【リカバリーウェアの効果】本当に効く?科学的根拠で4タイプを徹底比較

- リカバリーウェアって本当に効果があるの?
- ヒートテックや普通のインナーと何が違うの?
- 運動中と就寝中、どちらで着るのが正解?
TENTIALのBAKUNEをはじめとして、ワークマンからも「リカバリーウェア」が発売されています。本記事を執筆した2026年4月時点で、リカバリーウェアの人気が高まっているように感じます。
高価な商品も多く、「本当に効果があるのか」と疑問を感じているランナーは少なくないと思います。コンプレッション・遠赤外線・ナノ金属・磁気と、タイプも多種多様で、何を選べばよいかわからないという声もよく聞きます。
私自身は、ランニングトレーニングからのリカバリーや睡眠の質を高めることには非常に興味があります。リカバリーウェアを着るだけでリカバリーの質が高まるのであれば、喜んで買いたいです。
しかし同時に、私もリカバリーウェアの効果については疑問を持っていました。そこで今回、リカバリーウェアの効果について調べてみることにしました。
この記事では、市場に出回る4タイプについて、過去行われた研究をもとに科学的根拠を整理します。そのうえで、どんなリカバリーウェアを選べばいいかについて解説、提案します。
本記事を読めば、リカバリーウェアにはどんなタイプがあり、またその効果について理解することができます。
リカバリーウェアの種類は大きく分けて4種類
市場に出回るリカバリーウェアは機能ごとに4つに分けて整理することができます。
コンプレッション(着圧)タイプ
コンプレッション(着圧)タイプは、脚を一定の圧力で締めつけることで静脈の血流を促進するウェアです。
最大の特徴は「グラデーション圧」と呼ばれる段階的な圧力設計です。足首が最も高く、膝・太ももに向かうにつれて圧力が下がります。

この圧力差が、静脈の血液を心臓方向へ押し戻すポンプの役割を果たすと考えられています。代表的なブランドはCW-X・2XU・スキンズなどです。
私自身はリカバリー目的ではないですが、レースで2XUやSA1NTのコンプレッションタイツを履いています。

遠赤外線(バイオセラミック)タイプ
遠赤外線タイプは、バイオセラミックなどの素材から遠赤外線を放射することで、体内の熱循環を高め、血流促進を目指すウェアです。
最近、どのメーカーからも発売されているタイプがこの遠赤外線タイプです。就寝中の着用を前提とした製品が多いのも特徴です。
代表的なメーカーとしては、TENTIAL(テンシャル)やVENEX(ベネクス)が有名です。
ナノ金属・鉱物繊維タイプ
ナノ金属・鉱物繊維タイプは、チタン・プラチナなどのナノレベルの金属を繊維に染み込ませた素材を使ったウェアです。
代表例はファイテンのアクアメタル・メタックス技術を使った製品です。「自律神経へのアプローチ」による筋緊張緩和・リラックス促進を主な効果として謳っています。
磁気タイプ
磁気タイプは、アパレルに永久磁石を内蔵し、静磁場による局所的な血流促進を目的とするウェアです。
コラントッテが代表的なブランドで、タイツ・ショーツ・サポーターなど幅広いラインナップを展開しています。
各タイプに科学的根拠はあるのか
4タイプそれぞれについて、科学雑誌に掲載された研究データをもとに評価してみました。以下では、各タイプにおける研究結果を紹介していきます。
コンプレッション:回復期着用で有益な効果
まず運動中の着用についてです。2025年に発表された、複数の研究をまとめて統計解析した研究(メタアナリシス)では、28の試験・約600人を対象にランニング中のコンプレッションソックス着用が調査されています ※1。
その結果、パフォーマンス・心拍数などの生理指標・主観的なきつさのいずれにも、着用しない場合と統計的に意味のある差は見られませんでした ※1。
コンプレッションに効果が期待されてきた理由のひとつが、筋肉の振動の抑制です。下り坂走行中に高圧コンプレッションを着用した実験では、大腿四頭筋の組織振動が抑えられ、筋肉痛が8.3%改善しています ※3。
一方、走り終わった後の「回復期着用」では、21の研究を体系的にまとめたレビューによると、回復期の筋機能回復や遅発性筋肉痛(DOMS)の軽減に有益な可能性が示唆されています ※2。
56kmのウルトラマラソンでは、コンプレッションソックス着用群で足首の浮腫(むくみ)が統計的に明確な差をもって抑えられています ※5。
107kmのウルトラトレイル後に24時間コンプレッションを着用した研究では、ふくらはぎの筋肉痛の増加が着用群では非常に小さく抑えられました(着用群 11% vs 非着用群 112%)※6。
ただし、筋損傷の指標である筋損傷マーカー(CK:クレアチンキナーゼ)への効果は、複数の研究で統計的に意味のある差が確認されていません ※5 ※6。主観的な痛みの軽減と、血液中の筋損傷マーカーへの効果は別物と考える必要があるようです。
着用部位も重要です。大腿部を含むタイツでは筋損傷マーカーの上昇が統計的に明確な形で抑えられましたが、下腿部のソックスでは同様の効果は見られませんでした ※4。
回復期着用がその後のパフォーマンスに与える影響も確認されています。コンプレッション着用で1時間回復した後に5kmを走ると、タイムの落ちが統計的に明確に小さくなるという結果が出ています ※7。
- 運動中着用:パフォーマンス・生理指標への効果はほぼなし ※1
- 回復期着用:浮腫の抑制・主観的な筋肉痛の軽減に有益な可能性 ※2 ※5 ※6
- 着用部位:下腿ソックスより大腿部を含むタイツが効果的 ※4
遠赤外線:主観的な筋肉痛軽減に傾向あり、客観的指標には効果なし
遠赤外線ウェアについては、2021年に11の研究を体系的にまとめたレビュー※8が発表されています。そのレビューの結論は「研究間で結果が一致せず、確固たる結論は出せない」というものでした 。
個別の研究を見ると、エリートサッカー選手を対象に参加者・研究者の双方が条件を知らない状態で行われた実験では、筋損傷マーカー・筋力・ジャンプ力には統計的に意味のある差がなかった一方、48〜72時間後の主観的な筋肉痛は遠赤外線着用群でやや低い傾向が見られています ※9。
フットサル選手を対象にした2週間の夜間着用実験でも、筋肉痛やトレーニング疲労が着用群で低い傾向が確認されています ※10。
遠赤外線ウェアで注意が必要な点が着用時間です。効果を得るには1日9時間以上の着用が必要との指摘があります ※11。つまり、短時間だけ着るだけでは効果が出にくいということです。
また、遠赤外線タイプの研究には製品メーカーが資金を提供しているものが複数あります。偽薬を使った比較条件の設定も難しく、思い込みによる効果(プラセボ効果)を完全には排除できません。
ナノ金属・磁気:現時点でエビデンスなし
ナノ金属・鉱物繊維タイプ(ファイテン・ベネクスPHT繊維等)については、科学雑誌に掲載された第三者による運動回復の研究を確認することができませんでした。
メーカー独自の検証データは公表されていますが、第三者による研究が存在しない段階では、科学的根拠があるとは言えない状態です。
磁気タイプについては、7件の関連研究が確認されました。ただし、ウェア型の磁気に限定した場合、回復効果を示す信頼性の高い研究は確認されていません。
各タイプにおけるエビデンス(研究結果などの証拠)を強弱で示すと以下の通りになります。コンプレッション系は効果があると言えそう、遠赤外線は主観的な効果にとどまり、それ以外はエビデンス無し、という結果でした。

ヒートテックや普通の着圧インナーとの違いは?
「高いリカバリーウェアを買わなくても、ヒートテックや安い着圧インナーで十分では?」という疑問を持っている方も多いと思います。
ヒートテックは体から出る水分を吸収して熱に変える保温素材です。コンプレッションが備える「グラデーション圧(段階的な着圧)」の仕組みはなく、そもそも目的が異なります。
一般的なストッキングや補正インナーにも着圧機能はありますが、スポーツ用コンプレッションとは圧力設計が異なります。研究で使われる圧力範囲は15~30 mmHgです。ストッキングや補正インナーは圧力がもっと低いです。
「ワークマンやニトリのリカバリーウェアは効果があるのか?」という疑問もよくあります。遠赤外線・ナノ金属系の製品は、価格帯にかかわらず現状では科学的根拠が十分ではありませんので、効果の有無は断言できない状態です。
コンプレッションタイプを選ぶ際は、圧力値(mmHg)が表示されている製品を選ぶことが一つの目安になります。
医療機器認定の意味とその効果について
リカバリーウェアの中には「一般医療機器として認定されています」と謳う製品があります。「医療機器=効果が証明されている」と感じるかもしれません。
しかし、日本における「一般医療機器(クラスⅠ)」の認定は、主に安全性の確認に基づくものであり、製品の有効性(効果があること)の証明ではありません。
認定を受けていない製品が「効果がない」わけでもありません。認定の有無と、科学的なエビデンスの有無は別の話です。
製品を選ぶ際は認定の有無より、第三者による研究でどのような効果が確認されているかを確認することが大切です。
効果を引き出す着用タイミング
リカバリーウェアを着るとすれば、いつ着るのが効果的なのでしょうか。タイプ別に整理してみました。
運動後すぐ着替える(コンプレッション)
コンプレッションタイプについては、運動中よりも「走り終わった直後から着用する」ことに科学的根拠があります ※1 ※2。
浮腫の抑制・主観的な筋肉痛の軽減・その後のパフォーマンス回復に効果が見られるのは、いずれも回復期着用のデータです ※5 ※6 ※7。走り終えたらすぐに着替えることを習慣にするのがよいと考えられます。
就寝中の着用(遠赤外線系)
遠赤外線・ナノ金属・磁気タイプは、就寝中の長時間着用を前提とした製品が多く、使用方法としては理にかなっています。
遠赤外線タイプで効果を得るには1日9時間以上の着用が必要とされており ※11、就寝中の着用がほぼ唯一の現実的な手段です。効果への期待を持ちつつも、過度な期待は禁物です。

まとめ:科学的根拠で選ぶならどのタイプか
- コンプレッション(回復期着用):浮腫・筋肉痛軽減に最もエビデンスが豊富
- 遠赤外線:主観的な筋肉痛軽減に傾向あり(客観的指標への効果は未確認)
- ナノ金属・磁気:現時点で第三者による研究なし
科学的根拠で選ぶなら、コンプレッションタイプの回復期着用が現時点で最も信頼性があるようです。ただし、劇的な効果よりも「軽度の筋肉痛軽減・浮腫抑制」を期待するのが現実的です。
遠赤外線タイプは主観的な疲労感の軽減に傾向が見られます。「なんとなく脚が軽い」という感覚が完全に思い込みによる効果(プラセボ効果)とも言い切れませんが、筋損傷の指標に対しての効果は現状では確認されていません。
ナノ金属・磁気タイプは、メーカーの主張とは別に、第三者による審査済みの研究が存在しません。購入を検討する際は、その点を念頭に置くことをお勧めします。
参考文献
※1 Telles et al. (2025) “Effects of compression socks on running: a systematic review and meta-analysis” PMID: 40204277
※2 Mota et al. (2020) “Compression stockings and exercise performance: a systematic review” PMID: 32158283
※3 Ehrström et al. (2018) “High-pressure compression garments worn during downhill running” PMID: 30555337
※4 Mizuno et al. (2017) “Effects of thigh compression garments on muscle damage markers after exercise” PMID: 29123488
※5 Geldenhuys et al. (2019) “Effects of lower-leg compression garments during a 56km ultramarathon” PMID: 31034342
※6 Martínez-Navarro et al. (2021) “Full-body compression garment after 107km ultratrail” PMID: 32538286
※7 Brophy-Williams et al. (2019) “Compression garments during recovery and subsequent 5km performance” PMID: 30554612
※8 Bontemps et al. (2021) “Far-infrared emitting garments: a systematic review” PMID: 33956901
※9 Loturco et al. (2016) “Far-infrared garments after plyometric exercise in elite soccer players: a double-blind RCT” PMID: 27601783
※10 Nunes et al. (2020) “Far-infrared garment worn at night during futsal preseason training” PMID: 30113919
※11 Ren & He (2025) “Far-infrared radiation and recovery from eccentric exercise-induced muscle damage” PMID: 40250153







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