【ショートインターバルの効果】マラソンでの有用性を生理学的に考察

こんにちは。管理人のsyu_hibiです。

 今回はインターバルトレーニングのバリエーションとして知られているショートインターバルについて、その効果を生理学的に考察していきたいと思います。

 私自身、ショートインターバルからロングインターバルまで様々取り組んでいましたが、それぞれの効果を明確に理解できていたわけではありませんでした。

 本来であれば、インターバルで走る距離毎に効果を理解し、目的に合わせたトレーニングを適切に選んでいくべきです。

 そこで、生理学の観点から、ショートインターバルについて考察しました

 良く知られていて市民ランナーのトレーニングにも採用されている、代表的なインターバルトレーニングとしては、「1000m×5」が挙げられますが、それと比較してショートインターバルにはどのような効果が考えられるのでしょうか。

 インターバルトレーニングの効果や実施方法については、次の記事で考察しています。

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1.ショートインターバルの定義

ショートインターバルとは、

  • 200m×20 レスト30s
  • 400m×15 レスト45s
  • 600m×10 レスト60s

 のように、短めの疾走距離とレストを組み合わせて行うインターバルトレーニングです。1000m×5や1200m×4を「ロングインターバル」として捉え、分けて考えられています。

2.ショートインターバルの効果を考える際に着目する点

 ショートインターバルの効果を考える際に着目しなければならない点は次の2点だと考えています。

  • トレーニング中に動員される筋繊維
  • エネルギー産生経路

 上記の要素によって、ショートインターバルによって得られる効果や、向上が見込まれる能力を理解することができると考えています。

■トレーニング中に動員される筋繊維

 ショートインターバルは基本的に、100%VO2max付近でのトレーニングとなります。ロングインターバルでは、呼吸系能力が律速となることが多く、疾走速度が上がらない傾向となる一方、ショートインターバルでは呼吸がきつい時間が短いため、疾走速度を上げることができるためです

 LT走のペース設定変更によるバリエーションについての記事でも触れましたが、インターバルペースといっても、VDOTで言うと95~100%の範囲があり、ショートインターバルは限りなくVDOT100%に近い領域でトレーニングを行うことになります

 もし、ショートインターバルとロングインターバルで同じ疾走速度で取り組み、かつ、最大酸素摂取量への刺激を同等得ようとするのであれば、レスト時間を極力短くする必要があります。

 ただ、そこまでしてショートインターバルにこだわる必要があるのか?ということを考えてみてください。最大酸素摂取量に刺激を入れたいのであれば、一回当たり2分間以上の疾走時間であることが望ましいことは、次の記事でも紹介しています。

 そのため、ショートインターバルでは、疾走速度を上げることに意味があり、ロングインターバルよりも、速筋繊維の動員が優位になることがメリットであると考えられます。

 ※ちなみにVDOT Calculatorで計算されるIペースはVDOT97.5%のペースとなります。

■代謝経路(糖質or脂質それとも乳酸??)

 上で述べた通り、ショートインターバルでは速筋繊維の動員が優位となるため、主なエネルギー原料は糖質であり、解糖系がメインとなることが予想されます。

 また、解糖系の中で乳酸が発生するため、発生した乳酸を代謝していく経路も活発となります。

 乳酸の代謝については、次の記事で詳しく解説しています。

 乳酸の代謝速度を決める要因の一つに、速筋繊維から血中に乳酸を拡散させるMCT4の働き(=乳酸放出能力)がありますが、MCT4の増加や活性化は、速筋繊維を刺激するような高強度トレーニングでのみ認められることが分かっています。

3.ロングインターバルとの比較から、ショートインターバルの効果を考える

 ショートインターバルとロングインターバルを比較する形で、効果を考えます。

■速筋繊維への刺激

 ショートインターバルは、ロングインターバルと比較して「疾走速度(=VDOT%)を上げることができる点」が優位点であると考えられます。

 疾走速度を上げることで、運動強度が上昇し、「速筋繊維」への刺激が多く入ることになります。乳酸の代謝メカニズムでも説明していますが、乳酸代謝を決める一要因として、速筋からの乳酸放出があり、速筋への刺激で機能が向上するため、この点はショートインターバルのほうが有利だと言えます。

 また、速筋繊維を動員する強度でトレーニングを行うことで、速筋繊維が中間型速筋繊維(=FOG繊維)へ変化することを促します。中間型速筋繊維は、速筋繊維と同じ力を発揮できることに加え、ミトコンドリアを多く含むため、糖質や脂肪を完全酸化しエネルギーに変える力に長けています

 従って、速いスピードを長い時間維持できるようになるのです(主にLT値向上につながると考えられています。関連記事参照。)

■最大酸素摂取量向上という面ではどうか

 最大酸素摂取量の状態となるためには、高強度の運動をし始めてから2分後であると、ダニエルズ理論では述べられています。「疾走をくりかえすことによって、最大酸素摂取状態となるまでの時間が短くなる」、とも述べられています。

 ショートインターバルでも、短めのレストで疾走を繰り返すため、最大酸素摂取量の向上効果はあると思われますが、最大酸素摂取量状態になる前、もしくは直後に疾走が終わってしまうため、最大酸素摂取量への刺激量は少ないと予想されます。

 ショートインターバルでは、400mの場合だと、長くても80~90秒程度の疾走時間となるため、ダニエルズ理論に基づくと、最大酸素摂取量への刺激はロングインターバルのほうが有利だと言えそうです。

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4.その他メリット

 ショートインターバルには、上記で述べていない下記メリットがあると考えています。
 ※主に市民ランナーへのメリットだと考えています

  • 練習場所を確保しやすい
  • 単独でもやり切りやすく、継続的に行うことができる

 市民ランナーにとって、インターバルトレーニングを行う練習場所の確保は意外と難しいです。陸上競技場が空いている時間にトレーニングすることがそもそも難しかったり、ロードでは、信号が無く車の通りが少ないフラットな平地を確保しなければなりません。

 ショートインターバルですと、確保すべき場所が400m程度で十分であるため、練習場所は見つけやすい、ということができます。

 また、ロングインターバルと比較して疾走時間が短いため、練習中に感じる苦しさが短くて済みます。どうしても単独で練習していると、練習がきつくて途中で諦めてしまうことがあり、結果としてインターバルトレーニングの効果が半分以下になってしまう、といったことも考えられます。

 結果として、ショートインターバルでは練習をやり切りやすく、練習の継続性が確保できると考えています。

5.ショートインターバルの具体的練習例

 冒頭でも記載した通り、ショートインターバルの距離、設定ペース、レストは下記の通り設定します。

  • 距離:200~600m/本
  • 設定ペース:95~100%VO2max(Iペース)
  • レスト:疾走時間の50~90%

 しかし、設定ペースとレストは、その決め方によって、ショートインターバルで得られる効果は大きく違ってきます。400mのショートインターバルを例に考察します。

 一つ目のパターンとしては、レストを100mジョギングで繋いだ場合です。この場合、レストは30~40秒程度となるため、ほとんど心拍数が落ちない状態で次の疾走となります。

 私自身が実践した結果としては、疾走速度は95~97.5%VO2max程度までが限界と感じ、心拍数的には、90~95%HRmax付近で推移していました。

 レストをここまで短くしてしまうと、疾走速度はそこまで上げ切ることができず、結果として心拍数も最大酸素摂取量を刺激するには少し足りない領域です。しかし、レスト区間でも心拍数はほとんど落ちず、88%HRmax程度は維持できていたため、乳酸性作業閾値への刺激が同時に得られたと考えています。

 二つ目のパターンとしては、レストを「その場で40秒程度休む」バージョンです。これは、TwoLapsの新谷仁美選手のトレーニングを参考に導入してみました。

 新谷選手のコメントでは、「走りのフォームが崩れず集中することができる」とコメントしており、実際そう感じました。

 その場でレストするため、心拍数は疾走前に140程度までは低下します。その結果、疾走速度を上げることができ、100%VO2maxの速度で疾走することができます。

 レストをジョギングするよりも、より高い速度域で疾走できるため、乳酸生成が促されることになります。少しきつい状態で良いフォームを維持するような目的が達成できそうです。

6.ショートインターバル効果・メリットのまとめ

  最後に、ショートインターバル特筆すべき効果・メリットをまとめます

  • ロングインターバルと比較して疾走速度を上げることができるため速筋繊維への刺激が入る→5000mなどの競技には有用である
  • 速筋繊維への刺激が入ることで、乳酸代謝能力要素の内、血中への乳酸拡散能力向上が見込める→ロングインターバルよりも、高強度
  • 練習場所の確保がしやすく、単独でもやり切りやすいため継続性がある→市民ランナーには重要

 フルマラソンに向けたトレーニングとしては、やはりショートインターバルよりも、ロングインターバルのほうが適しているとはいえそうです。しかし、5000m等、短めのレースに対しては、ショートインターバルによる速筋への刺激が有効に働く可能性がありそう、ということが分かりました。

是非、今後の練習に反映させてみてはどうでしょうか。

参考文献:

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