※本記事はSuuntoより製品の提供を受けて作成しています。
ランニング中に音楽を聴くことへの賛否は、ランナーの間でも意見が分かれます。「集中できる」「楽しい」という声がある一方で、「周りの音が聞こえなくなって危ない」という声も根強くあります。
Suuntoが2026年5月8日に発売したオープンイヤーイヤホン「Suunto Spark」は、この問題に正面から向き合った製品です。耳を塞がずに音楽を聴きながら、ケイデンス(歩数リズム)や接地時間、垂直振動といったランニングダイナミクスまで計測できます。
今回は実際に練習で使い続けた上で、音質・装着感・ランニングダイナミクスの精度を正直にレビューします。COROS POD2との数値比較や、Shokz OpenFit 2+との比較も収録しています。
- ランニング中に音楽を聴くと本当にパフォーマンスが上がる?
- Suunto Sparkのランニングダイナミクスは他のデバイスより正確?
- Suuntoウォッチがなくても使いこなせる?
- Shokzと比べてどちらを選ぶべき?
Suunto Sparkとは?5つの特徴をランナー目線で整理

Suunto Sparkは、フィンランドのスポーツテクノロジーブランドSuuntoが手がけた完全ワイヤレスのオープンイヤーイヤホンです。価格は29,700円(税込)で、カラーはブラック・ホワイト・コーラルオレンジの3色が展開されています。
オープンイヤー設計 ── 外音を保ちながら音楽を聴く

Suunto Sparkは、耳を塞がないオープンイヤー構造を採用しています。耳掛け式のフックが耳をしっかり固定し、イヤーピースを耳の穴に押し込まないため、長時間着用しても耳が痛くなりにくい設計です。
外の音が聞こえるため、走行中に車や自転車の接近を察知しやすいのが最大のメリットです。ランニング仲間や信号での声かけにも気づきやすく、早朝や夜間の練習でも安心して使えます。
トリプルドライバー ── Hi-Res Audio・空間オーディオの仕組み
オープンイヤーイヤホンの弱点として「音質が悪い」というイメージがありますが、Suunto Sparkはこれを正面から解決しようとしています。
採用しているのはトリプルドライバー構成で、バランスドアーマチュアドライバー(高音域担当)、大型ダイナミックドライバー(低音域担当)、音漏れ防止ドライバーの3種類を組み合わせています。
Hi-Res Audio認証を取得しており、最大96kHzの高解像度音声に対応(LHDC 5.0接続時)。ヘッドトラッキングによる空間オーディオにも対応しています。詳しい音質の評価は実走レビューの項で触れます。
ランニングダイナミクス計測 ── ケイデンス・接地時間・垂直振動をイヤホンで取得
Suunto Sparkの最も特徴的な機能が、イヤホンに内蔵されたIMU(慣性計測ユニット)によるランニングダイナミクス計測です。ケイデンス・接地時間・垂直振動(上下動)・カロリー消費などをリアルタイムで取得し、Suuntoアプリで確認できます。
ケイデンスを数値で把握することには明確な意義があります。科学雑誌の審査を通った研究では、ケイデンスを増やすと膝の屈曲角や内転が小さくなり、膝関節への負荷が下がることが確認されています※4。
日頃から自分のケイデンスを意識することは、傷害予防とフォーム改善の両面で効果的です。
ヘッドジェスチャー操作 ── 走りながら手を使わない

Suunto Sparkには、頭の動きでイヤホンを操作するヘッドジェスチャー機能が搭載されています。頭を左右に振ると曲送り・曲戻し、うなずくと着信応答が可能です。
手を使わずに操作できるため、グローブを着けた冬のランニングや、ウォッチ操作と重なる場面でも役立ちます。
Suuntoアプリ連携 ── メトロノーム・EQ・音声フィードバック
Suuntoアプリを使うと、120〜200spmの範囲でメトロノーム機能をONにできます。音楽のビートとケイデンスを合わせることには科学的な裏付けがあるため(詳しくは後述)、単なるおまけではなく実用的なトレーニングツールです。
このほか、イコライザー(EQ)のカスタマイズ、マルチポイント接続(2台同時)の設定も可能です。
Suuntoのスポーツウォッチと連携すれば、リアルタイムの音声フィードバック(ペース・心拍・距離)を受け取ることができます。ただし、現時点でSuunto Sparkが連携できるウォッチはSuunto製品のみで、COROSやGarminとの直接連携には対応していません。
ランニング中に音楽を聴くのはアリか?科学的に整理する
ランナーとして気になるのは、音楽を聴くことで本当に走りが変わるのか、という点です。これについては、複数の科学研究が明確な答えを出しています。
2013年のオランダの研究では、19人のランナーが音楽に合わせてケイデンスを同期させると、無音で走る場合と比べて疲弊するまでの走行時間が統計的に意味のある範囲で延長されました※1。
重要なのは、音楽そのものの「聴き心地」よりも「ビートにケイデンスを合わせること」が最大の要因だったという点です。メトロノームでも同等の効果が得られたという結果がその証拠です。
32件の研究をまとめたスコーピングレビューでも、好みの音楽を聴きながら有酸素運動を行うと、主観的なきつさ(RPE)が下がり、パフォーマンスと神経筋効率が改善されることが確認されています※2。
ただし、高強度の運動になるほどRPEを下げる効果は弱まります。長距離のジョグやペース走には有効ですが、インターバルの最終セットのような高強度局面では効果が限定的です。
一方で、「耳を塞ぐ」タイプのイヤホンは安全上のリスクを伴います。1万名以上を対象にした都市部での観察研究では、ヘッドフォン着用が歩行者の注意散漫要因の中で最も多く、着用者は道路進入時に周囲を確認する行動が減ることが示されています※3。
ランニング中の事故リスクを減らすためにも、周囲の音が聞こえる状態を保つことは理にかなっています。
- 音楽のビートにケイデンスを合わせると、走行継続時間が延長されることが実証されている
- 低〜中強度のランニングでRPE低下効果が高い。インターバルなど高強度では限定的
- 耳を塞ぐイヤホンは周囲の音が遮断され、安全上のリスクがある
【実走レビュー】マラソン練習で使って分かったこと
装着感・フィット感
1本あたり約9.7gという軽さもあり、装着した瞬間の重さはほとんど感じません。耳掛けフックが耳をしっかり保持するため、インターバル走でも走行中に外れることはありませんでした。
長距離(20km超)の走行では、耳掛け部分の圧迫感をわずかに感じることがありましたが、許容範囲内です。カナル型(耳栓型)イヤホンのように耳の穴が痛くなることがなく、長時間使用での快適性はオープンイヤーの強みだと感じました。
音質の正直な評価
オープンイヤーイヤホンとしては、音質は想像以上に良好でした。トリプルドライバーの恩恵で低音の量感があり、高音の抜けも悪くありません。音楽を聴きながら走りたい、という目的には十分な音質です。
一方で、向かい風が強い状況や交通量が多い道路では外音が入りすぎて音楽が聴き取りにくくなる場面もあり、これはオープンイヤー型の構造上、避けられない特性です。
ランニングダイナミクスの精度 ── COROS POD2との比較

ここが最も重要な評価ポイントです。Suunto Sparkで計測したランニングダイナミクスの数値を、パンツに取り付けて使うCOROS POD2と比較したところ、ケイデンスは概ね近い値でした。
しかし、垂直振動(上下動)と接地時間は大きく異なっていました。一致しているとは言えない差がありました。
この差が生じた理由は、センサーの取り付け位置の違いにあります。2025年の研究では、スマートウォッチと靴紐IMUのランニングダイナミクスを比較したところ、ケイデンスはデバイス間でほぼ互換性がある一方、接地時間やストライド長は大幅に乖離したことが報告されています※5。
また、センサーの最適位置に関する研究では、腰仙部(骨盤の後ろ)への装着が垂直振動や接地時間を最も正確に計測できることが示されています※6。耳への装着はこの「最適位置」から遠いため、精度に限界があるのは構造上の必然です。
つまり、耳に装着するSuunto Sparkと、パンツのウエスト付近に装着するCOROS POD2とでは、センサー位置が根本的に異なります。特に上下動の計測において数値が一致しないのは想定の範囲内で、どちらが「正確」かというよりも測定する部位が違うと考えるのが適切です。
実用的な使い方としては、ケイデンスはリアルタイムフィードバックとして信頼できます。一方、接地時間と垂直振動は他のデバイスの数値と直接比べるのではなく、同じSuunto Sparkを使い続けた場合の「変化の傾向」を見ることに意義があります。
- ケイデンス:リアルタイム確認に使える。メトロノームとの組み合わせで効果的
- 接地時間・垂直振動:他デバイスとの絶対値比較には向かない。継続使用での変化傾向を見るのが現実的
- 上下動の精度を求めるなら、パンツ装着型(COROS POD2等)が優秀
ウォッチなし・スマホアプリ単体での使い勝手
今回の使用は、スマートフォン+Suuntoアプリの組み合わせのみで行いました。Suuntoウォッチとの連携は試せていないため、その点については正確なレポートができません。
スマホアプリ単体でも、ランニングダイナミクスの記録・確認・メトロノーム設定といった基本機能は問題なく使えます。ただし、音楽再生中はアプリを開いていない状態で走ることが多く、リアルタイムで数値を確認する場面は限られました。
Suuntoウォッチを手首に着けて音声フィードバックを受ける使い方が、本来想定されている活用法だと思います。
現時点でSuunto Sparkが連携できるウォッチはSuunto製品のみです。COROSユーザー・GarminユーザーがイヤホンとしてSuunto Sparkを使いたい場合、ランニングダイナミクスのウォッチ連携はできません。
もし将来的に他社ウォッチとの連携が実現すれば、COROSやGarminのリアルタイムデータ表示と組み合わせてより強力な使い方ができます。今後のアップデートに期待したい部分です。
Suunto Spark vs Shokz OpenFit 2+:どちらを選ぶか
ランニング用オープンイヤーイヤホンの比較でよく挙がるのがShokzのOpenFit 2+(27,880円)です。価格帯が近いため、どちらを選ぶか迷っている方も多いでしょう。
| 項目 | Suunto Spark | Shokz OpenFit 2+ |
|---|---|---|
| 価格(税込) | 29,700円 | 27,880円 |
| タイプ | オープンイヤー(耳掛け) | オープンイヤー(耳掛け) |
| ドライバー | トリプル(BA+DD+音漏れ防止) | デュアル(DualBoost) |
| 音質認証 | Hi-Res Audio(LHDC 5.0) | Dolby Audio |
| バッテリー(単体) | 最大7時間 | 最大11時間 |
| バッテリー(ケース込み) | 最大36時間 | 最大48時間 |
| 重量(片耳) | 約9.7g | 約9.4g |
| 防水 | IP55 | IP55 |
| ランニングダイナミクス | あり(ケイデンス・接地時間・上下動) | なし |
| スポーツウォッチ連携 | Suuntoウォッチのみ | なし |
| ヘッドジェスチャー | あり | なし |
| ワイヤレス充電 | 非対応 | 対応 |
最大の違いはバッテリー持続時間と、ランニングダイナミクス計測機能の有無です。Shokzはイヤホン単体で最大11時間の再生が可能で、ケース込みでは48時間と余裕があります。
Suunto Sparkはイヤホン単体での連続再生が最大7時間であるため、ウルトラマラソンや長時間の練習では途中充電が必要になる場面があります。
- ケイデンスなどランニングフォームの変化を数値で追いたい
- SuuntoウォッチユーザーでSparkとのエコシステムを活かしたい
- Hi-Res音質・空間オーディオを求める
- グローブ着用時でもハンズフリーで操作したい
- フルマラソン本番でもイヤホン単体で使い切りたい(最大11時間)
- ランニングダイナミクス計測は不要。音楽再生に集中したい
- COROSやGarminウォッチを使っており、ウォッチ連携は既に持っている
- ワイヤレス充電対応のケースが欲しい
Suunto Sparkスペック一覧・まとめ
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| タイプ | 完全ワイヤレス オープンイヤー(耳掛け式) |
| ドライバー | ハイブリッドトリプルドライバー |
| 音質認証 | Hi-Res Audio / 空間オーディオ(ヘッドトラッキング) |
| Bluetooth | 5.4 / LHDC 5.0対応 |
| バッテリー | イヤホン単体最大7時間 / ケース込み最大36時間 |
| 防水 | IP55 |
| 重量 | 約9.7g(片耳) |
| マイク | デュアルマイク + ENC環境ノイズキャンセリング |
| 接続 | マルチポイント(2台同時接続) |
| 操作 | ヘッドジェスチャー / タッチ操作 |
| スポーツ計測 | ケイデンス / 接地時間 / 垂直振動 / 歩数 / カロリー |
| アプリ機能 | EQ設定 / メトロノーム(120〜200spm)/ マルチポイント設定 |
| ウォッチ連携 | Suunto製ウォッチのみ(他社は非対応) |
| カラー | ブラック / ホワイト / コーラルオレンジ |
| 価格 | 29,700円(税込) |
- ランニング中に周囲の音を保ちながら音楽を楽しみたい
- ケイデンスをリアルタイムで確認・管理したい
- Suuntoウォッチとセットで使えるエコシステムを求めている
- COROS・Garminウォッチとのランニングダイナミクス連携を期待している
- フルマラソン本番でもイヤホン単体で7時間以上走り続けたい
- 垂直振動・接地時間の計測精度を最優先にしたい
Suunto Sparkは、「音楽を聴きながら安全に走りたい」「ケイデンスを意識したトレーニングをしたい」というランナーのニーズを1台で解決できるイヤホンです。
ランニングダイナミクスの計測機能は、正直なところケイデンス以外の数値の活用はまだ発展途上です。しかし、Suuntoウォッチとの音声フィードバック連携や、将来的な他社ウォッチ対応など、進化の余地は十分にあります。
Suuntoウォッチユーザーであれば、迷わず検討してほしい製品です。他社ウォッチユーザーの方は、まず音楽再生と安全性の観点で評価してみてください。ランニングダイナミクスの連携については、今後のアップデートに期待しながら使うのが現実的なスタンスです。
参考文献
※1 Bood RJ et al. The Power of Auditory-Motor Synchrony: Enhancing Running Performance by Coupling Cadence with the Beat of Music. PLoS One. 2013;8(8):e70317.
※2 Pounds A et al. The Effects of Self-Selected Music on Exercise Performance and Physiological Responses: A Scoping Review. J Funct Morphol Kinesiol. 2026.
※3 Wells HL et al. Distracted Walking Behaviors in a Busy Urban Environment. J Community Health. 2018;43(1):31-37.
※4 Anderson T et al. The Effect of Cadence Alteration on Injury, Performance and Biomechanics in Runners: A Systematic Review. Sports Med Open. 2022;8(1):101.
※5 Meingast M et al. Comparison of Running Dynamics Measurements Between a Smartwatch and a Shoe-Lace IMU. Sensors. 2025.
※6 Yuan et al. Optimal Wearable IMU Placement for Running Dynamics: Machine Learning Sensor Fusion. Front Bioeng Biotechnol. 2026.











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