- パラチノースって何?
- パラチノースはフルマラソンに有効なの?
- パラチノースの使い方、使うタイミングを教えて
最近、市民ランナーの間でもパラチノースが認知されるようになりました。パラチノースの製品がSNSでも頻繁に発信されています。
パラチノースはブドウ糖や果糖よりも緩やかに吸収される糖質です。その性質を利用して、長時間の運動前にエネルギー源として摂取する、といった使い方が推奨されています。
しかし、パラチノースを使うことでその効果を体感することは難しいと考えています。摂取した場合と摂取しなかった場合での体感的な差を感じれるほど、効果が明らかに出るわけではないためです。
そこで私は、血糖値のリアルタイムモニタリングを通じてパラチノースの効果を検証することにしました。ブドウ糖を単体で摂取した時との比較なども行っています。
本記事を読めば、パラチノースの有効性を理解することができ、フルマラソンに有効なのかどうかも判断することができます。
また、実際にパラチノースを使おうと思った場合、何を買えばいいのかもわかるように私が使用したパラチノースの製品も紹介します。
パラチノースとは
パラチノースはDM三井製糖が登録商標化した天然由来の糖質です。
パラチノースとは、砂糖と同じで、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)からなる二糖類です。砂糖とよく似た分子構造をしています。
パラチノースの最も注目すべき特徴は、腸から体内に吸収される速度がブドウ糖や果糖に比べてゆっくりであるということです。ブドウ糖と比較すると、吸収速度は約1/5です。
この特徴によって、ブドウ糖(グルコース)や砂糖(スクロース)を摂取した時と比べ糖質摂取後のインスリン分泌による血糖値の急変動を抑えることができるという特徴を持ちます。
糖質摂取による血糖値の急変動は、糖質の摂取によって血糖値が急上昇し、それに反応してインスリンが分泌されることによって血糖値が急低下することで発生します。
血糖値の急変動は、人体に対して様々な弊害をもたらします。これはフルマラソン競技に限ったことではありません。血糖値の急変動が抑えられることで、内臓脂肪の蓄積を予防したり、血管機能の保護や改善につながります。
パラチノース自体の効果と機能は、次のサイトに詳しくまとまっています。興味がある方はご参照ください。
パラチノースがフルマラソンに有効な理由
パラチノースの吸収がゆっくりである特徴がフルマラソン競技にとても効果的な理由は以下の2点です。
- 糖質摂取による血糖値の急低下が抑えられること
- 糖質供給がゆるやかに長時間持続することで血糖値を維持し、脂肪燃焼量を高める
フルマラソンレースにおいて、自分の血糖値を気にしているランナーは少ないと思います。しかし、フルマラソンで記録を伸ばす上で、血糖値はとても重要です。
血糖値がフルマラソンに重要な理由は、フルマラソンレース後半に血糖値の低下が原因で失速してしまう例があるためです。
フルマラソンの後半に失速してしまう原因は、筋持久力不足・筋グリコーゲン量の低下・脚攣りなど、様々な原因が挙げられますが、そのうちの一つとして「血糖値の低下による糖質供給の抑制」があります。
体内には、主に肝臓と筋肉にグリコーゲンが蓄えられており、フルマラソンレースにおいてはそれらのグリコーゲンを消費しながら走ることになります。
そのうち、体内に蓄えられていたグリコーゲンが減少してくることに伴い血糖値も徐々に低下していきます。血糖値の低下が原因となり中枢神経からの指令によりが筋肉への糖質供給を制限するようになります。
筋肉を動かす上で糖質は必須です。糖質自体をエネルギーとするだけでなく、脂質をエネルギーとする経路でも糖質の一部が利用されるため、有酸素エネルギーを作り出すためには糖質供給が必須であるためです。
パラチノースを摂取することにより摂取した糖質を緩やかに体へ供給し続けることができるので、フルマラソンレース後半に発生する血糖値の低下を抑えることができ、結果としてレース後半の失速を防ぐことができる可能性があります。
パラチノース摂取時の血糖値推移を測定した結果
パラチノースが緩やかに吸収されることを、実際に自分の血糖値推移をモニタリングすることで評価してみました。評価方法は次の通りです。
- 早朝4:00に起床
- 水分300mlを飲む
- インスタントコーヒー2g/お湯200mlに、マルトデキストリン30g/パラチノース30gを溶かして摂取する
- 摂取してから10分後にトレーニングを開始する。トレーニングはEasy強度(74%HRmax)
トレーニング強度が高いと、アドレナリンの分泌により糖質摂取の影響が見えにくくなってしまうため、トレーニングはEasy強度に設定しています。
結果は次の通りです。複数回同じ手順で測定を行っていますが、ここでは分かりやすいように測定結果の代表例を示します。
マルトデキストリンを摂取した時は、糖質摂取により血糖値が急上昇した後に血糖値の急低下が見られます。一方で、パラチノースを摂取した時は、トレーニング中の血糖値が安定して推移していることが分かります。
パラチノースを使うべきタイミング
パラチノースは緩やかに吸収される特徴を持つため、レースやトレーニングの前に摂取することが推奨されます。もしレース中に使う場合は少なくともレース序盤に摂取します。
レース前であれば、粉状のパラチノースを水に溶かした飲料を飲むことも可能です。レーススタート直前やレース序盤で使用する場合には、ジェル状に加工されたものを携帯する必要があります。
補足ですが、マルトデキストリンやブドウ糖のような吸収が早い糖質はレース中に摂ることが推奨されます。レース中は摂取した糖質を可能な限り早く吸収することが目的であるためです。また、レース中はアドレナリンの分泌によりインスリンによる血糖値低下が起こりにくくなっています。
パラチノースを使うときの注意点
パラチノースを使う時には、以下の点に注意します。
- 吸収に時間がかかるため、すぐに使いたい糖質を補給するには適さない
- お腹を下す可能性がある
上でも述べましたが、パラチノースは吸収に時間がかかる糖質であるためすぐに使いたい糖質を補給するには適していません。レース後半、低下傾向になってきた血糖値をすぐに回復させるための糖質としては適しません。
また、あくまで個人差がありますがパラチノースの摂取がお腹に合わない可能性があります。レース当日にいきなり試すのではなく、トレーニングの段階でパラチノースを試しておきましょう。
パラチノースの製品
フルマラソンに有効なパラチノースを含む製品を紹介します。
パラチノース(粉状のもの)
粉状のパラチノースです。水や他の飲料に溶かして使うことができます。
スプーン印 ピュアパラ
パラチノースを商標登録したDM三井製糖のブランド「スプーン印」のピュアパラです。スポーツショップなどにも、スティック状になって売られています。
最も世に普及しているパラチノースです。
ニチガ パラチノース
ニチガ(日本ガーリック株式会社)のパラチノースです。ニチガは食品添加物、栄養補助食品の製造販売。食品原料の販売を行っている会社です。
楽天やAmazonを見てみると、ピュアパラよりもコストパフォーマンスが高いです。ピュアパラのパラチノースに比べて若干、粒子が細かく舞いやすい特徴がありますが、問題が起こるほどではありません。
パラチノースを含むジェル
ACTIVIKE グランフォンドジェル
ACTIVIKEから発売されているグランフォンドジェルです。
グランフォンドジェルには吸収が緩やかな糖質であるパラチノース5000mgが配合されています。レース前やレース序盤に摂取することがおすすめの補給用ジェルです。
ゲル化剤でゲル状に加工されている点が他のジェルと異なる点です。ゼリー状で飲みやすく、息が多少上がっていてもすっと飲むことができます。
個人的には、美味しさと飲みやすさで選ぶなら、これが一番だと思っています。
俺は摂取す エナジージェル
ダイトー水産株式会社から発売されている「俺は摂取す」シリーズのエナジージェルです。パラチノースを15,700mg配合しています。
パラチノースだけでなくMCTオイルなども含まれており、さらに持久力を高めるような工夫がなされたジェルです。
スポーツようかん
井村屋が発売しているスポーツようかんです。純粋なおいしさでいえばNo.1です。
スポーツようかんは、あえて吸収に時間がかかる糖質を含むことで、長時間の運動に適した商品となっています。
しかし、補給食としては、レース中食べにくさを感じたり、包装の開けにくさを感じる可能性があるため、フルマラソンで使用する場合は、走るペースが遅いランナーか、レース前の補給食におすすめの製品です。
エネモチ
エネモチは、セロトーレ株式会社が発売している補給食です。
スポーツようかんと同様に吸収に時間がかかるパラチノースを含有しています。レース中に使う糖質を補給するため、というよりも、レース前に摂っておく、という使い方が適しています。
レース中に食べるのはかなり難しいと感じます。口の中に水分が少ないと、噛んで飲み込むことが難しいからです。
こちらも味がとても良く、美味しいです。補給食と言われなければ、間違いなくお菓子と間違えてしまうほどです。
効果検証のための血糖値の測定方法
今回の検証では、血糖値のリアルタイム測定を行っています。リブレセンサーを使用し、「Sympafit」のアプリをスマホにダウンロードすることで血糖値の測定が可能です。
センサー自体は、2週間の使い捨てで数千円する高価なものですが、数値の読み取りはスマートフォンで可能です。フルマラソン後半にどうしても失速してしまい、血糖値に課題がある可能性がある方は、一度試してみてもいいかもしれません。
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