私はこれまで、5000mやハーフマラソン、フルマラソンでの記録を向上させるために主に「走る練習」を行ってきました。長距離種目での記録向上のためには「走ること」が最も効率が高いことは明らかです。
「走る以外」のトレーニングでも記録を伸ばせないか?についても考えてきました。何度かウェイトトレーニングを試してきましたが、取り入れることで逆にパフォーマンスが低下したりしたため、継続せずやめてしまっていました。
本シリーズでは、私自身が長距離種目での走力向上を目指してVBT(Velocity Based Training)を取り入れた軌跡を記載していきます。
シリーズ最初の記事は、なぜVBTを取り入れようと思ったのかについて記載していきます。
VBT(Velocity Based Training)とは
VBT(Velocity Based Training)とは「速度基準のトレーニング」です。ウェイトトレーニングを含めたストレングストレーニングにおいて、バーベルやダンベルなどの挙上速度を測定し、その速度に基づいてトレーニングの強度や量を決定する手法です。
従来のトレーニング方法では、最大挙上重量(1RM)に対する割合で負荷を設定することが一般的でしたが、VBTでは目標とする挙上速度を決め、その挙上速度を出せる重量・負荷でトレーニングを行います。
挙上速度の測定は専用のセンサーで行います。私は海外製のEnodeを購入しました。
VBTに使用できるセンサーは複数ありますが、ほとんどが海外製です。VBT用のセンサーについては、別の記事で詳しく紹介します。
ストレングストレーニングへの取り組み履歴
以下では、学生時代と社会人になって以降のストレングストレーニングへの取り組み履歴について紹介します。ストレングストレーニングは、ウェイトトレーニングやプライオメトリックスを含んだトレーニング全般を指します。
学生時代のストレングストレーニング
私自身がウェイトトレーニングに取り組み始めたのは、中学生の頃でした。親の趣味で家にパワーラックがあったため、自宅でウェイトトレーニングを行える環境があったことがきっかけです。
中学・高校ではサッカー部に所属していて、補助的なトレーニングとしてウェイトトレーニングに取り組んでいました。大した知識も無いままに取り組んでいたため、「スクワットを10回3セット」のようなメニューを行っていました。
大学では陸上の走り幅跳びに取り組み、ウェイトトレーニングも行いました。コーチがウェイトトレーニングのメニューも提示してくれたので、過去に行っていたようなやり方とは異なる方法で取り組みました。
大学では、ベンチプレスやスクワットで扱える重量が明らかに伸びていきました。ウェイトトレーニングそのもののパフォーマンスは間違いなく上がっていたと思います。
走り幅跳びという競技の性質上、練習の一環でハードルジャンプやバウンディングなどのプライオメトリックスにも取り組んでいました。ハードルジャンプではハイハードルの連続ジャンプができるように練習した覚えがあります。
社会人でランニングを始めて以降のストレングストレーニング
社会人になってから6年目、本格的にランニングを始めました。ランニングを始めて2年半は走るトレーニング以外はほとんど行いませんでした。
しかし、何かのきっかけがあって再びウェイトトレーニングを導入してみました。以前、自宅にパワーラックを購入してあったので、改めてそのパワーラックを使ってスクワットなどを行いました。
ウェイトトレーニングのメニューとしては10回3セットのような最もオーソドックスだと考えていたものでした。
ただ、それも長続きしません。理由としては、ウェイトトレーニングを行ってしまうと明らかにランニングトレーニングのパフォーマンスが低下してしまったためです。
ストレングストレーニングを取り入れるにあたり難しかったのが、ストレングストレーニングを行うタイミングです。
ハードなポイント練習の後に行うと、ストレングストレーニング自体のパフォーマンスが上がらない。一方で、Easy強度でランニングを行う日に行うと、翌日のポイント練習に影響が出てしまう。
何度かストレングストレーニングを取り入れようとしたものの、毎回継続せずすぐにやめてしまう、といったことを繰り返しました。
ストレングストレーニングに感じていた違和感
私は常にストレングストレーニング、特にウェイトトレーニングに対して違和感を感じていました。
高校時代は、周りのメンバーよりも明らかにウェイトトレーニングを多くこなしていて、扱える重量も高かったのですが、ランニングスピードや当たりの強さに生きているような感覚はありませんでした。
大学ではウェイトトレーニングで扱える重量が明らかに伸びていったのですが、走り幅飛びのパフォーマンスにはほとんど結びつきませんでした。
フルスクワットで120kgを複数回こなせるような筋力を得ていましたが、プライオメトリックスとして行っていたハードルジャンプでは、いつまでたってもハイハードルの連続ジャンプができるようになりませんでした。
総じて、「これまでの人生でウェイトトレーニングが競技結果に結びついた感覚を得たことがない」というのが、私自身がストレングストレーニングに対して感じていた違和感です。
VBTに着目した理由
私がどのようにしてVBTを知ったのかは忘れてしまいました。しかし、VBTに着目し色々調べ始めた理由は私が感じていたストレングストレーニングに対しての違和感を解決できると感じたためです。
どんな競技でもその競技における動作に必要な「速さ」があり、その速さの中でパワーを発揮できるようにならないと、競技のパフォーマンスには結び付きません。
よく考えてみれば、いくら「ゆっくり」行うフルスクワットで120kgが上がるようになっても「速い」動作で行うハードルジャンプや、走り幅跳びそのものは飛べるようにはならない」というのは明らかな気がします。
VBTは速度を基準にしてトレーニングを行います。「自分が取り組んでいる競技に必要な「速さ」を基準に、ストレングストレーニングを行うことができれば、競技パフォーマンスの向上に直結しそうだ」と、直感的に思いました。
長距離ランニングにおいても、大迫傑選手をはじめとして、世界のエリートランナーはストレングストレーニングに取り組んでいます。
走るトレーニングだけでは得られない「何か」を得るために、私自身もVBTを取り入れることにしました。
コメント