【レペティショントレーニングとは?】生理学的に期待される効果と練習例の紹介

 こんにちは。管理人のsyu_hibiです。

 市民ランナーの皆さんはレペティショントレーニングを練習に取り入れていますでしょうか。

 レペティショントレーニングとは、およそ1マイル(1.6km)のレースペースで、短い距離(およそ100m~600m程度までが一般的)を繰り返し疾走するトレーニングとなります。1本毎に十分な休憩を挟みながら、集中して疾走することがポイントです。

 本格的にマラソンで記録を狙っている方であれば、既に知っているトレーニング方法かと思いますが、練習し始めの方や社会人になってからランニングを始めて間もない方には、意外と馴染みが無いのかなと思います。

 レペティショントレーニングには、普段のジョギングやペース走では得られない重要な効果があります。

 そんなレペティショントレーニングについて、その効果を、生理学的な観点も含めて考察・紹介していきます。また、具体的な練習方法については、主にダニエルズのランニングフォーミュラを参考に紹介させていただきます。

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1.レペティショントレーニングとは?

 まず、レペティショントレーニングについて詳しく紹介させていただきます。

 はじめに、ダニエルズのランニングフォーミュラを引用します。

トレーニングの主な目的は、無酸素性作業脳、スピード、ランニングの経済性を高めることにある。自分がトレーニングから何を得ようとしているのか、常に心にとどめておこう。特に大事ななのは、十分に身体を回復させ、正しい走動作で走ることだ。

ダニエルズのランニング・フォーミュラ

 また、設定ペースやレストの取り方は次となります。

  • 設定ペース:1マイルのレースペース(VDOT Calculatorにより算出)
  • レスト:疾走時間の2~3倍が目安(完全に呼吸が落ち着くまで)
  • 一回当たりの走行時間上限の目安:2分間
  • 一回トレーニング当たりの走行上限距離:週間走行距離の5%以下

 VDOT Calculatorでレペティションペースを計算するときは、Repetitionの行を参考にします。

※VDOT計算機の使い方が分からない方は次の記事を参考にしてください。

 ダニエルズのランニング・フォーミュラでも強調されている通り、レペティショントレーニングは、疾走1回毎に十分な休息をとり、正しいランニングフォームで行うことが重要です。もがいて走りきるような状態は望ましくありません。

 実際にレペティショントレーニングを行ってみると、私自身、呼吸の苦しさは少ないように感じます。

 1回当たりの疾走上限時間「2分間」は、ダニエルズ博士推奨の目安です。トレーニング内容によって1000m程度まで距離を伸ばしたくなる時はどうしても2分間を超えてしまいますが、設定ペースを守り余裕を持ったランニングフォームで走りきれる場合は問題ないと考えられます。

 トレーニング1回当たりの上限距離は週間走行距離の5%以下です。これは怪我防止の観点から推奨されているので、怪我を未然に防ぐためには、上限距離を守る事をおすすめします。

2.レペティショントレーニングに期待される効果

 1.で述べた通り、レペティショントレーニングでは無酸素性作業脳、スピード、ランニングの経済性を高めることが目的です。ここでは、どのような仕組みでこれら能力向上が期待できるのかを解説していきます。

■無酸素性作業脳

 無酸素性作業脳と言っても表現が抽象的ですので、生理学的に解説していきたいと思います。

 先に結論を述べておきますが、レペティションペースの運動強度でトレーニングを行った場合は、一回当たりの疾走時間によって得られる代謝的効果が異なってきます

 図1に、運動継続時間と、有酸素性/無酸素性エネルギー産生の寄与率の関係を示しました。

 

図1 運動継続時間とエネルギー産生由来の関係
(パワーズ運動生理学)

 レペティションで推奨されている一回当たりの疾走時間が2分です。もし一回当たりの疾走時間を2分とした場合、無酸素性由来のエネルギー供給が60%を占め、残り40%は有酸素性由来となることが分かります(パワーズ運動生理学より)。

 有酸素性、無酸素性の代謝経路は図2の通りさらに細分化されます。運動継続時間が20秒を超えてくると、無酸素系のエネルギー産生はそのほとんどが解糖系からの供給となります。

図2 エネルギー産生経路内訳

 従って、ダニエルズ博士推奨の通り、一回当たりの疾走時間を2分未満に抑えたレペティショントレーニングではATP-CP系および解糖系を含む無酸素系からのエネルギー供給能力を向上させることが主な目的となります

 ただし見逃してはならない点が、有酸素系からのエネルギー供給割合も比較的多い、ということです。

 一回当たりの疾走時間を2分まで延ばした場合には約40%が有酸素系のエネルギー供給で賄われることになります。次項で説明しますが、レペティションペースの強度は速筋繊維が積極的に動員されるため、速筋繊維のミトコンドリア容量の増加を見込みことができます。

 速筋繊維のミトコンドリア容量が大きくなることは、大きな力を発揮できることと、エネルギー供給として糖質の酸化及び脂肪の利用(=有酸素系)を同時に可能にする、ということを意味しており、高速を長く維持するためには、非常に重要です。

■スピード

 「スピード」と表現しても、スピードのどんな要素が鍛えられるのか、考えてみます。

 スピードの向上を説明するためには、レペティショントレーニングによる筋繊維への影響を考える必要があります。

 レペティションペースは速い疾走速度であるため速筋繊維が積極的に動員されるようになります。別の記事で紹介させていただきましたが、マラソンにおいて速いペース長く維持するためには、中間型速筋繊維への変化と機能向上が重要であることを述べさせていただきました。

 速筋繊維から中間型速筋繊維への変化を促すためには、速筋繊維への刺激が必要です。レペティションペースは、インターバルペースよりもさらに速筋繊維の動員割合が上昇すると考えられますので、速筋繊維への刺激という意味では、効果的だと考えられます。

 ここから先は、生理学を元にした私自身の考察になります。

 「最大スピード」を上げる目的がメインである場合、レペティションペースでのトレーニングは不適切であると考えています。

 ここで言う最大スピードとは、100m走等に代表される最高到達速度の事を言っています。

 最大スピードを上げるためには、最大パワー・筋力を鍛える必要がありますが、レペティションペースはあくまでも1マイルのレースペース程度ですので、速筋繊維を鍛え、最大出力を上げるには強度が足りないと考えられます。

 ※ただし、レペティションペース程度の運動強度であっても、速筋繊維の筋サイズ向上とTypeⅡxからTypeⅡaへの変化が得られた、という結果が出ています(パワーズ運動生理学P324)

 「最大スピードに近いスピードを、比較的長い時間維持する能力」が鍛えられます。生理学的に考えても、レペティショントレーニングにより速筋繊維でのミトコンドリア容量の増加及び速筋繊維から中間型速筋繊維への変化が促されますので、強い力を長い時間発揮する能力が向上していくはずです。

重要ポイント

・レペティショントレーニングによって、速筋繊維の動員が期待でき、最大スピードに近いスピードの持続能力が向上する(速筋繊維から中間型速筋繊維への変化を伴って)

■ランニングの経済性

 ランニングの経済性(以下、ランニングエコノミーと記載)は、筋力の発達、ランニングフォームの改善等、いくつかの要素で改善することができますが、ここでは、ランニングフォームの改善に着目します。

 走る速度は、筋力やスタミナだけでなく、ランニングフォームによって大きく変化します。レペティションペースでは、設定したタイムをできる限り楽に走りきることを考えながらトレーニングを行うことで、ランニングフォームの改善が見込めます。

 速く走るフォームを身に付けることができれば、動きが遅いペースランニングインターバル走でも、楽に速く走れるはずです。

 はじめのうちは、レペティショントレーニングにおいて設定タイムをクリアしていくことで、ランニングフォームがある程度最適化されると考えています。

 しかし、ランニングフォームをさらに本格的に改善していくためには、客観的にランニングフォームを評価し、修正していく必要があります。自分自身が走っていて感じる感覚だけでは、フォーム修正には不十分です。

 ビデオ撮影や指導者の目を利用し、フォーム改善を進めましょう。最近ではインターネットで容易にたくさんの情報を取り入れることができます。自分のフォームと他人のフォームを見比べるなどの作業が必要になってくるのではないでしょうか。

3.具体的練習方法

 では具体的にレペティショントレーニングの練習法について紹介します。

 レペティショントレーニングは非常に単純です。

  • 200m×20
  • 400m×10
  • 600m×7

レストは、疾走時間の2~3倍(ジョギングでも歩きでもOK)

 設定タイムは、1.でも述べた通り、VDOT Calculatorで算出します。

 レペティショントレーニングで重要なポイントは、疾走1回毎に十分な休息をとり、正しいランニングフォームで行うことです。

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4.まずはウィンドスプリントで取り入れてみよう

 レペティションペースでのトレーニングを気軽に取り入れる手段の一つとして、ウィンドスプリントがあります。

 ウィンドスプリントは、ジョギングの途中や後に取り入れる方が多いと思いますが、たった数本であっても、毎日積み重ねることで、長期的に見れば必ず効果が出ます

 ダニエルズのランニング・フォーミュラでは、ウィンドスプリントのやり方を「20秒間の軽いダッシュ」と表現していますが、目安とすべきはレペティションペースであると考えています。

 例えば、週に2回くらい、3本程度のウィンドスプリントを取り入れるだけでも、月間にすると24本となり、立派なレペティショントレーニングです。

5.「坂ダッシュ」にすると効果倍増

 「坂ダッシュ=ヒルランニング」はレペティショントレーニングの変化形として捉えることができます。膝への負担を下げつつ、ハムストリングやお尻の筋肉に効かせることができます

 また、低い位置から高い位置に体を運ぶ力が必要になるため、平地でトレーニングを行うよりも速筋繊維への刺激が大きくなることが予想されます。

 関節等への負担を下げながら、筋肉への負荷を高めるトレーニングとして、坂を使うことはとても良い選択だと考えています。

 坂道ダッシュについて、運動生理学や論文に基づいて、効果や最適なトレーニング方法を考察しました。

6.重要ポイントまとめ

 最後に、レペティショントレーニングについての重要ポイントをまとめます。

重要ポイントまとめ

・無酸素性作業脳、スピード、ランニングの経済性向上が期待できる

・無酸素性作業脳は、主にATP-CP系と解糖系から得られる無酸素系由来のエネルギー供給能力を高めることを意味している。

・スピードは、速筋繊維から中間型速筋繊維への変化により、高いスピードを持続する力が付く

・ランニングの経済性は、設定ペースを守りながらできるだけ楽に走りきる事を考えながら走ることで、高めることができる。第三者に客観的な評価をもらうことが有効。

・設定ペースは1マイルのレースペース(VDOT Calculatorにより算出)

・1本毎に十分な休息をとり、正しいランニングフォームで走ること

・一回当たりの走行時間目安は2分以下。一回の練習では週間走行距離の5%を上限として怪我を防止する。

・ウィンドスプリントとして日常のトレーニングに組み込んだり、坂ダッシュにすることで効果を高めることができる。

 いかがでしたでしょうか。

 スピード値が高いため、なかなか取り入れているランナーも少ないかと思いますが、ウィンドスプリントもレペティショントレーニングの一環だと思えば、トレーニングの狙いも明確になってくるのではないでしょうか。

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参考文献:

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