※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。改訂履歴は記事の最後に記載しています。
【カシオ ランメトリックスの使い方を徹底解説】ランニングフォーム診断用アプリ
- 自分自身でランニングフォームを診断して改善したい
- ランメトリックス(Runmetrix)ではどんなデータが測定できるの?
- ランメトリックス(Runmetrix)で測定したデータを活用する方法が分からない
本記事ではこんな悩みを解消します。
これまで指導を受けたことが無い初心者の方やさらなる記録向上を目指した中級者の方で、ランニングフォームを診断してもらって改善したいと思っている方も多いと思います。
カシオのランメトリックスを活用すると、客観的に自分自身のランニングフォームを診断することができ、改善するにはどうしたらよいかのアドバイスをもらうことができます。
私は社会人から本格的にランニングを始めた市民ランナーです。月500km程を走り競技志向でランニングに取り組んでいます。
ランニングを始めて3年ほど経過し、ハーフマラソンでの記録が1時間12分29秒ほどですが、さらなる記録向上を目指して日々トレーニングを行っています。
私自身、指導者に見てもらうような機会が無く、自分自身でフォーム改善をしていく必要があります。
ガーミンのランニングダイナミクスポッドやカシオのランメトリックスを活用して、ランニングフォームの改善に取り組んでいます。
ここでは、ランメトリックスの使い方、得られるランニングデータの見方や活用方法について徹底解説します。
本記事を読めば、ランメトリックスのデータを活用して、自分自身のランニングフォーム改善のきっかけをつかむことができます。
- ランメトリックスで自分一人でもランニングフォームを診断し改善することができる
- ランニングウォッチ(連携できるモデルは限られています)との連携が可能
- フォーム改善を積極的に行おうとしているランナーにおすすめ
- 「総合スコア」で自分自身のランニングフォームを点数付けできる
- 20項目のランニングデータを得ることができ、左右毎/ラップ毎に各種データが見れる
- 目標に対して不足している項目に着目し改善に取り組む
ランメトリックスとは:ランニングフォーム診断&改善アプリ
ランメトリックス(Runmetrix)とは、カシオ(CASIO)のセンシング技術とアシックス(ASICS)のスポーツ工学の知見を融合した、ランニングフォーム診断&改善をするためのアプリケーションです。
ランメトリックスモーションセンサーを装着してランニングを行い、スマートフォンアプリと連携させることで、ランニングデータを得ることができます。
モーションセンサーだけでも使用可能
ランメトリックスはモーションセンサー本体だけでも使用可能です。
ランニングを行った後にセンサーをスマホと連携することで、ランニングデータをスマホに転送することができます。
ランメトリックスとランニングウォッチ対応機種
私自身はモーションセンサー本体だけで使っていますが、ランニングウォッチと連携させて使うことができます。
モーションセンサーだけで使うと、計測開始/停止の操作がしにくかったり等、使い勝手はいまいちですが、ランニングウォッチと連携させることで、ウォッチでセンサーを操作できます。
2022年12月現在、ランメトリックスと連携できるランニングウォッチは以下の通りです。
- GSR-H1000AS
- GSW-H1000
- WSD-F20
- WSD-F21HR
- WSD-F30
- Apple Watch(Series2以降)
どんな人に効果的なのか?
ランメトリックスはこんな人に効果的です。
- ランニングを始めたばかりで指導者がいない初心者
- 指導者はいるけど自分自身でフォーム改善に取り組みたい方
- 仕事や家庭の都合で普段から一人でしている中級者
ランニングフォームを改善することは難しいです。
フォーム改善がうまくいけば、大きく記録を伸ばすことができる可能性を秘めています。
ランニングフォームを改善して記録を伸ばしたいと思っている方は、ランメトリックスを試して損はないと考えます。
ランメトリックスでできる事
ランメトリックスでできることを解説していきます。
ランメトリックスでは、「総合スコア」と「各ランニングデータ指標」が分かります。
総合スコア:6項目の総合評価
総合スコアは、6個の項目を総合的に評価して点数付けされます。
各種ランニングデータ指標
ランニングデータとして得られる指標は次の通りです。
- ペース
- ラップタイム
- ピッチ[steps/min]
- ストライド[m]
- ストライド身長比
- 体幹の後傾[°]
- 上下動[cm]
- 上下動身長比
- 腰の沈み込み[%]
- 骨盤の左右傾き[°]
- 骨盤の引き上げ[°]
- 骨盤の回転[°]
- 骨盤回転タイミング
- 左右方向衝撃[m/s2]
- 蹴りだし時間[ms]
- 接地時間[ms]
- 接地時間率[%]
- 着地衝撃[m/s2]
- 蹴りだし加速度[m/s2]
- 減速量[m/s]
- スティフネス[kN/m・kg]
ランニングデータは各指標項目毎に「一回の測定における総合データ」・「ラップ毎のデータ」の両方を確認することができます。
総合データについては左右のデータがそれぞれ示されます。
パーソナルコーチング①:フォーム改善プログラム
測定したランニングデータを元に、理想的なランニングフォームを実現するための改善点を示してくれます(アプリ下部「コーチ」を選択)。
ランメトリックスを使い続け、最新のランニングデータを反映させることができ、最新データに沿ったアドバイスを受けることが可能です。
視覚的に分かりやすいように、3Dモーションを見ながらランニングフォームを確認することができます。
パーソナルコーチング②:ランニングプログラム
どんなトレーニングを行えばよいかわからない方に向けた「ランニングプログラムの提案」もしれくれます。
目標レースの設定等をすることによって、レースまでのトレーニングメニューを提示してくれます。
ランメトリックスの使い方
本記事では、ランメトリックス本体だけで使用する場合の使い方を紹介します。
使い方の詳細やスマートフォンアプリとのペアリング方法は取扱説明書をご覧ください。ここでは「これだけやれば走りだせる」方法をお伝えします。
まずは本体にカバーをセットします。
続いて、クリップを引き上げパンツのウェスト部に挟みます。留め具部を引き上げることでクリップが動くようになります。
電源のONは本体上部のボタンを長押しします。
電源をONにしたのち、もう一度ボタンを2秒程度長押しすることで計測を開始します。
計測を終える時はボタンを二回連続で押します。
ボタンを押したときの動作をまとめると次の通りです。
- 1回長押し:電源ON
- (電源ONの状態で)2秒長押し:ランニングデータ測定開始
- (測定開始してから)2回押し:測定終了
- (電源ONの状態で)ボタン長押し:電源OFF
ランメトリックスの「総合スコア」解説
ランメトリックスで算出される総合スコアは下表の項目で算出されます(ランメトリックスアプリの説明を引用)。
評価項目 | 項目の説明 | 関連指標 |
---|---|---|
骨盤を軸とした全体の運動 | 身体の各部位をバランスよく 使うための動きができているか | ・腰の沈み込み ・骨盤回転タイミング ・蹴りだし時間 |
動きの力強さ | ストライドを伸ばして力強い 走りをするための動きが 出来ているか | ・ストライド身長比 ・骨盤の引き上げ ・骨盤の回転 |
スムーズな重心移動 | 効率よく前に進むために、 左右ブレやブレーキを 小さく抑えられているか | ・左右方向衝撃 ・減速量 |
左右対称性 | 左右で特徴に差が無く、 均整の取れた走りが 出来ているか | |
安定した姿勢 | 筋や関節などへの負担を抑える ため骨盤の不安定な動きが 無いか | ・体幹の後傾 ・骨盤の左右傾き |
負担の少ない接地 | 衝撃による負担を抑えるために 腰にかかる力を 小さく保てているか | ・上下動身長比 ・着地衝撃 ・蹴りだし加速度 |
それぞれの評価項目に関わる関連指標を改善することで総合スコアが向上します。
総合スコアを示したレーダーチャートには赤い線で示された目標スコアと青い線で示された現在のスコアが示されています。
赤い線を目標にフォーム改善を行っていきます。
ランメトリックスを活用して、理想のランニングフォームに対して特に自分が不足している点を明らかにし、改善に取り組むことが望ましいです。
各種指標の詳細解説とランニングフォーム改善方針
以下では、各種ランニングデータ指標と改善方針を解説していきます。
各指標の解説では、ランメトリックスアプリやガーミンから引用したデータや目安値を示しています。
各項目において、私自身も参考にしている解説動画も紹介します。
※目安値はあくまでも参考データです。自分自身の測定データと比較し参考にしてみてください。
ピッチ
ピッチは「1分当たりの歩数」です。
ランナーの性別・身長・体重・身体的特徴によって、最適なピッチは異なります。
参考として、ダニエルズのランニングフォーミュラでは180 steps/分が推奨されています。
ピッチが少なすぎることによるデメリットは、着地衝撃が大きく怪我につながる可能性があること、一歩当たりに使う筋力が大きいことで早く疲労してしまうこと等です。
自分がフルマラソンを走りきれるペースで走ったときのピッチが180 steps/分未満である場合にピッチを上げることを考える、程度で良いと考えます。
ストライド(ストライド身長比)
ストライドは1歩で進む距離です。
同じピッチが維持できていれば、ストライドが長い分だけ速く進むことができるため、記録を高める上では非常に重要な指標となります。
ストライドは伸ばそうと意識して伸びるものではなく、ランニングフォームを改善した結果、「自然と伸びるもの」だと考えます。
身長が高ければストライドは長くなりますので、ストライド身長比でデータを見るようにします。
体幹の後傾
接地中に骨盤や体幹がのけぞると「体幹が後傾した」となります。
基本的には身体全体を「前傾」させることで効率よく前に進むことができます。
両足で立ち、自然と前に倒れこむように体全体を前傾させるイメージです。
次の解説がとても分かりやすいので参考にしてみてください。
上下動(上下動比)
身体の上下方向の動きです。数値が大きいほど沈み込みが大きく跳ねる走りになっています。
ただし、ストライドが大きくなると上下動も大きくなる傾向がありますので、ストライドに対する上下動の大きさを表した「上下動比」で評価します。
上下動比が小さいほどエネルギーロスが少なく、前方向に効率よく進んでいると言えます。
参考程度ですが、ガーミンで示されている上下動比の目安値は次の通りです。
ランナーの割合 | 上下動比 |
>95% | <6.3% |
70~95% | 6.3~8.2% |
30~69% | 8.2~9.9% |
5~29% | 9.9~11.8% |
<5% | >11.8% |
腰の沈み込み
接地後に膝が曲がって腰の位置が下がる動きです。身長を100%とした比率で、数値が大きいほど深く沈み込んでいるということを表します。
自分の重心よりも前方で接地すると、大きく膝が曲がり沈み込むフォームとなります。できるだけ体の真下に着地し、体の沈み込みが少ないフォームを目指します。
ペース[/km] | 3:00 | 4:00 | 5:00 | 6:00 |
目安値[%] | 3.3 | 3.4 | 3.4 | 3.5 |
次の動画が参考になります。
骨盤の左右傾き
接地している脚と反対側の骨盤が傾いて下がる動きを表します。数値が大きいほど接地中の骨盤が傾き不安定な姿勢であることを示します。
接地している側の臀部、特に中臀筋(ちゅうでんきん)が弱いと、接地脚で支え切れないため骨盤が傾く要因となります。
お尻周囲の筋力を鍛えることで左右の骨盤傾きを抑制することができます。
ペース[/km] | 3:00 | 4:00 | 5:00 | 6:00 |
目安値[%] | 5.5 | 5.4 | 5.3 | 5.2 |
骨盤の引き上げ
接地から蹴り出しにかけて、スイング脚側に下がった骨盤を引き戻す動きです。
プラスに大きいと、スイング脚側の骨盤を高く引き上げた状態で蹴りだしができていることになります。
身体後方にスイングした脚を引き戻す際に、股関節から大きく動かせているかどうかの指標になります。
ペース[/km] | 3:00 | 4:00 | 5:00 | 6:00 |
目安値[%] | 5.8 | 5.7 | 5.5 | 5.3 |
骨盤の回転
骨盤をローテーションさせる動きの大きさを示します。数値が大きいほど骨盤を大きく回した力強い走りになります。
骨盤の引き上げ数値と同様に、脚を股関節から動かせているかどうかの指標になります。
ペース[/km] | 3:00 | 4:00 | 5:00 | 6:00 |
目安値[%] | 24.3 | 22.4 | 20.5 | 18.6 |
骨盤回転タイミング
接地の瞬間と骨盤を回転させるタイミングのギャップを表します。
ゼロは接地と骨盤を回転させるタイミングが一致していることを意味しています。
プラスに大きいと接地後に骨盤を大きく回してスイング脚側を前に振り出すような走り、マイナスに大きいと、接地より骨盤を早く回しはじめて脚を体の真下に引き付けるような動きになります。
ペース[/km] | 3:00 | 4:00 | 5:00 | 6:00 |
目安値[%] | 16 | 16 | 16 | 16 |
骨盤に関わる動作(引き上げ・回転・タイミング)についての解説は、次の動画が参考になります。
左右方向衝撃
身体の左右方向にかかる衝撃の大きさを表します。
一般的に数値が大きいほど左右方向の不安定性が大きい走りになっています。
骨盤の左右傾きと同様に、中臀筋が弱いと体が支えきれずに、左右方向にぶれてしまいます。
左右方向衝撃が大きい場合は、お尻回りの筋力アップを行います。
ペース[/km] | 3:00 | 4:00 | 5:00 | 6:00 |
目安値[%] | 53.2 | 44.8 | 38.8 | 35.1 |
蹴りだし時間
接地後に身体が沈み込んでから足が離れるまでの時間です。
数値が大きいほど1歩ごとのキックに時間がかかった走りになっており、短い時間で効率よく蹴りだしていくことが求められます。
腰の沈み込み時間を短くしていけば、蹴りだし時間も短くなっていくと考えられます。
ペース[/km] | 3:00 | 4:00 | 5:00 | 6:00 |
目安値[%] | 120 | 122 | 126 | 131 |
接地時間
接地してから蹴りだして足が地面から離れるまでの時間です。
一般的にペースが速くなるほど短くなります。
着地衝撃
接地の直後に身体にかかる衝撃の大きさです。
数値が大きいほど脚への負担が大きくなります。
体の前方に接地することで衝撃は大きくなりますので、重心の真下に接地するようにします。
ペース[/km] | 3:00 | 4:00 | 5:00 | 6:00 |
目安値[%] | 35.7 | 29.6 | 24.7 | 21.1 |
蹴りだし加速度
地面を蹴りだす加速度の大きさです。
数値が大きくなるほど強い力で地面をキックしていることになります。
ペース[/km] | 3:00 | 4:00 | 5:00 | 6:00 |
目安値[%] | 59.7 | 52.0 | 46.7 | 43.8 |
減速量
接地後のブレーキの大きさです。
数値が大きいほど1歩ごとのブレーキが大きい走りになっています。
ペース[/km] | 3:00 | 4:00 | 5:00 | 6:00 |
目安値[%] | 0.61 | 0.53 | 0.48 | 0.46 |
ブレーキをかけないようなランニングフォームが重要だと言われることは多いのですが、身体をどのように動かせば実現できるのかはとても難しいです。
その中でも、高岡尚司さんの解説動画はとても参考になりました。
ブレーキをかけない走法は、蹴りだし時間・接地時間・着地衝撃・蹴りだし加速度の改善にもつながる重要な要素です。是非参考にしてみてください。
スティフネス
脚全体を「バネ」と見立てた時のバネの硬さを表します。
数値が大きいほど接地後の沈み込みが小さく、短い接地時間で地面を蹴りだす「硬いバネ」のような走りになります。
ガーミンランニングダイナミクスポッドとの比較
私自身、ランニングデータを得るセンサーとしてガーミンのダイナミクスポッドも使用しています。
ランメトリックスとランニングダイナミクスポッドで得られたデータを比較します。
タイツの上にショートパンツを着用し、タイツ側にダイナミクスポッド、ショートパンツ側にランメトリックスを着用して測定しました。
ランメトリックスの方が、得られるデータ種類が圧倒的に多いので、共通して得られるデータのみを比較します。
ピッチ | ストライド | 上下動 | 接地時間 | |
ランメトリックス | 170 | 1.32 | 9.8 | 195 |
ダイナミクスポッド | 170 | 1.31 | 9.8 | 208 |
ピッチ、ストライド、上下動は一致しました。接地時間が5~10%程度乖離しています。
優劣をつけることはできませんが、参考にしてみてください。
ランメトリックスの使いにくい点
ランメトリックスの使いにくい点は以下3点です。
- センサー本体だけだと、測定開始や終了の操作がやりにくい
- アプリの各種ランニングデータ指標が見にくい(画面が小さい)
- データがCSVファイル等の形式でダウンロードできない
本格的にランニングへ取り組んでいる方だと、ガーミンやカロスのランニングウォッチを使っている方が多いと思います。
ランメトリックスは決まった機種としか連携できないため、本体で操作する必要があるのですが、測定開始と終了の状態が分かりにくく、操作性が良くないと感じます。
また、総合スコアが算出され、ラップ毎に左右脚別のランニングデータが見えることは良いのですが、スマートフォンアプリ専用であるため、データを眺めるには画面が小さいと感じます。
パソコンでもデータが見れるようになるとよいと思います。
ランニングデータがCSV等の形式でダウンロードできない点も改善点だと感じます。
私が愛用しているガーミンでは、CSVやFit形式でデータをダウンロードできます。
ランメトリックスを使ったランニングフォーム改善事例
私自身、ランメトリックスを使ってランニングフォームの改善に取り組んでいます。
まだ、記事にできるようなデータが溜まっていませんが、都度アップデートしていきたいと思います。
ランメトリックスの購入方法
ランメトリックスは楽天・Yahoo・アシックス公式通販で購入することができます。
割引セールにかかっているところは見たことがありません。ほぼ定価で購入することになります。ポイントが付く分、楽天やYahooでの購入がおすすめです。
ランニングフォームを積極的に改善したいと考えているランナーの方は、一度試してみる価値はあると思います。
コメント
コメント一覧 (2件)
たいへん参考になりましたが、動画の参照元が違ってましたので御修正お願いします。
誤:その中でも、高橋尚司さんの解説動画はとても参考になりました。
正:その中でも、高岡尚司さんの解説動画はとても参考になりました。
葛西様
コメントありがとうございます。
間違えていた部分を修正しました。