カフェインによる運動パフォーマンス向上と脂肪燃焼への効果について

カフェイン
こんな疑問を解消
  • マラソンに対してのカフェインの効果が知りたい
  • カフェインの適切な摂り方を教えて
  • どんなものからカフェインを摂るのがいいの?

 カフェインは、国際スポーツ栄養学会(ISSN)からも支持されている通り、スポーツにおけるパフォーマンスを向上させるエルゴジェニックエイドとして、多くのエビデンスを持つサプリメントです。

 また、運動パフォーマンスだけでなく、運動前に摂取することで脂肪燃焼の効果もあるとされています。

 私自身はコーヒーが好きなので日常的にカフェインを摂取していますが、特に長距離レース前には、カフェインによる運動パフォーマンス向上を狙った摂取方法でカフェインを活用しています。

 一方で、過剰摂取による身体への悪影響がある事も分かっており、適切な摂取量を守りながら摂るべきサプリメントです。

 本記事では、主に運動パフォーマンスと脂肪燃焼への効果について述べていきます。また、カフェインの作用機構・パフォーマンスを高めるための適切な摂取方法についての紹介もしていきます。

 運動前に【3~6mg/(体重kg)】のカフェインが運動パフォーマンスを向上させる効果は主に中枢神経系を刺激したことによる効果(=運動中に感じる主観的きつさ、疲労感が軽減されること)であり、比較的高い確率で得られる効果です。

 一方脂肪燃焼効果については様々な意見があり、【3~6mg/(体重kg)】のカフェイン摂取ではほとんど効果が無かったという論文もあれば、効果があった、という意見もあります。

 個人差も相当影響するようで、こちらについては明確な効果がある、と断言することはできないようです。

著者:らんしゅー
日比野就一

社会人からランニングを始めました。
理論に基づいたトレーニングで、
どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
競技志向で取り組んでいます。
自己紹介・記録変遷はこちら

血中乳酸濃度や血糖値も測定。
マラソンへ科学的にアプローチします。

★自己ベスト
 1500m 4:25(2022/08)
 5000m 16:01(2022/09)
 10000m 33:44(2021/12)
 ハーフ 1:12:29(2022/03)
 フル 2:40:15(2026/03)

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目次

カフェインの作用機構と効果

 まずカフェインの作用機構を簡単に説明しますが、その前にアデノシンについての説明が必要となります。

 アデノシンは、細胞のエネルギーや筋肉を動かすことに必要なATP(アデノシン三リン酸)から脱リン酸化されると発生します。

 つまり、起きている間は常にアデノシンが発生し続けます。強度が高い運動を行うとATPを盛んに利用するため、その分アデノシンが沢山生成されることになります。

 また、身体にはアデノシン受容体がいたるところに存在します。このアデノシン受容体にアデノシンがくっつくことによって、疲れを感じたり、眠くなったりします。

 ここでカフェインに話を戻しますが、カフェインはアデノシンと形が良く似ており、アデノシン受容体とくっつくことができます。カフェインを摂取し血中から体各部へ運ばれたカフェインはアデノシン受容体とくっつきます。

 そうなると、アデノシンにくっつくことができるアデノシン受容体に、先にカフェインがくっついてしまっているため、アデノシンが新たに生成されてもアデノシン受容体にくっつけなくなってしまいます。

 カフェインの影響でアデノシンがアデノシン受容体とくっつけなくなることで、本来疲労や眠気を感じるべき時に、それらを感じなくなってしまう、というのがカフェインの作用機構になります。

カフェインの作用機構
図 カフェインとアデノシン受容体がくっつく様子

 本記事で着目している、運動パフォーマンスと脂肪燃焼への効果という観点で、カフェインの主な効果として知られているのは以下の2つです。

カフェインの効果
  • 中枢神経系への作用:運動中に感じる主観的なきつさ(RPE)を抑える
  • 脂肪分解酵素(リパーゼ)の活性化:血中の遊離脂肪酸を増やす

 複数のメタアナリシスを統合した研究※1では、有酸素持久力・筋力・筋持久力・無酸素パワーのすべてで向上効果が確認されています。持久系種目への効果が特に安定しており、マラソンのような長時間競技に向いています。

 脂肪燃焼への効果は、カフェインの必要摂取量や効果に対する個人差等が多く報告されており、明確なエビデンスが無い、というのが実際です。

 もちろん、上記の効果以外にもカフェインを摂ることによる影響は様々ありますが、冒頭でも述べた通り、論文によっては効果の有無が分かれていることが多いです。ここでは、多くの論文で支持されている事柄のみを紹介しています。

カフェイン摂取による運動パフォーマンス向上のメカニズム

 では、カフェインの作用機構から、運動パフォーマンス向上のメカニズムを考えます。

 カフェインが運動パフォーマンスに直結する最大の理由は、運動中の主観的なきつさ(RPE)の低下です。

 21件の研究を統合したメタアナリシス※2によると、カフェイン摂取によってRPEはプラセボ(カフェインを摂取していないグループ)と比べて約5〜6%低下します。同じペースで走っていても、主観的なきつさが軽減される状態になります。

 ただし、このRPE低下はカフェインによるパフォーマンス向上全体の約30%を説明するにすぎません。残りの70%は、筋収縮の効率化や代謝面での変化など、他の要因によるものと考えられています。

 人は主観的なきつさを感じることで、無意識にパフォーマンスを制限してしまうため、主観的なきつさが軽減されることはパフォーマンスを最大限に発揮する上で重要となります。

 しかし一つ注意しなければならない点としては、カフェインによって疲労を感じにくくなる一方で、その疲労は「消えたわけではない」ということです。

 カフェインの疲労感軽減効果が切れた後は、より多くの疲労感を感じる可能性がありますし、高強度な運動を行っていた場合には、体各組織のダメージが感覚よりも大きかった、となることもあるようです。

カフェイン摂取による脂肪燃焼効果について

 続いて、カフェイン摂取による脂肪燃焼についてです。

 カフェインを摂取すると、約1時間後に血中の遊離脂肪酸濃度が上昇したことが様々な論文で示されています。遊離脂肪酸とは、体に蓄積されている脂肪が分解されて発生するものです。脂肪の代謝については次の記事で説明しています。

 カフェインを摂取すると血中の遊離脂肪酸が上昇するのは、脂肪分解酵素であるリパーゼを活性化することが要因であると考えられています。

 普段、体が活動するためには主に糖質と脂質からエネルギーを生み出し消費しますが、カフェインを摂取することで、脂質を消費する割合が高まる、ということを意味しています。

 したがって、カフェイン摂取による脂肪燃焼効果は、運動時に限りません

 また、カフェインによる脂肪燃焼効果は、カフェインの摂取量や個人による差異等が大きいことが報告されています。

 カフェインが脂肪分解酵素(リパーゼ)を活性化し、血中の遊離脂肪酸を増やすことは事実です。しかし、それが体脂肪の減少や運動中の脂質燃焼の増加に直結するかどうかは、個人差が大きく一定ではない、というのが現在の見解です。

 トレーニングを積んだランナーを対象にした研究※3でも、カフェインによって遊離脂肪酸は増加しましたが、パフォーマンス向上の主な要因は脂肪酸動員ではなく中枢神経系への作用でした。

 脂肪燃焼を目的としてカフェインを摂取することには、現時点では過度な期待は禁物です。

カフェインの効果開始と持続時間

 以下では、カフェインを摂取してからどのくらいで効果が得られるのか、また、その効果はどれだけ持続するのか、を述べていきます。

 一般的な薬物動態研究※4によると、カフェインを飲んでから血中濃度がピークに達するまでの時間は約30〜60分で、個人差があります。

 また、体内でのカフェインの半減期(血中濃度が半分になる時間)は2〜10時間程度と個人差が非常に大きく、平均的には約5時間と言われています。マラソンの競技時間(2〜5時間)をカバーするには十分な持続時間ですが、「何時間後に何%残る」は個人によって大きく異なります。

 就寝の5〜6時間前を過ぎてカフェインを摂ると、睡眠の質に影響する可能性があることも覚えておきましょう。

参考文献

【参考文献:Blanchard J, Sawers SJ (1983) “The absolute bioavailability of caffeine in man” European Journal of Clinical Pharmacology】

出版情報
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運動パフォーマンスを高めるためのカフェイン摂取方法

 以上の情報から、運動パフォーマンスを高めるための適切なカフェイン摂取方法を示します。

適切なカフェイン摂取方法
  • 競技開始60分前(飲料の場合は60〜90分前)に【体重×3〜6mg】のカフェインを摂る
  • 運動継続時間が長い競技に関しては、競技開始直前でも効果的。競技中にカフェインを補給することも有効だと考えられる。
  • 摂取形態はコーヒー・エナジードリンク・錠剤・カプセルなど様々あるが、量の管理がしやすい錠剤・カプセルタイプが推奨される

 国際スポーツ栄養学会(ISSN)の最新ガイドライン※5では、競技開始60分前の摂取が標準的な推奨です。ただし飲料で摂る場合は吸収がやや遅れることもあるため、60〜90分前を目安にするのが現実的です。血中濃度がピークに達した状態でレースのスタートを迎えることが目標です。

 摂取量は【体重×3〜6 mg】が推奨範囲です。初めて試す場合は体重×3 mgの少ない方から始め、自分の身体の反応を確認しながら調整することをおすすめします。

 カフェインの摂取形態はコーヒー・エナジードリンク・錠剤・カプセルなど様々あります。効果の面では大きな差はありませんが、量を正確に管理しやすいという観点では、錠剤・カプセルタイプが優れています。

 コーヒーはドリップの方法や豆の種類でカフェイン量がばらつくため、「何 mg 摂れたか」が把握しにくいのが難点です。※5

 レース本番で初めて試すのではなく、普段のトレーニングで自分に合った形態と量を事前に試しておくことが重要です。

 例えば、有名なエナジードリンクである「モンスターエナジー」には、100ml当たり約40mgのカフェインが含まれています。355ml缶タイプですと、約150mgとなっています。

 少なくとも【体重×3mg】を目標にカフェインを摂取しようとした場合、体重が60kgあると、カフェインの必要摂取量は180mgとなり、モンスターエナジー355ml缶一本では足りない計算となります。

 このことから、運動パフォーマンスを向上させるのにカフェインを必要量摂るためには、わりと沢山の水分量を摂取する必要がある事が分かると思います。

 ただし、以下で述べる通りエナジードリンクには多量の糖質が含まれます。レース前の適切ではないタイミングでエナジードリンクによるカフェイン摂取を行ってしまい、血糖値の急低下が起こる可能性もあります。

エナジードリンクの摂取による血糖値への影響

 エナジードリンクでカフェインを摂取する場合、同時に多量の「糖質」を摂取することになります。

 一気に血糖値が上昇すると、体内でインスリンが分泌され、血糖値の急低下が起こる可能性があります。これを「血糖値スパイク」と言います。

 実際に私自身が、マルトデキストリン(ブドウ糖からできている物質)を摂取した直後にトレーニングを行った際の血糖値を測定してみたところ、トレーニング中に血糖値の急低下が発生していました。

糖質摂取直後の血糖値推移

 この日はたまたま低強度のジョグがメニューであったため、ランニングパフォーマンスへの影響はさほど感じませんでしたが、走っている途中の感覚として、膝に痛みが発生したりなど、それ以上はスピードを上げられない状態になりました。

 レース前にカフェインを摂取することを想定した場合、レース中に血糖値が急低下することでレースパフォーマンスに悪影響を与える可能性があります。

カフェインを摂る適切なタイミング

 レース30分前に多量の水分を摂ることは望ましくありません。カフェインの摂取から血中カフェイン濃度がピークに達する時間や血糖値スパイクの影響を考えると、レース60〜90分前までにはカフェインを摂りきっておくことがよさそうです。

 ただし、飲料としてエナジードリンクではなく無糖のコーヒーを使う場合は血糖値スパイクを考慮しなくてよくなります。以下に示すように、インスタントコーヒーなどにもカフェインは含まれています。

 これらの飲料をうまく使って、カフェインを適切なタイミングで摂取していきましょう。

参考:代表的な飲料のカフェイン含有量

 ここでは、レース前に摂取が可能そうな飲料のカフェイン含有量を記載します。

飲料名カフェイン含有量
モンスターエナジー 355ml150mg
レッドブル 250ml80mg
コーヒー(インスタント)80mg(/150ml)
コーヒー(ドリップ)90mg(/150ml)
リポビタンD50mg
飲料毎 カフェイン含有量

 このほかにもカフェインが含まれる飲料は様々あります。代表的なのは栄養ドリンクの類ですが、正直、運動前に飲む飲料としては美味しさも無く、適切ではないのかな、と考えています。

 コカ・コーラや紅茶、緑茶等にもカフェインが含まれており、特に緑茶では、お茶の抽出方法等によってカフェイン量が大きく変動するようです。

 しかし、ちゃんと適切にカフェイン摂取量をコントロールするためには、カフェイン含有量がほぼ固定されている飲料がベストだと考えます。

まとめ

 では、カフェインについてのまとめを記載します。

カフェインについてのまとめ
  • 主観的疲労感(RPE)が約5〜6%低下し、運動パフォーマンスが向上する※2
  • タイムトライアル形式の競技では、完走時間が平均約2%短縮される※6
  • 安静時/運動時に関わらず血圧上昇効果がある
  • 脂肪分解酵素リパーゼを活性化させ、脂肪燃焼が促進される可能性がある
  • 摂取後約30〜60分後に血中カフェイン濃度がピークに達する(個人差あり)
  • カフェインの半減期は平均約5時間(個人差:2〜10時間)で、マラソンの競技時間をカバーできる
  • 飲料でカフェインを摂る場合、摂取後30〜90分で血中濃度が最大となる
  • 血中カフェイン濃度のピークや血糖値の変動を考慮すると、競技開始60〜90分前に摂るのが適切である

 カフェインは、公式に認められている、運動パフォーマンスへ明確にメリットがある数少ないエルゴジェニックエイドです。効果があると分かっていながら使わない手はありませんよね。

 特に中枢神経系への刺激による主観的きつさ、疲労感の低減は明らかな証拠がある効果です。もし、まだ競技前にカフェイン摂取を試したことが無い方がいれば、是非この機会に試してみてはいかがでしょうか。

参考文献

※1 Grgic J et al. (2020) “Wake up and smell the coffee: caffeine supplementation and exercise performance—an umbrella review of 21 published meta-analyses” British Journal of Sports Medicine

※2 Doherty M, Smith PM (2005) “Effects of caffeine ingestion on rating of perceived exertion during and after exercise: a meta-analysis” Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports

※3 Graham TE, Spriet LL (1995) “Metabolic, catecholamine, and exercise performance responses to various doses of caffeine” Journal of Applied Physiology

※4 Blanchard J, Sawers SJ (1983) “The absolute bioavailability of caffeine in man” European Journal of Clinical Pharmacology

※5 Guest NS et al. (2021) “International society of sports nutrition position stand: caffeine and exercise performance” Journal of the International Society of Sports Nutrition

※6 Southward K et al. (2018) “The Effect of Acute Caffeine Ingestion on Endurance Performance: A Systematic Review and Meta-Analysis” Sports Medicine

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。

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