※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。改訂履歴は記事の最後に記載しています。
【10km(キロ) 40分切り練習方法】初心者でも目標へ到達するメニューを提案
- 10kmで40分切りはどのくらいのレベルなの?
- 10kmで40分を切るための練習メニューが知りたい
- 初心者でも達成できるの?
10kmで40分を切ろうと思っている方の中には、初心者の方から、将来的にはフルマラソンでサブスリーを達成したいと思っているような中級者の方まで様々かと思います。
10kmで40分を切るためには、ある程度の練習量が必要です。その練習方法が分からない方も多いと思います。
私自身は社会人からランニングを始めた市民ランナーです。月500km程走り、競技志向でランニングに取り組んでいます。
自己ベストはハーフマラソンで1時間12分29秒程度です。
ここでは、10kmで40分を達成するための練習法を初心者でも理解でき、実践できるように説明します。
私自身は「ダニエルズのランニング・フォーミュラ(本)」を参考に練習メニューを組み、記録を向上させることができました。
しかし、本を読んだだけではわからないことも多いと感じます。
例えば、市民ランナーは仕事や家庭との両立が必要です。時間が無い中、記録向上に大事なことへ優先的に取り組んでいく必要があります。
本記事を読めば、10kmマラソンで40分を切るために必要な考え方を理解し、優先的に取り組まなければならないこと、40分切りを達成するまでの練習法が分かります。
- 10kmで40分を切るレベルは市民ランナーの上位6.0%
- 月間走行距離は200~300km程度が目安(過去の経歴や才能によって個人差がある)
- トレーニングの優先度:LT走 < VO2maxインターバル < ロングラン
10kmで40分を切るレベル:市民ランナーの上位6.0%
この記事を読んでいるあなたは、ランニングに本格的に取り組んでおり、もっと上の目標を達成したいと思っている方だと思います。
参考程度ですが、2022年公認10kmマラソン大会で集計したところ10kmで40分を切ると市民ランナーの上位約6.0%以内です。「記録を達成したいという気持ち」と「継続的な努力」が必要です。
学生時代に陸上歴や運動歴があれば、ジョギングだけ継続すれば達成できる可能性はあります。
しかし、社会人からランニングを始めた方だとすると、ある程度日常の時間をランニングのトレーニングに割かなければ達成できないレベルです。
10kmで40分を切るために、才能は必要ないと考えます。努力だけで達成できる可能性が高い記録と言えます。
ただ、運動歴や基礎体力によって、目標に到達できるまでの時間は個人差があります。本気で目標達成したい方は、本記事を読み進めていただきたいと思います。
ランニングには多くの人に当てはまるトレーニング理論がある
ランニングトレーニングは、個人ごとに最適な方法が異なりますが、その中でも多くの人に対して当てはまるトレーニング理論があります。
私自身は「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」に出会ってから、劇的に記録向上を達成することができました。
ダニエルズ理論では、怪我のリスクを抑えたトレーニング手法が紹介されているため、怪我の頻度も減りました。
他には「リディアードのランニング・トレーニング」があります。青山学院大学の駅伝部が採用している理論です。
これらはある程度ボリュームのある本ですが、今後も継続的に目標を上げていきたいと思うのであれば、一回は読んでおいた方が良い内容となっています。
本記事では、ダニエルズ理論やリディアード理論、その他世界のエリートランナーのトレーニング例、私自身の実体験を元にしてエッセンスを説明するように心がけています。
どの程度の練習量が必要か?:月間200~300km
月間走行距離に正解はありません。どのくらい練習すれば到達できるかは個人差があります。
参考のため私自身の例や友人の例を紹介します。40分を切ったメンバーは、1か月あたり200km~300km程度は走っているようです。1週間当たり5回程度の練習頻度です。
ただ、上記の走行距離は、フルマラソンをメインとしているランナーの走行距離です。10kmのみに出場する場合、走行距離はもっと短くても10km40分切りは達成できると考えています。
走行距離のうち、約80%がジョギングペースです。
ジョギングはランニングの基本となる練習です。ジョギングをおろそかにしてしまうと、記録が伸びないばかりか、高い強度の練習を行った時に怪我をしやすくなってしまいます。
フルマラソンに対しては走行距離のボリュームの重要性が高いですが、10kmのレースが目標の場合、走行距離のボリュームの重要性が下がります。
走る距離を増やすよりも、ペース走(LT走)やインターバル走の方が、優先度としては高いと考えています。
普段の生活で気を付けることは?:食事、睡眠、セルフケア
私が普段意識していることは次の3点のみです。
- 規則正しい食生活と睡眠(※細かい栄養計算等は不要)
- ストレッチ、ストレッチポールによる体のケア
- 体重測定
食生活は、炭水化物、タンパク質、脂質をバランスよくとることを意識していました。
ただ、好きなものは好きなように食べるようにしていました。走っている距離もある程度多いので、少しくらい高カロリーなものを食べても大丈夫だ!と自分自身に言い聞かせていました。
睡眠は最低でも7時間は確保することが望ましいです。
体のケアも重要です。怪我無く練習が継続できるようセルフケアは習慣化するようにしました。
セルフケアで脚の痛み(ハムストリングス上部付け根)から回復した経験があります。セルフケアとしては、「超音波治療器」と「ストレッチポール」を使っています。
体重測定は毎日行っています。定期的に測定することをお勧めします。
無理な減量をするためではなく、体重を測定することによって、水分は足りているのか?食事が少なすぎないか?などを把握する指標にしていました。
体重はレースの記録とも密接な関係があります。基本的には体重が軽い方が有利です。
毎回測定するタイミングを合わせることで、体重を日毎に比較できるようにします。おすすめの測定タイミングは起床直後です。
エリートランナーの記録と体重の関係性を調査した記事を作っています。体重の適正を知りたい方、体重の目標を決めたい方は是非ご参照ください。
10km40分切りをするのに重要な練習
「これをやっておけば、間違いなく10kmで40分を切ることができる」といった練習法は存在しません。
ただ、10kmで記録を出すために重要なトレーニングを提案することは可能です。以下の通りです。
- 低強度なジョギング
- LT走
- VO2maxインターバル走
- ロングラン
- ウィンドスプリント
社会人からランニングを始めた方の場合、ジョギングだけで40分切りを達成することは難しいと考えています。
10kmで40分を切るためには、1km当たり4:00/kmで10kmを走りきる必要があります。そのためには、ジョギングだけでは、鍛えることが難しい要素が必要です。
以下では、重要なトレーニングについてそれぞれ解説していきます。
ジョギング
トレーニングの基本は低強度なジョギングです。いきなり強度が高いトレーニングを行うと怪我をします。
ケガをしない体づくりのために、低強度ジョギングは必須のトレーニングです。
体づくり以外にも、ジョギングには様々な効果があります。ジョギングの適切な実施方法は次の記事を参考にしてください。
LT走(ペース走)
運動強度を高めていくと、血中乳酸濃度が上昇していきます。ある運動強度を超えたところで、急激に乳酸値が上昇する閾値があります。その閾値を乳酸性作業閾値(LT値)と呼びます。
そのLT値付近で走るトレーニングを「LT走(閾値走)」と呼んでいます。ダニエルズのランニング・フォーミュラではTペース走と呼ばれるトレーニングです。
LT走を走り終えた時の感覚は、「後1kmから2kmくらいは続けて走れる」という感覚です。
走り終わった後に、膝に手をつくくらいきつい状態になってしまったらLTペースよりも速すぎる可能性が高く、ペースとしては不適切です。
少し余裕を持って走り切れるペースで行いましょう。
LT走は練習の再現性が重要だと考えています。毎回同じ距離を同じ設定で走ることで、自分の実力や調子を測ることができるからです。
LT走はきつい練習です。できるだけ平坦で信号がなく、安全が確保できるコースを見つけて行います。
次の記事でLT走の実施方法について具体的に解説しています。
VO2maxインターバル走
10kmで記録を向上させるためには、LT値を高めるだけでは足りない要素があります。「最大酸素摂取量(VO2max)」です。
最大酸素摂取量は、運動中における体内での酸素取り込み能力の最大値を示します。
最大酸素摂取量の向上には、高い強度で行うインターバルトレーニングが最適です。
インターバルトレーニングの具体的練習法としては次となります。
- 走る距離:400~1200mを数本
- レスト:1回走る毎に、走った時間と同じくらいかそれ以下をジョギング
さらに具体的に示すと、「1000m×5本 レスト2分30秒ジョギング」等となります。走るペースは5000mレースペース程度です。
次の記事でインターバルトレーニングの実施方法について具体的に解説しています。
ロングラン
目標レースが10kmであっても、ロングランは重要なトレーニングのうちの一つです。
走るペースはEasy~Moderateペースで行い、10km レースが目標である場合は走る時間は90分程度で十分です。
10kmでは、トレーニングにおける走行ボリュームの重要性が下がりますので、ロングランの重要性も同様に下がります。
ロングランで得られる効果については、次の記事を参考にしてください。
ウィンドスプリント
ウィンドスプリントは別名「流し」と呼びます。20秒前後の軽いダッシュを数本行います。本数間は1分程度の本当にゆっくりなジョギング、もしくは歩きで休憩します。
ウィンドスプリントをトレーニングに取り入れることによって、速筋繊維への刺激や高強度トレーニング向けた怪我予防効果があります。
ウィンドスプリントについては次の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
具体的なメニュー提案
以下では、10kmで40分切りを目指すための具体的なメニューを提案します。
目標レースに向けて3ステップに分けたスケジュールです。
これまで継続的にトレーニングに取り組んできた場合は第1ステップを飛ばしても構いません。
第1ステップ:基礎構築
目標レースに向けてまずは基礎構築をします。この期間での狙いは以下の通りです。
- 走行ボリュームを増やして基礎体力をつける(疲れにくい体づくり)
- 怪我防止のための脚づくり
- ジョギングによる基礎構築
第1ステップのトレーニングメニュー例は以下の通りです。
- 月;OFF
- 火;Easyジョギング + ウィンドスプリント
- 水;LTペース走
- 木;Easyジョギング
- 金;OFF
- 土;Easyジョギング + ウィンドスプリント
- 日;ロングジョグ
基礎構築期間では、第2ステップに向けて怪我をしないための脚づくり、走行ボリューム増やすことで多くの練習ボリュームに耐えれる体を作ります。
第2ステップ:鍛錬期(有酸素パワー)
基礎構築の次は、鍛錬期に入ります。重要なトレーニングであるLT走とVO2maxインターバル走を行います。
第2ステップのトレーニングメニュー例は以下の通りです。
- 月;OFF
- 火;Easyジョギング + ウィンドスプリント
- 水;LTペース走
- 木;Easyジョギング
- 金;OFF
- 土;インターバル走
- 日;Easyロングジョグ
LT走とインターバル走で体に負荷がかかりますので、ロングジョグのペースは遅めのEasyペースに設定します。
第2ステップが最もきつい期間です。それと同時に、最も走力が伸びる期間でもあります。
第1ステップで脚づくりが進んでいれば、LT走やインターバル走を行っても怪我しない脚をすでに手に入れていると思いますが、いきなり第2ステップに入ってしまうと、怪我をしてしまう可能性がありますので注意が必要です。
第3ステップ:コンディショニング
最後の段階はコンディショニングです。
10kmレースに近いペースでのトレーニングを取り入れていきます。
- 月;OFF
- 火;Easyジョギング
- 水;CV インターバル
- 木;Easyジョギング
- 金;OFF
- 土;Easy + 200m * 5
- 日;Moderate ロングラン
CVインターバルトレーニングは、10kmのレースペースで行うインターバルです。VO2maxインターバルトレーニングよりも走るペースが少し遅い分、走る本数を多くすることができます。
CVインターバルについての解説は次の記事で詳細に行っていますので、参考にしてください。
1週間の練習スケジュール
私自身が10kmで40分を切ったとき、1週間単位ではこのような練習をしていました。
- 月;OFF
- 火;ジョギング + 流し
- 水;ポイント練-1 LTペース走
- 木;OFF
- 金;ジョギング + 流し
- 土;ジョギング
- 日;ポイント練-2 インターバル走
私自身が10kmで40分を切った時は、時期を分けて段階的にトレーニングを行うことや、ロングランの重要性を知らない状態だったので、ひたすらこのスケジュールでトレーニングを行っていました。
これでも、走力は順調に伸びていきましたので、メニューを考えていくのが難しい方は、まずはこのトレーニングメニューを参考に練習を継続してみるといいと思います。
トレーニングでの設定ペースの決め方
10kmを40分切りで走れる方の、トレーニングでの設定ペースを紹介します
- LT走(5km) 4:10/km
- インターバル走 1000m×5本 3:50/km レスト3分(ジョギング)
上記は「最終的にこれだけ出来ればいい」という目安です。
現時点で10kmを40分切れる力が無い方が大半だと思います。実際のトレーニングは上記の設定ペースよりも遅くしたペースから開始します。設定ペースは直近の自己ベスト記録を使ってVDOT Calculatorで計算します。
ペース走やインターバル走のペースは、今の実力に見合ったペースから始めるようにします。
ガーミンのワークアウト機能を使う
あくまでもガーミンのランニングウォッチを使っている方限定なのですが、ペース走やインターバル走を行うときには「ワークアウト機能」を使うと便利です。
あらかじめ、走る区間の距離や時間と、休息区間の距離や時間を設定しておくことで、自動でラップを取ってくれる機能です。
ガーミンのワークアウト設定方法は別の記事で作成していますので、参考にしてみてください。
レース当日の食事、ペース設定
レース当日の食事と、ペース設定について解説します。
食事と栄養
食事は少なくとも、レースの3時間前までには済ませておきましょう。食事内容は炭水化物中心で消化の良いものにしておきます。
10kmでは、エネルギー切れの心配はないため、そこまで沢山栄養を取っておく必要はありません(体重が軽いほうが有利と言われています)。
レース直前も、水分以外は特に気にする必要はないと考えています。
ペース設定
基本的には目標タイムを元にイーブンで走ることを心掛けましょう。後半遅くなってもいいように前半に貯金を作って・・・と考えていると、後半相当きつくなって失速してしまう可能性が高いです。
40分切りを狙うレベルであれば、目標タイムを等分し、同じペースで刻んでいくことが最も良いと考えています(長距離の基本です)。
記録向上に欠かせないアイテム
上記で説明してきた練習法をスムーズに行うためであったり、自分自身のランニングフォームを分析したりするためには、そのためのアイテム(ランニングギヤ)が必要になります。
私自身が、自分の走りを客観的に分析したり、快適にトレーニングを行うために必要だと思ったアイテムを別の記事でまとめています。
是非、参考にしてみてください。
10kmで40分を切ることは簡単ではありません。しかし、努力すれば必ず達成できるレベルだと考えています。各練習に目的をもって取り組むようにしていきましょう!
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