- ハーフマラソンで1時間40分を切る(サブ100)ための練習法が知りたい
- 1時間40分切りの難易度はどのくらいなの?
- ハーフマラソンまで後1か月だけどどんな練習メニューがいいの?
初心者から本格的にランニングを始めて、ハーフマラソンで1時間40分切りを目指すランナー必見です。
私は社会人から本格的にランニングを始めた市民ランナーです。月500km程を走り、競技志向でランニングに取り組んでいます。
ハーフマラソンで1時間12分29秒の実力です。
ここでは、ハーフマラソンで1時間40分(100分)を切るための考え方や具体的練習方法を紹介します。管理人が指導した方の実体験(Aさん)を元にしています。
Aさんは、今回紹介する練習法を取り入れたことで、40歳台で出したハーフの自己ベスト記録(1時間46分17秒)を、50歳中盤で更新(1時間39分38秒)することができました。
本記事を読めば、【最速で効率よく】を方針とした練習方法が分かります。なぜその練習を行うのか、練習の目的を根拠から理解できるように解説します。
- 1時間40分を切る(サブ100)の難易度は約上位20%、努力して練習する必要があるレベル
- 大会まで1ヶ月しかない場合は「怪我しないように」最低限の練習をする
- まずは一般的に知られている理論を知る(ダニエルズ理論)
- 練習量は週3~5回、150~200km/月程度が目安
- ジョギングとLT走を行うことで1時間40分切りは達成できる
1時間40分を切る(サブ100)の難易度(レベル):約上位20%
2022年公認ハーフマラソン主要6大会を集計したところ、ハーフマラソンで1時間40分切りを達成すると、ランナーの上位20%に相当することが分かっています。
陸上や運動の経験が無い方にとっては特に、ハーフマラソンで1時間40分を切るには、「継続的に練習を行うこと」が必要なレベルです。「記録を達成したいという気持ち」と「努力」が必要です。
趣味程度に走り始めた方であっても、ハーフマラソンで1時間50分を切れている例は多く見かけますが、1時間40分切りとなると、その数はかなり減ります。
事実として、長距離走は才能が大きく関係します。生まれ持って最大酸素摂取量が高く、長距離に才能がある選手もいます。才能が関与する割合は約50%であると言われています。
ただ、裏を返せば努力次第で残り50%は決まると言えます。ハーフマラソンで1時間40分を達成するためであれば、特別な才能は不要です。努力次第で多くの人に達成するチャンスがあります。
1ヶ月だけの練習では、1時間40分切りは難しい
長距離走であっても、それまで全くトレーニングを行ってこなかった方であれば、1ヶ月ちゃんと練習するだけで、しない方に比べたら、大きく記録が向上すると考えられます。
理由としては、トレーニング未経験者であればあるほど、ジョギングのような低強度のトレーニングでも、最大酸素摂取量や循環器系の能力が伸長するためです。
しかし、正直なところたった1ヶ月のトレーニングでハーフマラソン1時間40分切りは難しいと考えています。魔法のような練習は存在しません。
もしハーフマラソン1時間40分切りの目標を持っていて、練習効果を実感するためであれば、少なくとも3か月程度はトレーニング期間を確保する必要があります。
本記事では、今後も継続的にトレーニングに取り組む方へ特に有益な情報を提供します。
55歳で1時間40分切りを達成したAさんの実例
Aさん(男性)がランニングを始めた年齢は40歳台前半です。学生時代には全く運動歴がない方でした。
社会人になってからはアウトドアが好きで、スキーや山登りをしていましたが、ランニングは趣味程度に走っている程度(1週間で5~7kmを2回くらい)でした。
40歳台でランニングを始めた際は、自己流で一生懸命練習をした結果、ハーフマラソンで1時間46分を記録。その方にとっては「かなり練習した」と感じていたようです。
1時間40分切りを目指し始めた時は、「年齢的に無理だろう・・・」と本人はあきらめかけていましたが、今回紹介する練習方法を取り入れたことで記録が伸びていきました。
50歳中盤で、1年間の練習で1時間40分を切ることができました。
Aさんは何を変えた?:「ダニエルズ理論」に基づくトレーニングを地道に行った
Aさんの場合、私が指導するまでは自己流のランニングトレーニング(ほぼジョギング)でした。マラソントレーニングに汎用性のある理論があることを知らなかったためです。
Aさんがダニエルズのランニングフォーミュラに従ってトレーニングを行った結果、50歳中盤ではありながら、わずか10か月で1時間40分(100分)切りを達成しました。
本気で記録を伸ばすためには、まず基本となる理論を知っておくことが必要です。「ダニエルズのランニングフォーミュラ」は、あらゆる指導者、コーチにも採用されている理論です。
本記事ではダニエルズ理論のエッセンスを詰め込んで解説します。
興味がある方は是非、一度は読んでおくことをおすすめします。
Aさんの身体ステータス
1時間46分台の時と、1時間40分切りを達成した時を比較する形で、身体ステータスを示します。参考にしてみてください。
項目 | 1時間39分38秒 (1時間40分切り) | 1時間46分10秒 |
---|---|---|
年齢 | 56歳 | 45歳 |
身長 | 168cm | 168cm |
体重(レース当日の朝食前) | 57kg | 58kg |
BMI指数 | 20.2 | 20.6 |
月間走行距離 | 200km | 150~200km |
体重等はそこまで変わらないことが分かります。年齢が10歳も加齢したにもかかわらず、自己ベスト記録を大幅に伸ばすことができました。
どの程度の練習量が必要か?:週3~4回・150~200km/月程度
ランニングを継続して行うことで、長距離を走るための能力が発達していきます。
ランニングの練習によって、心臓の筋肉や毛細血管が徐々に発達します。記録を向上させるためには、トレーニングを継続的に積み重ねていくことが必要です。
トレーニング理論の前提となる重要な考え方を示します。
- 練習にはメリハリをつける(ハード&イージーの原則)
- トータルで走る距離が同じであっても、1回で走る距離が違えば得られる効果が異なる
練習にメリハリをつける
練習の基本は、高い負荷の練習(ハード)と低い負荷の練習(イージー)を交互に行っていくことです。
トレーニング効果得るためには、高い負荷をかけた後にちゃんと回復することが必要です。
常に高い負荷のトレーニングばかり行っていると、疲労によって適切な設定ペースでトレーニングが行えなかったり、怪我をしてしまう可能性があります。
走る頻度と走行距離の考え方
例えば1週間で合計30km走るとして1週間で均等に走ると一回当たり4~5kmを走ることになります。一方、1週間で3回走ると決めていた場合、1回当たり10kmの距離を走る必要があります。
もし、練習の目的が「脂質を使って走れる体にしたい」である場合、後者の方(一回当たり10km、週3回)がトレーニング効果が高い、ということが示されています。
練習頻度も重要です。1週間で30km走るからと言って、1回で30km走ってしまうと、1週間に1回しか練習しないことになります。
継続的なトレーニングを行っている場合、体の機能を落とさない最大の休養期間は5日と言われています。
そうなると、1週間で3回くらいは走った方がよさそうだ、となります。
練習で走るべき距離には正解がありません。Aさんの例では、1週間に3回から5回、1回当たり10km程度のランニングを行っていました。
怪我対策で走行距離に上限を設定する
練習をする上で気を付けなければならないことが、怪我です。一回で長い距離を走ることは、効果としては非常に高いのですが、その分怪我のリスクが上昇します。
ダニエルズのランニングフォーミュラでは、ジョギングペースにおける一回当たりの走行上限距離を週間走行距離の25~30%と推奨しています。
一週間当たり50km程度(月間200km)走っている方であれば、一回当たりの上限距離は12.5~15.0kmということになります。
一回でもっと長い距離が走りたい!と思っている方は、まず、普段から走る距離を平均的に徐々に伸ばしていくことが優先です。
1時間40分切りを達成するための練習量には個人差があります。過去の運動歴や長距離種目への適正等で変わります。
周囲のランナーを見ていると、おおよそ目安となるのは1か月あたり150kmから200kmくらいは走る必要があるのではないかと考えています。
女性の場合はさらに多く走らないと、ハーフマラソンで1時間40分は達成できないかもしれません。
体重の影響は?食事制限は必要なのか?
体重(体脂肪)はマラソンの記録に大きく左右します。
一般的に「体脂肪を1キロ落とすと、フルマラソンで3分タイムが速くなる」と言われています。ハーフマラソンに換算すると、体重1キロで1分30秒になりますね。
体重は、走る距離を伸ばしたり、走る頻度を上げたりすることで、体重を自然に低下させていくことが望ましいです。
走り始めることで必要なエネルギーが増えているのに、食べる量を減らしてしまうと、回復に十分な栄養が得られなくなってしまうので安易な減量は禁物です。
体重を落とそうと思っている方は、食べる量は変えないで、走る距離を徐々に増やしていくことをおすすめします。
定期的に体重測定しましょう。毎回測定するタイミングを合わせることで、体重を日毎に比較できるようにします。おすすめの測定タイミングは起床直後です。
参考に、エリートランナーの体重と記録の傾向を次の記事でまとめています。
具体的練習法:記録更新の最重要ポイント「LT走」の導入
結論から言います。Aさんが50歳中盤で再び自己ベストを大きく更新できた要因がLT走の導入です。
「LT=Lactate Threshold(乳酸性作業閾値)」は、「低い運動強度までは血液中の乳酸値上昇が緩やかなのですが、ある一定強度を超えると血中の乳酸値が急激に高まってくる値」のことです。
Aさんは今回、強度等の意識をせず練習をしていた40歳台時と比較し、強度を意識した「LT走」を取り入れ、大幅に記録を伸ばすことができています。
既にLT走を導入しているけどなかなか記録が伸びない、というかたは、LT走のやり方・強度設定が適切ではない可能性があります。
LT走について次の記事で詳細に解説していますので、是非ご参照ください。
1週間の練習メニュー例
参考に、1週間の練習メニュー例を紹介します。
- 月曜:OFF
- 火曜:ジョギング 7km
- 水曜:LT走(20分間) Total10km
- 木曜:OFF
- 金曜:ジョギング 7km
- 土曜:ロングジョグ 12~15km
- 日曜:ジョギング 7km
基本的に、週1回のLT走+ロングジョグ、残りはジョギング、といったスケジュールで行います。1時間40分が目標であれば一年間同じメニューで構いません。
練習のペース設定方法
ハーフマラソンで1時間40分を切る方の、練習での設定ペースは下記となります。
- ジョギング:5:30~6:00/km
- LT走:4:38/km
練習でのペース設定は、その時の「自己ベスト」から計算します。例え1時間40分を目指していたとしても、現状の実力に見合った設定ペースで練習をこなしていくようにしましょう。
同じペースでもきつさが軽減されてきたら、少しペースを上げていきましょう。同じペースで2~4週間程度は維持してから次のレベルに挑戦するようにします。
基本的な練習は「ジョギング」
ハーフマラソンのペースは、人にとって走り続けることがかなり苦しいペースであり、練習でそのペースを継続することは困難です。
普段の基本的な練習はジョギングです。実は、プロのマラソンランナーでさえも、練習の80%がジョギングです。
ダニエルズ理論では、効果的なジョギングのペースとして「軽く他人と話せるくらいのペース」が推奨されています。
「はぁはぁぜぇぜぇ」するようなペースでジョギングする必要はありません。心拍数で言うと、最大心拍数の70%程度です。
最大心拍数は、簡易的に、「220ー年齢」で算出されます。例えば20歳の方ですと、最大心拍数が200bpm、ジョギング時の適切な心拍数が140bpmということになります。
あくまでこれは一例ですので、「これくらいなら軽く話しながら走れるな」というペースを見つけましょう。
ジョギングに推奨ペースがあることには根拠があります。心臓の収縮量が最大となる心拍数がおおよそ最大心拍数の60%から70%程度です。
心適切なきつさに保つことで、心臓の筋肉強化が最も効率よくなる、と言えます。
また、人間のエネルギー産生経路は主に2通りあります。一つは、糖質を利用してエネルギーを作り出していく経路、もう一つが、脂質を利用してエネルギーを作り出す経路です。
快適なきつさで運動している範囲では脂質を使う能力を鍛えることができます。
マラソン等の長い距離を速く走るためには、できるだけ体の糖を使わず脂質を使うように適応していく必要があります。ランニングを継続していると、徐々に脂質を使える体に適応します。
ジョギングで得られる効果については別の記事でまとめていますのでご参照ください。
LT走
Aさんが自己ベストを更新できた最重要ポイントが、LT走の導入です。
LT走は、VDOT Calculatorで適正なペースを計算し「Tペース」で20分間以上走り続けるトレーニングです。
VDOT Calculatorの使い方は次の記事を参考にしてください。ジョギング(=Easyペース)での適正ペースも計算することができます。
LT走を週1回~2回実施します。
重要なことは、「タイムトライアルではない」ということです。LT走を終える時の感覚は、「後1kmくらいならギリギリ走れるかも」という感覚です。
怪我してしまったら?
スポーツに、真剣に取り組んでいると「怪我」は付き物です。私自身も学生時代から、ハムストリングスの怪我に悩まされてきました。
「怪我」を予防するためには「セルフケア」が重要です。別の記事で私自身がハムストリングス上部を痛めた時に行っていたケアを紹介していますので是非見てください。
光学心拍計付きGPSウォッチでトレーニング効率を上げる
今では技術が進歩し、世の中便利なものに溢れています。ランニングを本格的にするにあたってこれだけは絶対に持っていた方がいい、というのが光学心拍計付きGPSウォッチです。
GPSウォッチとは、衛星と通信を行い現在位置を時計自体が取れるものになります。例えばGPSを起動させ家の前から走って、戻ってくると、その走った経路や距離が後からわかります。
光学心拍計は、時計として腕にはめているだけで心拍数が測定できます。
光学心拍計付きGPSウォッチがあれば、走っている時の心拍数を数値で見ることができ、走っているペースが適切かどうか判断する材料になります。
おすすめのメーカーはGarmin(ガーミン)です。ランニングウォッチの中で一番人気です。心拍とGPS機能がついているため少々高額ですが、その分の価値は十分にあります。
私自身が使用しているのはForerunner 255です。Musicモデルは、スマホ等を携帯していなくても、イヤホンと時計をBluetoothで接続し音楽を聴きながらランニングをすることができます。
ランニングにシューズにこだわるとモチベーションもアップ
自分の好きなランニングシューズを揃えることで、ランニングをするモチベーションにもつながります。
ランニング界では、速く走るためには厚底カーボンシューズが一般的となってきています。
ハーフマラソン1時間40分切りのレベルであっても、厚底カーボンシューズを使用することでほとんどの場合記録向上が望めます。
ジョギングであっても、衝撃吸収性やフィット感はシューズによる違いが大きく、「安ければいい」といったものではありません。
自分自身で着用し、おすすめランニングシューズをまとめていますので是非ご参照ください。
マラソンで記録を出すことにおいて重要なことが、練習を継続して行いコツコツと積み上げることです。体の機能が長距離を走るために適応するのにはどうしても時間がかかります。
特に、社会人になってから初めて運動する、というような方であればなおさらです。
ここまでハーフマラソンで1時間40分を切る方法を紹介してきましたが、目標を達成できるかどうかは、あなたの情熱にかかっています。
どれだけ真剣にランニングと向き合えるかです。自分ができる努力をして目標を達成しましょう!
参考文献:
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