ランニングのパフォーマンスを決める3大要素を図で詳細解説

VO2maxLTRE図解

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。改訂履歴は記事の最後に記載しています。

こんな疑問を解消
  • ランニングのパフォーマンスって何で決まるの?
  • 最大酸素摂取量(VO2max)、乳酸性作業閾値(LT値)、ランニングエコノミー(RE)の意味がよくわからない
  • 走力を上げるには結局何をしたらいいの?

 ランナーの間では「最大酸素摂取量・LT値・ランニングエコノミー」がランニングのパフォーマンスを決める3大要素であることはよく知られていることだと思います。

 しかし、これらの意味を本当に理解できている方は、そこまで多くはないのではないでしょうか?

 私は社会人から本格的にランニングを始めた市民ランナーです。月500km程はしり、競技志向でランニングに取り組んでいます。

 本記事では、ランニングのパフォーマンスを決定する3大要素である「最大酸素摂取量・LT値・ランニングエコノミー」詳細に図で解説します。

 本文では、最大酸素摂取量をVO2max、乳酸性作業閾値をLT値、ランニングエコノミーをREと表記します。

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目次

ランニングのパフォーマンスを決める要因の全体像

 ランニングのパフォーマンスは決める3大要素は、VO2max・LT値・REです。これらを概念的に図で表すと以下の通りになります。ここでは主に、フルマラソンのパフォーマンスについて示しました。

 細かく言うと、LT値はVO2maxに含まれる概念であることや、筋繊維タイプがLT値にもREにも影響を与えるため、お互いが完全に独立しているわけではないことには注意が必要です。

 以下では、VO2max、LT値、ランニングエコノミーについて詳しく解説していきます。

最大酸素摂取量(VO2max)についての解説

 VO2maxは「体重1kg、1分あたり、どれだけたくさんの酸素を使うことができるか?」を表します。

最大酸素摂取量(VO2max)

 ミトコンドリアがエネルギーを産み出すとき、原料となるのは糖質・脂肪・たんぱく質・乳酸であり、これらに酸素を加えることでエネルギーであるATPを産み出すことができます。

 上の図の通りVO2maxは「乳酸の処理速度」を含んだ概念になっているため、LT値の高さはVO2maxに含まれると言えます。

 ただ「VO2maxが高い人=乳酸の処理速度が早い」と言い切ることはできません。なぜなら、糖質を使ってエネルギーを産み出す能力だけが異常に高くVO2maxが引き上げられている可能性もあるためです。

 また、VO2maxを語るうえで注意しなければならないことは「VO2maxが高い=ランニングスピードが高い」とは言えない、ということです。

 VO2maxがいくら高くても、産み出したエネルギーをランニングの動作に変換する効率(RE)が低い場合、結果的にランニングスピードは遅い、ということになります。

 車で例えると、ガソリンを燃やしてエネルギーをたくさん作り出すことはできるが、燃費が悪い場合、速いスピードが出なかったり、そのスピードが長続きしない、といったイメージです。

 VO2maxを伸ばすには

 VO2maxを伸ばすためのトレーニング論については、次の記事で詳しく解説していますので、こちらを参照してください。

乳酸性作業閾値(LT値)についての解説

 LT値は「乳酸をどれだけ早く処理できるか?」もしくは「乳酸を発生させずにエネルギーを産み出せるか?」で決まります。

LT値の図解解説

乳酸性作業閾値(LT値)

 エネルギー原料のうち、糖質は、ミトコンドリアで使いきれなかった場合、一旦乳酸に形を変えて放出されます。

 放出された乳酸は、そのままミトコンドリアで再利用されてエネルギーに変換されるか、血中に放出されて肝臓を経由し、糖新生が行われて糖質に変換される経路をたどります。

 LT値が高いということが意味するのは「①発生した乳酸を早く処理することができる」「②糖質の利用を抑えて走ることができる」の2点です。

 ②の「糖質の利用を抑えて走ることができる」は、エネルギー源として脂肪の割合が高い、ということを示しています。

脂肪利用能力(LT値の一部)

 一般には、脂肪を使って走ることと、LT値が高いことは別のことのように語られがちですが、実際にはLT値が高いという状態は「脂肪の利用割合が高いこと」を含んでいます

LT値を伸ばすには

 LT値を伸ばすためのトレーニング論については、次の記事で詳しく解説しています。こちらを参照してください。

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ランニングエコノミー(RE)についての解説

 REは「産み出したエネルギーをどれだけ効率よくランニングスピードに変換できるか?」を意味します。

ランニングエコノミー(RE)

 REが顕著に表れてくるのが、短い距離が得意な人長い距離が得意な人の差です。

 短い距離が比較的得意な人は、VO2maxは高いもののREが低い傾向にあると言えます。短い時間で多くのエネルギーを作り出すのは得意だけど、効率が悪いので、長続きさせることができません。

 一方で、長い距離が得意な人は、VO2maxは低いが、REが高い傾向にあると言えます。短い時間でエネルギーを作り出すのはあまり得意ではないけど、効率が良いので、長続きさせることができます。

REを伸ばすには

 REはバイオメカニクス的な要因生体エネルギー要因が大きく関わっています。

バイオメカニクス的な要因

 ランニングフォームのこと。産み出したエネルギーをロスなくランニングスピードに変換できるランニングフォームが理想。

  ランニングフォームは意図して改善することもできるし、とにかくたくさん走ることでロスが少ないランニングフォームが身に付いてくる、という考え方もできる。

 しかし、ランニングフォームの改善は簡単ではない。フォームを意図的に改善するには、「適切な体の動かし方」を理解する必要があったり、第三者にフォームをチェックしてもらって改善していく必要があるため。

生体エネルギー的な要因

 主に、筋組成における遅筋繊維の比率のことを指す。レースの距離が長くなればなるほど、遅筋繊維の割合が多いほうが、同じエネルギー原料に対して生み出せるエネルギー量が増える。

 持久的な運動を長時間・高頻度で積み重ねていけばいくほど、筋繊維は遅筋繊維に変異していくと言われている。

 どちらの要因についても言えることは「REは時間をかけて向上させていく要素であること」であるということです。

 フルマラソンが、比較的年齢が高くなってもいい記録で走ることができる理由はREにあると考えています。

 ランニングエコノミーが走歴にある程度比例する部分があるということや、長距離になればなるほどランニングエコノミー(RE)の要素が重要になってくることが考えられます。

 

 いかがでしたでしょうか?少しでも参考になれば幸いです。

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