市民ランナーが「閾値トレーニング」を主体にして記録を伸ばすための方法

閾値トレーニング完全ガイド
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こんな疑問を解消
  • 「二重閾値(ダブルスレショルド)トレーニング」に興味がある
  • ペース走やインターバルなどの高強度トレーニングがきつくてこなせない
  • 閾値トレーニングに取り組んでいるけど結果が出ない

 近年、ノルウェー代表のヤコブ・インゲブリクセン選手が中長距離界で素晴らしい記録を何度も出しています。ヤコブ選手のトレーニング手法は「ダブルスレショルドトレーニング」と呼ばれています。

 「ダブルスレショルド」とは、1日2回、強度にバリエーションを持たせた閾値強度でのトレーニングを行うトレーニング手法のことを指します。

 ヤコブ選手だけでなく、世界のエリートランナーの間でも取り入れられ始めているようです。もともとダブルスレショルドトレーニングを提唱したのは元ノルウェーの陸上選手であったマリウス・バッケン氏です。

 彼は自身のブログで、自らのトライ&エラーについて世界に発信し、ダブルスレショルドトレーニングの生みの親として認識されるようになりました。

 市民ランナーの間でも、ダブルスレショルドトレーニングを取り入れている例が見られます。

 InstagramやXでは、市民ランナーが自身のトレーニング記録を発信しており、ダブルスレショルドトレーニングに取り組まれている例が散見されます。

 私自身も、ダブルスレショルドトレーニングに出会い、取り組んでみたランナーのうちの一人です。実際に血中乳酸濃度測定器も購入し、本格的に取り組んでいます。今でもまだ試行錯誤中です。

 本記事では、ダブルスレショルドトレーニングがなぜ有効だと考えられているかについての説明を通して、市民ランナーが閾値トレーニングを主体にして競技力を伸ばしていくための方法論について解説します。

 私自身が血中乳酸濃度測定を行いながら分かったこともお伝えします。まだ閾値トレーニングに取り組んでいないけど興味がある方や、取り組んでみたけどうまくいっていないランナーの方の参考になれば幸いです。

 以下は本記事をご購入された場合の目次です。冒頭は無料で読むことができます。

ダブルスレショルドトレーニングについて

 ダブルスレショルドトレーニングでは、閾値強度のトレーニングをできるだけ大容量でこなしていくことに重きが置かれたトレーニングメソッドです。

 閾値トレーニングに加えて、わずかな高強度トレーニングと、最低限の強度で行う低強度トレーニングを組み合わせます。

 ヤコブ選手の兄であるヘンリク選手のトレーニング記録を解析した結果によると、最終的な比率としては以下表1のようになっていたようです。

スクロールできます
強度区分%HRmax血中乳酸濃度
mmol/L
トレーニングに
占める比率
低強度62~820.7~2.067.5%
閾値強度82~922.0~4.026.0%
高強度92~974.0~6.05.0%
無酸素> 97> 6.01.0%以下
スプリント1.0%以下
表1 ヘンリク・インゲブリクトセン選手の2012年シーズンにおけるトレーニング強度比率

※A Longitudinal Case Study of the Training of the 2012 European 1500 m Track Championに掲載されている情報を読み取り、およその数値を推算して入力。

 ヘンリク選手の例だと、閾値強度のトレーニングが全体の25%以上を占めます。2012年シーズンにおけるヘンリク選手(22歳)は、800mの記録が1分48秒60、1500mが3分35秒43でした。

 閾値強度が具体的にどのくらいの強度なのかを説明するために、図1に運動強度と血中乳酸濃度の関係をグラフで示しました。

 閾値強度を運動強度指標で示すと、76%VO2max(82%HRmax)から90%VO2max(92%HRmax)の範囲になります。また、血中乳酸濃度では約2.0mmol/L~4.0mmol/Lの範囲です。

 VO2maxは最大酸素摂取量HRmaxは最大心拍数を表しており、それぞれ最大に対する比率で示しています。

運動強度と血中乳酸濃度の関係
図1 血中乳酸濃度と運動強度の関係

 閾値強度の下限(上図で示した血中乳酸濃度2.0mmol/Lの点)は「LT1」と呼ばれます。閾値強度の上限(上図で示した血中乳酸濃度4.0mmol/Lの点)は「LT2」と呼ばれます。

 ダニエルズのランニング・フォーミュラで「閾値」と語られているのは、文脈から想像すると「LT2」の点を示しています。LT2は「OBLA:Onset of Blood Lactate Accumulation」とも呼ばれます。

 ダブルスレショルドトレーニングの由来は「1日で2回の閾値トレーニングを行うトレーニング」であることです。

 ダブルスレショルドトレーニングの提唱者であるマリウスさんのブログ※2では、オーソドックスなダブルスレショルドトレーニングの例として、以下のように説明されています。

We would traditionally do two double thresholds with type 6-minute intervals in the morning and either 1-minute intervals (30 seconds rest) in the evening or alternated with 45 seconds intervals (15 seconds rest) – plus one more intense workout (an “X element”). Our shorter intervals in the evening would go slightly higher in intensity, usually right at or right above the anaerobic threshold, while the morning was lower.

私たちは伝統的に、朝は6分のインターバル、夕方は1分(30秒レスト)もしくは45秒(15秒レスト)のインターバルを行います。これに加えて、さらに強度が高い「X要素」を行います。夕方に行う短いインターバルは、無酸素性閾値に等しい領域、もしくは無酸素性閾値よりも少し高い強度で行います。朝のインターバルはそれよりも強度が低めです。

Marius Bakken氏のWeb Site

 マリウスさんが自身のブログで公表している血中乳酸濃度の値としては、強度が低めのインターバルでは1.8~1.9mmol/L、強度が高めのインターバルでは3.2mmol/L前後となると語っています。

 ヤコブ選手が実施しているダブルスレショルドトレーニングは、基本的にはバッケン氏が提唱している理論に従っています。

 別の記事で、ヤコブ選手のトレーニングについて解説しています。

 現在では、ダブルスレショルドトレーニングはその有用性が認められ、ヤコブ選手だけでなく欧州のランナーや北米、その他の国でトレーニングを行っている長距離エリートランナーにも取り入れられているようです。

ダブルスレショルドトレーニングのポイント

 ダブルスレショルドトレーニングが優れていると言われている理由を解説していきます。

 ダブルスレショルドトレーニングで効果を高めるための重要なポイントは以下の通りです。

ダブルスレショルドトレーニングのポイント
  • トレーニング中の血中乳酸濃度を測定し、狙っている負荷範囲でコントロールすること
  • 疾走をインターバル形式に分割する
  • 1回あたりのトレーニング量を抑えて、2回に分割している
  • トレッドミルを使って強度を意図的にコントロールしている

 以下ではそれぞれのポイントについて詳しく解説していきます。

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