市民ランナーの星【川内優輝選手】に学ぶ 中長距離種目における記録更新のカギ

 こんにちは。管理人のsyu_hibiです。

 市民ランナーの皆さんは、自分がどこまで記録を伸ばすことができるか想像したことがありますでしょうか?

 先日、GMOアスリーツ所属の東京大学出身近藤秀一選手をはじめとしたトップランナー同士の対談で、「市民ランナーが中長距離で日本選手権を目指すなら」という題で意見交換が行われたことを知りました。

 市民ランナーの定義を「フルタイムで仕事をしていて、練習時間・環境に制約のあるランナー」として話を進められていました。しかし、学生時代に中長距離の陸上経験があるかないかについては定義の中に入っていなかったので、一口に市民ランナーと言っても、そもそも持っているベースが違う点はあります。

 その話を読み、「じゃあ自分が市民ランナーである自分が本気で記録更新を目指し続けたら、最終的にどこまで到達できるのだろう」と考えました。

 その時、川内優輝選手を思い出しました。川内選手は大学生時代に学連選抜で箱根駅伝に出場している「箱根ランナー」ですが、大学自体は駅伝強豪校でもなく、社会人になってからは「市民ランナー」としてマラソン日本代表にまで上り詰めています。

 市民ランナーで最も高いレベルを目指すためには、川内選手の取り組み方が参考になるはず、と考えます。

 そんな川内選手にインタビューをした記事が東レ経営研究所のホームページに載っていました。プロのインタビューアーではなく、一企業会社員がインタビューした記事になっていますが、その分市民ランナーにとても近い視点で会話されています。

株式会社東レ経営研究所(東レ株式会社子会社)

 今回はその記事内容から、川内選手のルーツや市民ランナーにおける記録更新のカギを探っていきたいと思います。

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1.川内優輝選手の生い立ち

 はじめに、市民ランナーとはいえ学生時代に箱根ランナーでもあった川内優輝選手のプロフィールを紹介する。

 川内選手が長距離を走り始めたのは小学生の時、親に言われてからだ。6年生の時に6分50秒とのことで、天性の才能でずば抜けて速かったわけではない。

 高校は陸上強豪校である埼玉県立春日部東高等学校に進学。しかし、幾度とない怪我に悩まされ最終的な高校時代の5000m自己ベストは15分08秒だった。

 タイム的にスポーツでの大学進学が難しかったこともあり、受験勉強の末、学習院大学に進学した。

 学習院大学での練習は、部活としての練習は少なく、自分の裁量に任される範囲が大きかった。ところが、大学1年生の秋に5000mの自己ベストを一気に30秒も縮めることができたのだ。

 結果として、大学2年生、4年生の時に学連選抜として箱根駅伝へ出場した。

 社会人になる際には、実業団からの誘いが少なかったことや公務員試験の勉強もしていたこともあり、いわゆる「市民ランナー」として記録を伸ばし続けることを選択した。

 その根底には、大学生時代の練習方法にポイントがあり、「普通のサラリーマンをやりながらでも、自分で考えた範囲で練習できれば、きっとさらに記録を伸ばせると思った」ことが大きい。

 2009年4月に社会人となってから2年後、2011年の東京マラソンでは自己ベストを4分更新する2時間8分台を記録し、日本人3位となり2011年9月開催の世界陸上大邱大会の男子マラソン日本代表に内定した。

 2011年~2014年は、日本マラソン界トップレベルで活躍を続けた。しかし、2014年に足首を捻挫して以降、2015年~2016年は思うような走りができず、絶不調だったようだ。

 怪我を乗り越え、2017年のロンドン世界陸上で9位に入り、身体的にも精神的にも復活できたと語っている。

 2019年3月、それまで貫き通していた「市民ランナー」から「プロランナー」へ転向。

 2019年~2020年は、プロに転向したにもかかわらず不調に陥る。しかし2021年びわ湖毎日マラソンでは、不調を乗り越え、自己ベストを更新する2時間07分27秒を記録した。

 2021年シーズン現在、川内選手の快進撃は止まらない。

 春~夏シーズンにかけてトラックレースに集中。3000mでは自己ベストとなる8分01秒台、5000mでは8年前の自己ベストに肉薄する13分59秒台を記録した。

2.川内選手 記録更新のカギ

 川内選手のルーツを辿っていけば、中長距離競技における記録更新のカギが見えてくる。

■記録の向上に最も影響するのは「怪我」である

 川内選手は高校時代、特に高校三年生の時には、怪我でインターハイ予選にすら出場が叶わなかった。

 故障を繰り返していた高校時代は思うように記録が伸びなかったが、良くも悪くも「緩い」大学に進学してから、1年目の秋早々に5000mの自己ベストを30秒も更新した。

 部活としての練習が少なく、自分のペースで練習を進めることができたことで、自分の体と対話しながら、トレーニングの質や量が適正化されたのだろうと推測できる。

 中長距離種目において重要な生理的機能である心血管系の発達やミトコンドリアの働きは、長期的な積み上げが必要だ。しかし、怪我等でトレーニングを中断してしまうと、いくら補強運動等で補完したとしても、機能の低下は避けられない。

 一進一退を繰り返すような状態では、なかなか練習効果を積み上げることができないため、継続的な記録向上、大幅な自己ベスト更新が達成できないのだ。

 私自身も経験しているが、世の中、痛みで練習と休養を繰り返している方や、慢性的な痛みを感じながら練習を続けている市民ランナーは多い。ある程度の痛みとは付き合っていくしかない場合もあるが、たいていの場合痛みには何かしらの原因があり、その原因を取り除かなければ、怪我や痛みは避けられない。

■怪我を未然に防ぐことを最重要視する

 記録向上に最も影響する「怪我」を未然に防ぎながら、練習効率は最大化することに、市民ランナーは頭を使い続けるべきだ。

 怪我は大きく分けて2種類有り、捻挫や肉離れなどの突発的な要因に基づくものと、慢性的な要因に基づくものだ。前者については、原因が明らかであることが多く、休むべき期間もある程度明確なため、ある意味あきらめがつく。

 ランナーが悩まされやすいのは後者の側であり、知らずのうちに怪我となってしまうケースが多いことが問題だ。

 慢性的な要因もさらに細分化される。怪我につながるようなフォーム・体の使い方でランニングを継続してしまった場合と、トレーニング量や強度を一気に上げすぎたことによる体の機械的損傷(いわゆるオーバーユース)だ。

 怪我をした場合には、とりあえず休んで治すことが最優先ではあるが、その原因を明らかにしない限りは、確実に再発する。

■単純に練習量を増やすだけでは記録向上は望めない

 インタビューの中で、最近調子が上がってきている要因について語っている。

 2019年にプロ転向してから、2019年~2020年シーズンは不調に終わった。その理由について、川内選手は以下のように語っている。

時間ができたので、これまでやっていなかった、実業団選手並みの距離を踏んでみたのです。月間で1,100km走っていたと思います。でも、力はつかなかった。プロになってから結果が出せないというのは苦しくて悩みましたが、自分のやり方に立ち返ることにしました。昨年の12月ぐらいでしょうか、練習を少し控えめにして、スピード練習も抑えて、妻のペースメーカーをしたり、今年1月31日大阪国際女子マラソンでのペースメーカーの仕事に備えた練習に集中していました。

東レ経営研究所 川内選手へのインタビュー

プロになってから張り切り過ぎで体が慢性疲労の状態だったのでしょう。焦る気持ちもあって修正する冷静さがなかったのだろうと思います。

東レ経営研究所 川内選手へのインタビュー

 2019年から2020年にかけて大きな怪我もしていないなか、思うように記録が伸びなかった原因は、練習のし過ぎによる慢性疲労であると語っている。

 別の記事でも紹介しているが、トレーニングにはいわゆるメリハリが必要だ。経験則ではあるが、トレーニングにおける低強度:高強度の割合はおよそ80%:20%程度が望ましいとされている。

 それぞれのトレーニングは狙った強度で行うことで最大限の効果が得られる。例えば普段のジョギングにおける速度を上げすぎて、筋疲労が残った状態でインターバルなどの高負荷練習をしても、狙った疾走速度まで上げることができず、結果として最大酸素摂取量向上という効果を得られない可能性がある。

 「今伸ばしたい能力は何か?」「その能力を伸ばすために最適な強度はどのくらいなのか?」すべてのトレーニングに対してそのような問いかけをすべきであり、それは、単なるジョギングにも当てはまる。

 川内選手でさえも、普段のジョギングは5分/kmで行うこともあるという。それは、川内選手がジョギングの目的を、リカバリー、脂肪代謝能力の向上、ミトコンドリアの機能向上等に据えているため、速い速度でのジョギングが必要ないからである(実際、どこまで考えているかは定かではないが)。

■怪我せず練習量を増やすには、まずジョギング

 川内選手の練習内容で見逃してはならないのが、継続的なジョギングである。

 市民ランナー時代から500~600km/月を、1日1回の練習だけでこなしていたという。1日換算すると、17~20kmは走っている計算となる。

 しかし、そのほとんどがジョギングだったそうだ。ジョギングだけしていれば速くなれることはないが、速くなるためにこなす必要がある高い負荷の練習に、耐えることができる体はジョギングによってつくられる。

 生理的な面から考察すれば、ジョギングのボリュームを増やすことで、筋肉や腱、骨などの機械的強度が徐々に高まってくる。速い速度で行う高負荷トレーニングを行っても、怪我をしにくい体が出来上がる。

 高い負荷を怪我無く、さらには沢山、継続できるようになる。その結果、体の生理学的適応が進み、中長距離種目における記録向上につながる。

■コモディイイダでの合同練習

 私自身が個人的に、最近、川内選手がマラソンやトラックレースにおいて、自己ベスト、もしくは自己ベストに近い記録を出せている要因の一つに、コモディイイダとの合同練習があるのではないかと考えている。

 コモディイイダのトレーニング風景は、頻繁にYoutubeにアップされており、その中に川内選手が頻繁に登場する。

 実業団ランナーに交じることで、単独ではできないような負荷でトレーニングが行えているのではないかと考えられる。負荷だけではなく、「競う相手」がいることも重要だ。

 トレーニングの原理・原則として、負荷を漸進的に上げていくことが必要だ。単独で練習していると、その点、どうしても超えられない壁が存在し、これまでは現状維持でとどまってしまっていたのではないかと推測される。

3.市民ランナーでトップレベルを目指す

 川内選手のインタビューや走る研修室での討議を見ていると、「自分も日本トップレベルまでいけるんじゃないか」と妄想してしまう。

 トップレベルにまで上り詰めることは、当然日本でも一握り程度の人しか成しえないことではあるが、「社会人になってから初めて本格的に練習を始めた市民ランナー」として、どこまでいけるのかは、とても興味深いし、やってみたいと思う。

 川内選手のインタービュー中にもあったが、記録が伸びてくると、楽しくなってきてしまい、ついつい練習し過ぎたりすることもあるという。おそらく、ランナーが本当に伸び悩むのはそういう時であり、記録が伸びてきた時こそ、冷静になり、トレーニングの計画を見直したりすることが必要なのだろう。

 私自身も、やれるだけのことはやってみたい。記録的にはまだまだこれからではあるが、もし、自分の取り組みが正しかったことが証明されたあかつきには、信頼が置けるような練習への取り組み方等を発信できるようになればと思う。

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初めまして、日比野就一と申します。
社会人からランニングを始めました。
理論に基づいたトレーニングで、
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★自己ベスト
 1500m 4:25(2022/08 公認)
 3000m 9:24(2022/06 公認)
 5000m 16:01(2022/09 公認)
 10000m 33:44(2021/12)
 Half  1:12:29(2022/03)
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