【ランニングトレーニングモデルの紹介】市民ランナーに適しているモデルを検討

トレーニングモデル
こんな疑問を解消
  • トレーニングメニューの作り方がいまいちわからない
  • どのくらいの割合で「高強度トレーニング」を行えばいいの?
  • 自分に合ったトレーニングモデルがどれなのかわからない

 ランニングを長く継続していると、自分自身でトレーニングメニューを考えて練習を行うことも一つの楽しみになっているのではないでしょうか?

 私自身は、ヤコブインゲブリクトセン選手が取り入れている「閾値トレーニングモデル」に着目して、自分自身のトレーニングを構築しています。

 ランニングを始めとした持久性トレーニング種目での記録向上を目指したトレーニングモデルとしては、主に3種類あります。

3種類のトレーニングモデル
  • ピラミッド型トレーニングモデル
  • ポラライズドトレーニングモデル
  • 閾値トレーニングモデル

 この中で、閾値トレーニングモデルは諸説ありますが、ここではノルウェーのエンデュランス系競技者の間で広く採用されている「ノルウェー式トレーニングモデル」で説明します。

 本記事では、これらの3種類のトレーニングモデルを比較・解説しながら、どのトレーニングモデルが市民ランナーに適しているかを解説していきます。

この記事を書いた人
日比野就一

社会人からランニングを始めました。
理論に基づいたトレーニングで、
どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
競技志向で取り組んでいます。
自己紹介・記録変遷はこちら

★自己ベスト
 1500m 4:25(2022/08)
 5000m 16:01(2022/09)
 10000m 33:44(2021/12)
 ハーフ 1:12:29(2022/03)
 フル 2:43:55(2024/11)

この記事を書いた人
日比野就一

    社会人からランニングを始めました。
    理論に基づいたトレーニングで、
    どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
    競技志向で取り組んでいます。
    自己紹介・記録変遷はこちら

    ★自己ベスト
     1500m 4:25(2022/08)
     5000m 16:01(2022/09)
     10000m 33:44(2021/12)
     ハーフ 1:12:29(2022/03)
     フル 2:43:55(2024/11)

carb-upper
carb-upper

目次

トレーニング強度の定義

 トレーニング強度は、以下のように5つに分類することができます。

スクロールできます
運動強度強度名称強度区分※1 %HRmax※2 %VO2max※3 血中乳酸濃度
mmol/L
zone1Easy低強度60~7150~650.8~1.5
zone2Moderate低~中強度72~8266~801.5~2.5
zone3LT中強度83~8781~872.4~4.0
zone4OBLA高強度88~9288~934.1~6.0
zone5VO2max高強度93~10094~100>6.1
Sprint高強度-100~-
表1 トレーニング強度の5分類+1(zone1~zone5とsprint)
用語解説
  • ※1 %HRmax:最大心拍数に対する割合。
  • ※2 %VO2max:最大酸素摂取量に対する割合。
  • ※3 血中乳酸濃度:血液中の乳酸濃度。専用の測定機器でしか測ることができない。競技レベルが向上すると、同じ強度でも血中乳酸濃度の数値は低下する傾向がある。

※レペティショントレーニングやスプリント系のトレーニングはzone5以上の高強度に分類されます。

トレーニングモデルの解説

 ランニングトレーニングの代表的な3つのトレーニングモデルを紹介していきます。

ピラミッド型トレーニングモデル

 ピラミッド型トレーニングモデルは、zone1に最も多くの時間を割き、zone1~zone5までボリュームが減っていくようなトレーニングモデルです。

 それぞれのzoneでのトレーニング割合を示すと、以下のようになります。

 ※図で示した割合はあくまで、ピラミッド型であることがわかりやすくした例です。この割合が適している、と示しているわけではありません。

ピラミッド型トレーニングモデル
図 ピラミッド型トレーニングモデルの強度割合

 例えばピラミッド型の典型的なトレーニング例は次の通りです。

ピラミッド型トレーニングモデルメニュー例
  • 月曜:Easy Jog
  • 火曜:マラソンペース走 10km
  • 水曜:Easy Jog
  • 木曜:テンポ走 5km
  • 金曜:Easy Jog
  • 土曜:VO2maxインターバルトレーニング 1000m * 5
  • 日曜:Long Jog

ポラライズドトレーニングモデル

 ポラライズドトレーニングモデルは、中強度に分類されるトレーニングを行わず、低強度と高強度でトレーニングを構成するモデルになります。

 それぞれのzoneでのトレーニング割合を示すと、以下のようになります。

ポラライズドトレーニングモデル
図 ポラライズドトレーニングモデルの強度割合

 日本の市民ランナーは、ポラライズドトレーニングモデルを採用しているランナーが多いと思われます。

 フルマラソンレース前になると、マラソンペースでのトレーニングが増えますが、そうなるとzone3でのトレーニングが増えることになります。

 ポラライズドトレーニングモデルのメニュー例は次の通りです。

ポラライズドトレーニングモデルメニュー例
  • 月曜:Easy Jog
  • 火曜:テンポ走(Tペース走) 5~8km
  • 水曜:Easy Jog
  • 木曜:Easy Jog
  • 金曜:VO2max インターバルトレーニング 1000m * 5
  • 土曜:Easy Jog
  • 日曜:Long Jog

 ダニエルズのランニング・フォーミュラで紹介されているTペース走はLT強化が主な目的と記載がありますが、Tペース走の実際の強度は、LTを超えていてOBLAに近い強度となります。

 Tペース走を行うと、血中乳酸濃度は4.0mmol/Lを超えるため、高強度に分類されます。

 週一回のLT走、週一回のインターバル走でメニューを構成すると、それはポラライズドトレーニングモデルです。

※ただし、Tペース走をマラソンペース程度で行っているランナーは、テンポ走の強度は中強度となります。

閾値トレーニングモデル(ノルウェー式)

 最後に紹介するのは、閾値トレーニングモデルです。

 ノルウェーの中距離選手、ヤコブインゲブリクトセン選手が採用しているトレーニングモデルで有名です。

 このトレーニングモデルの発端は、同じくノルウェーの長距離選手であったマリウスバッケン選手の理論です。

 マリウスバッケン選手が提唱しているのは「Double Threshold」モデルです。一日二回の閾値トレーニングを週2回取り入れます。

 また、週1回の高強度トレーニング(本文中では要素Xと呼ばれる)を取り入れます。

 それぞれのzoneでのトレーニング割合を示すと、以下のようになります。

閾値トレーニングモデル
図 ノルウェー式閾値トレーニングモデルの強度割合
ノルウェー式閾値トレーニングモデルメニュー例(ヤコブ選手)
  • 月曜:Easy Jog
  • 火曜:AM 6min*5 r=60sjog PM 1000m*10 r=60sjog
  • 水曜:Easy Jog
  • 木曜:AM 6min*5 r=60sjog PM 400m*25 r=30sjog
  • 金曜:Easy Jog
  • 土曜:Hill sprint 200m*20 r=jogback
  • 日曜:Long Jog

 ヤコブ選手は、上記のメニュー以外にも、プライオメトリックス系の神経系トレーニングなどを導入しているようですが、詳細は明らかになっていません。

carb-middle
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どのトレーニングモデルが優れているか?

 上で紹介した3つのトレーニングモデルを比較して、どのトレーニングモデルが優れているのか?を決めることはできません。

 どのトレーニングモデルでも、成功しているランナーがいます。

 ただし、ひとつ言えることは、日本の市民ランナーが行っているトレーニングメニューはほとんどの場合、ポラライズドトレーニングモデルに分類されそうだ、ということです。

 市民ランナーの典型的なトレーニングメニュー構成をもう一度示します。

ポラライズドトレーニングモデルメニュー例
  • 月曜:Easy Jog
  • 火曜:テンポ走(Tペース走) 5~8km
  • 水曜:Easy Jog
  • 木曜:Easy Jog
  • 金曜:VO2max インターバルトレーニング 1000m * 5
  • 土曜:Easy Jog
  • 日曜:Long Jog

 このトレーニングメニューは、ポイント練習を中二日で設定することができます。

 平日は仕事の都合などで練習ができなくなったりすることもあります。

 平日の中でポイント練習とジョグの日を入れ替えることができるので、柔軟性のあるスケジュールになっています。

目標レースと時期によってトレーニングモデルが変化する

 目標としているレースや、レースまでの期間によって、トレーニングモデルは変化します。

 レースから遠い時期の場合は、閾値強度のトレーニング量が増える傾向にあります。具体的には、ModerateからLT強度のトレーニングと、坂ダッシュなどの基礎的なスプリントトレーニングなどを行います。

 一方で、レースに近い時期にはレース強度に近いトレーニングを行います。5000mレースが目標である場合は90~100%VO2max強度で行うインターバルトレーニングやTペースのLT走などがメインになります。

 目標レースがフルマラソンの場合は、レースに近い時期に行うトレーニングはマラソンペース前後で行うため、「中強度」に分類されます。

 このように、目標としているレースや、レースまでにどれくらい期間があるのかによって、採用するトレーニングモデルは変化していきます。

ノルウェー式閾値トレーニングモデルの誤解

 これまで、それぞれのトレーニングモデルについて説明してきましたが、各トレーニングモデルには共通点があります。

 すべてのトレーニングモデルに共通して言えることは、大容量の低強度トレーニングと、ある一定割合の高強度トレーニングが組み合わせられている、という点です。

 ヤコブ選手の大活躍により、二重閾値走(ダブルスレショルド)のトレーニングが話題になっていますが、ノルウェー式閾値トレーニングモデルにも、高強度トレーニング(要素X)が必要な要素であると言われています。

 また、ダブルスレショルドトレーニングは、一日二回の閾値トレーニングを行いますが、片方の閾値トレーニングはzone2に分類される強度で実施されています(血中乳酸濃度2.0mmol/L以下)。

 「一日二回の閾値トレーニングをする」ということだけが独り歩きしているように感じています。

自分に合ったトレーニングモデルで練習をしてみよう

 市民ランナーの間で最も普及しているのはポラライズドトレーニングモデルですが、それが自分に合っているかどうかは、実際に試してみないとわかりません。

 持病などで、「高強度トレーニングがそんなにたくさんできない」、というランナーもいらっしゃると思います。

 長く継続できるような練習が最も適しています。自分に適したトレーニングモデルを見つけてみましょう。

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。

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