【マラソンの水分補給】パフォーマンスを引き出すための適切な方法を徹底解説

マラソン水分補給

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。改訂履歴は記事の最後に記載しています。

こんな疑問を解消
  • マラソンレース前、レース中にどれくらい水分を摂るのが適切かわからない
  • 水分補給が不足していた場合どれくらいパフォーマンスが低下するの?
  • マラソン中に適した水分の種類が知りたい

 マラソンレース前やレース中に、どれくらい水分を摂るのが適切なのか、また、どんな水分を摂ったらいいのか迷っているランナーも多いのではないでしょうか。

 本記事では、運動生理学の観点から、適切な水分補給方法について提案します。

 私は社会人から本格的にランニングを始めた市民ランナーです。月500kmほど走り、競技思考でランニングに取り組んでいます。

 私自身も、特にハーフマラソンレースにおいて、レース後半に脱水症状に近い状態となってしまい、十分なパフォーマンスを発揮できないままレースを終えてしまったことがあります。

 ここでは、運動前・運動中・運動後の適切な水分の補給方法について提案します。水分補給が不足したの影響についても紹介します。

適切な水分補給方法 まとめ
  • 体重の2%以上の水分が身体から失われると、「脱水状態」となり、持久性パフォーマンスが低下する可能性がある
  • レース前の水分補給の目的は、体内の水分状態を正常にしておくこと
  • レース中の水分補給の目的は、水分喪失による2%以上の体重減少を防ぐこと
  • レース後の水分補給の目的は、電解質と筋グリコーゲン量の回復
  • 水分に含まれる糖質濃度によって、水分が体に吸収される速度が変わる
  • 水分と糖質の吸収速度には、個人差がある
参考文献
目次

マラソンにおける水分補給のタイミングと量

 はじめにフルマラソンレースを想定した、適切な水分補給のタイミングと量を提案します。

マラソンレース前

 レース前の水分補給の目的は、体内の水分状態を正常にしておくことです。

 水分補給の目安と実施方法は以下の通りです。

マラソンレース前 水分補給
  • 余分な水分が排出されるのに十分な時間を確保するため、運動の2~4時間前に、ゆっくりと飲料を飲む。体重1kgあたり5~10mlが目安。尿の色が淡黄色になることが目安。
  • 塩分が含まれている飲み物や軽食を同時に摂ることで、体内に水分を保持しやすくなる

 尿の色に関しては、厚生労働省のサイトでも、紹介されていますのでご参照ください。

 体に水分をとどまりやすくするためには、塩味が多少ついた飲み物や軽食が効果的です。他にも、お茶など、味がついているものだと、純粋な水よりも保持率が高いとの結果が出ています。

レース中

 レース中の水分補給の目的は、水分喪失による2%以上の体重減少を防ぐことです。

 運動中の水分補給は、次のように行うことを推奨します。

運動中 水分補給
  • 糖質を補給することが目的でない場合は、糖質濃度が2.5%以下、塩分1.0~1.5%
    例:1000mlの水に、25g以下の砂糖と1.0~1.5gの塩

  • 糖質を同時に補給する場合は、糖質濃度が5~10%、塩分1.0~1.5%
    例:1000mlの水に、50~100gの砂糖と1.0~1.5gの塩

 低めの糖質・塩分を含んだ飲料を、一般的にハイポトニック飲料と呼びます。ハイポトニック飲料は、水分補給を主目的とした飲料です。

 しかし、レース中は、糖質補給を同時に行う必要もあるため、必ずしもハイポトニック飲料にこだわる必要はないと考えています。

 たとえば、エナジージェルなどはとても糖質の密度が高い補給食です。このような補給食は、そのまま摂取してしまうと胃の中に残存してしまう可能性があります。

 このようなときに、エナジージェルと同時に、水分を摂取することで、水分と糖質の吸収速度を上げることが可能です。

レース後

 レース後の水分補給の目的は、電解質と筋グリコーゲン量の回復です。水分をできるだけ早く補給する、というよりも、塩分と糖質をしっかり補給できることが重要です。

レース後 水分補給
  • 糖質濃度5%、塩分1.5%程度の飲料
    例:1000mlの水に、50gの砂糖と1.5gの塩
  • 体重減少1kgあたり、1.5Lの水分補給が目安

 運動後は一気に水分を摂ることになり、尿として体から排出される分が増えるため、減少した体重以上に水分を補給する必要があります。

 レース後に摂取することが推奨される飲料は、一般的にアイソトニック飲料と呼ばれます。

 以下では、水分補給の重要性や、吸収速度などについて詳細な解説をします。

水分補給の機能と重要性

 体重の2%以上の水分が身体から失われると、「脱水状態」となり、持久性パフォーマンスが低下する可能性があると言われています。

 運動において水分を失う理由は、そのほとんどが発汗(汗をかくこと)によるものです。

 体重60kgの人では、体重の2%=1.2kgに相当します。普段のランニングでも、走り終わった後に1.2kg以上体重が減っていることは珍しくないです。

 マラソンなどの持久性競技における水分補給では、持久性パフォーマンスを低下させないために、体重の2%以上の水分が失われないように補給していくことが目標となります。

 水分に加えて、汗にはナトリウムやカリウム、マグネシウムなどのミネラル分が含まれています。これらは「電解質」と呼ばれており、水分とともに補給していく必要があります。

 運動中に水分と電解質を補給し、脱水状態を予防する目的は以下の通りです。

水分と電解質を補給する目的
  • 体温調整
  • 筋肉動作
  • 循環器系の機能

体温調整

 走っていると体温が上がりますが、これは、エネルギーを作り出しながら筋肉が動くときに代謝熱が発生するためです。

 走り続けるには、筋肉を動かし続けなければならないため、熱も発生し続けます。発生した熱は血液によって心臓に戻り、そこから体全体に運ばれ、皮膚表面で熱を逃がす役割を持っています。

 体表面の温度は、発汗によって低下します。汗が蒸発するときに皮膚表面の温度が低下し、血液の温度も下がることになります。

 水分補給が適切にできていないと、発汗機能が低下するため、体温調節機能も低下することになります。

 水分が減少すると、血液量も減少することになるため、発生した熱を運ぶ血液自体が少なくなってしまうことも問題です。

筋肉動作

 筋肉動作には、エネルギーの元となる糖質や脂質以外にも、電解質(ナトリウムやマグネシウム)が大きく関わっています。

 これら電解質が不足することによって、筋肉の動作がスムーズに行えなくなります。

循環器系の機能

 循環器系では、呼吸によって取り込んだ酸素や栄養素を身体中に運ぶ役割がありますが、水分が不足し血液量が減少すると、これらを運搬する能力が低下します。

 循環器系の機能が低下すると、筋肉動作に必要な酸素やエネルギーを運搬する機能が低下することになるため、持久性パフォーマンスが低下することになります。

マラソン中はどれだけ水分を失うのか

 体から水分が失われる主な要因は、汗をかくことです。発汗量は、気温や湿度などの外部要因に加え、個人差がとても大きく関わります。

 表1には、各種スポーツにおける発汗量をまとめました。

競技名中央値
[L / 時間]
範囲
[L / 時間]
水球(試合)0.790.69-0.88
水泳0.37
バスケットボール(試合)1.61.23-1.97
サッカー(夏のトレーニング)1.460.99-1.93
アメリカンフットボール(夏のトレーニング)2.141.1-3.18
テニス(男性、夏の試合)1.60.62-2.58
ハーフマラソン(冬のレース)1.490.75-2.23
クロスカントリー(夏のトレーニング)1.770.99-2.55
表1 各スポーツでの発汗量

 ハーフマラソンレースの項目を見ると、1時間当たり1.49Lの汗をかいていることがわかります。範囲を見ると、個人差が大きいこともわかりますが、それでもかなりの水分を失っていることがわかります。

 1時間まったく水分補給しないまま走っていると、体重の2%以上の水分が失われる計算になりますので、マラソンレースでは頻度高く、水分補給を行うことが重要であることがわかります。

水分補給と糖質濃度について

 マラソンなどのスポーツでは、走りながら飲料を取りますが、同時に糖質を補給する必要があります。

 エリートランナーであればスペシャルドリンク、市民ランナーであれば、ジェル+エイドでの水分補給になります。

 しかし、水分に含まれる糖質濃度によって、水分が体に吸収される速度が変わることがわかっています。

 ここでは、一度に摂る飲料の適性量・糖質濃度について解説します。

 以下の条件で行われた実験を紹介します。

※参考論文:Gastric emptying rates for selected athletic drinks

実験の内容

飲料のグルコース濃度(糖質濃度)、摂取量、温度、運動強度を変えた時に、胃から小腸へ飲料が排出されるスピードがどれだけ変わるか

 実験の結論をまとめると、次の通りです。

実験の結論
  • グルコース濃度が139 mmol/L(糖質25g/Lに相当)を超えると、排出速度が遅くなる
  • 一度に摂取する飲料が600mlを超えると、排出速度が遅くなる
  • 冷たい飲料のほうが、排出速度が速い
  • 運動強度が65~70%を超えると、排出速度が遅くなる

 この中で唯一、ランナーがコントロールできるのは、飲料に含まれる糖質濃度です。グルコース139 mmol\Lは、糖質25 g/Lに相当します。

 もう少しわかりやすい例で説明します。

 例えば、ポカリスエットは62 g/Lアクエリアスには47 g/Lの糖質が含まれているため、これらの飲料をそのまま運動中に飲むと、胃からの排出速度が遅くなる可能性があることを示しています。

 以下のグラフは、塩分を含んだ400mlの飲料を飲んだ際、飲んだ後15分後に胃に残っている液体を吸引した時に、どれだけ胃の中に液体が残っていたのかを示したグラフです。

 糖質の濃度によってどれだけ、胃から飲料が排出される速度が遅くなるかを示しています。

 上のグラフからわかることは、100~200 mmol/Lを境に、胃に残る液体が急激に多くなっていることがわかります。

 しかし、実際のフルマラソンレースにおいて、水分の吸収速度を意識して糖質25 g/L以下の水分補給をしているランナーは少ないかと思います。

 例としてエリートランナーの場合は、モルテンドリンクなどを活用し、水分補給と同時に「糖質補給」も行っているからです(モルテンドリンクは、160 g/Lの糖質を含んでいます)。

 これらのことからわかる通り、できるだけ速い速度で体に水分を吸収させたい場合は、エナジージェルなどと一緒に水分を摂取するのではなく、水分単体で摂取する方が望ましいです。

 一方、糖質補給として飲料を摂取する場合でも、ジェルなどを単体で摂取するのではなく、飲料で薄めながら飲むことで水分補給と糖質補給を効率よく行うことができることがわかります。

水分の種類について:アイソトニック飲料・ハイポトニック飲料

 一般的に、スポーツ飲料は、アイソトニック飲料ハイポトニック飲料に大別されます。

 アイソトニック飲料は、アクエリアスやポカリスエットのように、糖質濃度や電解質濃度が高く設定された飲料です。およそ体液と同じ浸透圧に設定されている飲料です。

 糖質濃度が高いため、体への吸収速度はハイポトニック飲料と比較して遅めです。

 一方ハイポトニック飲料は、糖質濃度・電解質濃度が低く設定された飲料です。体液の浸透圧よりも低めに設定されています。

 体への吸収速度が速いため、レース中の水分補給に適しています。

 しかし、上でも述べましたが、レース中は水分だけでなく糖質も同時に補給することが多いです。同時に摂取するエナジージェルなどの密度を考慮して水分を摂ることが推奨されます。

水分・糖質の吸収には個人差がある

 水分と糖質の吸収速度には、個人差があります。

 同じ水分補給方法、糖質補給方法を採用したとしても、Aさんはおなかが痛くならないけれど、Bさんはおなかが痛くなってしまった・・・ということも起こります。

 私が推奨するのは、「練習で、レースを模擬した水分・糖質の補給を試しておく」です。

 練習でお腹が痛くならないことがわかっていれば、レース中でもおなかが痛くなる確率は低いと考えています。

 しかしそれでも、レースでは、自分の力を出し切って走るため、内臓の機能が低下します。レースになると水分や糖質の吸収能力が低下して、おなかが痛くなってしまう・・・ということもあります。

 できるだけ、本番に近い強度で走っている最中に、水分補給の練習も行っていくことをおすすめします。

まとめ

 最後に、マラソンレースにおける水分補給方法をまとめます。

マラソンレースにおける水分補給方法
  • マラソンレース前は、多少塩分を含んだ固形物とともに水分を摂ることで、水分の保持率が高まる。水分自体に塩分や糖質が含まれるものを摂取する。
  • レース中は、糖質濃度25g/L以下、塩分濃度1.0%程度の飲料であると、体への水分吸収速度が速くなる。
  • 現実的にはレース中は糖質も同時に補給することが必要であるため、エナジージェルなどとともに水分を摂ることで、糖質と水分の吸収速度を高める努力をする
  • レース後は、水分と筋グリコーゲンの回復が目的であるため、アイソトニック飲料など、糖質と塩分が十分に含まれている飲料を摂取する。
  • 水分と糖質の吸収には個人差があるため、トレーニングの時から補給の練習も行っておく

 少しでも、ランナーの皆様の参考になれば幸いです。

参考文献

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