- トレッドミル(ランニングマシン)の速度(スピード)、傾斜の効果的な設定方法が分からない
- ロードで走る時とできるだけ同じ効果を得る方法は?
- トレッドミルのメリットが知りたい
※海外ではトレッドミルと呼ばれます、ランニングマシンは和製英語です。
天気が悪い時や外で走るのが億劫な時、トレッドミルを使いたいけど効果的に使う方法が分からないという方も多いのではないでしょうか。
トレッドミルは世界のエリートランナーが行うトレーニングにも取り入れられています。
2022年世界陸上男子5000mで優勝したヤコブインゲブリクトセン選手は、ノルウェー出身であり、厳しい気象条件の中、トレッドミルでのトレーニングが日常化しています。
また、アミノサウルスジャパンのCEOで、ご自身もフルマラソンランナーである嵜本さんも、トレーニングの大部分をトレッドミルで行っていたようです。
このように、トレッドミルは使い方次第で高い効果を得ることが出来ると言えます。
ここでは効果的にトレッドミルを使うためのポイントを紹介していきます。
具体的には、ロードでのランニングと同じ負荷に設定するための方法や、傾斜や速度(スピード)を効果的に設定する方法を紹介します。
本記事を読めば、トレッドミルを活用して、トレーニング効果を高める方法が分かります。
- トレッドミルとランニングマシンは同じ意味
- トレッドミルの大きなメリットは「毎回の風、気温の条件がほぼ一定であること」
- 平地と同じ負荷にするには、同じスピードであれば、傾斜率を1.0%にする
- 平地と同じ速度や負荷にこだわらないのであれば傾斜率0%の方が自然なランニングフォームになる
- 運動強度は心拍数で管理するとよい
トレッドミルとは?:ランニングマシンと同義
トレッドミルは、屋内でランニングやウォーキングを行うために使用される運動器具です。日本ではランニングマシンと同じ意味で使われます。
トレッドミル(ランニングマシン)は、速度を調整し、傾斜角度を変更することで、トレーニングの強度を調整することが可能です。
トレッドミルは効果がないのか?
トレッドミルは、速度や傾斜を適切に設定することで、大きな効果を得ることができます。
トレッドミルとロードの違いや、トレッドミル特有のメリットを紹介します。
「トレッドミル」と「ロード」の違い
トレッドミルとロードでは以下の違いがあります。
- 「地面」が勝手に進むので自分で前に推進させる必要が無い
- 接地面がラバーであるため、着地衝撃が少ない
- 速度と傾斜率が固定できるので運動強度を管理しやすい
- 設定した「傾斜」を使ったトレーニングが可能である
- 風、気温の条件が毎回ほぼ一定
- 自分で前に推進する必要がある
- 接地面がアスファルトの場合は着地衝撃が大きい
- 風、気温が毎回走る毎に異なる
- アップダウンが多少なりとも発生する
以下では、トレッドミルの効果とデメリットを示していきます。
トレッドミルの効果・メリット
トレッドミルの大きなメリットとしては、「毎回の風、気温の条件がほぼ一定であること」です。
これはとても大きなメリットで、毎回の運動強度を適切にコントロールすることが可能になります。トレッドミルの速度・傾斜を合わせさえすれば毎回同じ強度でトレーニングできます。
ただし、「自分が感じるきつさ(主観的強度)」は、毎回一定にすることはできません。
トレーニングを適切な強度で継続するには、主観的強度の管理が重要ですが、それを達成するためには「心拍数」を出来るだけ正確に把握できるようにします。
トレッドミルでは自分で意図的に「傾斜」を設定してトレーニングを行うことが可能です。
ロードでは、上りの練習を行おうとすると必ず「下り」が付いてきますが、トレッドミルでは「上り」だけを練習することができます。
「下り」では、着地衝撃が強くなったりなど、怪我のリスクが上がります。怪我から治った直後等は、足への衝撃が少ない「上り」だけを選択する、などが可能です。
トレッドミルのデメリット
デメリットは、本来鍛えなければならない「着地衝撃への耐性」が得られない点です。
フルマラソンに取り組む選手であれば、レースで何万歩も走る必要があり、それ相応の着地衝撃耐性が必要になります。これはロードで練習しないと得ることができない能力です。
また、トレッドミルでは「地面」が勝手に自走するため、自分で前に推進していく必要がありません。ロードと同じように走っているだけでは、同じスピードでも負荷が下がります。
しかし、トレッドミルの「傾斜」を適切に設定することで、ロードで走る時と同じ強度にコントロールできます。
速度(スピード)と傾斜の設定方法
トレッドミルでのスピードと傾斜率の適切な設定方法を解説します。
トレッドミルと平地の負荷を同じにする場合
トレッドミルで「傾斜」を適切に設定することで、ロードと同じスピードでも同じ負荷をかけることが可能となります。
結論から述べると、平地のロードとトレッドミルで同じ速度・負荷で走るためには、トレッドミルでの傾斜率を約1.0%に設定する必要があると言われています。
「傾斜をつけないと屋外でのランニングと同じ負荷にならないのか」の理由はトレッドミルでは空気による抵抗がないためです。
ただし、意図的に「上り坂」にしたトレッドミルと平地のロードでは、同じスピードでも走り方が異なってくるため、得られる効果は違う、と考えられます。
参考:トレッドミルで傾斜を設定する場合は、「角度」ではなく「傾斜率」で設定することが多いです。
厚底カーボンシューズを使ったときの適切な傾斜率
これまでは、トレッドミルでの負荷を屋外ランニングと一致させるためには傾斜率を1.0%に設定する、というのが通説でした。
しかし次の論文では、厚底カーボンシューズを使用した状態だと、屋外ランニングと負荷を一致させるにはもっと傾斜率を下げないといけない、と述べられています。具体的な傾斜率の数字までは述べられていません。
このことからもやはり、トレッドミルでは傾斜率にこだわるのではなく、主観的な強度や心拍数で運動強度を管理していく方が望ましいと言えそうです。
傾斜をつけるメリット
トレッドミルで傾斜をつけるメリットは以下の通りです。
- ペースが遅くても筋肉的な負荷を高めることができる
- 臀部への負荷を高めることができる
傾斜を設定することができる最大のメリットは、トレッドミルの速度を落としても負荷を高めることができることだと考えています。
速度が速いと、骨や健にかかる機械的な負荷が増加します。傾斜率を設定することで動きは遅くても筋肉の出力は高めることができるため、怪我の予防につながります。
傾斜がある状態でのランニングでは臀部への負荷が増えます。臀部を上手に使って推進していくことがランニング動作において重要です。傾斜を使ったランニングを行うと、良いランニングフォームを自然と習得できる可能性があります。
傾斜をつける場合の注意点
傾斜をつける場合の注意点は、負荷が同じになったとしても「ランニングフォームが変わってしまう」という点です。
傾斜をつけることで、接地する際の足首の角度や動員される筋肉部位も変わります。
したがって、体への全体的な負荷としてはトレッドミルでの傾斜率を1.0%にすることで、平地のロードと同等にすることは可能かもしれないですが、「同じ効果」は得られないことに注意してください。
世界のエリートランナーがトレッドミルでトレーニングしている様子がYoutubeなどで見ることができますが、エリートランナーでも傾斜率0%にして走っているランナーが多いです。
「平地と同じ速度」にこだわらなければ、トレッドミルの傾斜率は0%に設定し「トレッドミルでのペース」として管理すればよいと考えています。
体への負荷については心拍数や主観的強度で管理すればよいので、必ずしも「走るペース」にこだわらなくてもいいと考えています。
「速度に上限がある」場合が多い
スポーツセンターに通っている方であればご存じかもしれませんが、トレッドミルには安全性の観点等から「速度の上限」が決められていることが多いです。
もしくは、トレッドミルの性能として上限が決まっている場合もあります。
その場合、ロードと同じ速度で走ろうと思っても、トレッドミルの速度上限に達してしまい、それ以上ペースをあげることができない場合があります。
その場合には、「傾斜率」を高めることで負荷を合わせることが可能です。
傾斜率を設定するときの注意点
上でも一度述べましたが、傾斜率を設定するとき傾斜率を高めすぎるとランニングフォームが変わってしまうため注意が必要です。
マラソン向けのトレーニングでは、1.0~5.0%くらいの範囲で傾斜率を設定することが望ましいです。
トレイルランなどの特別なレース向けであればその限りではありません。
以下の記事では、どのくらいの傾斜をつけるとランニングフォームが大きく変わってしまうのかについて説明しています。坂道ダッシュでの適切な傾斜率設定方法を題材にして解説していますのでご参照ください。
運動強度の管理して効果を最大化する
トレッドミルに限りませんが、ランニングトレーニングでは運動強度を管理することが非常に重要です。
トレーニングの目的を達成するために必要なトレーニングの適切な強度が存在するためです。
エリートアスリートのトレーニングを研究している結果から、低強度:高強度の割合が80:20であると言われることもあるくらい、強度配分は重要な指標になります。
以下では、トレッドミルで運動強度を管理する方法について解説します。
トレッドミルにおいて運動強度を管理する方法
トレッドミルにおいて運動強度を管理する方法は、以下の3つがあります。
- 速度と傾斜率
- 心拍数
- 主観的強度
トレッドミルでは傾斜と速度を適切に設定することで、ランニングの強度を正確にコントロールすることが可能です。この点は外で走るよりも明らかに優れた点です。
また、心拍数でも運動強度を管理することができます。市民ランナーが使えるもので最も正しく運動強度を把握できる指標は「心拍数」です。
しかし、心拍数はその時の体の状態によって変動することが知られています。
速度や心拍数と合わせて確認したいのが自分自身が感じる強度「主観的強度」です。
身体コンディションは、毎回練習毎に異なるため、トレッドミルの傾斜と速度が同じであっても、自分が感じるきつさは異なります。心拍数が低くても「きつい」と感じることはよくあります。
トレーニングを継続的に行うためには、自分が感じる強度も同様にコントロールしていく必要があります。
多少余裕を持った状態でトレーニングを行うことで、オーバートレーニングによる怪我を防いだり、トレーニングに継続性を持たせることができます。
心拍数を正確に測定する
市民ランナーが最も簡単に心拍数を測定する方法は「光学心拍計」が付いたランニングウォッチを使用することです。
高負荷なインターバル等を行わない等であれば、ガーミンの最新機種(Forerunner 255等)であればかなり正確に心拍数を測定することができます。
しかし、ランニングウォッチでの測定では精度高く心拍数を測定することができないため、強度管理のためには心拍ベルトをおすすめします。
天候や季節に左右されずにトレーニングを行うことができるトレッドミルは、上手く活用できればトレーニング効果を高めることが可能です。
是非、本記事を参考にトレッドミルでのトレーニングを行ってみてはいかがでしょうか。
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