キプチョゲのトレーニングメニューを徹底考察(2017年ベルリンマラソン前)

キプチョゲ
こんな疑問を解消
  • フルマラソンランナーであるキプチョゲのトレーニングメニューが知りたい
  • キプチョゲのトレーニングメニューから学べることは何?
  • キプチョゲのトレーニングメニューを真似するとしたら、どの部分を参考にしたらいい?

 フルマラソンに取り組んでいる市民ランナーで、キプチョゲ選手を知らない方はほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。

 キプチョゲ選手は、フルマラソン前世界記録保持者であり、オリンピックやアボットワールドマラソンメジャーズで多くのタイトルを取ってきた、エリートマラソンランナーです。

 キプチョゲ選手のインタビュー記事などで練習への取り組み方などがフォーカスされ、最大でも80%程度の努力感でランニングトレーニングを行う、などは聞いたことがあると思います。

 そんなキプチョゲ選手が2017年のベルリンマラソンで2:03:32という素晴らしい記録で優勝した時のトレーニングメニューがSweat Eliteで一部公開されています。

 キプチョゲ選手のトレーニングメニューを振り返りながら、近年のトレーニング理論に当てはめて解説していこうと思います。

 この記事を読めば、キプチョゲ選手のトレーニングメニューの狙いや、自分自身のトレーニングを組み立てる上での参考になると考えています。

著者:らんしゅー
日比野就一

社会人からランニングを始めました。
理論に基づいたトレーニングで、
どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
競技志向で取り組んでいます。
自己紹介・記録変遷はこちら

血中乳酸濃度や血糖値も測定。
マラソンへ科学的にアプローチします。

★自己ベスト
 1500m 4:25(2022/08)
 5000m 16:01(2022/09)
 10000m 33:44(2021/12)
 ハーフ 1:12:29(2022/03)
 フル 2:40:15(2026/03)

著者:らんしゅー
日比野就一

  社会人からランニングを始めました。
  理論に基づいたトレーニングで、
  どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
  競技志向で取り組んでいます。
   自己紹介・記録変遷はこちら

  血中乳酸濃度や血糖値も測定。
  マラソンへ科学的にアプローチします。

  ★自己ベスト
   1500m 4:25(2022/08)
   5000m 16:01(2022/09)
   10000m 33:44(2021/12)
   ハーフ 1:12:29(2022/03)
   フル 2:40:15(2026/03)

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目次

2017年ベルリンマラソン45日前からのトレーニングメニュー

 以下に、キプチョゲ選手の2017年ベルリンマラソン45日前からのトレーニングメニューを示します。参考にさせていただいたサイトは以下の通りです。

 空欄になっているところは走っていないことを示しています。

スクロールできます
日付メニュートレーニング種類ペース
8月10日
AM
30.8km Tempo Run: 1hr42minLong Run3:19/km
PM10km easy(40min)Easy4:00/km
8月11日
AM
16km easy-moderate (70min)Easy-moderate4:23/km
PM10km easy(40min)Easy4:00/km
8月12日
AM
Fartlek: 10min warm up (1.9km), 4x10mins with 2min rest, reps were at right around 3:00/km (2:45-2:50 downhill, 3:10-3:15 uphill) and rest was very slow jogging. 15min easy cool down (2.2km) Fartlek
PM12km(50min)Easy4:10/km
8月13日
AM
22km (78min)Moderate3:33/km
PM
8月14日
AM
21km in 70min moderate (Eldoret – flat course, mainly road)Moderate3:20/km
PM10km easy(40min)Easy4:00/km
8月15日
AM
Track: 15min warm up (3.1km). 1200m in 3:25, jog lap, 5x1km in 2:55 (1.30 rec), jog lap, 3x300m in 42-40 (1:00 rec), jog lap, 2x200m in 27s (1:00 rec). 15min cool down (3km)Track
PM
8月16日
AM
18km easy-moderate (71min)Easy-moderate3:57/km
PM11km easy(44min)Easy4:00/km
8月17日
AM
40km Tempo Run: 2hr26min – Very tough course, poor conditions (muddy etc)Long Run3:39/km
PM
8月18日
AM
18km easy-moderate (70min)Easy-moderate3:53/km
PM10km easy(39min)Easy3:54/km
8月19日
AM
Fartlek: 10min warm up (2km). 30 x (1min on, 1min o), with reps at an average speed of 2:45/km and recoveries an easy jog. Cross country course. 15min cool down (2.8km)Fartlek
PM
8月20日
AM
20km easy-moderate (77min)Easy-moderate3:51/km
PM
8月21日
AM
21km easy-moderate (72min)Easy-moderate3:26/km
PM11km easy(43min)Easy3:55/km
8月22日
AM
Track: 10min warm up. 12x800m (goal 2:10s): 2.13, 2.11, 2.13, 2.10, 2.11, 2.10, 2.10, 2.09, 2.11, 2.10, 2.09. 10x400m (goal 62s): 64, 64, 63, 64, 62, 62, 61, 62, 61, 61. Rest: 1.5min rest for all. 10min cool down.Track
PM
8月23日
AM
18km easy-moderate (77min)Easy-moderate4:17/km
PM10km easy(41min)Easy4:06/km
8月24日
AM
30km Tempo Run: 1hr38min – Good conditions today, fairly dry. Course undulating but not too hard.Long Run3:16/km
PM
8月25日
AM
18km (76min) – starting at 5:45/km, working down to 3:30/km for the nal 6km.Easy-moderate4:13/km
PM
8月26日
AM
Fartlek: 10min warm up (2km). 18 x (3min hard, 1min easy). Average pace in each repetition was around 3:00/km on the undulating course in Kaptagat (2400m altitude). Recoveries done very easy (jog). 15min cool down (2.8km)Fartlek
PM
8月27日
AM
22km easy-moderate (83min)Easy-moderate3:46/km
PM
8月28日
AM
21km moderate (71min) in Eldoret (flat course)Moderate3:23/km
PM11km easy(43min)Easy3:55/km
8月29日
AM
Track: 15min warm up (3.1km). 5 sets of (2km in 5:45-5:50, 1km in 2:50) with recovery of 100m walk, 100m jog. 15min cool down (3km)Track
PM
8月30日
AM
18km easy-moderate (72min)Easy-moderate4:00/km
PM11km easy(44min)Easy4:00/km
8月31日
AM
40km Tempo Run: 2hr13minLong Run3:20/km
PM
9月1日
AM
18km easy-moderate (74min)Easy-moderate4:07/km
PM10km easy(41min)Easy4:06/km
9月2日
AM
Fartlek: 10min warm up (2km). 25 x (1min hard, 1min easy) with reps at an average speed of 2:45/km and recoveries an easy jog. Cross country course. 15min cool down (2.8km)Fartlek
PM
9月3日
AM
20km easy-moderate (77min)Easy-moderate3:51/km
PM
9月4日
AM
21km moderate (71min) on at course (Eldoret)Moderate3:23/km
PM11km easy(45min)Easy4:05/km
9月5日
AM
Track: 15min warm up (3km). 13 x 1km starting in 2:53, ending in 2:45 (average 2:50) with 1:30 recovery. 15min cool down (3km).Track
PM
9月6日
AM
18km moderate (75min)Moderate4:10/km
PM10km easy(40min)Easy4:00/km
9月7日
AM
30km Tempo Run: 1hr42min – challenging course and conditions today.Long Run3:24/km
PM
9月8日
AM
16km easy-moderate (63min)Easy-moderate3:56/km
PM11km easy(40min)Easy3:38/km
9月9日
AM
Fartlek: 10min warm up (2km). 13 x (3min hard, 1min easy) at an average pace of 2:55-3:00/km on cross country course. Recoveries very easy jogging. 15min cool down (3km)Fartlek
PM
9月10日
AM
22km easy-moderate (83min)Easy-moderate3:46/km
PM
9月11日
AM
21km moderate (71min)Moderate3:23/km
PM10km easy(40min)Easy4:00/km
9月12日
AM
Track: 15min warm up (3km). 14 x 800m in 2:10-2:12 with 90sec recovery. 15min cool down (3km)Track
PM
9月13日
AM
18km moderate (75min)Moderate4:10/km
PM10km easy(40min)Easy4:00/km
9月14日
PM
40km Tempo Run: 2hrs15min – challenging cross country courseLong Run3:23/km
PM
9月15日
AM
18km easy-moderate (74min)Easy-moderate4:07/km
PM10km easy(41min)Easy4:06/km
9月16日
AM
Fartlek: 10min warm up (2km). 20 x (2min on, 1min off) on cross country course with hard segments at 2:50/km and easy segments at 4:30/km. 15min cool down (3km)Fartlek
PM
9月17日
AM
20km easy-moderate (77min)Easy-moderate3:51/km
PM
9月18日
AM
21km moderate (71min)Moderate3:23/km
PM11km easy(45min)Easy4:05/km
9月19日
AM
Track: 15min warm up (3km). 12 x 400m in 63-64s with 90sec recovery. 15min cool down (3km)Track
PM
9月20日
AM
Travel from Eldoret to Berlin

出版情報
閾値トレーニング完全ガイド

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トレーニングメニューの考察

 以下では、キプチョゲ選手のトレーニングを考察していきます。

トレーニングサイクルとトレーニング強度

 キプチョゲ選手のトレーニングをよく見てみると、以下のサイクルでトレーニングを行っていることが分かります。

キプチョゲ選手のトレーニングメニューサイクル
  1. Long Run:Moderate強度
  2. Easy Jog:Easy強度よりも低め
  3. Fartlek:Threshold強度±5秒/km程度
  4. Easy Jog:Easy強度よりも低め
  5. Easy~Moderate Jog:Moderate強度
  6. Track:Threshold~Interval強度
  7. Easy Jog:Easy強度よりも低め

 今回紹介したキプチョゲ選手のトレーニングは、あくまでもレース45日前からのトレーニングなので、フルマラソンに対する特異性を高めたトレーニングです。

 サイクルとしては、ロングランを含めて週3回のポイント練習であり、ハード&イージーを交互に繰り返していくオーソドックスなものになっています。

 次の表は、フルマラソンレースタイム2時間3分32秒を元に、VDOT Calculatorで計算した標高2400mでの各強度での設定ペース表です。

 これらの強度を参考に、キプチョゲ選手のトレーニングを考察します。

トレーニングサイクル全体の考察

 キプチョゲ選手のトレーニングサイクルの全体的な特徴は次の通りです。

トレーニングサイクルの特徴
  • ファルトレク、トラック、ロングランのポイント練習を週1回ずつ行っている
  • ポイント練習は毎週すこしづつバリエーションを持たせて、内容に変化がある
  • ポイント練習翌日は必ずEasy Jogとしている
  • ファルトレクの翌日はEasy Jogの一部練習にしている
  • レースに近づいてくるとポイント練習日の午後練習を無しにしている
  • ロングランやファルトレクは地面の状態があまりよくないところを走っている

 Easy Jogやポイント練習の日に、メニューには記述されていない流し(ウィンドスプリント)などを行っているかどうかは不明ですが、基本的にはハード&イージーの原則にしたがってトレーニングを進めていることが分かります。

 キプチョゲ選手のレベルになると、週あたりの走行距離は160〜220kmにもなります※1。今回紹介したトレーニングメニューも月800km超のペースであり、これは世界トップレベルのランナーとして標準的な練習量です。

 重要なのは、その大部分が低強度〜中強度であるという点です。世界クラスのランナーを対象とした調査では、全走行距離の80%以上が乳酸性作業閾値(LT1)以下の強度で占められることが報告されています※1。これは「ポラライズドトレーニング」または「ピラミッド型」と呼ばれる強度分布パターンです。

 エリートランナーの強度分布を体系的に整理したレビューでは、マラソン選手はピラミッド型(低強度が最も多く、閾値強度が次に多く、最も高い強度が最も少ない)の分布が主流であることが示されています※2。キプチョゲ選手のトレーニングもこのパターンに合致しており、ファルトレクとトラックという「質の高い練習」は週3回のポイント練習の中の一部に位置づけられています。

 ロングランやファルトレクは、メニューに記載しているペース設定よりも実際には強度が高いと思われます。理由は、走っている路面は整備されたアスファルトのような走りやすいところではなく、凸凹が多い土であるためです。

 また、地形はアップダウンも多く、平地で走るよりはかなり負荷が高くなっていると思われます。

 標高が2400mであることを考慮した場合、ファルトレクやトラックでの疾走スピードは、ハーフマラソンレースペースから5000mレースペースあたりの強度になります。

 ロングラン以外のトレーニングは、ほとんどがインターバルに分割されたものになっていますが、繰り返し本数が多く、トータルではかなりのボリュームになることが分かります。

 ポイント練習は毎週すこしずつメニューが変わっていることが分かります。内容にバリエーションを持たせて、体に入る刺激をすこしずつ変えているのだと思われます。

 もう一つ重要な点は、キプチョゲ選手のトレーニングが標高2400mのカプタガットで行われているということです。アフリカのエリートランナーの多くは、年間の大半を2,000〜2,500mの高地で生活・練習することが標準的なトレーニングスタイルになっています※1。

 高地で生活することで、体内では赤血球を増産するホルモン(EPO)の分泌が促進されます。有効な高地効果を得るためには、2,000m以上で1日12時間以上、4週間以上の滞在が目安とされています※3。赤血球が増えると血液の酸素運搬能力が高まり、平地に戻った後のパフォーマンス向上につながります。

 午後練習(PM)が設けられている理由の一つとして、「同じ負荷をより低い身体ストレスで積み上げられる」点が挙げられます。実際の実験でも、1回の連続セッションと分割した2回のセッションを比べると、分割した場合のほうが後半の心拍数・乳酸値・主観的なきつさが低く、翌朝の疲労感も少ないことが確認されています※7。

 レース直前にPM練習を省いているのは、疲労を適切に抜いてレースに臨む(テーパリング)という合理的な判断と見ることができます。

各トレーニングの解説

 キプチョゲ選手のトレーニングを一つずつ考察してみます。キプチョゲ選手はトレーニングを標高2400mのエルドレッドで行っていますので、トレーニング強度の考察は標高2400mでの強度として行います。

Easy Jog

 Easy JogはVDOT Calculatorで計算されるEasyペースの下限よりも遅めの設定になっています。ポイント練習の翌日や午後のトレーニングはほぼ必ずEasy Jogで走っていることが分かります。

 Easy Jogの強度だと、キプチョゲ選手にとっては回復優位にできるものと推測されます。距離は20km以上を走ることもあるようですが、これだけペースを落とせば、回復が優位になるということが自分自身で分かっているのでしょう。

Moderate Jog

 Moderate Jogは、ファルトレクの翌々日(Easy Jogの翌日)に入れています。明らかにEasy Jogとは分けて行っていることが分かります。

 2日続けてEasy Jogは行わず、Moderate強度にして少しでも負荷を高めようとしている狙いがうかがえます。

 Moderate強度にも上下があり、Easy強度の中間から、Easy上限~Marathonペースの間くらいのこともあり、体の状態と相談してペースを決めているものと推測されます。

 だらだらEasy Jogをするのではなく、意図的にModerate強度を入れることで、平均的に負荷をかけているのでしょう。

Long Run

 ロングランの主な狙いは、ランニングエコノミー(同じペースで走るときの酸素消費効率)を高めることと、フルマラソンに必要な筋持久力・脂肪利用能力を養うことです。継続的な有酸素トレーニングの蓄積、特にロングランを含む長時間の練習が、ランニングエコノミーの改善に最も有効であることが研究から明らかになっています※6。

 ロングランは30km(約100分前後)と40km(約140分前後)を交互に行っていることが分かります。これがレース前だからなのかどうかは定かではありません。

 ロングランのペースはEsay強度とマラソンペース強度の中間くらい、Moderate強度で行われています。走っている路面の状態はあまりよくないことが予想されるので、実際にはマラソンペースくらいの負荷はかかってるかもしれません。

 キプチョゲ選手は実際のレースを2時間程度で走り切ってしまいますが、練習では2時間20分を超えるロングランを行っていることから、レースタイム以上のロングランも必要だと思って取り入れているのだと思われます。

 ただ、キプチョゲ選手でさえロングランをレースペースで行う、ということはなさそうです。やはり足に残るダメージが大きかったりするのでしょう。

ファルトレク(Fartlek)

 ファルトレクは、主に以下のようなバリエーションで行っています。

ファルトレクトレーニングのバリエーション
  • 1min / 1min * Nセット
  • 2min / 1min * Nセット
  • 3min / 1min * Nセット

 これらの取り入れ方の狙いはよくわかりませんが、バリエーションを持たせているのは、体に異なる刺激を与えることが狙いだと思われます。

 ファルトレクのペースとレストの配分などから、ファルトレクはThresholdトレーニングと捉えるのが最も適切だと思います。したがって、ファルトレクは乳酸性作業閾値(LT)を高めることが狙いだと考えられます。

 閾値トレーニングとは、血中乳酸濃度が約2〜4.5 mmol/Lの範囲に収まるよう強度を管理して行うトレーニングです。この強度を繰り返すことで、乳酸閾値そのものが向上し(乳酸閾値の「右方シフト」)、より速いペースで走り続けられるようになります※4。

 世界トップクラスのランナーを対象とした研究では、閾値強度のセッションを週2〜4回実施することが一般的であることが報告されています※1。キプチョゲ選手の週1回のファルトレク(ロングランも閾値付近の強度と考えると週2回)はこれと整合しています。

 ファルトレクは、体感に身を任せて走るトレーニングであるため、適度なきつさを維持して行われているものと推測されます。

トラックでのトレーニング

 トラックでのトレーニングはスピードトレーニングです。ペース設定は5000mレースペース付近であることが多いようです。

 長距離走のパフォーマンスを決定する最も重要な生理的指標の一つが最大酸素摂取量(VO2max)です。VO2maxは「1分間に体重1kgあたり何mlの酸素を消費できるか」を示す指標で、心肺系の最大能力に相当します※5。

 トラックでのインターバルトレーニングは、この強度に近いペースで行われることで、VO2maxの向上を引き出します。

 ファルトレクが乳酸閾値の向上を主な狙いとするのに対して、トラック練習はより高い強度でVO2maxそのものを刺激するという違いがあります。週1回このような高強度刺激を入れることが、キプチョゲ選手のトレーニングサイクルの特徴の一つです。

 ファルトレクと比べると、疾走ペースは速めであり、本数間のインターバルは少し長めに設定されていることから、ファルトレクトレーニングとは別の目的で行われていることはわかります。

市民ランナーが取り入れるとしたら

 私たち市民ランナーがキプチョゲ選手のメニューを参考にトレーニングを行おうと思った場合、以下のようなトレーニングサイクルになると思います。

市民ランナーのトレーニング例
  • Long Run:100min~150min
  • Easy Jog:60~80min
  • ファルトレク or LTインターバル:ハーフ~10000mレースペース
    →疾走時間Totalで30~45min
  • Easy Jog:60~80min
  • Moderate Jog:60~80min
  • VO2maxインターバル:5000mレースペース
    →疾走距離Totalで20~25min
  • Easy Jog

 市民ランナーがキプチョゲ選手のトレーニングを参考にするうえで、注意しなければならないことは、以下の通りです。

注意すること
  • ロングランは距離ではなく時間で設定する
  • Easy Jogはペースにとらわれず「回復優位」になるような距離とスピードにする
  • ロングランを含めて週3回のポイント練習がきつければ、週2回に落とす、などの調整をする

 エリートランナーと比較して、私たちは走行距離も少ないし、走るペースも遅いです。走っている距離を参考にするのではなく、まずはトレーニングにかけている時間、自分としての強度に注目して取り入れてみてはどうでしょうか。

 

参考文献

※1 Haugen T, Sandbakk Ø, Seiler S et al. (2022) “The Training Characteristics of World-Class Distance Runners: An Integration of Scientific Literature and Results-Proven Practice” Sports Med Open

※2 Casado A, González-Mohíno F, González-Ravé JM et al. (2022) “Training Periodization, Methods, Intensity Distribution, and Volume in Highly Trained and Elite Distance Runners: A Systematic Review” Int J Sports Physiol Perform

※3 Wilber RL (2007) “Application of altitude/hypoxic training by elite athletes” Med Sci Sports Exerc

※4 Casado A, Foster C, Bakken M, Tjelta LI (2023) “Does Lactate-Guided Threshold Interval Training within a High-Volume Low-Intensity Approach Represent the ‘Next Step’ in the Evolution of Distance Running Training?” Int J Environ Res Public Health

※5 Bassett DR Jr, Howley ET (2000) “Limiting factors for maximum oxygen uptake and determinants of endurance performance” Med Sci Sports Exerc

※6 Barnes KR, Kilding AE (2015) “Strategies to improve running economy” Sports Medicine

※7 Talsnes RK, Torvik PØ, Skovereng K, Sandbakk Ø (2024) “Comparison of acute physiological responses between one long and two short sessions of moderate-intensity training in endurance athletes” Front Physiol

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。

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