- ハーフマラソンで1時間50分を切るための練習メニューが知りたい
- 初心者でも達成できるの?
- 練習ではどのくらいの距離を走ったらいいの?
学生時代に陸上経験が無い市民ランナーの方は、「記録を出したいけど、どんな練習をしていけばいいかわからないな」という状況なのではないでしょうか。
初めて参加した大会で2時間を切り、「次は1時間50分切りを狙いたい」と思う方もいると思います。
私は、社会人から本格的にランニングを始めた市民ランナーです。月500km程を走り競技志向でランニングに取り組んでいます。
ハーフマラソンで1時間12分29秒の実力です。
これまで、ハーフマラソンで1時間50分を切るくらいのランナーを何人も見てきました。
練習のやり方や頻度・記録を出すまでの過程を、私自身が指導してきた方の例(Aさん)を元に紹介させていただきます。
本記事を読めば、ハーフマラソンで1時間50分を切るための具体的練習方法が分かります。初心者の方でも、実践できる内容になっています。
- ハーフマラソンで1時間50分を切るためには継続的な練習が必要
- 1時間50分を切ると、全ランナーの上位35%程度に相当
- 練習量の目安は、週3~4回、1回当たり10km程度 月100~150kmくらいが目安
- 基本的練習はジョギング、LT走を取り入れることで練習効率が上がる
1時間50分を切ることは簡単ではないが初心者でも達成できる
これまで全く運動してこなかった方がハーフマラソンで1時間50分を切るのは結構難しいです。
厳しいことを言いますが、継続的な練習が必要です。記録を達成したいという気持ちと努力が必要です。
学生時代等に運動歴があり基礎体力がついていた、もしくは、生まれつきの才能がある、といった人も中にはいますが、たいていの人はある程度の練習が必要です。
Aさんの例でいうと、年齢は40歳台前半の男性、学生時代には全く運動歴がない方でした。
社会人になってからはアウトドアが好きで、スキーや山登りをしていましたが、ランニングは趣味程度に走っている程度(1週間で5~7kmを2回くらい)。
そんな背景を持っている方がマラソンの練習を行い、ハーフマラソンで1時間46分という記録を出すことができました。
本人にしてみると、「かなり練習した」と思えるような練習量だったようです。
ハーフマラソン1時間50分切りの難易度:ランナーの上位半分
参考データを示します。
2022年公認ハーフマラソン主要6大会を集計したところ、ハーフマラソンで1時間50分切りを達成すると、ランナーの上位35%に相当することが分かっています。
参考データとして、2022年公認ハーフマラソン主要6大会を集計したヒストグラムを示します。
この結果からも、ハーフマラソン1時間50分切りは、素人には簡単ではないことが分かります。
有名なトレーニング理論:「ダニエルズ理論」「リディアード理論」
「ハーフマラソンで1時間50分を切ることはあくまで最初の目標。今後もっと記録を伸ばしていきたい」と思っている方は、是非参考にしてほしいトレーニング理論があります。
- ダニエルズ理論(ダニエルズのランニング・フォーミュラ)
- リディアード理論(リディアードのランニング・トレーニング)
※「リディアード理論」は、青山学院大学の原監督が採用している手法でもあります。
両理論は書籍として出版されており、どちらについてもここ最近で改訂版が発売されている、ロングセラー商品です。それだけ信頼され、有名な理論だと言えます。
まずは正しい理論を知りマネしてみることが、記録達成に対して最も近道です。
私としてはまず、「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」がおすすめです。初心者にも取り入れやすい内容が記載されています。
「リディアードのランニングトレーニング」も素晴らしい本ですが、かなりの距離を走ることが前提になっている部分もあり、市民ランナーが真似しきれない部分があります。
是非一度手に取って、読み込むことをおすすめします。
大きな書店でないと手に入らないので注意しましょう。おすすめは楽天やAmazonでの購入です。
本記事では、これら理論を踏まえ、エッセンスを解説していきます。
最初はウォーキングから始める
ほとんど運動してこなかった方にとっては、少し走るだけでもきつく感じると思います。そのような場合、まずはウォーキングから始めましょう。
慣れてきたら、1km走って1km歩く等にステップアップしていきます。最終的には、1回で10km程度を連続で走りきれるくらいになることが理想です。
今まで運動経験が無く、ランニングを始めたばかりの方にとっては、少し走るだけでも辛いと思います。しかし、ランニングは継続すれば、必ず長い距離を走れるようになります。
どの程度の練習量が目安?:100~150km/月程度
1時間50分を切るために必要な練習量には個人差があります。学生時代や社会人になってからの運動歴で大きく違います。
ランニングを継続して行うことで、長距離を走るための能力が発達します。「前よりも呼吸が楽だな」と思えるようになります。
ランニングの練習によって、心臓の筋肉が鍛えられたり、エネルギーを生み出すミトコンドリアの機能が高まったりします。
練習を中断してしまうと、発達した能力は衰えます。記録を向上させるためには、トレーニングを継続的に積み重ねていくことが必要です。
毎日走らなければならない、というわけではありません。長い目でみて、週3~4回のランニングを長い期間(数か月から1年)継続することで、ランニングの効果はどんどん積みあがります。
ハーフマラソンで1時間50分を切るための具体的な練習量ですが、ランニング未経験の状態からだと大体100~150km/月くらいは走る必要があるのではないかと考えています。
この練習量はあくまで目安です。過去の運動歴や個人差も大きく影響します。
走れば走るほど、走ることが苦にならなくなってくる感覚になると思います。これは、体が長距離を走ることに適応してくるため、同じスピードでも低い心拍数で走れるようになること等が理由です。
走る頻度と一回の練習で走る距離の考え方
1週間で合計30km走るとして、毎日走った場合は一回当たり4~5kmです。一方、1週間で3回走ると決めていた場合、1回当たり10kmになりますね。
これらのパターンを比較した場合、後者の方(一回当たり10km、週3回)がトレーニング効果が高い、ということが実験的に示されています。
練習頻度も重要です。継続的なトレーニングを行っていた場合、体の機能を落とさない最大の連続休養期間は5日(ダニエルズ理論参照)と言われています。
そうなるとやはり、1週間で3回くらいは走った方がよさそう、ということになります。
ハーフマラソンで1時間46分を達成したAさんの例では、1週間に3回から4回、1回当たり10km程度のランニングを行っていました。
体重の影響は?食事制限は必要なのか?
体重はマラソンの記録に大きく影響します。マラソン選手の体つきを見ると、皆かなり細く見えます。
具体的に何キロまで減らさなければならない、という基準はありませんが、一般的に「体重(=体脂肪)を1キロ落とすと、フルマラソンで3分タイムが速くなる」と言われています。
体重は、走る距離を伸ばしたり、走る頻度を上げたりすることで、体重を自然に低下させていくことが望ましいです。
走る距離を増やすことと食べる量を減らすことを同時にすると、空腹感を感じることも多く精神的に苦しさを感じます。
体重を落としたい場合は、定期的に体重測定することをおすすめします。毎回測定するタイミングを合わせ、体重を日毎に比較できるようにします。おすすめの測定タイミングは起床直後です。
体重も具体例を紹介すると、Aさんは身長が167センチ。ハーフマラソンに向けて体重を落とす際は、普段62キロある体重を58キロまで減らしていました。
参考程度ですが、エリートランナーの体重と記録を次の記事でまとめていますので、参考にしてみてください。
具体的練習方法・練習ペース
ハーフマラソンで1時間50分を切るためには、1kmを5分12秒で走り続ける必要があります。具体的な練習を紹介します。
結論から言うと、レースで走るペースよりも遅い、ジョギングを継続的に行っていけば、1時間50分を切ることは可能です。
ただ、練習がジョギングのみの場合は、トレーニングの効率は良くありません。
下記では、「効率よく」目標を達成する練習法を記載します。
ハーフマラソンで1時間50分を切るために必要なトレーニングは次の通りです。
- 継続的なジョギング
- LT走
- 定期的な5kmタイムトライアル(推奨)
基本的な練習は「ジョギング」
ハーフマラソンのペースは、走り続けることがかなり苦しいペースであり、毎回の練習でそのペースを継続することは困難です。
普段の基本的な練習はジョギングです。プロのマラソンランナーでさえも、練習の80%が低強度のジョギングです。
ダニエルズ理論では、効果的なジョギングのペースとして軽く他人と話せるくらいのペースが推奨されています。
「はぁはぁぜぇぜぇ」するようなペースでジョギングする必要はありません。「これくらいなら軽く話しながら走れるな」というペースを見つけましょう。
ダニエルズ理論では、このようなペースを「E(Easy)ペース」と呼んでいます。
ジョギングに推奨ペースがあることには根拠があります。心臓が鼓動する際、心筋の収縮量が最大となるのがおおよそ最大心拍数の60%から70%で心臓が動いている時です。
適切なきつさに保つことで、心臓の筋肉強化が最も効率よくなる、と言われています。
また、人間のエネルギー産生経路は主に2通りあります。一つは、糖質を利用してエネルギーを作り出していく経路、もう一つが、脂質を利用してエネルギーを作り出す経路です。
快適なきつさで運動している範囲では脂質を使う能力を鍛えることができます。
マラソン等の長い距離を速く走るためには、できるだけ体の糖を使わず脂質を使うように適応していく必要があります。ランニングを継続していると、徐々に脂質を使える体に適応していきます。
ジョギングで得られる効果については別の記事でまとめていますのでご参照ください。
LT走を取り入れて乳酸性作業閾値を向上させる
ハーフマラソンの記録に直結するトレーニング法としてLT走があります。
およそハーフマラソンのレースペース強度で走るトレーニングになります。
ハーフマラソンで1時間50分を切ることができる実力がある場合、LT走のペースは5:03/kmで20分間走り続けることができる程度です。
しかし1点注意することは、あくまでタイム設定は「今の実力に合わせること」です。
将来的にハーフマラソンで1時間50分を切る目標を持っていた場合でも、今の実力がそれ以下である場合には、LT走のペースも今の実力に合ったペースに調整して取り組む必要があります。
LT走のトレーニング方法について次の記事で詳細に解説していますので、皆様の実力に合わせたペース設定ができるようにしてみてください
定期的に5kmを全力で走ってみて、今の走力を把握する
定期的に5kmを全力で走る練習をしましょう。5kmのタイムトライアルです。
練習で5kmを全力で走るペースというのは、今ハーフマラソンで維持できるペースよりも少しだけ速いペースです。
目安としては、5kmを25分(1km当たり5分)で走れる場合、本番のハーフマラソンでは1km当たり5分10秒~5分15秒(1時間50分)で走ることができます。
※あくまで一例ですので、万人に当てはまるわけではありません
5kmの全力走で「今の実力」を把握することができます。
「5kmだけでも25分かかったのに、ハーフマラソンなんて、そんなに速く走れないよ!」と思うかもしれませんが、心配ありません。
レース当日はアドレナリンが出たり、周りの人がいるなどの影響により、練習以上の力が出ます。
5kmを全力で走ることは、今の力を確認できると同時に、5kmを全力で走ること自体が非常にいいトレーニングとなるので、おすすめです。
Aさんがハーフマラソンを1時間46分で走ったとき、ジョギングは5分40秒~6分00秒/kmのペース、5kmは25分程度で走ることができていました。
怪我してしまったら?
スポーツに、真剣に取り組んでいると怪我は付き物です。私自身も学生時代から、ハムストリングスの怪我に悩まされてきました。
怪我を予防するためにはセルフケアが重要です。別の記事で私自身がハムストリングス上部を痛めた時に行っていたケアを紹介していますので是非見てください。
光学心拍計付きGPSウォッチでトレーニング効率を上げる
今では技術が進歩し、世の中便利なものに溢れています。ランニングを本格的にするにあたってこれだけは絶対に持っていた方がいい、というのが光学心拍計付きGPSウォッチです。
GPSウォッチとは、衛星と通信を行い現在位置を時計自体が取れるものになります。例えばGPSを起動させ家の前から走って、戻ってくると、その走った経路や距離が後からわかります。
光学心拍計は、時計として腕にはめているだけで心拍数が測定できます。
光学心拍計付きGPSウォッチがあれば、走っている時の心拍数を数値で見ることができ、走っているペースが適切かどうか判断する材料になります。
おすすめのメーカーはGarmin(ガーミン)です。ランニングウォッチの中で一番人気です。心拍とGPS機能がついているため少々高額ですが、その分の価値は十分にあります。
私自身が使用しているのはForerunner 255です。Musicモデルは、スマホ等を携帯していなくても、イヤホンと時計をBluetoothで接続し音楽を聴きながらランニングをすることができます。
ランニングにシューズにこだわるとモチベーションもアップ
自分の好きなランニングシューズを揃えることで、ランニングをするモチベーションにもつながります。
ランニング界では、速く走るためには厚底カーボンシューズが一般的となってきています。
ハーフマラソン1時間50分切りのレベルであっても、厚底カーボンシューズを使用することでほとんどの場合記録向上が望めます。
ジョギングであっても、衝撃吸収性やフィット感はシューズによる違いが大きく、「安ければいい」といったものではありません。
自分自身で着用し、おすすめランニングシューズをまとめていますので是非ご参照ください。
マラソンで記録を出すことにおいて重要なことが、練習を継続して行いコツコツと積み上げることです。体の機能が長距離を走るために適応するのにはどうしても時間がかかります。
特に、社会人になってから初めて運動する、というような方であればなおさらです。
ここまでハーフマラソンで1時間50分を切る方法を紹介してきましたが、目標を達成できるかどうかは、あなたの情熱にかかっています。
どれだけ真剣にランニングと向き合えるかです。自分ができる努力をして目標を達成しましょう!
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