【インターバルトレーニング】効果的に最大酸素摂取量・LT値を向上させる方法論

  • インターバルトレーニングって何?
  • インターバルトレーニングの目的は?
  • インターバルトレーニングのメニュー作成方法が分からない

 インターバルの実施方法には様々なバリエーションがあり、「効果的に行うにはどのようなトレーニング内容にすべきなのか?」と悩む市民ランナーの方も多いと思います。

 私は社会人から本格的にランニングを始めた市民ランナーです。月500km程度走っており、競技志向で取り組んでいます。

 ハーフマラソンでの自己ベストが1時間12分29秒程度の実力です。

 ここでは、インターバルトレーニングで効率的に最大酸素摂取量とLT値を改善する手法について紹介します。

 興味深い論文ダニエルズ理論運動生理学を参考にして、インターバルトレーニングの効果を最大化するにはどうすればいいかについての考察をしました。

 本記事を読めば、インターバルトレーニングの目的を理解することができ自分に合ったメニューを組み立てることができるようになります。

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1.インターバルトレーニング(インターバル走)とは?

 インターバルトレーニングとは、急走区間(速いスピードで走る区間)緩走区間(ゆっくりなスピードで走る区間)を繰り返すトレーニングです。

 インターバルトレーニングを行う際には、下記の設定をする必要があります。

  • 急走区間のスピード・距離(時間)
  • 緩走区間のスピード・距離(時間)
  • 緩走区間の実施方法(走る・歩く・その場で休憩する)

 これらの設定方法によって、インターバルトレーニングで得られる効果は大きく異なります

 本記事では、生理学的な観点から考察し、「どんな設定にすればどんな効果を得ることができるのか」をできるだけわかりやすく記述していきます。

2.なぜ「インターバル」にするのか?

 長距離種目のレースでは、5000m、10000m、ハーフマラソン等、休憩を挟まずに長い距離を走り続ける必要があります。

 一方インターバルトレーニングでは、比較的短めではあるものの、緩走区間という休憩を挟みます

 レースで記録を出すためであれば、「レースと同じ距離を同じペースで走り続けるトレーニング」を行った方が、効率がよさそうです。

 しかし、実際にトレーニングを行っていると、トレーニングではレースと同じようには走れないことを実感します。

 誰しもがレースに向けて、「調整」を行います。従って、レースでは基本的に「練習時以上の力」を発揮することができます。

 レースでは、力を出し切ることになるため、途中非常に苦しくなることもあり、体への負担も大きいです。

 普段の練習から、レースと同じような負担を体に与え続けると、そもそも練習をこなせなかったり、しまいには怪我してしまう、といった結果になります。

 しかし、練習はレースで記録を出すために行うものであるため、レースに近い強度、もしくはそれ以上で行う必要があります。そこで導入されるのがインターバルトレーニングです。

 休憩を挟みながら行うインターバルトレーニングでは、急走区間では高い強度の負荷を体にかけます

 休憩を挟みながら、複数回こなすことによって、練習全体として体に負荷をかけていくようなトレーニングになります。

 走る距離を分割することで、体に過度な負荷がかかることを避けながらも、狙った効果を得ることがインターバルトレーニングの存在理由です。

重要ポイント

インターバルの目的レースに近い、もしくはそれ以上の強度の負荷を間欠的に身体に与え、練習全体として体に負荷をかけていくこと

3.インターバルの目的

 インターバルトレーニングの目的は、大きく分けて3つに分類されます。最大酸素摂取量の向上、乳酸性作業閾値改善、解糖系強化の3つです。

■最大酸素摂取量向上

 インターバルの目的の一つ目は、「最大酸素摂取量」の向上です。

 最大酸素摂取量とは、「1分間に体重1kgあたり取り込むことができる酸素の量(ml/kg/分)」を表します。

 「VO2max」、「VDOT(ダニエルズ理論で用いられている単語。V Dot O2maxの略)」と表記されます。

 VO2maxは、下記の生理学的決定要因で決まると言われています。

  • 心拍出量(SV):心拍1回当たりの最大血液拍出量
  • 心拍数(HR)
  • 動静脈酸素較差(a-vDO2max):詳細後述

※動静脈酸素較差:
心臓から送り出される血液(=動脈)に含まれる酸素量と、各組織から心臓に戻ってくる血液(=静脈)に含まれる酸素量の差を表します。

 それぞれ、持久性パフォーマンスに影響がある要素ですが、一つ一つを別々に評価できないため、総合的な能力として「最大酸素摂取量」として定量化されています。

 「最大酸素摂取量」は、長距離種目の記録と相関が強いことが分かっています。

 自分の記録から「最大酸素摂取量」を逆算し現在の実力における適切なトレーニング設定ペースを割り出すことができます。

 最大酸素摂取量のようなものさしがあるおかげで、マラソントレーニングにおける適切な練習強度を決めることができるため、最大酸素摂取量はとても重要な値です。

■乳酸性作業閾値改善

 インターバルトレーニングは乳酸性作業閾値向上を目的として行われるパターンがあります。

 ダニエルズのランニング・フォーミュラでは「クルーズインターバル」と紹介されているトレーニング方法です。

 クルーズインターバル走は、急走区間をLTペースで走り、緩走区間をできるだけ短くして行うトレーニング手法です。

 詳しい解説は下記関連記事をご参照ください。

■解糖系強化

 比較的短めの距離で行われるショートインターバルトレーニングでは、解糖系を鍛えることができます

 解糖系とは、血中や筋肉中に存在するグルコース、グリコーゲンからピルビン酸に変化する過程を指します。

 解糖系によるエネルギー産生は、運動を開始してから20~60秒の間で活発になります。

 急走区間が短いショートインターバルでは、最大酸素摂取量への刺激が少なくなり、解糖系への刺激が増えることになります。

4.インターバルトレーニングの最適な方法の考察

 3.インターバルの目的で説明した通り、インターバルトレーニングはそのやり方によって得られる効果が異なります。

 本記事では、最大酸素摂取量を向上させることに着目して、インターバルトレーニングの効果的な方法を考察します。

 再び示しますが、インターバルは下記の要素で構成されます。

  • 急走区間のスピード・距離(時間)
  • 緩走区間のスピード・距離(時間)
  • 緩走区間の実施方法(走る・歩く・その場で休憩する)

■急走区間のスピード・距離(時間)

 ダニエルズのランニングフォーミュラでは、「インターバルトレーニング中は、最大心拍数の95~100%に到達する」との記載があります。

 最大心拍数は、およそ「220 – 年齢」でおおよそ計算できます。30歳の方であれば最大心拍数は190です。

最大心拍数は個人差があります。元芸人でマラソンランナーの猫ひろしさんは、40歳を超えていますが、最大心拍数は200を超えています。

 ダニエルズ理論において、インターバルペースはIペースと呼ばれます。

 Iペースを求めるためには、VDOT Calculatorを使用します。

■急走区間の距離(時間)

 距離(時間)についてですが、疾走し始めてから最大酸素摂取量に到達するまでには約2分間の時間がかかる、と言われています。

 また、本数を重ねるごとに、到達までの時間が短くなる、との記載もあります。

 一例として、私自身が行った1000m*7本(リカバリー2minジョグ)での心拍数推移を示します。

 本数を重ねるごとに、急走区間での心拍数が徐々に上昇してきており、疾走開始後心拍数が上昇するまでが早くなっていることが分かります。

1000m*7本(リカバリー2minジョグ)を行った際の心拍数推移

■緩走区間のスピードと距離(時間)

 ダニエルズ理論で推奨されているのは、Easyペース(ジョギング)で急走時間の50~100%程度とされています。

 上で示した私自身のトレーニング例である1000m*7本のインターバルでは、急走区間が3分15秒、緩走区間が2分であるため、およそ61.5%の時間でリカバリーを行っています。

 一方、リカバリーのジョグペースは、Easyペースよりもだいぶ遅め(6min/km程度)で行いました。

 リカバリー(緩走区間)では、「次の疾走区間で十分なスピードで走れるくらい」に整える必要があります。

 優先されるべき事項は「疾走区間でのスピード(強度)」です。もし、疾走区間で速く走れない用であれば、ペースが速すぎるかリカバリーが短すぎる、速すぎる、と考えられます。

■論文紹介 最大酸素摂取量向上の効果を最大にする方法

 1つ論文を紹介します。

Adaptations to aerobic interval training: Interactive effects of exercise intensity and total work duration

 本論文では、被験者をトレーニング条件毎4グループ(A~D)に分け、最大酸素摂取量の向上に差があるかを実験しました。

  • Aグループ:週4~6回の低強度トレーニングのみ
  • Bグループ:週2回の16分×4のインターバルトレーニング+週2~3回の低強度トレーニング
  • Cグループ:週2回8分×4のインターバルトレーニング+週2~3回の低強度トレーニング
  • Dグループ:週2回4分×4のインターバルトレーニング+週2~3回の低強度トレーニング

 トレーニング条件トレーニング前後での血中乳酸最大値及びVO2max値結果を下表に示しています。

A:低強度B:16分×4C:8分×4D:4分×4
トレーニング頻度(回/週)4.8±1.24.9±1.24.6±1.24.7±1.2
インターバルトレーニング回数(回/週)1.8±0.11.9±0.11.8±0.1
トレーニング時間(時間/週)8.5±1.57.6±1.95.7±1.55.7±2.0
トレーニング中心拍数(%HRmax)88±290±294±2
トレーニングにおける血中乳酸値(mmol/L)4.9±1.59.6±2.913.2±2.0
A~D グループ トレーニング条件

※心拍数は、インターバルにおける4セット目の最大心拍数を平均した値
※血中乳酸値は、2,4,6週目に、インターバルセッションの3,4セット目に測定した値の平均値

低強度A16分×4B8分×4C4分×4D
Lactate Peak(mmol/L)14.913.714.813.914.113.413.814.0
VO2max(ml kg/min)52.754.551.154.452.858.350.453.2
VO2max上昇率+3.4%+6.6%+10.4%+5.5%
Power4mmol(W)222239228249241280220238
各グループにおけるトレーニング前後での乳酸ピーク値とVO2max値

 結果としては、「8分×4」のインターバルトレーニングを行ったグループが、最もVO2max上昇効率が良かった、となりました。

 「16分×4のインターバルを行ったグループB」「8分×4のインターバルを行ったグループC」の比較します。

 1週間当たりのトレーニング量は、Bが7.6時間Cが5.7時間と、トレーニング時間が短いのにもかかわらず、Cグループの方が最大酸素摂取量は大幅に向上しています。

 BとCでの大きな違いはトレーニング強度です。

 トレーニング中最大心拍数がBでは88%HRmaxだったのに対し、Cでは90%HRmaxです。Cの方が最大心拍数に近い領域でトレーニングを行っています

 88%HRmaxのトレーニングを16分間続けるよりも、90%HRmaxのトレーニングを8分間続けた方がVO2maxの上昇率が高いということが示されています。

 一方、94%HRmaxのトレーニングを4分間続けたDグループと比較しても、Cグループの方がVO2maxが上昇しています。

 VO2maxを効率的に鍛えるには、心拍数が「高い」状態を「長く」維持することが望ましいということが示されています。

 練習強度(=運動中心拍数)がある一定以上落ちると、著しく最大酸素摂取量向上の効率が落ちていく、ということも分かりました。

 運動強度が90%未満に下がってしまうと、最大酸素摂取量への刺激が極端に少なくなってしまうということがわかります。

 BグループとDグループでは、インターバルを行っている時間が4倍違うのにもかかわらず、VO2maxの上昇率はほぼ同じです。

 Dグループでは運動時間は短いものの、強度が高いため、VO2maxが効率的に上昇したと考えられます。

重要Point

・最大酸素摂取量を効率的に鍛えるためには、高い心拍数を長く維持することが望ましい。
・HRmax90%以下の運動強度になってしまうと、最大酸素摂取量への刺激が極端に減る

5.インターバルトレーニングの具体的方法

 では、マラソンのトレーニングに当てはめて、インターバルのアレンジ方法について考えます。

■疾走速度・距離(時間)

 良く知られているのはダニエルズ理論でのIペースだと思います。

 「VDOT Calculator」で計算されるIペースはVO2max97.5%でのペースです。

 下に、VDOTから決まるペース設定を載せた表を示します。この表からは、「VDOT毎に各ペース設定が分かる」ようになっています。

gokkyさん作成 VDOTペース表 上のリンクからExcelファイルがダウンロード可能です

 少し分かりにくい表現であるため、例を挙げて説明します。

 自分自身のハーフマラソン記録が1時間17分だったとします。VDOT Calculatorにより、自分のVDOTが「61」である事が分かります。

 そこで上表を確認すると、VDOT「61」の時、Iペース(VO2max97.5%=mean)が3分20秒/kmである事が分かります

 ただ、実際に行ってみるとよくわかるのですが、Iペースは、体感として非常に速く感じます。Iペースで疾走すると、心拍数は間違いなく90%HRmaxを超え、非常にきついです。

 Iペースがきつすぎる場合には、少しペースを落とすなどして調整します。

 インターバルトレーニングはある程度の強度とボリュームを両立させることでその効果が高まります

 従って、ダニエルズのIペースを基準にしたうえで、インターバルのボリュームが稼げる強度を自分自身で探し、最適な強度を見つけていくことが重要だと考えます。

 強度の最低ラインは、インターバルの後半で心拍数が90%HRmaxに達するかどうかで判断すればよいということが論文で示されました。

重要ポイント
  • ダニエルズのIペースできつすぎる場合は、適宜ペースを調整する
  • インターバル強度の最低ラインはインターバルの後半で90%HRmaxに達すること

■疾走距離(時間)

 ダニエルズのランニングフォーミュラでは、一回当たりのIペースで走る時間の最大を「5分以下」と推奨しています。

 しかし、上記で紹介した論文では、疾走1回当たりの時間は8分に設定されたグループCが、最も効率よく最大酸素摂取量を伸ばすことができていました

 Iペースで走ると95%HRmax程度であるのに対し、グループCでは90%HRmaxまでしか到達していないため、グループCは8分間の疾走時間を確保できたと考えられます。

走るペースが速いと、その分疾走時間を短くしないと、きつすぎて練習がこなせない。。。

 最低限のインターバル強度は守ったうえで、できるだけ疾走時間を増やすことで、効果は高まると言えます。

■レスト時間

 ダニエルズ理論では、インターバルトレーニングでのレスト時間は「疾走時間と同じか、それよりも短くすること」が推奨されています(※ただしレストはEペースでのジョギングです)。

 従って、市民ランナーの大半が考えているほどレスト時間を短くしなくても、十分に最大酸素摂取量を向上させる目的は果たせる可能性が高いことがわかります。

 5000mのレースにできるだけ近い状態を作り出すことが練習目的の場合、できるだけレスト時間を短くするべきだと考えます。

 実際のレースでは、Iペースに近い速度で走り続けなければならないからです。

■練習をこなせなかった時のアレンジ方法まとめ

 実例と共にインターバルトレーニングのアレンジ方法をまとめます。

 「1000m×5・3分20秒/km・レスト60秒」と設定しましたが、きつくて練習をこなすことができず練習をアレンジしようと思った場合について考えます。

 論文から分かる事実を当てはめると、疾走ペースを落とす場合、HRmax90%中心程度までなら最大酸素摂取量上昇の効果がそこまで落ちないことも明らかされました。

 HRmax90%中心で推移するインターバルトレーニングは「CV(critical velocity)インターバル」と呼ばれるトレーニングとなります。

 最近、実業団選手だけでなく市民ランナーの間でも人気となっているトレーニングです。

 そのため、もしペースを落とすのであれば、疾走時の心拍数中心が90%HRmax程度となるところまでなら最大酸素摂取量の向上が見込めそうです。

 設定ペースを落とした分一回の疾走における走行距離(=走行時間)を長くすること、もしくは繰り返し本数を多くすることが必要だと考えられます。

 今回の例で言うと、「1000m×5→2000m×4、1000m×8」等に変更することが考えられます。

 2つ目のアレンジ方針としては「レスト時間を延ばすこと」が挙げられます。

 ダニエルズ理論に基づくと、レスト時間の推奨は「走行時間と同じか、それより短い時間」とされています。

 今回の場合、レスト時間は最大「3分20秒(※ただしレストはEペースでのジョギングです)」までなら取っても構わないということになります。

重要ポイント
  • インターバルトレーニングでのレスト時間は疾走時間と同じか、それよりも短くする
  • 設定ペースを落とす場合は、疾走時の心拍数中心が90%HRmaxとなるまでとする
  • ペースを落とした場合は一回当たりの走行時間を長くするか繰り返し本数を多くする

6.インターバルトレーニングの効果は個人差がある

 論文では、インターバルトレーニングによって得られる効果には「個人差がある」ということも分かっています。

 今までその人が行ってきたトレーニング履歴やその人の資質によって、インターバルトレーニングによって得られる効果が違います

7.まとめ

 今回のまとめとして、それぞれの要素について、決め方の例を紹介していきます。

①疾走速度・距離

 最大酸素摂取量へ効率的に効果が出る90%~100%HRmaxを維持できる範囲であれば、可能な限り一回当たりの疾走距離は長いほうがよいです

 HRmax90%以下にペースを落としてしまうと、最大酸素摂取量への刺激としては著しく低下してしまいます。

②繰り返す本数

 距離と同じで、強度を維持できるのであればできるだけ繰り返し本数は多いほうがよいです。ペースを落として本数を多くすると、最大酸素摂取量への刺激は低下します。

③レスト

 レストは可能な限り短いほうが、2本目以降、最大心拍数に到達するまでの時間が短くなるため、最大酸素摂取量への刺激が多くなることが予想されます。

 しかし、レストが短いと、トレーニングとしてはとても苦しくなるため、継続性と再現性が無くなる可能性があります。

 その場合には、疾走ペースを落とすことよりも、レストを長くすることを優先します。

 ただし、レストは長くても疾走時間と同じくらいです。それ以上にレストを長くしないと練習をやり切れない場合は、ペースが適切ではない可能性が高いです。

 インターバルトレーニングは、とても効果が高い練習ですが、そのやり方によっては期待していた効果が得られないことがあります。

 目的に合わせて適切なトレーニング方法を考え、取り入れていきましょう!

参考文献:

著:ジャック・ダニエルズ, 監修:前河洋一, 翻訳:篠原美穂
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