【マラソンにおけるミトコンドリアの重要性】トレーニングにより増やす方法と機能向上

 こんにちは。管理人のsyu_hibiです。

 記録向上を狙って努力をしているランナーの方であれば、乳酸性作業閾値最大酸素摂取量などの概念は知っていると思います。

 乳酸性作業閾値を向上させるためLT走に取り組んだり、最大酸素摂取量向上を狙ってインターバル走をしているのではないでしょうか。

 しかし、それらの練習を行った際、体の中でどのような変化が発生するのかまで理解している方はすくないのでは、と思っています。

 それらを理解するために重要な考え方がミトコンドリアです。

 本記事では 【マラソンにおけるミトコンドリアの重要性】について書籍(乳酸サイエンス)を元に紹介し、マラソン記録向上で非常に重要な「ミトコンドリアを増加させるトレーニング」について考えていきたいと思います。

 私自身も、トレーニングの目的や効果を考えながら、日々トレーニングに取り組んでいるつもりですが、ミトコンドリアの増加と機能向上について詳しくは知らなかったので、勉強を兼ねて紹介していきたいと思います。

 ※本文では難しい反応式は可能な限り無くし、わかりやすく記載することを心掛けています。

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1.ミトコンドリアとは?

 ミトコンドリアとは、人体のあらゆる細胞内に存在し、糖と脂肪を代謝(=消費)し、エネルギーを作り出す、いわゆる「エネルギー産生工場」です。

 ミトコンドリアでは、図1の通り、糖と脂肪の両方からエネルギーを作り出すことができます。

図1 ミトコンドリアでのエネルギー産生

 糖を消費する経路において「乳酸」が発生します。実は、ミトコンドリアでは乳酸もエネルギー産生原料の一つとして消費していきますが、運動強度が高くなると、乳酸の産生速度が上昇するため、血中乳酸濃度が上昇していきます。

 本記事では乳酸についての記載は割愛させていただきますが、別の記事で、乳酸の代謝や乳酸代謝能力向上についての記事を紹介しています。

2.ミトコンドリアはなぜマラソンにおいて重要なのか

 人間の体に蓄えておける糖質のカロリーは1500~2000kcal(肝臓・血液・筋肉などに備蓄)と言われていますが(※個人差有り)、フルマラソンでは、3000kcal弱を消費します。

 糖質を優先的に消費していく体ですと、フルマラソンの途中で「体の糖分を使い切った状態」となってしまい脚が動かない感覚に陥ります。いわゆる「30kmの壁」という現象です。

 フルマラソンで記録を向上させるためには「長い距離を速く走ること」が必要です。長く速く走り続けるためには、糖をできるだけ切らさないように走り続けることが重要なのです。

 はじめに結論を述べると、体ができるだけ糖質を使わず脂質を使うようにするためには運動強度を下げる必要があります。図2で示す通り、運動強度が低ければ低いほど、脂質を優先して消費することがわかっています。

図2 運動強度及び時間と、代謝基質の関係

 しかし、単純に運動強度を下げてしまうと、速いペースで走れませんよね。

 ここで重要なことが、「自分自身にとって運動強度が低いこと」が、脂質を優先的に消費していく条件であることです。同じ4:15/kmのペースであっても、エリートランナーとサブ3ランナーではきつさが違いますよね。

3.自分にとっての運動強度を下げるには?

 自分にとっての「運動強度=きつさ」を決めているのは、「血中乳酸濃度(=乳酸処理速度)」とミトコンドリアによる「エネルギー産生速度と量」になります。

 したがって、運動強度を下げるためには血中の乳酸を消費し、脂質や糖を代謝してエネルギーに変換してくれる、ミトコンドリアの量と質(=機能)を高めていく必要がある、ということになります。

4.ミトコンドリア増加・機能向上の仕組み

 ミトコンドリアは、運動によって、ミトコンドリア生成のためのシグナル分子が増加し、ミトコンドリア新生(=生成)が起こります(図3)。

図3 筋肉におけるミトコンドリア新生

 また、運動強度が高いトレーニングであればあるほど、ミトコンドリア新生が促進されるのと同時に、ミトコンドリア自体の機能も向上することが過去の実験からわかっています。

 次のデータ(図4)は、低い運動強度(40%VO2max)(LO)高い運動強度(80%VO2max)(HI)のトレーニングをそれぞれ行った際、どの程度ミトコンドリア新生が促進されたのかの結果です。

 ※低い運動強度と高い運動強度でのトレーニングは条件を合わせるために総消費カロリーを合わせています。

図4 低強度及び高強度トレーニングを行った際のミトコンドリア転写活性化の指標

 運動してから3時間後の、ミトコンドリア転写活性化の指標を確認すると、運動強度が高い時の方が2倍以上の活性化が起こっていることが分かります。

※高い運動強度を行った場合に2倍のミトコンドリア生成が起こる、というわけではありません。あくまで活性化の指標になります。

 ただ、ここで注目しなければならないことは、低い運動強度のトレーニングでもミトコンドリア増加が促進されている点です。

 高い運動強度のトレーニングを行った方が効率的にミトコンドリアを増やせる可能性が高いですが、低い運動強度であっても、トレーニング量を増やせば、ミトコンドリア量を地道に増やすことは可能である、ということが示されています。

5.ミトコンドリアを効率よく増やし、機能向上させる方法

 では、ここから、マラソントレーニングに当てはめて考えていきます。

 トレーニングで結果を出す、という観点からすると、「効果および効率」、「継続性」、「時間の制約」の点から考えていく必要があります。

■効果と効率

  低強度と高強度のトレーニングが、ミトコンドリアに与える影響をもう少し深堀して考えてみます。参考データを載せます。

  • Aグループ:20秒×3の高強度トレーニングを3回/週
  • Bグループ:45分間の持続運動を週3回

 ※「低強度=ジョギング」、「高強度=インターバル」と捉えてみてください。

図5 低強度vs高強度 全身持久力とミトコンドリア量の変化

 図5では、AトレとBトレが全身持久力(VO2max)と骨格筋におけるミトコンドリア量に与える影響を比較しています。VO2maxはAトレのほうが向上、骨格筋ミトコンドリア量ではほとんど「差が無い」ことがわかります。

 しかし、運動持続時間には大きな差があります。Aトレが休憩込みでも数分で終わってしまうのに対し、Bトレは45分間の運動です。高強度トレーニングのほうが圧倒的に効率が良いですね

■継続性

 トレーニングの「継続性」という観点から考えてみます。

 「継続性」は精神的な面と身体的な面の両面から考える必要があります。

 まず精神的な面ですが、インターバルのような高強度トレーニングは「苦しさ=ストレス」を感じます。主観的な意見にはなりますが、毎日インターバルトレーニングをやれと言われても、私個人的には辛くてやりたくないです。

 続いて身体的な面では、主に「怪我のリスク」を考えなければなりません。トレーニングが高強度になればなるほど、怪我のリスクは増大し、トレーニングの継続ができなくなる可能性もあります。

 一方、低強度のトレーニングは苦しさを感じることはありません(苦しくない=低強度という定義であるため)。また、強度が低いため怪我のリスクも低く抑えることができそうです。

 「継続性」に関しては、低強度トレーニングに軍配が上がりそうですね。

■時間の制約

 主に市民ランナーに向けた条件です。

 市民ランナーの多くは、トレーニングに割くことができる時間に限りがあります。背景には、「仕事・家事・育児・家族との時間」等がありますよね。

 限られた時間の中で、トレーニングを継続し、マラソンで結果を出すことを考えると、練習の効率を無視することができません

 時間が無い中、効率よくトレーニング効果を上げようと思うと、やはり、高強度トレーニングを取り入れていく必要がありそうです。ただ、疲労や怪我のリスクを考えた場合、毎日高強度の練習を行うことが難しいため、「繋ぎのジョグ」という考え方が出てくるのです。

 高強度なトレーニングと低強度なトレーニングを組み合わせることによって、トレーニングを長期で継続できるようにすることが重要です。

ミトコンドリアを増やすうえでの重要ポイント

・効果:低・高強度、どちらのトレーニングでもミトコンドリアは増える。

・効率:高強度トレーニングのほうが効率よくミトコンドリアを増やすことができる

・継続性:低強度トレーニングでも、運動時間を増やせば高強度トレーニングと効果が得られるので、継続しやすい。

6.トレーニング効率を高める:ジョグの強度を上げる

 これまで考えてきた通り、ミトコンドリアを増やすためには高強度トレーニングのほうが効率が高いですが、継続性に難があるため、継続しやすいジョギングをつなぎとして取り入れることが現実的です。

 普段何気なく「週二回程度のポイント練習と、あとはジョギングでつないでいる」市民ランナーは多いと思いますが、とても理にかなったトレーニング内容なのです。

 最後にジョギングの強度について考えていきます。

 ジョギングの効果については、次の記事で詳細に解説しています。

 ダニエルズのランニングフォーミュラでは、「EペースからMペースまでは生理学的に同様の効果」と記されていますが、ミトコンドリア増加と機能向上の観点から考えると、繋ぎのジョグでも「強度が高いほうが、ミトコンドリア増加と機能向上には有利」であることは間違いありません。

 そのため、単純なジョギングでも、実施するタイミングと目的によって強度を変えていくことが必要だと考えています。

 負荷が高いポイント練習の繋ぎとしてジョギングを行う場合は、強度を下げて行うべきです。

 一方、次の日に疲れが残っても大丈夫な日にジョギングしか予定していない場合、少しスピードを上げて取り組んでみてもいいかもしれません。

7.まとめ

 では、今回の記事で紹介させていただいたポイントをまとめます。

  • フルマラソンではできるだけ脂質を使って走る必要があるため、自分にとっての「運動強度」を下げる必要がある
  • 「運動強度」を下げるには、ミトコンドリア増加と機能向上が必要
  • ミトコンドリア増加と機能向上には、高強度トレーニングが適しているが、トレーニングの「継続性」を考えると、低強度のトレーニングを織り交ぜてトレーニングを進めるべき

 いかがだったでしょうか。

 これまで当たり前のように行ってきたジョギングやインターバル走も、その効果を理解できていれば、トレーニング内容のアレンジを行い、さらなるレベルアップも望めるのではないでしょうか。

 皆さんの記録向上の一助になればと思います。

参考文献:

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運動生理学
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syu_hibi

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