- 長距離種目(フルマラソンや5000m)での適正体重が知りたい
- エリートランナーはどのくらいの体重なの?
- 体重の正しい減量方法が知りたい
フルマラソンの記録を向上させるため、体重を減らすことを考えているランナーも多いのではないでしょうか。
私自身も体重はとても気にしています。理由は、体重が競技の記録に直結すると考えているからです。
ただし、ただ軽ければいいということではありません。正しく減量を行い、筋力を可能な限り維持しながら、不要な脂肪を落としていく必要があります。
食事を正確に把握していくことは難しいため、せめて、体脂肪を正確に把握していきたいと考え、InBody(家庭用)を購入し、モニタリングを始めました。
私は、ランニングを本格的に開始してからは10kg程度軽くなっているのですが、今後、まだまだ記録を伸ばしたいという思いがあるので、体重を最適化していきたいと考えています。
減量するにあたり、目標体重はどのくらいなのか、また、減量方法として食べる量を減らせばいいのか走る量を増やせばいいのか等、いくつか方法があります。
目標体重の参考データとして、国内エリートランナーの体重を調査しました。
また、適切な減量方法を知るために、減量がパフォーマンスに与える影響を調べ、最適だと思う減量方法を考察しています。
本記事では、以上の情報より適正体重と適切な減量方法を提案したいと思います。
- エリートランナーの平均BMI指数は18~19に集中している
- 減量には、トレーニングパフォーマンス低下、怪我、筋量低下のリスクがある
- 減量は期分け(時期を限定)して行うことでリスクを最小限化できる
長距離各種目上位入賞者(2020~2021年)の身長・体重・BMI指数
まずは競技力が高いランナーの状況を把握するために、2020年~2021年にかけての公式大会における5000m~フルマラソンでの上位入賞者の身長および体重の調査を行いました。
2020年から2021年にかけて行われた国内主要大会における、各種目(5000m・10000m・ハーフマラソン・フルマラソン)上位入賞者の身長及び体重を表1から表5にまとめました。
また、表6には表1~表5の平均値を示しています。
※順位は日本人のみで集計しました。
長距離種目における適正体重・身長・BMI指数
5000mからフルマラソンへと走行距離が長くなっていくにつれて、「平均身長」及び「平均体重」は低下傾向となっています。
しかし、種目・身長・体重に関わらず、BMI指数は「18~19」に集中しています。身長と体重のバランスはそのままで、距離が長くなってくると「小柄な選手」が増えています。
参考データとして、WHOが発表している、BMI指数を元にした肥満の判定基準は次となります(表7)。エリートランナーは普通体重の範囲で可能な限り体重を落とした領域に位置しています。
BMI値 | 判定 |
---|---|
16未満 | 痩せすぎ |
16.00~16.99以下 | 痩せ |
17.00~18.49以下 | 痩せ気味 |
18.50~24.99以下 | 普通体重 |
25.00~29.99以下 | 前肥満 |
30.00~34.99以下 | 肥満(1度) |
35.00~39.99以下 | 肥満(2度) |
40.00以上 | 肥満(3度) |
さらに過去のデータを遡ると別の傾向が見えてくる可能性はありますが、最新厚底シューズ等の影響も考慮すべきであり、直近1年程度のデータで考察することが適切です。
以上のデータから、現在のエリートランナー身体・体重・BMI指数の特徴は次の通りです。
- 5000mからマラソンへと距離が長くなるにつれ、「小柄な」選手が多くなる
- 種目の距離に関わらず、身長と体重のバランスを表すBMI指数は「18~19」
- 健康を維持しながら高いパフォーマンスを発揮できる最低限のBMI指数
減量のリスク
減量のリスクについて考えます。
減量をするためには、「消費カロリー>摂取カロリー」とする必要があります。普段食べている栄養素の中で、優先的に減らすべきなのは、糖質と脂質です。
まず優先的に減らすべきなのは脂質です。しかし、アスリートの食事において脂質はそもそもたくさんは摂取していないことが多いので、次に注目されるのは糖質となります。
減量をするということは、摂取する「糖質」を減らしていくこと=「糖質制限」になります。
しかし、この「糖質制限」には次のリスクが考えられます。
- 体が常に筋グリコーゲンが少ない状態となるため、高強度トレーニングのパフォーマンスが下がる
- 細胞や筋肉の修復にはタンパク質だけでなく糖質も必要であるため、リカバリーが遅くなり怪我のリスクが高まる
- 食生活によっては、脂肪だけでなく、必要な筋肉までも落としてしまう
トレーニングにおけるパフォーマンスの低下
特に糖質メインを使う強度(LTペース以上)でのトレーニングにおいて、本来発揮されるべきパフォーマンスが発揮できなくなる可能性があります。
目的の強度でトレーニングを行うことができなくなるため、トレーニング効果が低下します。
また、レースも同じです。レースは「最高強度」の運動です。レース直前まで減量するような計画にしていると、レースで高いパフォーマンスを発揮することは難しいと考えます。
パフォーマンスが低下すると、トレーニング効果も落ちることが想像されます。
怪我のリスク
「怪我のリスク」も増大すると考えられます。
基本は、トレーニングによって体に負荷を与え、次のトレーニングまでに回復し、再度トレーニングで負荷を与える、という繰り返しで少しづつパフォーマンスの向上を目指します。
しかし、減量中は栄養分が足りていない状態が継続するため、負荷を与えた体が回復せずに、次のトレーニングに臨む必要が出てくる可能性があります。
そのようなとき、無理に高強度トレーニングを行った結果、パフォーマンスを発揮しきれないだけでなく、負担を与えた体が回復しきらず、怪我をしてしまう確率が高くなることが予想されます。
必要な筋肉までも落としてしまうリスク
ランニングトレーニングを継続しながら減量を進めると、常に体はエネルギーが不足した状態となります。
その場合、脂肪が消費されることはもちろんですが、脂肪だけでなくたんぱく質もエネルギー源として使われることになります。
結果として、筋力が低下してしまう可能性があります。ランナーにとってのたんぱく質の重要性については、次の記事で詳しく解説しています。
減量中に筋力の低下を防ぐためには、食事においてたんぱく質を多めに摂ること、トレーニングに筋力トレーニングを導入することが有効です。
しかし、減量において多少の筋力低下は避けられないため、可能な限り筋力が落ちない工夫が必要になります。
市民ランナーですと食事内容の厳密な管理が難しいため、無理なペースでの減量は避けておいた方がよいでしょう。
適切な減量方法:「期分け」して減量に取り組む
減量するためには、摂取する糖質と脂質を減らしていきます。
減量のリスクを回避しながら、適切に減量を行い、かつ、高いパフォーマンスを維持するためには、かなり高い精度が必要な「栄養の管理」が必要になると考えられます。
ランナーが行っているトレーニングは、低強度から高強度のものを織り交ぜて行っていくのが一般的です。
高強度トレーニングに合わせた糖質摂取のタイミングと量を精密に管理すれば、減量で発生するリスクを回避しながら、減量を進めることができそうです。
しかし実際は、専属の栄養管理者がついてくれない限り、精密な栄養管理は難しいと思います。私もそのうちの一人です。
そんな市民ランナーにおすすめな減量法は、明確にトレーニングを「期分け」し、「減量期間」と「高強度トレーニング&レース期間」に分けることだと考えます。
減量期間に行うべきトレーニングは主に、低い強度で行うジョギングやロングジョグだと考えます。
低強度のジョギングや長い時間走るロングジョグでは、脂肪をエネルギーとして利用する割合が高いため、選択的に脂肪を燃焼することができます。
減量中は筋グリコーゲンが少ない状態であるため、脂肪の利用率は高まります。
一方、レースに向けて高強度なトレーニングを入れなければならない時期になったら、いったん減量を止め、パフォーマンスを上げることに注力すべきです。
高強度トレーニングとしてあげられるのは、VO2maxインターバルトレーニングなどです。
しっかり糖質を摂り、怪我のリスクを下げ、高強度トレーニングの効果を最大化することに集中しましょう。
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