- 初代ドラゴンフライとドラゴンフライ2、何が変わったのか?
- ドラゴンフライ2の走り心地はどんな感じか?
- アディゼロアバンチとどちらを選べばいいか?
- どのレベル・どの距離のランナーに向いているか?
中長距離のトラックスパイクを選ぶとき、主な候補に上がるのはナイキのドラゴンフライかアディダスのアディゼロアバンチ、という2択になることがほとんどです。そこに2024年、初代ドラゴンフライの後継モデルとしてドラゴンフライ2が登場しました。
私は初代ドラゴンフライをトレーニングで使い続けてきましたが、今回ドラゴンフライ2を購入。実際に陸上競技場で履いてみた感想をまとめます。初代との違い、そして並行して使用しているアディゼロアバンチとの使い分けについても整理します。
なお、本記事はトレーニングでの使用感をもとにしたレビューです。
ドラゴンフライ2の基本スペック

まずスペックを整理します。
| 項目 | ドラゴンフライ2 |
|---|---|
| ミッドソール | ZoomX フルレングス(増量) |
| プレート | フルレングスプレート(軽量新素材) |
| アッパー | エンジニアードメッシュ |
| スパイクピン | 4本(取替式) |
| 対象種目 | 1,500m〜10,000m |
| 重量(実測) | 151g(片足) |
| 定価(税込) | 22,660円 |

スパイクピンについて
ドラゴンフライ2の付属ピンはニードルピン(針状の細いピン)です。ニードルピンはウレタン素材のトラック(全天候型トラック)専用です。
多くのユーザーは5mm二段平行ピンや5mmスクリューピンに交換して使用しています。ピンはM5規格(5mm径)であれば他社製も取り付け可能です。

サイズ感
ナイキのスパイクはやや細め・小さめの設計です。初代ドラゴンフライを使っていた方はドラゴンフライ2でも同じサイズが合うことが多いようです。足幅が広い方はハーフサイズアップを検討してください。試し履きできる場合は必ず確認することをおすすめします。
私自身は、初代ドラゴンフライと同じく28.0cmでジャストフィットです。普段のランニングシューズは27.5cmなので、ワンサイズアップが必要でした。
- 実測重量は151g(片足)。1,500m〜10,000mの長距離種目向け
- ZoomXフォームを搭載した、カーボンプレートなしのスパイク。初代の設計を継承
- 付属のニードルピンは全天候型トラック向け。グリップが物足りなければ二段平行ピンへの交換を検討
初代ドラゴンフライからの4つの変更点
初代との主な変更点は4つです。スペックを比較します。
| 項目 | 初代ドラゴンフライ | ドラゴンフライ2 |
|---|---|---|
| 発売 | 2020年 | 2024年 |
| ミッドソール | ZoomX フルレングス | ZoomX フルレングス(増量) |
| プレート | フルレングスプレート | フルレングスプレート(改良) |
| アッパー | 軽量ニット系メッシュ | エンジニアードメッシュ(改良) |
| スパイクピン | 6本 | 4本 |
| 重量(実測) | 153g(ピン込み) | 151g |
①ZoomXフォームの増量
最も大きな変更点がZoomXフォームの増量です。フォーム量が増えることでクッション性と反発性の両方が向上します。
スパイクのミッドソールが厚くなるほど走行エコノミー(同じペースを維持するために必要なエネルギー量)が改善することは、研究でも確認されています ※1。フォームを増やすことは、ただクッションを厚くするだけでなく、エネルギーを効率よく返す量を増やすことにつながります ※2。
②プレートの改良
ドラゴンフライはカーボンプレートを搭載していないスパイクです ※3。そのかわり、ZoomXフォームと組み合わさるフルレングスのプレートが、適度な屈曲剛性と反発性を生み出しています。
ドラゴンフライ2ではこのプレートに軽量な新素材が採用され、反発性と耐久性が向上しています。素材の詳細はナイキからは公開されていません。
③アッパーの変更
初代から引き続き軽量メッシュ系のアッパーを採用していますが、ドラゴンフライ2では改良した糸を使って再設計されました。Nike公式の表記では「エンジニアードメッシュ」とされており、通気性・固定感・快適性が向上しています。実際に履いた印象として、フィット感は初代と大きく変わらず、しっかりした固定感があります。
④スパイクピン数の変更(6本→4本)
スパイクピンが6本から4本に削減されました。グリップ力が落ちそうに見えますが、プレートの改良とZoomXの増量によって、実際の走り心地でスピードが落ちる印象はほとんどありません。ピン数を減らすことで軽量化にも寄与しています。
- ZoomXフォームが増量され、反発性とクッション性が向上
- プレートに軽量な新素材を採用。反発性・耐久性が向上
- アッパーがエンジニアードメッシュに変わり、通気性が向上
- スパイクピンが6本から4本に削減。重量は153gから151gへわずかに軽量化
実走レビュー — トレーニングで履いてみた

実際に陸上競技場で、2種類の強度帯で使用しました。2:40〜3:00/kmの流し(短い距離をスピードに乗って走るトレーニング)と、3:00〜3:30/kmのLTインターバル(乳酸性閾値付近の強度で走るインターバルトレーニング)です。
流し(2:40〜3:00/km)での印象
スピードを出したときに最も感じるのは、接地した瞬間の柔らかさです。他のスパイクと比べると、明らかに接地感がソフトです。
ロードレース用の厚底カーボンシューズに近い感覚ですが、スパイクが刺さる感触は残っています。「厚底の快適さ」と「スパイクのグリップ」を同時に感じる、独特の感覚です。
反発はZoomXフォームから自然に返ってくる印象で、強く踏み込まなくても推進力が出ます。脚への負担が少なく感じられるのも特徴です。
LTインターバル(3:00〜3:30/km)での印象
LT付近のペース(乳酸が血液中に蓄積し始めるペース帯)で繰り返し走ったとき、疲れてからも接地の衝撃が小さいまま保たれる印象があります。通常のスパイクでは後半になると足裏の疲労感が出てきますが、ドラゴンフライ2ではその疲労の蓄積が比較的遅い感覚です。
これはZoomXフォームが接地のたびにエネルギーを蓄えて返す性質を持つためだと考えられます。競技会での先進的なスパイクが走行エコノミーを向上させることは科学的に確認されており ※4、ZoomXを搭載したドラゴンフライでも同様の傾向が実測されています ※5。
「圧倒的にソフトな接地感」の正体
ドラゴンフライ2を履いて最初に驚くのは、他のスパイクと比べたときの接地感の違いです。これはZoomXフォームの特性によるものです。
従来のスパイクはミッドソールが薄く、接地のたびに地面の硬さをそのまま感じます。一方ドラゴンフライ2はフルレングスのZoomXフォームが入っており、接地時に適度にフォームが変形してエネルギーを蓄え、離地時に返します。
この「蓄えて返す」動作が、他のスパイクと一線を画するソフトな接地感の原因です。
ただし「ソフト=遅い」ではありません。先進的なスパイクで走行エコノミーが改善することで、同じペースで走っていても体に感じる負担が軽くなる、というのが研究で示されている効果です ※4。
フィット感・紐の締め感
エンジニアードメッシュのアッパーは、初代のFlyknit系と比べると伸縮性が少なく、よりしっかりした固定感があります。紐を締めたときに足全体がしっかりホールドされる感覚で、走行中に足がシューズ内でずれる感覚はありません。
かかとのホールドも十分で、スパイクによくある「かかとが浮く」という感覚はほとんどありません。
- 他のスパイクと比べて圧倒的にソフトな接地感。厚底カーボンシューズに近い感覚
- 流し・LTインターバルともに足への負担が少なく、後半の疲労蓄積が遅い
- フィット感・ホールド感は良好。エンジニアードメッシュで足がしっかり固定される
アディゼロアバンチとどちらを選ぶか
2026年現在、ほとんどの市民ランナーの長距離スパイクはドラゴンフライ2とアディゼロアバンチの2択です。どちらが自分に合うかを判断するためのポイントをまとめます。
| 項目 | ドラゴンフライ2 | アディゼロアバンチ |
|---|---|---|
| ミッドソール | ZoomX(NIKE) | Lightstrike Pro(adidas) |
| プレート構造 | フルレングスプレート(カーボンなし) | シャークスキンプレート(カーボン) |
| 重量 | 151g(片足・実測) | 175g(27.5cm・実測) |
| 接地感 | ソフト・クッション寄り | ハード・板の反発寄り |
| 得意なペース帯 | 幅広いペース対応 | 3:00/km以下の高強度 |
最大の違いはプレート構造と接地感です。ドラゴンフライ2はカーボンプレートを搭載しておらず、ZoomXフォームとフルレングスプレートの組み合わせで柔らかさと反発を両立しています。
一方アディゼロアバンチはシャークスキンという硬質なプレートを搭載しており、接地が硬く、板全体で力を前に返す感覚が強いです ※3。
トラックでカーボンプレートを搭載したスパイクが有意に高いパフォーマンスを示すという研究結果もありますが ※6、「どちらのスパイクが自分に合うか」はランナーの走りの癖やペース帯によって変わります。
すべての先進的スパイクが同じ効果をもたらすわけではなく、モデルごとに特性が異なります ※7。
- ドラゴンフライ2 → ソフトな接地感が好みのランナー、広いペース帯で使いたい方
- アディゼロアバンチ → 硬い板の反発が好みのランナー、3:00/km以下のペースがメインの方
よくある疑問
ドラゴンフライ2とドラゴンフライ2エリートの違いは?
エリートモデルはプレートにカーボン素材が採用されており、標準モデルよりも接地が硬く、より強い反発が返ってくる設計になっています。ソフトな接地感を重視するなら標準モデル、板からの強い反発を求めるならエリートという選択になります。いずれも1,500m〜10,000mの長距離種目向けという位置づけは共通です。
普段の練習に使っていいか?
使うことはできますが、消耗が早くなります。スパイクは競技会・レースペースに近い強度のトレーニングに絞って使い、ジョグや回復走はロードシューズで行うのが経済的です。私自身は、流しやインターバルなど質の高いトレーニングのみドラゴンフライ2を使用しています。
土のグラウンドで使えるか?
ドラゴンフライ2は全天候型ウレタントラック(合成トラック)向けの設計です。土のグラウンドで使う場合は、土用のピン(土ピン・土スパイク)に交換すれば使用可能ですが、フォームの摩耗が早くなります。土グラウンドでの練習が多い場合は、別途土用スパイクを用意することをおすすめします。
こんなランナーにおすすめ / 向かない
- 1,500m〜10,000mのトラック競技をしている方
- 初代ドラゴンフライからのアップデードを検討している方
- ソフトな接地感・厚底寄りの感覚が好きな方
- 幅広いペース帯のトレーニングに1足で対応したい方
- ロードレース専用で、トラックを走らない方
- 硬い板の反発感を好むランナー(アバンチが向いている)
- 幅広の足で、ナイキの細身の形状が合わない方
ドラゴンフライ2の購入方法
初代ドラゴンフライは、とにかく在庫がなくて買えない状態が続いていましたが、ドラゴンフライ2はある程度各店舗に在庫があるようです。
オンラインでは、Amazon、楽天、Yahoo、ゼビオ、アルペンなどで取り扱いがあります。ゼビオやアルペンは意外とサイズが残っている傾向にあります。
まとめ
ドラゴンフライ2は、初代の設計思想を引き継ぎながら細部をアップデートしたモデルです。ZoomXフォームの増量・プレートの改良・アッパーの刷新・スパイクピン数の変更という4つの変更点がありますが、走り心地の基本的な性格は初代から大きくは変わりません。
実際に履いた印象として最も強く感じるのは、他のスパイクと比べたときの接地感の違いです。ZoomXフォームが生み出す柔らかさは、厚底カーボンシューズに近い感覚でありながら、スパイクが地面を捉える感触も残っています。
流しからLTインターバルまで幅広いペース帯で使いやすく、後半の疲労蓄積が少ないのが特徴です。初代ユーザーはそのまま移行でき、初めて長距離スパイクを選ぶランナーには依然として第一選択と言える一足です。
アディゼロアバンチとの比較では、接地感の「柔らかさ」がドラゴンフライ2の最大の個性です。どちらが向いているかはランナーの走りのスタイルと好みによります。可能であれば両方を試し履きして選ぶのが一番です。
- 走り心地の基本的な性格は初代から大きくは変わらない。初代ユーザーはそのまま移行できる
- 接地感は他のスパイクと比べて圧倒的にソフト。ZoomXフォームによる厚底シューズに近い感覚
- 1,500m〜10,000mの長距離スパイクとして依然として第一選択。初めての長距離スパイクにも最適
- カーボンプレートの板の反発を求めるならアディゼロアバンチが向いている
参考文献
※1 Baumann CW et al. Advanced footwear technology with increased midsole thickness improves running economy in endurance-trained adults: a randomized crossover trial. J Sci Med Sport. 2025. PMID: 41032180
※2 Suo S et al. Effects of hollow structure advanced footwear technology on running economy and biomechanics. Eur J Sport Sci. 2026. PMID: 41964476
※3 Barnes KR et al. Comparative analysis of foam-only versus carbon-plated AFT spikes in distance runners. 2025. PMID: 41347023
※4 Warne JP et al. Advanced footwear technology spikes improve running economy compared to conventional spikes and road shoes. J Sci Med Sport. 2024. PMID: 38815961
※5 Needles BJ, Kim S, Grabowski AM. The running economy and biomechanics of competitive distance runners wearing advanced footwear technology spikes. Eur J Appl Physiol. 2026. PMID: 42191900
※6 Alda-Blanco A et al. Influence of running surface using advanced footwear technology spikes on middle- and long-distance running performance measures. Sports (Basel). 2024;12(12):329. PMID: 39728869
※7 Bertschy M et al. Self-perceived middle-distance race pace is faster in advanced footwear technology spikes. J Sport Health Sci. 2025. PMID: 39222878










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