カフェインは、国際スポーツ栄養学会(ISSN)からも支持されている通り、スポーツにおけるパフォーマンスを向上させるエルゴジェニックエイド※として、多くのエビデンスを持つサプリメントです。
また、運動パフォーマンスだけでなく、運動前に摂取することで脂肪燃焼の効果もあるとされています。
私自身はコーヒーが好きなので日常的にカフェインを摂取していますが、特に長距離レース前には、カフェインによる運動パフォーマンス向上を狙った摂取方法でカフェインを活用しています。
一方で、過剰摂取による身体への悪影響がある事も分かっており、適切な摂取量を守りながら摂るべきサプリメントです。
本記事では、主に運動パフォーマンスと脂肪燃焼への効果について述べていきます。また、カフェインの作用機構・パフォーマンスを高めるための適切な摂取方法についての紹介もしていきます。
はじめに結論です。
運動前に【3~6mg/(体重kg)】のカフェインが運動パフォーマンスを向上させる効果は主に中枢神経系を刺激したことによる効果(=運動中に感じる主観的きつさ、疲労感が軽減されること)であり、比較的高い確率で得られる効果です。
一方脂肪燃焼効果については様々な意見があり、【3~6mg/(体重kg)】のカフェイン摂取ではほとんど効果が無かったという論文もあれば、効果があった、という意見もあります。
個人差も相当影響するようで、こちらについては明確な効果がある、と断言することはできないようです。
では本題に入ります。
参考文献:
カフェインの作用機構と効果
まずカフェインの作用機構を簡単に説明しますが、その前にアデノシンについての説明が必要となります。
アデノシンは、細胞のエネルギーや筋肉を動かすことに必要なATP(アデノシン三リン酸)から脱リン酸化されると発生します。
つまり、起きている間は常にアデノシンが発生し続けます。強度が高い運動を行うとATPを盛んに利用するため、その分アデノシンが沢山生成されることになります。
また、身体にはアデノシン受容体がいたるところに存在します。このアデノシン受容体にアデノシンがくっつくことによって、疲れを感じたり、眠くなったりします。
ここでカフェインに話を戻しますが、カフェインはアデノシンと形が良く似ており、アデノシン受容体とくっつくことができます。カフェインを摂取し血中から体各部へ運ばれたカフェインはアデノシン受容体とくっつきます。
そうなると、アデノシンにくっつくことができるアデノシン受容体に、先にカフェインがくっついてしまっているため、アデノシンが新たに生成されてもアデノシン受容体にくっつけなくなってしまいます(図1)。
カフェインの影響でアデノシンがアデノシン受容体とくっつけなくなることで、本来疲労や眠気を感じるべき時に、それらを感じなくなってしまう、というのがカフェインの作用機構になります。
本記事で着目している、運動パフォーマンスと脂肪燃焼への効果という観点で、カフェインの効果として知られているのは下記となります。
- 中枢神経刺激による主観的きつさの低減(=疲労感の低下)
- 脂肪分解酵素「リパーゼ」の活性化
脂肪燃焼への効果は、カフェインの必要摂取量や効果に対する個人差等が多く報告されており、明確なエビデンスが無い、というのが実情です。
もちろん、上記の効果以外にもカフェインを摂ることによる影響は様々ありますが、冒頭でも述べた通り、論文によっては効果の有無が分かれていることが多いです。ここでは、多くの論文で支持されている事柄のみを紹介しています。
カフェイン摂取による運動パフォーマンス向上のメカニズム
では、カフェインの作用機構から、運動パフォーマンス向上のメカニズムを考えます。
運動パフォーマンスに直接結び付く効果としては、疲労感の低下/精神興奮が考えられます。
精神興奮状態を生み、主観的に感じる疲労感が低下することによって、ある程度体のきつさを無視して体を動かすことが可能となります。
人は主観的なきつさを感じることで、無意識にパフォーマンスを制限してしまうため、主観的なきつさが軽減されることはパフォーマンスを最大限に発揮する上で重要となります。
しかし一つ注意しなければならない点としては、カフェインによって疲労を感じにくくなる一方で、その疲労は「消えたわけではない」ということです。
カフェインの疲労感軽減効果が切れた後は、より多くの疲労感を感じる可能性がありますし、高強度な運動を行っていた場合には、体各組織のダメージが感覚よりも大きかった、となることもあるようです。
カフェイン摂取による脂肪燃焼効果について
続いて、カフェイン摂取による脂肪燃焼についてです。
カフェインを摂取すると、約1時間後に血中の遊離脂肪酸濃度が上昇したことが様々な論文で示されています。遊離脂肪酸とは、体に蓄積されている脂肪が分解されて発生するものです。脂肪の代謝については次の記事で説明しています。
カフェインを摂取すると血中の遊離脂肪酸が上昇するのは、脂肪分解酵素であるリパーゼを活性化することが要因であると考えられています。
普段、体が活動するためには主に糖質と脂質からエネルギーを生み出し消費しますが、カフェインを摂取することで、脂質を消費する割合が高まる、ということを意味しています。
したがって、カフェイン摂取による脂肪燃焼効果は、運動時に限りません。
また、カフェインによる脂肪燃焼効果は、カフェインの摂取量や個人による差異等が大きいことが報告されています。
一部の論文では、【15mg/体重kg】以上のカフェインを摂らないと効果が無い、であったり、同じ摂取量でも効果の有無が異なる、ということが報告されています。
カフェインによって脂肪分解酵素「リパーゼ」が活性化されるということは事実なのですが、実際にそれが脂肪分解を促進し効果が現れるかどうかは、カフェイン摂取量や個人に依存する、というのが結論です。
カフェインを脂肪燃焼促進のために摂取することに対して過度な期待はできないようです。
カフェインの効果開始と持続時間
以下では、カフェインを摂取してからどのくらいで効果が得られるのか、また、その効果はどれだけ持続するのか、を述べていきます。
参考にした論文では、被験者6名に対して試験開始前日の20時以降からコーヒー摂取までは、水分以外の摂取を禁止して実験が行われました。
被験者は市販の缶コーヒーを400ml飲み、摂取後30~360分まで経時的に血中カフェイン濃度の測定を行いました。
結果としては、各被験者の血中カフェイン濃度は30~90分の間にピークを迎え(言い換えれば個人差があるということですね)、半減するまでには360分以上の時間がかかる事が分かりました。
一般的にもカフェイン摂取後の血中カフェイン濃度ピークは30~120分後に表れると言われているので、およそ整合している結果かと思います。
血中カフェイン濃度はかなりの時間高い濃度を保つことも分かりました。
カフェイン摂取後300分経過しても、血中カフェイン濃度はピークの80%程度は維持しており、競技時間が長いマラソンなどでも十分効果を発揮し続けられるのではないかと考えられます。
【参考文献:LC-MS/MS によるカフェインとイブプロフェンの血中濃度の同時測定法の構築および缶コーヒー飲用後の血中カフェイン薬物動態の解析(間瀬浩安、田中彩乃、篠生孝幸、野崎司、浅井さとみ、宮地勇人)】
運動パフォーマンスを高めるためのカフェイン摂取方法
以上の情報から、運動パフォーマンスを高めるための適切なカフェイン摂取方法を示します。
- 競技開始30~90分前くらいに【体重×3~6mg】のカフェインを摂る
- 運動継続時間が長い競技に関しては、競技開始直前でも効果的。競技中にカフェインを補給することも有効だと考えられる。
- カフェインは錠剤タイプではなく飲料タイプで摂る
国際スポーツ栄養学会(ISSN)でも提唱されている通り、運動パフォーマンスを向上させるカフェイン摂取量としては【体重×3~6mg】が適切です。これは、個人差/論文による差異こそありますが、様々なエビデンスを持つ事実です。
また、飲料タイプで摂取した場合には、血中カフェイン濃度がピークに到達するまでに30~90分程度かかりますので、競技開始前にカフェインを摂りきっておく必要があります。
例えば、有名なエナジードリンクである「モンスターエナジー」には、100ml当たり約40mgのカフェインが含まれています。355ml缶タイプですと、約150mgとなっています。
少なくとも【体重×3mg】を目標にカフェインを摂取しようとした場合、体重が60kgあると、カフェインの必要摂取量は180mgとなり、モンスターエナジー355ml缶一本では足りない計算となります。
このことから、運動パフォーマンスを向上させるのにカフェインを必要量摂るためには、割と沢山の水分量を摂取する必要がある事が分かると思います。
レース30分前に多量の水分を摂ることは望ましくないため、おのずとレース60~90分前にカフェインを摂りきっておくことがよさそうです。
参考:代表的な飲料のカフェイン含有量
ここでは、レース前に摂取が可能そうな飲料のカフェイン含有量を記載します。
飲料名 | カフェイン含有量 |
---|---|
モンスターエナジー 355ml | 150mg |
レッドブル 250ml | 80mg |
コーヒー(インスタント) | 80mg(/150ml) |
コーヒー(ドリップ) | 90mg(/150ml) |
リポビタンD | 50mg |
このほかにもカフェインが含まれる飲料は様々あります。代表的なのは栄養ドリンクの類ですが、正直、運動前に飲む飲料としては美味しさも無く、適切ではないのかな、と考えています。
コカ・コーラや紅茶、緑茶等にもカフェインが含まれており、特に緑茶では、お茶の抽出方法等によってカフェイン量が大きく変動するようです。
しかし、ちゃんと適切にカフェイン摂取量をコントロールするためには、カフェイン含有量がほぼ固定されている飲料がベストだと考えます。
まとめ
では、カフェインについてのまとめを記載します。
- 主観的疲労感が軽減され運動パフォーマンスが向上する
- 安静時/運動時に関わらず血圧上昇効果がある
- 脂肪分解酵素リパーゼを活性化させ、脂肪燃焼が促進される可能性がある
- 摂取後30~90分後に血中カフェイン濃度がピークに達する
- 摂取後300分経過後も血中カフェイン濃度はピークの約80%程度を維持する
- 飲料でカフェインを摂ることで摂取後30~90分で血中濃度が最大となる
- 飲料に含まれるカフェイン濃度を考慮すると、競技開始60~90分前に摂るのが適切である
カフェインは、公式に認められている、運動パフォーマンスへ明確にメリットがある数少ないエルゴジェニックエイドです。効果があると分かっていながら使わない手はありませんよね。
特に中枢神経系への刺激による主観的きつさ、疲労感の低減は明らかな証拠がある効果です。
もし、まだ競技前にカフェイン摂取を試したことが無い方がいれば、是非この機会に試してみてはいかがでしょうか。
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