【梨状筋・大腿方形筋が原因の座骨神経痛】股関節内部・臀部下部をランニングで痛めた経験

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。改訂履歴は記事の最後に記載しています。

こんな疑問を解消
  • (ランニングが原因の)座骨神経痛で悩まされていて、梨状筋症候群を疑っている
  • 股関節内部、臀部の下の方が痛いけど、安静にしても良くならない
  • 股関節を伸展すると、股関節内部に激痛がある

 ランナーに関わらず、座骨神経痛を患っている方も多いと思います。

 私は、社会人から本格的にランニングを始めた市民ランナーです。月500kmほど走り、競技志向でランニングに取り組んでいます。

 私自身、2023年1月に股関節内部を痛め、競技から一時的に離れることとなりました。安静にしても全く回復に向かわなかったため、鍼治療などに通い始め、やっと、80%程度まで回復することができました。

 これまで経験してきた怪我は、とりあえず運動をやめて安静にしていれば治っていました。しかし今回は、ひたすら安静にしても回復に向かいませんでした。

 同じように悩んでいる方が、もしかしたらいるかもしれないと思い、本記事を執筆しております。

 結果的には、「大腿方形筋と梨状筋が原因の座骨神経痛」が最も可能性が高いと判断しています。これら病名は、あくまでも状況証拠からの判定であるため、真実はわかりません。

 梨状筋が原因の座骨神経痛は特に、梨状筋症候群と呼ばれています。

 私自身の場合は、大腿方形筋と梨状筋に対して集中的に治療を行うことで回復することができ、ランニングを再開できた、という経験をしました。

 本記事では、股関節内部・臀部下部に痛みがあるが、なぜ痛いのかがよくわからない方向けに、私の体験談を紹介します。

 梨状筋症候群や、大腿方形筋による座骨神経痛と診断された方には特に、参考になると考えています。

目次

怪我のきっかけ

 完全に痛めてランニングができなくなったのが2023年1月15日です。当日は、公園にて30kmの草レースがあり、トレーニングの一環で出場していました。

 走る前から左臀部の中の方を痛めていましたが、なんとか走れる状態ではあったため、だましだまし走っていました。しかし、30kmレースの翌日、歩けないくらいの激痛に変わり、完全に怪我をしました。

 痛めた部分は、もっと前から痛めていました。どのくらい前から痛みを感じていたのかは忘れましたが、2022年11月に出場した揖斐川ハーフマラソンの時点では、痛みを感じていたと思います。

 9月の5000mでは痛みを感じていなかったので、9月から11月の間に痛めた、ということになります。9月の5000mでは、自己ベストである16分01秒で走っていたので調子はそこそこ良かったと思います。

 9月から11月の間で行ったトレーニングを見返すと、坂ダッシュを取り入れ始めていました。トレーニング内容で怪我の原因になりそうなものは、この坂ダッシュくらいです。

 推測ですが、この坂ダッシュによって、股関節に対して大きな負荷がかかり、怪我につながったと考えています。

怪我をした直後の状態

 2023年1月16日レース翌日、歩けないくらいになってしまったのでしばらくランニングから離れることにしました。

 特に痛い動作は、股関節を伸展させる動きです。

 股関節を伸展させるというのは、図1のように股関節を曲げ、脚を前に振り出す動きです。

 特に、膝を軽く曲げた状態で足を振り出すと、お尻に激痛を感じました。

図2 特に痛い動き 股関節の進展

 歩く時、走る時、様々なタイミングで股関節の伸展動作が発生します。特にランニング動作では、連続的に股関節を伸展させるため、致命的な痛みでした。

 娘の保育園送迎のために歩くのも、少し不自然な歩き方になるくらいの痛みでした。

 痛みを感じた箇所は、股関節内部です。お尻の位置で言うと「臀部中央部の少し外側の内部(深層部)」と表しておきます(図2)。

図2 臀部の痛めた箇所

 痛みを感じるのが、本当に「体の中の方」だったので、正直なところ、どこが痛くなっているのかよくわからない感覚でした。

 過去に、ハムストリングスの座骨付着部を痛めた経験がありましたが、それとは明らかに違う場所に痛みを感じていたので、痛みが発生している原因はハムストリングスではない、ということは感じていました。

安静にしても治らない:座骨神経痛を疑い始める

 これまでは、どんな怪我でも安静にしていれば回復したので、「今回も同じように安静にしていれば治るだろう」と考え、しばらくランニングから離れることにしました。

 本格的にランニングを始めてから約4年間、怪我していた期間を除いてほとんど休まずにトレーニングを続けていたので、しばらく休養を設けよう、とも思っていました。

 しかし、休み始めても、一向に良くなる気配はありませんでした。歩けないほどの激痛は和らぎましたが、股関節を伸展させたときに感じる痛みはほとんどよくなることはありませんでした。

 股関節を伸展させる動作に加え、座っているときに痛みを感じました。長時間座っていると、立ち上がる瞬間に痛みを強く感じます。

 これまでの経験から、座骨神経痛を疑い始めました。過去ハムストリングスを痛めたときに座骨神経痛について調べたことがあったため、座骨神経痛の症状と似ていると感じたためです。

 座骨神経痛について調べてみると、自分の症状にほとんど合致していました。

 しかし、股関節の伸展で異常に痛みが発生することや、しばらく安静にしていても痛みが引いていかないことに不安を感じました。

 これだけ痛いとなると、股関節周囲の疲労骨折を起こしているかもしれない、とも考えました。

 約3週間経過しても、一向によくならないため、病院に行くことにしました。

病院での診断(梨状筋症候群?)

 家の近くに、スポーツで有名な病院があったため、そちらに行くことにしました。骨に異常がないかどうかを確認するためレントゲンの撮影をしました。

 しかし、骨に異常は見られませんでした。

図3 レントゲン写真

 MRI撮影をすればもう少し詳しく調べることもできる、とも言われましたが、骨に異常がないということは、筋肉に異常がある可能性が高いということを意味していたので、MRI撮影はしませんでした。

 ベッドに横たわって、いくつかの動作で、痛みが発生するかどうかの確認をしてもらいましたが、明確に、どこ場所で痛みが発生している、という診断をもらうことはできませんでした。

 しいて言えば、「痛みが発生している状況から、梨状筋症候群の可能性がある。疲労骨折などではない」、という結果でした。

 レントゲン写真を見て、先生に言われたこととして、「骨が痩せている傾向がある」とのコメントもいただきました。

さらに追加で休養。でも良くならない。

 病院で診断を受けたのが2023年2月上旬でしたが、それから、追加で約1.5か月間の休養をしました。

 いくら休養しても、回復には向かいませんでした。それどころか、痛めていた左足に加え、右足までも同じ個所に痛みが発生してしまいました。

 休養している間、痛めている個所について様々に調べました。最終的にたどり着いた結論は、深層外旋六筋のどれかが原因である座骨神経痛です(図4)。

 坐骨神経は、深層外旋六筋の隙間を通って足の先端まで伸びている神経です。深層外旋六筋と坐骨神経が癒着などを起こしていると、深層外旋六筋が伸ばされたりするときに、座骨神経痛が発生します。

らんしゅー
深層外旋六筋とは、梨状筋・上双子筋・下双子筋・内閉鎖筋・外閉鎖筋・大腿方形筋の総称です

 特に、梨状筋が原因で発生する座骨神経痛は梨状筋症候群と呼ばれます。

深層外旋六筋
図4 深層外旋六筋と座骨神経

 深層外旋六筋が原因となっている可能性が高いと考えた理由は、次の通りです。

深層外旋六筋が原因の座骨神経痛を疑った理由
  • ハムストリングスではなく明らかに股関節の中の方に痛みを感じる
  • 座ったときに痛みが強くなる
  • 「梨状筋だけが原因じゃなさそう」という感覚があった(痛い部分が若干違っていた)
  • 深層外旋六筋を伸ばすようなストレッチを行うと、その翌日に痛みが増幅した

 股関節を伸展させる動きをすると痛みを感じることは、まだ続いていました。

 それに加えて、深層外旋六筋を伸ばす動作を行うと翌日に痛みが強くなる現象があったことが、深層外旋六筋が原因であると疑った一番の要因です。

 Youtubeなどでは、深層外旋六筋、特に梨状筋をストレッチする方法が紹介されています。これらを何度か実践してみたところ、痛みがよくなるどころか、逆に痛みが増幅してしまいました。

 梨状筋が原因となる座骨神経痛についての解説は、ネットやYoutubeでもよく見かけますが、梨状筋が原因の場合の痛みとは、少し異なった感覚がありました。

鍼(はり)治療に行くことに決めた

 2023年3月下旬、休養しても全く回復に向かわなかったため、鍼治療に行くことに決めました。

 学生時代、ハムストリングスと座骨結節付着部を痛めた時に鍼治療をして、回復した経験があったため、鍼治療に対してはとてもいいイメージがありました。

 家の近くで、何とか通えそうな鍼治療できる病院を見つけ、通うことにしました。

 特にスポーツで有名な治療院、というわけではありませんでしたが、家から毎週通える場所、という条件に合致する治療院はそこしかありませんでした。

 治療院で痛みを伝えたところ、私が考えていた通り、深層外旋六筋に異常があり、坐骨神経に対して何らかの影響を与えている可能性がある、とのことでした。

 治療院では基本的に、毎回、手による患部のほぐしと鍼治療を行ってもらいます。

 治療院に通い始める頃には、両足同じ個所に痛みが発生していたため、両足の深層外旋六筋を狙って、鍼治療を行ってもらうことにしました。

まずは梨状筋から治療を開始し、次に大腿方形筋へ

 まずはじめに、梨状筋に対しての治療を開始しました。3月中旬頃に治療を開始しましたが、鍼治療の効果は非常に高く、梨状筋による脚の痛みは4月上旬には痛みがかなり引きました。

 ただ、梨状筋の痛みが引いたところで気が付いたのですが、脚に痛みを発生させていた場所が梨状筋よりももう少し下の位置にありました。

 痛みが発生している位置を先生に伝え、触診してもらったところ、痛い場所は大腿方形筋という筋肉でした。

 梨状筋に続いて、大腿方形筋の治療を開始することにしました。

 梨状筋が良くなったところで、軽いジョギングくらいはできるようになっていました。ただしペースは、私にとってはとてもゆっくりで、1kmあたり6分程度です。

 1km走ったら1分歩く、などで、続けて走らないようにしました。続けて走ると患部の違和感が強くなる感覚があったためです。

 その時のガーミンのランニングデータは、以下のような感じです。

大腿方形筋の治療には時間がかかった

 大腿方形筋に注目した鍼治療を開始しましたが、そこから劇的に回復する、といった感覚はありませんでした。

 しかし、ゆっくりなジョギングと治療を根気強く続けていった結果、5月の中旬には、一回あたりに走る距離を2kmまで延ばすことができました。

 走るペースも徐々に上げていくことができました。

 結果として、5月下旬頃には、5分30~6分00秒/km程度のペースで10km程度のランニングであれば、続けて走れる状態、まで回復することができました。

 しかし、回復したとは言っても、走ったときには大腿方形筋付近に強い違和感を感じました。

大腿方形筋の違和感はだいぶ走れるようになった後でも続いている

 6月中旬頃には、連続して10km走るのを5:00~5:10/kmくらいのペースでできるようになっていました。

 割と回復してきたなと判断し、4:00~4:30/km程度のペース走などにも取り組み始めたのですが、その時点で再度梨状筋を痛めてしまい、1週間程トレーニングを中断しなくてはなりませんでした。

 それも大事には至らず、7月からは再び連続10kmくらいのジョギング、4:00~4:30/kmくらいのペース走ができるくらいまでには回復することができました。

 しかし、本記事を綴っている7月中旬現在でも、大腿方形筋の違和感はまだ続いていて、本気で走ることはできない状態です。

 継続的なジョギング程度であれば十分にできるくらいまでには回復していますが、まだまだ本気で走れるには程遠い状態です。

なぜ深層外旋六筋を怪我してしまったのか。原因と対策

 私がこれまで経験してきた怪我の中で、今回の怪我は最も悩ましい怪我となっています。

 安静にしても回復に向かわず、積極的な治療と少し違和感が出ながらのリハビリを続けることで、少しづつ回復することができました。

 このような怪我を繰り返さないためにも、なぜ怪我をしてしまったのかを振り返り考えました。

怪我の原因:減量とオーバートレーニング

 今回怪我をしてしまった原因は、2022年夏ごろから開始した「減量」にあると考えています。

 2022年夏の時点では、体重が64kg程度でした。記録向上を目指して、体重を2kg落として62kgにするために、走る量は維持して、食べる量を減らしました。

 結果として、2022年9月には体重が62kg程度まで減少し目標は達成しました。5000mでも自己ベストを出すことができ、順調に見えました。

 減量は、摂取カロリーよりも消費カロリーを上回らせることによって、体重を徐々に減らす作業です。理想的には脂肪だけ落とせればいいのですが、今回の減量では脂肪と共に筋量もかなり落ちてしまいました。

 筋量も落としてしまった原因は下記の通りです。

筋量も落としてしまった原因
  • すべてのランニングトレーニングは起床直後に何も食べないで行っていた
  • 筋トレなどの筋量を維持するトレーニングは何も行わなかった

 体脂肪を継続的に測定していますが、骨格筋率も低下していました。

 さらに、VO2maxインターバルのような非常にきついトレーニングをしても、十分に心拍数が上がる前に脚がきつくなってしまう現象もありました。

 このように、適切ではない減量をしたことによって、筋量が減少し、体の回復速度が低下したことによって、9月以降の坂ダッシュトレーニングの負荷に耐え切れずに、今回の怪我を発生させてしまったと考えています。

 また、減量による影響を感じたのは、これだけではありません。

 2022年11月に出場した揖斐川ハーフマラソン以降、インターバルトレーニングを行っても、一年前よりも1kmあたり10秒も遅いタイムでしか走れない状態となりました。

 また、軽いジョギングをしている時にも音がこもって聞こえるようになっていました。後から調べると「耳管開放症」という症状と一致していました。

 耳管開放症は、過度な減量や水分不足となったときに発生する現象だそうです。練習で走っているときにも、常に起こるようになっていました。

 2022年12月に走った東海市ハーフマラソンの時には、スタート前からずっとこの耳の状態でした。案の定、走り始めてもずっと体がきつく、途中で歩いてしまいました。

リカバリーあってこそのトレーニング

 今回の怪我を繰り返さないためにも、怪我から復帰して以降は、以下に注意してトレーニングを進めようと考えています。

怪我をしないための決まり事
  • 週一回は走らない日を作る
  • 減量する期間は高負荷なトレーニングは避ける
  • 筋量を維持するための補強トレーニングを、優先度高く取り入れる

 毎日走っていても、栄養と休息がちゃんとできていれば問題ないと考えています。

 しかし、私自身は、トレーニング以外の時間を休息に充てることが難しく、強制的に休んでおかないと、リカバリーが不足してしまう傾向にあります。

 また、減量を行いたい期間には、高負荷なトレーニングは避ける方がベターです。負荷が高いトレーニングは、その分体が負うダメージが大きく、ちゃんとした栄養と休息が無いと、怪我につながりかねません。

 走っているだけでは、筋量が低下します。特に、起床直後は体の血糖値が低い状態で走り始めるため、最もタンパク質が失われやすいタイミングです。

 このようなタイミングでロングラン等、体のエネルギーを多く使うトレーニングをすると、筋量が低下する要因となります。

まとめ

 本記事では、私が経験した梨状筋・大腿方形筋が原因である座骨神経痛について記述しました。

 皆さんの中には、私と同じように怪我に悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。なかなか怪我が治らず、あきらめてしまいそうになっているかもしれません。

 私も、安静にしても全く回復に向かわないときは、あきらめそうになりました。

 しかし、積極的な治療とリハビリによって、少しづつ走れるように回復しています。

 本記事が、少しでも怪我をして悩んでいる皆さんのためになれば幸いです。

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