※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。改訂履歴は記事の最後に記載しています。
【758ランナーズロングトライアルマラソン】レースレポート
こんにちは。syu_hibiです。
別の記事で自己紹介をしていますが、大学まで長距離種目の経験が無い市民ランナーです(スポーツの経験は豊富です)。仕事・家事・育児をこなす中で、練習は起床直後しかできない環境に居ます。
今回は、RUN COLLECTION主催の758ランナーズロングトライアルマラソンに参加してきました。
本記事はそのレースレポートになります。
本レースの位置づけ
直近のレース結果としては、マイレージを1週間前から落とすのみの調整(ミニテーパリング)を行い、2021年12月とよたエールマラソン10kmに出場し33分44秒という記録でした。
正直、「もっと良い記録が出るはずだ」と思っていたのですが、改めて実力を思い知ったレースとなりました。
トレーニングとしては、2021年10月に5000mでPBを出して以降、一貫してLT強化に努めてきました。また、解糖系への刺激を与えることによる影響を測りたかったので週1回のヒルスプリント(200m×20)を取り入れてきました。今回のレースは、ヒルスプリント導入から約3か月経過した段階での出場となります。
10月17日に同主催者の同コースで758ランナーズトライアルに出場しており、その際の記録は1時間12分52秒でした。
前回の758ランナーズトライアルでは、5000mレース出場1週間後であり、トレーニングでのマイレージも落とさずに臨んだ「無調整」レースでした。ただ、5000mレースに向けて、計画的にトレーニング内容を「特異的」なものへと変化させていたこともあり、体の状態としてはかなり「良い状態」であったと感じています。
一方今回は、LTトレーニングとヒルスプリントを3か月間継続して行ってきており、レースに向けて特異的なトレーニングは行っていません。VO2maxを刺激するトレーニングも行っていないので、疲労はある程度抜けているものの、体のコンディションはピークではないです。
前回のレース振り返りで、記録向上のカギとしては「ストライドの伸長」だと結論づけています。ストライドを自然に伸ばすためには、ランニングフォームをより良いものにするか、筋力アップや柔軟性の獲得が必要です。
そのうち「筋力アップ」に着目しヒルスプリントに取り組み始めました。純粋に筋力を向上させたいのであればレジスタンストレーニング(=ウェイトトレーニング)を導入する手段もありましたが、練習の時間的制約もあり、今回はヒルスプリントを選択しています。
ただし、今回導入した200m×20のヒルスプリントがどれだけ筋力アップに貢献できるかは未知数です。理論的に考えると、筋力アップメニューとしてはスプリント距離が長く、どちらかというと神経系への刺激による筋力発揮能力向上を得られる可能性がある、といったところでしょうか。
参考程度ですが、ヒルスプリントを取り入れたあたりから、骨格筋量の上昇と体脂肪量の低下を同時に達成することができています(家庭用Inbody(Inbody Dial)による測定)。
週に1度のヒルスプリントがどれだけ寄与したかは判断できませんが、体内組成は明確に変わってきていることが分かっています。
今回のレースでは、コースベストである1時間12分52秒を切った上で、前回レースと比較した時にどんな能力が伸長しているのかをしっかり評価していきたいと思います。
目標とレースプラン
冒頭で述べた通り、今回のレースはミニピーキングをした上で臨みます。現状の実力をちゃんと把握しトレーニング負荷の調整を行うこと、昨年10月から取り組んできたLTトレーニングとヒルスプリントの効果を測定することが狙いです。
758ランナーズトライアルは名古屋市の庄内緑地公園で行われますが、Garmin GPSで距離を測定するとほぼ必ずと言っていいほど距離が足りない結果となります。具体的には、ハーフマラソンレースにおいては、21.1kmのコースであるはずが、実際には20.7km~20.8kmになります。
※正確には、コース取りによっては21.1kmに達するのですが、コースの距離を測定する箇所がコースの外側であるため、レース中に内側寄りを走っていると、自然と距離が短くなる傾向にあるようです。ただ、コースの一部でGPSが取れなくなる箇所があるため、正確な距離は不明です。
当日の天候ですが、風は弱いものの、気温が低く、絶好のコンディションではないようです。
前回の記録が1時間12分52秒。ハーフレースに向けてトレーニングの特異性を高めてはいませんが、今回はミニピーキングをしています(VDOT±0)。トレーニングによる実力Upは、普段のインターバルトレーニング等から推測すると、VDOT+1程度。ハーフレースであるため気温の影響がほぼないとすると、今回の目標タイムは1時間12分切りくらいが妥当だと考えています。
ハーフマラソンは目標タイムが現状の力に合っているかどうかが非常に重要です。オーバーペースで走ると間違いなく後半失速し、良い記録は出ません。
ここまではレース前日までに記載しています。目標がある程度精度高く設定できるとレース当日に失敗することが少ないです。
では、レースレポートへ。
レースレポート
昨年末のとよたエールマラソン以来のレース出場だ。とはいってもRUN COLLECTION主催の758ランナーズロングトライアルマラソン、草レースだ。
庄内緑地公園では、複数の団体が草レースを行っているが、私自身はRUN COLLECTION主催の758ランナーズトライアルだけを狙って出場するようにしている。
その理由は、コースにある。
庄内緑地公園は1周約2.3kmの周回コースになっているのだが、ほとんどのレースは1周当たりの距離を2.5kmに合わせるため、芝生上の往復をコースの一部として取り入れている。その距離はおよそ200m~300mほどになるのだが、9周すると合計で約2km。
しかも雨が降ったときには最悪。滑るわ、ドロドロになるわで、記録が出ないばかりか、股関節を痛めてしまう事態にもなりかねない。
レース前、当日に雨が降ることは多々あり、天候のせいで記録を狙えない、怪我をする状況に追い込まれたくないので、事前にそのような事態が無いよう、758ランナーズトライアル以外には出走しないようにしている。
1週間前から、レース当日の天気予報にずっと注目していたが、晴天で風も弱い予想。家庭の都合でレース出場頻度が制限されている中、レース当日の天候が良いかどうかには常に注目している。
ただ、気温は相当低くなるようだ。その分パフォーマンスも落ちそうだが、どのくらいのインパクトになるかは正直推測できない。
レース開始が9時30分なので、5時間前の4時30分に起床できるようにガーミンのアラームをセット。しかし、スマホのガーミンコネクトアプリでアラームを設定した後に腕時計と同期させたつもりだったが、上手く同期できておらず、いつもの4時にアラームが鳴ってしまった。
起きてしまったので、4時に起床した。いつも通りInbody Dialで体組組成測定を行った。体重64.2kg、体脂肪率3.9%。前回758ランナーズトライアル出場時の朝は、体重64.2kg、体脂肪率4.6%であったため、体重は変わっていないものの、体内組成が徐々に変化してきている(本記事冒頭で紹介した通り)。
今日のランニングギヤ。
- ウェア:ナイキ エアロスイフト
- パンツ:2XU MCS ランコンプレッションショーツ
- アームスリーブ:Zamst プレシオーネアーム
- カーフスリーブ:Zamst プレシオーネカーフ
- ソックス:Runtage IDATEN SOLID (イダテン ソリッド)
- シューズ:メタスピードスカイ
- サングラス:エアフライ AF-301
- アクセサリー:HRM-Dual , RDP , Foreathlete 245
冬のレースで体表面温度を下げないよう、アームスリーブとカーフスリーブを使用する。また、ソックスにはRuntage(ランテージ)のIDATEN SOLID(イダテンソリッド)を使うことにした。
背景には、レースシューズをメタスピードスカイに変更したことでシューズサイズが若干足に対して小さめであったことから、素地が薄くフィット感が高いとされるイダテンソリッドを使ってみることにした。
メタスピードスカイは、別の記事でもレビューしているが、これまでレースシューズとして使用してきたVFN%と同程度のパフォーマンスを発揮しながらも、走感覚が心地よいこともあり、今回からレースシューズとして使用してみることにした。
今回の栄養戦略はモルテンドリンク320をレース前に飲む。カフェイン源はモンスターエナジー355ml。前回はレッドブルにしていたが、近くのお店でレッドブル330mlが売っていなかったので、モンスターエナジーにした。
朝食をとった後、いつもなら感じない眠気を感じてしまった。レースの5時間以上前に起床できたものの、この眠気とだるさのままは良くないなと感じ、一旦横になって再度仮眠をとることにした。
意識が無くなりつつ、うとうとしていると、1時間程度が経過し時刻は6時30分。これまでのレースでレース直前に眠気で仮眠をとったことはないので、今回のレースにどう影響するのかはよく確認する必要がある。
レーススタートが9時30分であるため、ウォーミングアップはスタート5~10分前までに終わらせるイメージ。草レースなので、直前までウォーミングアップができる点が良い。
ウォーミングアップ終了の1時間前に会場入りできるように電車をチェックする。家の玄関から会場まではすべて込みで40分弱、アクセスが非常によい。
予定通り8時40分の会場へ到着。受付・着替えを済ませウォーミングアップを開始したのが8時54分になった。トイレマネジメントを考慮し、庄内緑地公園周回コースを約2周分をウォーミングアップとする。途中でトイレに立ち寄る計算だ。
早朝ポイント練習時とほぼ同距離のウォーミングアップ(5km)をした。ハーフマラソン前としては少し多いかな?とも思ったが、気温が低く、体を温め、心拍もある程度上げていないと、走り始めから気持ちよく走れない気がしたのだ。
慣れた手順で、ウォーミングアップ後の着替え、スタート前の整列を済ませる。定期的に出場している草レースであるからこそなせる業。
スタート直前、Twitter経由で知り合った速い知人と話すことができた。その結果、私に付いてくるということ。後ろについてもらうだけでも少し気が楽になる。
いよいよ、スタートした。
スタート位置に並んだ時に分かっていたが、今回も結構速い人らがいることが分かった。スタート直後明らかに自分が想定しているペースよりも速いペースで先頭集団が進んでいくが、あくまでも自分のペースで淡々と刻む。
最初の5kmくらいは、前を走ってくれる人がいたので並走、もしくは付いていくことができ少し楽ができた。しかし、明らかにペースダウンしてきたため、自分が先頭に出て引っ張る形となった。結局、このまま最後まで先頭を引っ張り続ける、もしくは単独走となってしまった。
前回の758ランナーズトライアル時はほぼ全ラップ、速い人に引っ張ってもらうことができた。今回は自分が引っ張ることになるため、その分タイムは落ちるだろうな、と思った。
GPSがうまく拾えないところに影響されると、自動ラップ機能がうまく働かず、ペースが乱されるため、基本的には1周毎(約2.3km)に手動ラップを刻んでいく。目標ペースは7分50秒/周であったが、毎週およそ7分55秒前後となってしまった。
やはり先頭を引っ張っていると、無理したペース域に突っ込むことはできない。その影響が出た。
自分の努力感としては、終始結構楽に感じながら走ることができた。心拍ベルトで測定している心拍数を確認しても、162bpm(85%HRmax)~166bpm(87%HRmax)となっていたため、ほぼハーフマラソンは耐えきれるくらいの強度だろう、と定量的にも確認できていた。
前回レース時と比較しても、圧倒的に努力感が低い。比較的力を抜いて走っても、ほぼ前回と同ペースくらいで巡航することができた。
さすがにラスト2周ではきつくなってきたが、それでも最小限のペースダウンに抑えることができた。ラスト一周、自分の努力感としてはペースアップしたつもりだったが、後で結果を見てみるとイーブンペースを守れてた、だけであった。
結果は、1時間12分42秒。前回記録が1時間12分52秒であったため、コース自己ベストは更新することができた。これまでのトレーニングがちゃんと報われた形となり、ほっとした。
走り終えた後の感覚は、これまでのハーフマラソンレースの中で最も余裕を残した感覚だ。ラストスパートはかけたものの、トータルで脚力を使い果たすまではいかなかった、という感じだ。
レース総括と今後
今回のレースからわかったこと。
- 前回レースで出したベスト記録を確実に更新できた。
- レース中及びレース後の余裕度から、前回レース時よりも確実に実力アップしていることが分かった。
- ほぼ単独走、もしくは先頭を引っ張った結果のタイムである。
- 前回レースで得られたデータと比較し、ストライドが有意に5cm向上。
- ケイデンス(ピッチ)は前回比で有意に減少(184→180smp)。
- 前回はVFN%、今回はメタスピードスカイを使用。
参考に、今回のランニングデータを載せる。
今回確認したい事項として、ヒルスプリント導入による影響があった。結果としては、GCT(接地時間)に変化が無い一方でストライドは有意に5cm伸びていた。
ピッチは184→180spmと有意に減少。これが心拍の余裕度をもたらしていたと考えられる。
ピッチを下げればストライドは伸びる傾向にはある。今回は、自然と楽なストライドで走った結果、ほぼ目標通りのペースで進んだため、無理してピッチを上げる必要もなかった、とも言えるだろう。
これまでのデータをまとめると下記。
日付 | 平均ピッチ | 平均ストライド | タイム |
---|---|---|---|
2020年11月 | 179spm | 1.54m | 1時間14分40秒 |
2021年10月 | 184spm | 1.54m | 1時間12分52秒 |
2022年01月 | 180spm | 1.59m | 1時間12分42秒 |
ピッチの減少はあったものの、それを考慮しても明らかに今回、ストライド長に伸長が見られた。前回レースから明らかに変えた点は冒頭で述べたヒルスプリントの導入である。
ここから先はあくまでも推測であるが、ヒルスプリントのトレーニング内容としては、筋肥大や最大筋力向上を得られるような強度ではない。得られたのは神経系の適応による速筋繊維動員率向上だろう。
もしこの考えが正しい場合、現状のヒルスプリントを続けていてもまだ伸長する代は多少残っていると考えられる。しかし、神経系の適応は割と早期に現れ、早い段階で上限に達する。その上限は最大筋力で決まってくるため、長期的に見れば、最大筋力を上げておかないと、すぐに頭打ちになるだろう。
今回のレースでは、今後も伸びそうな手応えも感じることができた。タイムアップの理由は仮説でしかないが、この仮説が正しければ、今後長期的に1段階・2段階上のレベルを目指すためには、前回レース考察時と同様、最大筋力及び筋力発揮能力を向上させ、ランニングエコノミーを上げていくことが必要だ。
また、有酸素的代謝能力に注目した場合、継続的な有酸素トレーニングはやはり欠かすことができない。有酸素系代謝能力は加齢とともに衰えにくいどころか、時間をかければ、上限無く向上していく能力と言える。
筋力向上と有酸素能力向上を狙った持久性トレーニングを上手く調和させ、長期的に大幅実力アップを達成する方向性とすることとした。
本日のレース前までは、3月の名古屋シティマラソンに向け、トレーニング内容についても特異性を上げていき、3月の段階で発揮できる最大限のパフォーマンスを達成しようと考えていたが、最近の情勢を考えると、大会自体が開催されるかどうかも定かではない。
また、名古屋シティマラソンは非公認記録にしかならないため、今回のレースでどんな記録を出しても、マラソンの資格記録にすることはできないのだ。
従って、まだまだ寒い時期が続く1月~3月頭にかけては、筋力Upを狙ったトレーニングメニューへと内容を微調整することに決めた。調整すると言っても、ウェイトトレーニングを組み込み、その分、持久性トレーニングを削る、もしくは強度を落とす、といった内容だ。
最近、コンカレントトレーニングについて学び始めたが、ウェイトトレーニングに代表されるレジスタンストレーニングから得られる筋力発揮能力向上への効果は、持久性トレーニングの量・強度に比例して下がってしまう、という説が濃厚だ。
一方、レジスタンストレーニングが持久性パフォーマンスに与える悪影響はほとんどないことが分かっている。
従って、持久性トレーニングの一部をレジスタンストレーニングに振り替えた場合、有酸素系代謝能力の伸長速度が低下するのみで、パフォーマンス自体が低下することは無いと考えられるのだ。
レジスタンストレーニングが最大筋力を向上させるためには、神経系の適応、もしくは筋肥大が必要だ。神経系の適応は比較的早期に発現するが、筋肥大については、少なくとも8週間~12週間の期間が過ぎてからしか、効果が認められない。長期戦となる事が分かっている。
従って、現段階でレジスタンストレーニングに取り組み始めたとしても、体に見える変化が現れるのは、少なくとも4月頃となる。また、筋肥大した後には、その筋力を発揮するための適応が必要となるため、長距離種目の記録として効果が表れるまでにはおよそ半年くらいは見ておく必要がある。
ランナー人生はまだまだ先が長い。伸び悩むよりは、僅かずつであっても確実に実力を向上させていく道を選ぶ。
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