こんにちは。管理人のsyu_hibiです。
今回は【CVインターバルトレーニング】について解説しながら、比較的遅いペースのインターバルトレーニングでも効果がある理由について紹介していきたいと思います。
皆さんの中で「インターバルトレーニングの効果が大きいのは分かっているけど、トレーニングが辛くて苦手」と感じている人もいるのではないでしょうか。
私自身も、インターバルトレーニングはとても辛いため、練習前日は憂鬱になります。
そんな方にお勧めなインターバルトレーニングが、CV(Critical Velocity)インターバルトレーニングです。
本記事では、比較的遅いペースでのインターバルトレーニングであるCVインターバルでも、十分に効果があるということについて紹介・解説していきたいと思います。
1.CVインターバルとは?
CVとはCritical Velocityの略になります。設定ペースはおよそ10kmのレースペースから、1km当たり3~4秒遅くしたペースとなります。最近、市民ランナーの間で人気が出てきているトレーニングのうちの一つです。
VDOT Caclculatorで算出する場合は、Equivalent(=同等)の10kmから15kmのレースペース辺りが参考になるかと思います(図1)。

※VDOT計算機の使い方が分からない方は次の記事を参考にしてください。
エリートランナーで練習公開をしている吉田祐也選手や、竹ノ内佳樹選手も、CVインターバルトレーニングを取り入れているようです。
LTペースがおよそ88%~92%HRmax、インターバルペースが95~100%HRmaxであるのに対し、CVペースは92~95%HRmaxとなるため、ちょうどLTペースとインターバルペースの中間に位置します。
※HRmaxは最大心拍数を表します。例えば、最大心拍数が200の場合、90%HRmaxは180bpmとなります。トレーニング強度の表し方は種々あります。詳しくは次の記事で解説しています。
オーソドックスなCVインターバルトレーニングの特徴としては、一回当たりの疾走距離は1000m以上と長めであり、レスト時間は短めに設定されることです。また、繰り返し本数は8~10本程度と多めです。
CVインターバルでトレーニング効果を得たい場合は、疾走速度とレストの設定、繰り返し本数が重要です。後ほど解説していきます。
2.CVインターバルに期待できる効果
CVインターバルに期待できる効果を考察していきます。
■最大酸素摂取量向上
CVインターバルは、インターバルトレーニングの一種であることから、最大酸素摂取量の向上を見込むことができます。
ただし、通常のインターバル(95%HRmax以上で行うトレーニング)よりも疾走速度を落としているため、最大酸素摂取量向上という狙いに対しては、効率が落ちることが予想されますが、疾走速度とレストをちゃんとコントロールできれば、高い効果が得られることが分かっています。
インターバルトレーニングの効果を最大化する方法の記事で論文を紹介させていただきました内容を再掲します。
疾走時の平均%HRmaxを88%にして16分×4セットのトレーニングを行った場合(グループB)と、平均%HRmaxを90%にして8分×4セットのトレーニングを行った場合(グループC)で、トレーニングによる最大酸素摂取量の上昇を比較したところ、グループCの方が効果が高かったという結果が出ています。
平均%HRmaxを94%にして4分×4セットのトレーニングを行った場合(グループD)もありましたが、グループCの方が、VO2maxが有意に上昇していたことが分かりました。
これらの事実から、疾走時のHRmaxが90%以上に到達していれば、最大酸素摂取量向上の効果が十分に得られると言えます。Critical Velocityの由来はこの事実にあるのかもしれません。
他に重要なのが、繰り返し本数、つまりTotalのボリュームです。CVインターバルでは、疾走速度を落とし、疾走時の強度が落ちている分、95%HRmax以上で行うインターバルトレーニングよりも多くの本数をこなすことができます。
95~100%HRmaxで疾走するインターバルと比較し、92%~95%VO2maxと疾走速度を落とす代わりに、繰り返す本数を多くして効果を得る、という点も重要なポイントです。
レストについては、長くしすぎると疾走中に心拍数が上昇しきらない可能性があります。従ってCVインターバルでは、レストを極力短くして行うべきと考えられます。
これらの事から、CVインターバル走では一回で走る距離と設定ペース、繰り返し本数とレストが非常に重要なのです。
設定ペース等を細かくデザインしなければならない点で、CVインターバルは少し難度の高いトレーニングだと言えます。
■乳酸性作業閾値向上
CVインターバルには、乳酸性作業閾値向上(LT値向上)の効果もあると考えられます。
疾走ペースを落としている分、レスト区間が短くなるため、常に高い血中乳酸濃度で走り続けることになります。
一例として、私自身のCVインターバルトレーニング実施時の心拍数推移を掲載します。

本例は、1000m×8(レスト200mジョグ)を行った際の心拍数推移です(ハートレートセンサーを使用しているため、心拍数は正確だと考えています)。
レスト区間を含めて、80%HRmax以上を常に維持しながら疾走-レストを繰り返している様子が分かります。結果的に、急走区間・レスト区間、総ての区間においてLTへの刺激が入り続けていると考えらえます。
従って、CVインターバルでは、最大酸素摂取量への刺激と同時に、LT値向上も見込める、万能なトレーニングであると言えます。
CVインターバルトレーニングで最大酸素摂取量の向上を得るには下記が重要
・HRmax92%以上を目指す(およそ10kmのレースペース)
・一回当たりの走行距離は1000m以上
・繰り返し本数を多めにする
・レストは極力短めにする
→以上の条件を満たすと、乳酸性作業閾値向上の効果も期待できる
3.その他のメリット:練習のこなしやすさ
2.で説明させていただいた効果のほかに、重要な点として練習のこなしやすさが挙げられます。
95%HRmax以上で行うインターバルトレーニングは、脚・呼吸ともに非常に辛くなります。それに対し、CVインターバルトレーニングは、どちらかというとLTペースに近いため、主観的なきつさが多少軽減されます。
特に実体験に基づいた話をすると、95%VO2max以上のインターバルは最初の1,2本ですでに諦めることもあるくらい、きついものですが、CVインターバルはとりあえず数本はこなせる感覚があります。疾走中も、「辛いが、何とか我慢できる」感覚です。
持久性トレーニングにおいて何よりも重要なことが、長期的に練習を継続して行うことです。毎回確実に練習をやり切り、長い目見て効果を上げていくことが重要です。
4.目的によってはCVインターバルが適さない
ここまでで、CVインターバルトレーニングの万能性を理解いただけたかな、と思います。しかし、狙っている目的によってはCVインターバルトレーニングが適さない場合もあると考えています。
それは、最大スピード(もしくは最大スピードに近い速度を維持する力)を向上させたい場合です。
最大スピード持続力を向上させたい場合は、速筋繊維を刺激し、解糖系を鍛えることが必要です。速筋繊維への刺激を入れることで、中間型速筋繊維への変化を促し、速い速度を長い時間維持できるようにすることが必要です。
CVインターバルでは疾走速度を95%HRmax以下に落としているため、速筋繊維への刺激が低下すると考えられます(まったく動員されないというわけではありません)。
速筋繊維への刺激を確保したい場合は、95%HRmax以上で行うインターバルトレーニングや、レペティショントレーニングが有効です。
どんなトレーニングにも、必ず狙いがあります。今、自分自身に足りない要素をしっかり見極めて、必要だと思うトレーニングを行っていきましょう。
参考文献:
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