【距離走(ロングジョグ)】の効果を最大化する方法を考察 適正ペースや距離は?

距離走(ロングジョグ)
こんな疑問を解消
  • 距離走(ロング走)はどんな効果があるの?
  • 距離走を実施すべきタイミングは?
  • 距離走のやり方が分からない

 距離走を取り入れたいけど、ペース設定やどのくらいの距離を走ればよいのかわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 ここでは、距離走(ロングラン=ロングジョグ)トレーニングの効果を最大化するための方法を考察していきます。運動生理学の観点から距離走で得られる効果についても考えていきます。

 マラソン界において二大理論といっても過言ではない、ダニエルズのランニングフォーミュラリディアードのランニングトレーニングでも週に一回以上の距離走が推奨されています。

 エリートランナーのトレーニングでも、距離走は必ずと言っていいほど取り入れられています。

 本記事を読めば、距離走において、走るべき距離適正ペース・実施するタイミングについて理解することができます。

距離走を効果的に行うためのポイント
  • 設定ペースはEasyペース~Moderateペースが適切
  • フルマラソンレースを想定した距離走であれば、マラソンペース近くまで上げて特異性を高める
  • 距離走で行う距離は、週間走行距離の25%以下を目安にする
著者:らんしゅー
日比野就一

社会人からランニングを始めました。
理論に基づいたトレーニングで、
どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
競技志向で取り組んでいます。
自己紹介・記録変遷はこちら

血中乳酸濃度や血糖値も測定。
マラソンへ科学的にアプローチします。

★自己ベスト
 1500m 4:25(2022/08)
 5000m 16:01(2022/09)
 10000m 33:44(2021/12)
 ハーフ 1:12:29(2022/03)
 フル 2:40:15(2026/03)

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   ハーフ 1:12:29(2022/03)
   フル 2:40:15(2026/03)

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目次

距離走とは?距離走の呼び名について

 ダニエルズのランニングフォーミュラでは「Lランニング」、リディアードのランニングトレーニングでは「有酸素ロングラン」と呼ばれるトレーニングです。「ロングジョグ」といわれることもあります。

 指導者や参考書によっては、ペースによって呼び名を使い分けている例もあります。例えばジョギング程度のペースで長い距離を走る場合はロングジョグ、ある程度速いペースで走る場合はロングランなどと使い分けます。

 指導者として正しく言葉を定義する必要があれば、明確に言葉を使い分ける必要があります。本記事では、正確に情報を伝えるため下記の定義とさせて頂きます。

言葉の定義の確認
  • 距離走:ロングジョグ、ロングランの総称
  • ロングジョグ:Easyペース前後での距離走
  • ロングラン(ロング走):Easyペース~マラソンペース、比較的速いペースでの距離走

※Easyペースとは、ダニエルズのランニングフォーミュラで使用される名称です。

 本記事では、距離走を「長い距離を一度で走るトレーニングの総称」とします。

 LSD(ロングスローディスタンス)が距離走と同様の意味で使われることもありますが、LSDと距離走は本質的に異なると考えています。LSDは自分にとって「遅い」ペースで長い距離を走るトレーニングです。

 距離走は少なくともEasyペース以上の速さで走ります。

距離走で得られる効果

 距離走の効果を考えるためには適正な設定ペースを検討することが必要です。目的が理解できていれば、適正なペースも自然と理解することができます。

Easyペースの距離走で得られる運動生理学的効果

 距離走で得られる生理学的効果は、距離走を行うペース設定によって変わってきます。距離走をEasyペースで行う場合は、距離走で得られる効果はジョギングと同様です。

 具体的には、怪我への耐性・心筋の発達・毛細血管新生・活動筋の適応・ミトコンドリアの新生/機能向上を期待することができます。

 次の記事ではEasyペースのトレーニングで得られる効果についてまとめています。

距離走特有の効果を得るためには?

 距離走を行うことで得たい効果としては「目標レースに対する特異性」です。特にハーフマラソンフルマラソンに対しての特異性です。

 特異性とは「筋肉のグリコーゲンが減少してきた状態でも体を動かし続けることに慣れること」と言い換えることができると考えています。

 フルマラソンでは「30kmの壁」が知られています。「30kmの壁」の要因としては筋持久力の制限や筋グリコーゲンの減少などにより、運動の維持が困難になることです。

 距離走で得られるレースに対する特異性は、主に以下の通りだと考えています。

距離走で得られるフルマラソンレースに対する特異性
  • 筋グリコーゲンが減った状態で体を動かし続けることに慣れる
  • ランニングエコノミーの向上により少ないエネルギーで走れるようになる
  • 長い時間足を動かし続けるための筋持久力

 マラソンではレース後半で必ず筋グリコーゲンが減少した状態になります。マラソンで後半失速しないようにするために距離走を重ねて行うことで「これくらいなら走り続けても大丈夫だ」と体に覚えこませることが必要です。

 長い時間運動を継続していると血糖値が低下していきます。ある一定以上に血糖値が低下すると、筋繊維への糖質供給が制限されるようになります。そうなると一気にハンガーノック状態となり、足が動かなくなる状態となります。

 距離走を継続することで、ミトコンドリアの機能が高まり、脂肪をエネルギーとして使う能力が向上していきます。Hansen et al.(2005)※1 は、グリコーゲンが少ない状態でのトレーニングが筋の持久的な適応を促進することを示しています。

 脂肪酸化能力が上がることで、同じペースで走っていても糖質の消費量が抑えられ、レース後半でもグリコーゲンが残りやすくなります。

 また、距離走を継続的に積み重ねることで、ランニングエコノミー(同じスピードで走るときのエネルギー消費効率)が向上していきます。Barnes & Kilding(2015)※2 のレビューでは、走行量と走行歴の蓄積がランニングエコノミー改善の主要な要因であると示されています。

 同じペースでも消費するエネルギーが少なくなることで、結果的に筋グリコーゲンが減りにくくなります。

 距離走に限りませんが、継続的な持久性トレーニングによってミトコンドリアの数や機能が増加し、脂肪を使う能力が徐々に高まっていきます。De Bock et al.(2008)※3 は、持久トレーニングによって骨格筋の脂肪酸化関連タンパク質(FABP・CPT1)が有意に増加することを実験的に確認しています。

距離走の設定ペース

 以下では距離走での設定ペースについて解説します。

距離走の設定ペースは基本Easy~Moderateペース

 距離走での走行ペースはEasyペースからModerateペースが推奨です。それぞれのペースについての説明は、次の記事を参考にしてください。

 EasyペースからModerateペースは、ゆったりしたペースではありますが決して「ゆっくり」ではありません。フルマラソンに向けて距離走を効果的にするためには、ゆっくり過ぎる距離走は推奨できません。

 LSD(Long Slow Distance)を推奨しているトレーニング方法もありますが、フルマラソンの記録には結び付きにくいと考えています。

 一方で、ペースを上げ過ぎた距離走もおすすめできません。毎回距離走においてマラソンペース近くのペースで走っていては、負担が大きく怪我も多くなり、長い期間でみると練習を継続できない可能性が高いためです。

 疲労回復が間に合う強度と負荷で抑え、トレーニングを継続していくことが必要です。

フルマラソンレースが近くなってきた時の距離走

 フルマラソンレースに近くなってきた時は、距離走のペースを徐々にレースペースに近づけていくことが必要です。距離走で特に得たい効果として「フルマラソンレースに対する特異性」を述べました。

 特異性は、できるだけレースペースに近いほうが、より効果を高めることが可能です。したがって、持続可能な範囲で、距離走のペースは目標とするフルマラソンレースに近づけていくことが必要です。

出版情報
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距離走の適正な距離は週間走行距離の25~30%以下

 距離走は効果的なトレーニングですが、体への負荷が高くなり過ぎないように一回で走る距離に条件を付けることをおすすめします。

怪我予防の観点から、上限距離を決めておく

 ダニエルズのランニングフォーミュラでは、一回での走行距離に上限をかけることが推奨されています。

走行距離上限の決め方
  • 1週間当たりの走行距離が64km未満の方は、週間走行距離の30%以内
  • 1週間当たりの走行距離が65km以上の方は、週間走行距離の25%以内、もしくは150分以下のどちらか短い方

 1回の距離走で走れる上限距離は、普段の練習量で変わります。1週間に50km走っている場合は1回あたりの距離走は15kmが上限、1週間に100km走っている場合は25kmが推奨の上限距離になります。

 距離走で30kmをコンスタントに走れるのは、週間走行距離が120km以上あるランナーとなります。

 距離走での走行距離上限を決めているのは、1回の練習で体に負担がかかりすぎることを防ぐことが目的です。負担がかかりすぎると、回復に時間がかかり十分な適応が起こらなかったり、最悪の場合怪我につながったりします。

 例外として、フルマラソンレースに近くなってきたときの本番さながらのトレーニングや初心者がマラソン大会で完走を目指している場合等、どうしても練習で長い時間走っておかなければならない時もあるかと思います。

 そのような場合には、自分の体と相談しつつ、怪我をしないトレーニング量を模索しながら、慎重にトレーニングを進めましょう。

 そのような場合を除いてコンスタントに距離走を行う場合は、走行距離に上限を設けながら練習を継続するべきです。

距離走で走る1回当たりの距離を伸ばす方法

 体にかかる負担を抑えて怪我を防止しながら、一回で走る距離を伸ばしていくには、普段から走っている距離を徐々に伸ばしていくことがまず優先です。

 ダニエルズ理論では、走行距離を伸ばす方法として、週間で+10%の増加にとどめ、少なくとも4週間(=つまり1か月)は同距離を維持すべきことが推奨されています。

 普段から走る距離を少しづつ伸ばし、週間走行距離が増えたところで1回距離走あたりの走行距離も伸ばしていく、といった順序になります。

 走行距離の伸ばし方は、私が実際に怪我を経験してきたうえでとても重要だと思うポイントです。

 これまで、脚を故障してきた過去を振り返ると、いずれも走行距離を伸ばしたタイミングです。特に膝を痛めてしまった時は、約2~3か月間、満足に走れなくなりました。

 怪我無く継続的にトレーニングへ取り組むためにも、走行距離を伸ばすときには十分に注意しながら行っていきましょう。

フルマラソンに近い距離を練習で走ってはいけない?

 フルマラソンレースに向けて、レースに近い距離を走りたいランナーもいると思います。結論としては、トレーニングでもレースに近い距離を走っても良いと考えています。

 ただし、毎週行うには怪我のリスクが高まります。したがって、走行距離上限を超えるような距離走は月1回や3週間に1回など頻度を下げて行い、怪我のリスクを下げましょう。

実施するタイミング:ポイント練習翌日に行うと効果増大

 距離走を実施する適切なタイミングを考察します。

 パターンとしては、ポイント練習の一つとして組み込むか、セット練習(バックトゥバック)2日目のトレーニングとして組み込むかのどちらかです。

 マラソンペースに近いペースまでペースを上げた距離走を行う場合は、ポイント練習の一つとして取り組むことになります。距離走自体の負荷が高いためです。

 一方、距離走をサブのトレーニングとして組み込んでいる場合、負荷が高いトレーニングの翌日に距離走を行うと効果が高まると考えられます。

 理由としては、ポイント練習で筋グリコーゲンが減少した翌日に距離走を行うことで、グリコーゲンが少ない状態での運動になり、ミトコンドリア適応がより強く引き出されるためです。

 Hansen et al.(2005)※1 や Yeo et al.(2008)※4 は、グリコーゲンが減った状態でのトレーニングが、通常の状態でのトレーニングと同じ運動量でも、ミトコンドリア酵素活性や脂肪酸化率を有意に高めることを示しています。

 しかし、距離走にはじめて取り組む市民ランナーの方は、ポイント練習(負荷が高い練習)の一つとして距離走を行うことをおすすめします。

 理由としては、まだ長い距離・時間を走ることに慣れていない状態で、さらにポイント練習と組み合わせて負荷を上げてしまうと、怪我のリスクが高くなるからです。 

 エネルギー不足で距離走を行うとたんぱく質の分解も優勢になるため、疲労からの回復が遅れることになります。経験を積み、距離走にもある程度慣れてきたらポイント練習の翌日に距離走を行うことにも取り組んでみましょう。

 以上の理由から、慣れないうちはポイント練習の一環として行うことをおすすめしますが、慣れてきたら是非、ポイント練習の翌日に行うセット練習として距離走に取り組んでみましょう。

 これまで、なんとなく距離走を行ってきていた方も、距離走の意味や目的をしっかり理解することができれば、適正ペースや実施するタイミングも見直すことができます。

 フルマラソンの記録更新に向けて、効果の高い距離走を行っていきましょう。

参考文献

※1 Hansen AK et al. (2005) “Skeletal muscle adaptation: training twice every second day vs. training once daily” Journal of Applied Physiology

※2 Barnes KR, Kilding AE (2015) “Strategies to improve running economy” Sports Medicine

※3 De Bock K et al. (2008) “Effect of training in the fasted state on metabolic responses during exercise with carbohydrate intake” Journal of Applied Physiology

※4 Yeo WK et al. (2008) “Skeletal muscle adaptation and performance responses to once a day versus twice every second day endurance training regimens” Journal of Applied Physiology

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。

出版情報
サブ4達成に向けたトレーニングプログラム

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