※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。改訂履歴は記事の最後に記載しています。
【ヤッソ800】中級者におすすめ!練習方法とトレーニング効果を徹底解説
- ヤッソ(yasso)800とは?
- ヤッソ800の効果が知りたい
- ヤッソ800はどんな人が取り組んだらいいの?
サブ3を目指すようなランナーでヤッソ800のやり方や効果について知りたいと思っている方もいると思います。
私は社会人から本格的にランニングを始めた市民ランナーです。月500km程走り競技志向でランニングに取り組んでいます。
ハーフマラソンで1時間12分29秒の実力です。
私自身も、様々なインターバルトレーニングを行ってきましたが、ヤッソ800にも継続的に取り組んでおり、その効果を実感しています。
ここでは、運動生理学や私自身の実体験に基づき、ヤッソ800のトレーニング効果について考えていきます。
本記事を読めば、ヤッソ800で得られる効果を理解することができ、今の自分に取り入れるべきトレーニングかどうかを判断することができます。
- ヤッソ800は、800m疾走+400mリカバリージョグのインターバルトレーニング
- フルマラソンサブ3のレベルから有効なトレーニング
- レストが十分に長いため、精神的な障壁が低く取り組みやすい
- トレーニングボリュームが稼げるためフルマラソン向けのトレーニング
ヤッソ800とは:800mインターバル走のこと
ヤッソ800は、800mの疾走と400mのジョギングを10回繰り返すインターバルトレーニングです。
市民ランナーの間で人気となっている理由は、疾走区間とレスト区間の設定ペースが分かりやすいからです。
設定ペースはフルマラソンの記録から算出します。
- マラソンの記録が3時間:800mを3分で走り、400mを3分でジョギング
- マラソンの記録が2時間30分:800mを2分30秒で走り、400mを2分30秒でジョギング
ダニエルズのランニング・フォーミュラで紹介されているインターバルトレーニングのやり方では、レストの取り方について「疾走時間と同じくらいかそれ以下の時間」となっています。
ヤッソ800ではその条件をほぼ満たせていることが分かり、理にかなったトレーニング内容となっています。
ヤッソ800は中級者向け(サブ3程度以上)のトレーニング
ヤッソ800はインターバルトレーニングの一種ですので、トレーニング目的は最大酸素摂取量(VO2max)の向上です。
VO2maxインターバルトレーニングについては、次の記事で詳しく解説しています。
自分自身の実体験や周囲の方の話を聞いた結果、フルマラソンでサブスリー以上の実力がある人向けのトレーニングである事が分かってきました。
理由としては、フルマラソンでの記録がサブスリーよりも遅い人にとっては、ヤッソ800の設定ペースでは楽すぎる傾向にあるからです(※実際のランナーにヒヤリングした結果)
このことはVDOT Calculatorの計算からも示されます。
ヤッソ800の設定ペースとVDOT Calculatorにてフルマラソンの記録から計算したインターバルペースを比較すると、記録が高いほど、ヤッソ800の設定ペースが厳しくなることが分かります(図1)。
ヤッソ800の設定ペースとインターバルペースがほぼ一致するのが、フルマラソンの記録が2時間38分の時(ヤッソ800の設定ペースが2:38/km)です。ランナーの感覚とも合うことが分かりました。
サブ3のレベルでは、ダニエルズのランニング・フォーミュラで提案されているインターバルペースに到達しないため、最大酸素摂取量向上の効果は見込めない可能性があります。
ヤッソ800は中級者から上級者向けのトレーニングであることが分かります。
ヤッソ800の効果・メリット・デメリット
ヤッソ800の効果を考察します。
1000m×5などの、ヤッソ800よりも1回当たりの疾走距離が長いロングインターバルとの比較、という形で話を進めていきます。
最大酸素摂取量の向上
疾走ペースを適切に設定すれば、最大酸素摂取量の向上が見込めます。
最大酸素摂取量の向上を狙う場合、インターバルにおける疾走速度が重要となります。
ヤッソ800では、1回当たりの疾走距離が800mとなっており比較的短め、レスト時間が疾走時間と同じであることから、レスト時間は長めの設定です。
そのため、ヤッソ800では1回当たりの疾走速度を高めることができる傾向にあります。実際に私自身が行った時も、1本ずつ集中して疾走速度を維持することができました。
最大酸素摂取量を向上させるためには高い疾走速度をできるだけ維持することが練習のポイントです。
ヤッソ800ではレスト時間が長く、一回当たりの疾走距離が比較的短いことが、1本あたりの疾走速度を上げることができる理由です。
レスト時間が比較的長く、最大酸素摂取量向上の効果が低下する可能性ですが、十分に疾走ペースが速いことが重要であり、得られる効果には大きな差がありません。
十分な疾走速度が確保できたうえで「主観的にきつい」と感じることができていれば、そのインターバルトレーニングは自分にとって最適化されていると考えてよいと思います。
練習を継続しやすい
最大酸素摂取量を向上させるためには高い疾走速度をできるだけ維持することが練習のポイントであるため、トレーニングをやり切れず途中でペースが落ちてしまうと、練習効果が下がります。
私自身が感じてきたこととして、特に単独でトレーニングを行っていると、ロングインターバル走では、途中で苦しくなってペースが落ちてしまったり、途中で諦めてしまうことがありました。
それと比べヤッソ800は、レスト時間が十分にあるため、何とか練習をやりきれる確率が高いです。
練習の継続性や再現性という観点から考えると、ロングインターバルよりも練習をやり切りやすく、結果として長期で見ると、効果を十分に得られる可能性があります。
実力の定点観測として使える
ヤッソ800は、自分の実力を定期的に測定するトレーニングとして有効だと考えます。
先にも述べたようにレスト時間が比較的長いため、練習をやり切りやすいことから、定期的に取り組みやすい特徴があります。
また、ヤッソ800でこなせたペース設定が、計算上はそのままフルマラソンタイムに換算できるので、わかりやすさもあります。
レースの再現性は低い
インターバルトレーニングを5000mレースにできるだけ近い練習として取り入れているランナーもいると思います。
5000mのレースを再現する練習としては、ヤッソ800は不適です。
理由としては、疾走毎のレストが長いため、5000mレースの途中で感じるような、きつい中でもハイペースを持続する力が身につきにくい(正確には、体験しにくい)からです。
5000mレースに近い時期に行う、レースの再現を求めたトレーニングでは、レスト時間を短めに設定したロングインターバルに取り組みましょう。
VO2maxロングインターバルトレーニングの実施方法については次の記事で詳しく解説しています。
ヤッソ800の練習場所・方法
ヤッソ800は、疾走距離とリカバリーの距離がそれぞれ800m、400mと固定されているため、できれば陸上競技場で行うことが望ましく、わかりやすいと思います。
しかし、陸上競技場が使えない場合、公道でトレーニングを行う必要がありそうです。
その場合は、約1kmに渡り信号が無い道で、ガーミンのワークアウト機能(その他GPS付ランニングウォッチでも同様の機能があるかもしれません)を使ってトレーニングをすることをおすすめします。
800mと400mを正確に測る手段を持っていない市民ランナーの方が圧倒的多数だと思います(距離を計測するメーターは持っていないですよね)。
その場合、広く普及しているGPS付ランニングウォッチーを利用することが一番早いです。
そんな時に有効なのが、ガーミンのワークアウト機能です。
「Garmin Connect(ガーミンコネクト)」で、トレーニングメニューを組んでおくことができる機能になります。
例えば、「1000m×5本 レスト60秒」というインターバルのワークアウトを設定しておくと、時計をスタートさせると同時にインターバルの1本目がスタートします。
ワークアウト機能を使うことができれば、今まで走ったことが無い場所でも、信号が無く車の通りが少ない場所を選べば、インターバルトレーニングを行うことができます。
ヤッソ800は市民ランナーの中でも人気があるトレーニングのうちの一つです。
まだインターバルトレーニングを取り入れたことが無いというランナーは、まず少ない本数からヤッソ800に取り組んでみてはいかがでしょうか。
参考文献:
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