要はなく、200mの登坂走や400mのショートインターバルで着実にボリュームを稼ぐ方が、効率的と言えます。

 しかしそれでも、VO2max強度のトレーニングを導入する意味としては「レースに近い状況を作り出して反復し、レースペースに対してのエコノミーを高めていくこと」が主だと考えています。

 5000mレースに対して最もランニングエコノミーを高めることができるトレーニングは、5000mレースペースでのトレーニングになります。練習で5000mを一気に走り切ることは難しいため、インターバルに分割して取り組むことになります。

 私自身の結論として「100%VO2maxに相当する高い強度でのトレーニングは時と場合によっては必要」だと考えています。ただしそれは、「5000mよりも短い距離のレースに出場する予定がある場合」という条件付きです。

 したがって、「VO2maxを高めるために、100%VO2maxに近いトレーニングを行う」という発想ではなく、「100%VO2maxでのレースに出場する予定があるから、100%VO2maxに近いトレーニングを行う必要がある」という思考に切り替える必要があると考えています。

参考文献

※1 Helgerud J, Hoydal K, Wang E et al. (2007) “Aerobic high-intensity intervals improve VO2max more than moderate training” Medicine & Science in Sports & Exercise

※2 Swain DP, Abernathy KS, Smith CS, Lee SJ, Bunn SA (1994) “Target heart rates for the development of cardiorespiratory fitness” Medicine and Science in Sports and Exercise

※3 Seiler S, Jøranson K, Olesen BV, Hetlelid KJ (2013) “Adaptations to aerobic interval training: interactive effects of exercise intensity and total work duration” Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports

※4 Seiler S, Hetlelid KJ (2005) “The impact of rest duration on work intensity and RPE during interval training” Medicine & Science in Sports & Exercise

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。

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出版情報
サブ4達成に向けたトレーニングプログラム

「ランニングを科学する」から「サブ4達成に向けたトレーニングプログラム」のkindle出版をしました。kindle unlimitedに登録していれば無料で読めますので是非ご一読ください。

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