【低酸素トレーニングのすべて】体に起こる効果と実施方法を徹底解説

低酸素トレーニング
こんな疑問を解消
  • 低酸素トレーニングって、どんな効果が得られるの?
  • 低酸素トレーニングを試してみたいけど、費用が高くて悩んでいる
  • レースで速く走るための、低酸素トレーニングの適切な実施方法が知りたい

 低酸素トレーニングを行うことができるフィットネスジムや施設が増えてきました。低酸素トレーニングに興味がある方も多いのではないでしょうか。

 ここでは、低酸素トレーニングについて、得られる効果や適切な実施方法を徹底解説します。

 本記事を読めば、レースでの記録向上を目的とした低酸素トレーニングを理解することができ、自分自身に必要なトレーニングなのかを理解することができます。

 トレーニングの一部を適切な低酸素トレーニングに変えることで、最大酸素摂取量と乳酸性作業閾値の改善が見込めます。

 血液性状を変えるためには、低酸素状態に長い時間居ることが必要です。練習の一部を低酸素トレーニングに置き換える場合、短期間では血液の改善が達成できないと考えられます。

低酸素トレーニングについて
  • 高地トレーニング、低酸素ルームでのトレーニングを「低酸素トレーニング」と定義
  • 低酸素トレーニングにより、呼吸筋の強化、赤血球の生成、生理学指標(LT値、VO2max)の改善が見込める
  • 赤血球の生成は、低酸素状態に長期滞在(1日12時間以上かつ4週間以上)が必要であると言われている
  • デメリットとして、運動強度が上げられないことによる筋力低下の可能性がある
  • 低酸素環境下で、週1~2回・心拍数150bpm前後でのトレーニングでも、生理学指標の改善が見られた
著者:らんしゅー
日比野就一

社会人からランニングを始めました。
理論に基づいたトレーニングで、
どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
競技志向で取り組んでいます。
自己紹介・記録変遷はこちら

血中乳酸濃度や血糖値も測定。
マラソンへ科学的にアプローチします。

★自己ベスト
 1500m 4:25(2022/08)
 5000m 16:01(2022/09)
 10000m 33:44(2021/12)
 ハーフ 1:12:29(2022/03)
 フル 2:40:15(2026/03)

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目次

低酸素トレーニングに取り組もうと思ったきっかけ

 私自身が低酸素トレーニングに取り組もうと思ったきっかけは、以下の通りです。

低酸素トレーニングに興味を持ったきっかけ
  • パーソナルトレーニングで指導している方が、低酸素トレーニングを取り入れていた
  • 家の近くに、低酸素トレーニングが行えるジムがあった
  • 低い運動強度でも、代謝機能を追い込める可能性を感じた
  • 怪我を予防できると考えた

 低酸素トレーニング中は血中酸素濃度が低下した状態となるため、走る動作に必要な酸素を筋肉に送り届けるために、普段よりも高い心拍数で多くの血液を流そうとします。

 筋肉では、血液中にある酸素からエネルギーを作り出すことになりますが、そもそも血液中に酸素が少ないと、一生懸命酸素を血液から抜き取って、必要なエネルギーを作り出そうとします。

 このように、通常の酸素濃度で走っているときより遅いペースでも、体の代謝機能に刺激を入れることができることが、低酸素トレーニングのメリットだと考えました。

 平地で同じように代謝機能へ刺激を入れようとすると、相当運動強度を高める必要があり、怪我につながります。

 実際、2023年1月以降、オーバートレーニングによって大きな怪我を経験しました。このような怪我を予防するためにも、低い運動強度で追い込める低酸素トレーニングに注目しました。

低酸素トレーニングとは?

 低酸素トレーニングとは、「低酸素状態でトレーニングを行うこと」を示します。低酸素トレーニングは大きく分けて以下の3つに分けられます。

低酸素トレーニングの種類
  • 高地でのトレーニング(標高が高い場所)
  • 低酸素室、低酸素ルームでのトレーニング(フィットネスジムなど)
  • 低酸素マスクをつけた状態でのトレーニング(低換気トレーニング)

高地でのトレーニング

 高地(標高が高い地域)では酸素濃度が低いため、高地でのトレーニングは低酸素トレーニングとなります。

 高地では、酸素濃度が低いだけでなく気圧も低い、という要素もあるため、より血液に酸素を取り込むことが困難になります。このような状態を、「低圧低酸素状態」と呼びます。

 エリートランナーや実業団選手は、レースがしばらくない期間は高地に滞在してトレーニングを行い、レース前になると高地から降りてきて、体を慣らしてからレースに参加します。

低酸素室でのトレーニング

 意図的に酸素濃度を低くした部屋で運動を行うことで、低酸素トレーニングを行うことができます。

 フィットネスジム等でよく見るのは、このタイプとなります。ハイアルチ、などが低酸素フィットネスジムで有名です。

 低酸素室の場合は、酸素濃度は低いものの気圧は通常通り(常圧低酸素)であることが多いです。気圧が低い高地では血液への酸素取り込みがさらに制限されるため高山病のリスクがありますが、常圧低酸素室では高山病になりにくい点が特徴です。

 「常圧低酸素室と自然高地の効果は同じなのか?」という疑問もあると思いますが、27名の競技選手を対象とした研究 ※1 では、常圧低酸素室と自然高地(2,250m相当)でそれぞれ18日間のLHTLを実施したところ、VO2maxやヘモグロビン量、パフォーマンスのいずれも両群間で有意差がありませんでした。つまり、適切な条件(十分な曝露時間と高度設定)さえ満たせば、ジムの低酸素室でも自然高地と同等の効果が期待できます。

 低酸素室は、標高2500m~3000mの酸素濃度に設定されることが多いです。

低酸素マスクをつけた状態でのトレーニング

 この中で、「低酸素マスクをつけた状態でのトレーニング」は厳密にいうと、低酸素トレーニングではありません。低換気トレーニングと言います。

 低酸素マスクをつけるトレーニングは、一回の呼吸で吸うことができる空気量を制限することで疑似的に低酸素状態を作り出すことになるのですが、空気に含まれる酸素濃度は変化がありません。

 低酸素マスクをつけた場合は、呼吸数を増やせば、マスクをつけた状態と変わらない酸素濃度となります。

 そのため、血中酸素濃度が低下することよりも先に、呼吸が苦しくなることが多いため、低酸素トレーニングとしての効果は低いと考えられます。

 本記事では、「高地でのトレーニング、もしくは、低酸素室でのトレーニング」を想定して、低酸素トレーニングの効果を解説していきます。

低酸素トレーニングの効果とメリット

 低酸素トレーニングを行うことで得られる効果を考えるにあたり、以下の要素を考慮する必要があります。

低酸素トレーニングで得られる効果
  • 肺換気能力の向上(呼吸筋肉の強化)
  • エリスロポエチン(EPO)の生成による赤血球(ヘモグロビン)の生成
  • 血液から筋繊維に酸素を取り込み使う能力

肺換気能力の向上(呼吸筋肉の強化)

 空気中の酸素は、気管支を通ったのち、肺胞にて酸素を血液に受け渡します。肺胞の周りには血管が通っています。

肺胞と肺胞を取り囲む毛細血管でのガス交換
図 肺胞と肺胞を取り囲む毛細血管でのガス交換

 血液中に取り込まれる酸素量は、血液の中に含まれる酸素と肺胞の中に取り込んだ酸素の差によって決まります。その差が大きいほど、一度にたくさんの酸素を肺胞から血液中に取り込むことが可能です。

 低酸素環境下では、肺胞の中に取り込む酸素の量が少なくなるため、呼吸数を増加させてより多くの酸素を取り込もうとします。

 呼吸数が増加すると、呼吸筋肉(横隔膜など)が活発に働きます。呼吸筋肉は主に遅筋繊維で構成されており、疲労しにくい筋肉ですが、低酸素トレーニングを重ねることで呼吸筋が強化されます。

 呼吸筋が強化されると、肺換気量が増大します。

赤血球・ヘモグロビンの生成

 低酸素状態に長期間曝露されると、体は酸素供給を向上させるために、エリスロポエチン(EPO)というホルモンの生成を刺激します。

 EPOは、骨髄を刺激して新たな赤血球を生成します。赤血球(ヘモグロビン)は酸素と結びつき全身に酸素を運ぶ役割を持っているため、赤血球が増加すると血液の酸素運搬能力が増加します。

 酸素と結びつくのは赤血球に含まれるヘモグロビンであるため、酸素運搬能力は赤血球数とヘモグロビン濃度によって決まります。

 ただし、「血液中の赤血球が増える効果を得るには、低酸素状態に長い時間滞在することが必要」です。

 具体的には、2,500m相当の環境に1日12時間以上・4週間以上滞在することが必要です ※2。EPO(赤血球産生を促すホルモン)自体は高地到達後24〜48時間以内に増加し始めますが、実際に赤血球量が有意に増えるまでには3〜4週間かかります。また、高度についても2,500m以上が最適で、2,000m程度では赤血球の適応が不十分になりやすいことが48名を対象にした研究 ※3 で示されています。

 普段は低地で過ごし、ジムなどで短時間の低酸素トレーニングを行うだけでは、赤血球の増加やヘモグロビン濃度の向上を達成することは難しい、というのが一般的な考え方です。

血液からの組織への酸素抽出・酸化能力の向上

 肺胞で酸素を取り込んだ血液は、心臓を経由して全身に運ばれます。

 体の各組織ではエネルギーを作り出すために、血液から酸素を取り込み、ミトコンドリアでエネルギー(ATP)を産生します。

 血液中ではヘモグロビンが酸素を手放し、酸素が血管の壁を通って筋肉に取り込まれる必要があります。筋肉に取り込まれた酸素は、ミトコンドリアでエネルギーを産生することに使われます。

 低酸素状態でトレーニングを行うと、血中酸素濃度が低下します。血中酸素濃度が低下すると、血液から筋肉へ取り込める酸素量が減るため、体はより効率よく酸素を使えるように変化しようとします。

 この変化を「末梢適応」と呼び、筋肉中のミトコンドリア(エネルギーを作る器官)の機能が向上し、血液から酸素を取り出す能力(=動静脈酸素較差)が高まります。結果として、VO2maxや乳酸性作業閾値が改善します。

 実は、この末梢適応は「毎日12時間以上の長時間低酸素滞在」がなくても得られることが示されています。競技ランナー18名を対象にした研究 ※4 では、通常のトレーニングに週3回の低酸素インターバルを加えた6週間のプログラムで、VO2maxが平均+6%向上し、乳酸閾値速度も改善しました(対照群には変化なし)。赤血球量の増加は見られなかったため、この効果は末梢の筋肉が酸素を使う能力の向上によるものと解釈されています。

 つまり、ジムなどで週数回の低酸素トレーニングを行うだけでも、VO2maxやLT(乳酸閾値)を改善できる可能性があります。

ペースが遅くても代謝機能を追い込むことができる

 低酸素トレーニングのメリットとして「ランニングペースが遅くても代謝機能を追い込めること」が挙げられます。

 普通なら、ある程度疾走ペースを上げて体の酸素摂取量を上げていかないとLT強度以上には達しませんが、低酸素下でトレーニングを行うことによって、低い疾走ペースでも体内は酸素不足になり代謝機能への刺激が入ります。

 これは、怪我を防ぎなが有酸素能力を向上させるにはとてもメリットになります。有酸素代謝機能への刺激が入るのであれば、疾走ペースは遅ければ遅いほどいい(=怪我予防として)と言えます。

低酸素トレーニングのデメリット:運動強度が低下し筋力が落ちる

 低酸素トレーニングのデメリットは、通常の酸素状態で行うトレーニングよりも、低酸素状態で行うトレーニングの方が運動強度が下がってしまうため、筋力が低下してしまう可能性があることです。

 低酸素ルーム等、生活の一部で低酸素トレーニングを取り入れている場合には発生しにくい現象ですが、高地に長期滞在している場合などに発生する可能性がある現象です。

低酸素状態では最大酸素摂取量(VO2max)が低下する

 低酸素状態では、最大酸素摂取量が低下します。以下図は、標高が高くなるほど最大酸素摂取量が低下することを示したグラフです。

標高と最大酸素摂取量の関係
図 標高と最大酸素摂取量の関係(パワーズ運動生理学P585)

 したがって、低酸素環境下では、運動強度(=酸素摂取量)を上げることが難しいと考えられます。

低酸素状態でVO2maxが低下する理由

 最大酸素摂取量(VO2max)は、以下の要因で決まります。

VO2maxを決める項目
  • 最大心拍出量(SV):心拍1回当たりの最大血液拍出量
  • 最大心拍数(HRmax)
  • 動静脈酸素較差(a-vDO2max)
らんしゅー
※動静脈酸素較差
心臓から送り出される血液(=動脈)に含まれる酸素量と、各組織から心臓に戻ってくる血液(=静脈)に含まれる酸素量の差

 このうち、低酸素状態でも心拍出量と心拍数は変化が少ないことで知られています。低酸素状態でVO2maxが低下するのは動静脈酸素較差が低下することが原因です。

 動静脈酸素較差が低下するのは、血液中のヘモグロビン酸素飽和度(=血中酸素濃度)が低下することが要因です。

 血液中に取り込むことができる酸素量が少ないので、筋肉において血液から抜き取れる酸素の量も少なくなるため、動静脈酸素較差が低下し、結果的にVO2maxが低下することになります。

低酸素状態でのトレーニングは筋力が低下する?

 低酸素トレーニングで筋力が低下する可能性がある理由は、通常の酸素濃度で行うトレーニングよりも運動強度が低下するためです。

 動員される筋繊維は、運動強度(=酸素摂取量)で決まります。以下の図は、運動強度と、筋繊維の動員率を示したグラフになります。

運動強度と筋繊維動員率
図 運動強度と筋繊維動員率

 低酸素環境下では、運動強度が低下してしまうため、通常酸素濃度環境下では多くの速筋繊維を導入できていたのに対し、低酸素環境では、運動強度が下がり、動員できる筋繊維も少なくなります。

 結果的に高強度なトレーニングを行うことができなくなってしまうことが、筋力低下につながる要因となりえます。

 このデメリットへの対策として、エリートランナーの間ではLHTL法(Living High, Training Low)が採用されています。普段の生活や低強度のトレーニングは高地で行い(EPO→赤血球増加の刺激を得る)、高強度なスピードトレーニングは低地に戻って行う(十分な運動強度を確保する)トレーニング手法です。

 エリートランナー22名を対象にした研究 ※5 では、2,500mで生活しながら1,250mでトレーニングを行うLHTLプログラム(27日間)を実施した結果、VO2maxが平均+3%向上し、3,000m走のタイムが有意に改善しました。51件の研究を対象にしたメタアナリシス ※6 でも、LHTLによる海面レベルでの平均+1.6%のパフォーマンス向上が示されています。

 ただし、個人差には注意が必要です。EPOの応答量は人によって大きく異なり、「効果が出やすい人(responder)」と「出にくい人(non-responder)」が存在することが知られています ※7。LHTLを試みても全員が同じ恩恵を受けられるわけではないという点は、覚えておきましょう。

 このようにして、エリートランナーは低酸素トレーニングを上手に取り入れています。

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低酸素トレーニングの効果的な実施方法

 はじめに結論を述べると、低酸素トレーニングを効果的に実施する方法がまとめられた研究結果は少ないです。基本的に高地でも低地と同様のトレーニングを行う例が多いため、高地だからと言って特別なトレーニングを行うわけではないからです。

 低酸素トレーニングの適切な実施方法を提案することは、とても難しいことです。低酸素環境下では、低強度・高強度、どちらの方が効果があるのか?などを示した論文は見当たりません。

 いくつか論文を調査したところ、低酸素トレーニングに関して得られている知見は以下のようなものがあります。

低酸素トレーニングについての知見
  • 低頻度、低強度(週1~2回、心拍数150bpm程度でのトレーニング)でも、LT値向上などの効果が見られた
  • 低酸素トレーニングで運動強度を制御し高度を変化させることで熟練者でも生理的指標の改善が見られた

 以下では低酸素トレーニングを、市民ランナーでも取り入れることができる形で実践した論文を2つ紹介します。

低酸素トレーニングを低強度・低頻度で行った場合

 とても興味深いテストを行った例を紹介します。

大学生の男子長距離走選手 6 名を対象として,駅伝大会の直前の 4 週間にわたり,低地での通
常トレーニングに加えて,週に 2 回,1 回あたり 90 分間(主運動は実質 40 分間)の低酸素トレーニ
ングを行った.このトレーニングは常圧低酸素室内で行い,高度は各選手の体調に合わせて 2000
~2800m 相当(酸素濃度:16.4%~14.9%)に設定した.主運動はトレッドミル走とし,主観的運動強
度が 13(ややきつい)となる速度に調節した・・・

長距離走選手を対象とした低強度かつ低頻度での低酸素トレーニングの効果-レース前の調整期に行った4週間のトレーニング事例- [概要]

 このように、普段は低地でトレーニングを行いながら、市民ランナーでも取り入れることが可能な頻度・強度で低酸素トレーニングに取り組んだ例がありました。

 テストの結果をまとめると、次の通りです。

低強度・低頻度 低酸素トレーニングの効果
  • 5000mレースペースにおける血中乳酸濃度と主観的運動強度が、被験者全員で有意に低下
  • 赤血球やヘモグロビンといった血液性状には変化は見られなかった

 被験者は全員、競技歴が7年以上、5000mのタイムでいうと15分~17分程度の選手です。

 低酸素トレーニング以外のトレーニング効果との切り分けが難しいですが、被験者が成熟した選手であることから、短期間の通常トレーニングで生理学的指標が改善することは考えにくいです。

 このことから、低酸素トレーニングが効果をもたらした要因であると考えられます。

低酸素トレーニングで運動強度を制御し高度を変更した例

 次の例では、低酸素トレーニングにおける運動強度を制御し、ガイドラインにしたがって設定高度を変化させたところ、乳酸性作業閾値の向上、競技成績の向上が見られた、と報告されています。

 実験概要を示すと、被験者は大学1~4年目まである特定の競技会前は低酸素トレーニングで調整を行いました。

 一年目~三年目までは、高度2000mの酸素濃度に設定したトレーニングを行っていましたが、特に三年目での競技成績が芳しくなく、三年目には乳酸性作業閾値の向上も見られなくなりました。

 そこで四年目には、低酸素環境下での運動強度をガイドラインにしたがって制御し、高度設定を上げ、より低い酸素濃度でトレーニングを行うようにしました。

 その結果、四年目では低酸素トレーニング完了後、乳酸性作業閾値の向上が見られ、競技でも好成績を残すことができました。

 三年目までは、高度2000mの設定を変えませんでしたが、四年目は主観的な感覚によって設定高度を変更しました。

低酸素トレーニングを実施できる施設・ジム

 日本で低酸素トレーニングジムの先駆け的存在は「ハイアルチ」です。全国に29店舗あります。

 ハイアルチは直営店舗以外でも、他フィットネスジムの一角で展開されている例があります。その一例が、エイムスクエアゲートです。

 これら以外にも、もっと小さなフィットネスジムでも低酸素ルームを持っていたりします。

 低酸素トレーニングを行うことができる場所を調べる方法はネット検索が有効です。「低酸素 ジム」などで検索すると、自宅から通える低酸素ジムを見つけることができるかもしれません。

低酸素トレーニングについての動画・対話

 低酸素トレーニングについて、マラソンランナー大迫傑選手と、早稲田大学時代に競走部で同期だった竹井さんが対話されています。

 かなり詳しい内容になっています。ぜひ参考にしてみてください。

 動画では、竹井さんが、「短時間の低酸素トレーニングでは造血作用(赤血球を作り出す作用)は得られない。少なくとも1日あたり12時間、低酸素状態に居る必要がある」と述べています。

 やはり、大多数の考え方としては、短時間の低酸素トレーニングによる赤血球の生成やヘモグロビン濃度の増加効果は得ることが難しい、ということです。

 市民ランナーで、低酸素トレーニングを取り入れるためには、費用と時間が必要です。

 記録が頭打ちになって、何か試してみたい、といった方にはぜひおすすめのトレーニングですので、お試しください。

参考文献

※1 Saugy JJ et al. (2014) “Comparison of ‘Live High-Train Low’ in normobaric versus hypobaric hypoxia” PLoS ONE

※2 Wilber RL et al. (2007) “Effect of hypoxic ‘dose’ on physiological responses and sea-level performance” Medicine and Science in Sports and Exercise

※3 Chapman RF et al. (2014) “Defining the ‘dose’ of altitude training: how high to live for optimal sea level performance enhancement” Journal of Applied Physiology

※4 Dufour SP et al. (2006) “Exercise training in normobaric hypoxia in endurance runners. I. Improvement in aerobic performance capacity” Journal of Applied Physiology

※5 Stray-Gundersen J et al. (2001) “‘Living high-training low’ altitude training improves sea level performance in male and female elite runners” Journal of Applied Physiology

※6 Bonetti DL, Hopkins WG (2009) “Sea-level exercise performance following adaptation to hypoxia: a meta-analysis” Sports Medicine

※7 Chapman RF et al. (1998) “Individual variation in response to altitude training” Journal of Applied Physiology

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。

出版情報
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