- HRVステータスの意味が知りたい
- HRVが高い、低い、が意味することを知りたい
- HRVステータスを活用する方法が知りたい
ランナーが使っている大半のランニングウォッチでは「HRV」を測定することができ、データ上ではHRVステータスとのように表示されます。しかし、HRVステータスを活用できている人は少ないのではないでしょうか。
私自身も、GARMIN(ガーミン)のランニングウォッチを使用している時からHRVステータスを見ていました。ただ、HRVステータスとなにかが相関しているのかを実感できず、あまり参考にはしていませんでした。
しかし、COROS(カロス)のランニングウォッチに変更してから、HRVステータスの数値が身体で感じる状態と整合するような感覚を感じてきました。
改めてHRVステータスを調べ、その数値の意味を理解すると、HRVステータスを活用して身体の状態を正確に把握できるようになってきました。
ここではまず、HRVそのものやHRVの意味について解説していきます。また、HRVステータスにおいてどんな数値が重要なのか、また、HRVステータスがどのような状態だとよいパフォーマンスが発揮できるのかについて紹介します。
本記事を読めば、HRVステータスを活用して自分自身の身体状態を把握できるようになります。
HRVステータスとは
HRVステータスは、いまのHRVを自分のベースライン(Garmin は約5週間、COROS は7日間の移動平均)と比較して、ウォッチが割り当てる「準備状態(レディネス)」のラベルです。ミリ秒の生の数値ではなく、HRVの傾向を対応の取れるシンプルな表示に変換したものになります。
Garmin では次の4つのラベルで表示されます。
- バランス(Balanced) — HRVが通常の範囲内
- 低い(Low) — ベースライン以下。疲労の蓄積・睡眠不足・体調不良の兆候が多い
- 高い(High) — ベースライン以上。テーパー期に体が回復しているときによく出る
- アンバランス(Unbalanced) — 日々のばらつきが大きい。適応の途中、または不規則なストレスを示すことがある
COROS も7日間の移動平均をもとに同等のレディネス評価を表示します。
HRV(Heart Rate Variability)とは
HRVとは心拍変動 (Heart Rate Variability) のことです。心臓が拍動する度に微妙に変化する間隔の測定値となります。

心臓は、メトロノームのように正確に一定のリズムで拍動しておらず、拍動の間隔が変化します。
例えばある日の安静時心拍数が60拍だとすると、その間隔は1秒毎に規則正しいわけではなく、1.02秒,1.05秒,0.98秒・・・のように、拍動間隔に揺らぎがあります。
HRVが数値的に高い・低いを詳しく説明すると、次の通りです。
- 心拍変動間の変動が大きい(揺らぎが大きい)=HRVが高い
- 心拍変動間の変動が小さい(揺らぎが小さい)=HRVが低い
一見、心拍変動間の変動が大きいほうがよくないように思えるのですが、揺らぎが大きいということは「心臓が可能な限り休息をとろう」として、鼓動をゆっくりにする機会をうかがっており、可能なときは変動を大きくすることによって休もうとしている、ことを意味しています。
HRVは身体の自律神経系の状態を表しています。自律神経系は交感神経系と副交感神経系の2つに大別されます。
交感神経系が高まる時は興奮、緊張や疲労の状態を表し、HRVは低くなります。HRVが低くなる時は安静時心拍数が高くなる傾向となります。ケガや病気、過度な仕事のストレスを受けた時などもHRVは低くなります。
一方で副交感神経系が高まる時はリラックス、落ち着いた状態を表し、HRVは高くなります。体としては休息しようとしているので、安静時心拍数は低くなる傾向となります。
ヨガやピラティス、マインドフルネスなどで一時的にHRVを高めることができます。また、複数の実験を統合して解析した研究(メタアナリシス)によると、長期的な有酸素運動の継続によってHRVが統計的に意味のある水準で向上することが示されています※1。
HRVの測定について
たいていのランニングウォッチでは、HRVを測定することが可能です。私が使ったことがあるのはGARMINとCOROSのランニングウォッチですが、睡眠時に時計を着用することでHRVを測定できます。
測定したHRVは「HRVステータス」として確認することができます。次の例は、COROSのランニングウォッチで測定したHRVを、COROS Training Hubで確認した時の画面です。

HRV測定方法はメーカーによって異なる
多くのランニングウォッチでHRVを測定することができますが、メーカー毎にHRVの算出方法は異なるようです。また、その測定精度もメーカー毎に異なります。また、同じメーカーでも機種によって心拍の測定精度は異なります。
したがって、異なるランニングウォッチでHRVの数値を比較することはできません。私の例でいうと、2024年11月にガーミンのランニングウォッチからカロスのランニングウォッチに変更しました。
実際、HRVの数値は大きく変わりました。
HRVの数値には個人差がある
安静時心拍数が個人毎に異なるように、HRVの数値そのものは個人差があります。普段の生活リズムや、生活の中で受けているストレスの具合等、HRVに与える影響は多くあります。
他人と比較して自分のHRVが高い・低いの判断をすることはできません。あくまでもこれまでの自分と相対的に比較して数値がどうなのか、で評価する必要があります。
HRV評価の注意点
上で述べてきたことから、HRVは体のリカバリー状態を知ることができる有用な指標です。HRVは自律神経系の状態を反映するため、神経系の回復状態を知ることができます。
しかし、HRV評価には注意点があります。HRVはエネルギー状態や筋疲労などの状態は示していないことです。
HRVはあくまでも自律神経系(神経系の回復状態)を反映しており、心臓・循環器系の立場からのモニタリング指標です。HRVだけでは体のリカバリー全体を把握することはできないと、専門家によるレビューでも明記されています※2。
身体のリカバリーには、自律神経系・エネルギー補給・筋肉の修復の3つに大別されます。エネルギーとは主に体に蓄えられているグリコーゲン状態です。筋疲労は運動による筋肉の炎症です。
例えば筋疲労の最も一般的な症状の1つが遅発性筋肉痛(DOMS)です。これは通常、運動直後には発生せず後日まで残るのが特徴です。
実験では、スプリントで筋肉に負荷をかけて筋肉痛を誘発したところ、フォームローリングを行った群と行わなかった群の間でHRVに統計的に意味のある差は見られませんでした※3(この研究はベースラインからの変化そのものを検定したものではなく、55秒という短時間測定でHRVの信頼性が低かった点にも留意が必要です)。HRVが正常範囲内であっても筋肉痛が残っている可能性があることを意味しています。
したがって、体のリカバリーを総合的に評価するには、HRV評価とエネルギー状態及び筋疲労を評価する指標を組み合わせる必要があります。
HRVと持久性パフォーマンスの傾向
HRVと持久性パフォーマンスには以下のような関係があることが研究で明らかとなっています。
- 持久性パフォーマンスが高いアスリートはHRVの平均値が高い傾向がある
- 持久性パフォーマンスが高いアスリートはHRVの変動係数が低い傾向がある
HRVの平均値とは、日々のHRV測定値に対してある特定期間における平均値を示します。変動係数とは、「ばらつき」を示すものであり、どれだけHRVの数値がばらついているかを示しています。
持久性パフォーマンスが高いアスリートほど、HRVの平均値が高い傾向があることが研究で明らかとなっています。特に重要なのが、ある1日の測定値ではなく一定期間(例えば7日間)の移動平均との相関が強いという点です※4。
実際に、ランナーを対象とした縦断研究においても、HRVの変化量と最高有酸素速度・10km走タイムの変化量の間には統計的に意味のある相関が認められました※5。
また、パフォーマンスが高いアスリートは、HRVの変動係数(日々のHRVのばらつき)が小さい傾向があります※4。例えばオーバーリーチング(過度な疲労蓄積)に陥ったアスリートでは、HRV平均値の低下と同時にHRVのばらつきも線形に減少していく現象が報告されています※6。
言い換えると、パフォーマンスが高いアスリートは普段から自律神経系が落ち着いた状態にある、と言えます。
例として、私自身のHRV測定値をグラフにプロットした例を示します。Mean HRV(HRVの7日間平均値)、昨晩HRV(1日の睡眠時HRV)、CV HRV(HRVの7日間変動係数)です。

特徴的だったHRV測定値の推移と、イベントをまとめてみました。
2024年12月頃は、基礎構築期間で有酸素トレーニング負荷を徐々に増やしていった期間でした。この期間はHRVが徐々に向上していきました。
2025年2月末から3月上旬にかけては、レース出場のためテーパリングでトレーニング負荷を徐々に下げていました。HRVはテーパリング期間で一気に回復する傾向が見られました。
2025年5月1日、ぎっくり腰で腰を痛めてしまった際には、HRVが急低下しました。痛みと怪我に反応しているように見えます。
このように自分自身の測定値からも、HRVの測定値と身体の状態は明確に関係性をもっていることが分かりました。
HRVを活用したトレーニングの調整
HRVの測定値によってあらかじめ計画していたトレーニングを調整するような手法をHRV Guided Trainingと言います。HRVの測定値が一定基準から外れていた場合に、計画していたトレーニングを変更し無理ない計画にするものです。
グループをランダムに分けて効果を比べた実験(RCT)では、HRV Guided Trainingを行ったグループは固定プログラムで練習したグループよりも、最大走行速度の改善が統計的に意味のある水準で大きかったという結果が報告されています(最大酸素摂取量〈VO2max〉は両グループとも改善しましたが、改善幅そのものに群間差はありませんでした)※7。
また、複数の実験をまとめた解析(メタアナリシス)では、HRV Guided Trainingは迷走神経関連のHRV指標そのものを有意に改善させる一方、有酸素フィットネスや持久パフォーマンスへの効果はプラス方向ではあるものの統計的に有意ではないことが示されています※8。
HRVステータス別の読み方と対応
| HRVステータス | 示している状態 | 対応 |
|---|---|---|
| バランス(Balanced) | HRVが通常の範囲内。今の負荷に自律神経が対応できている | 予定どおりトレーニングする |
| 低い(Low) | ベースライン以下。疲労の蓄積・睡眠不足・ストレス・体調不良の初期 | 1回だけならノイズとみなして継続。2〜3日続く/下降が続く場合は強度か量を落とし、睡眠を優先する。HRVの平均値と日々のばらつき(CV)がそろって低下していくのがオーバーリーチングの典型サイン※6 |
| 高い(High) | ベースライン以上。多くは良性で、回復週やテーパー期によく出る | 楽な時期には正常。大きな上昇が長く続き、脚が重く練習も伸びない場合のみ副交感神経優位(深い疲労)のオーバーリーチを疑い、体感・記録と突き合わせる |
| アンバランス(Unbalanced) | 日々のばらつきが大きい。新しい刺激に適応中、または不規則なストレス(旅行・飲酒・睡眠の乱れ) | 計画は維持しつつ睡眠・生活を整え、バランスに戻ってから負荷を足す |
ステータスを活かすコツは2つです。1つは、1晩の値ではなく7日間のトレンドで判断すること。フィットネスとの相関は1日の値より移動平均の方がはるかに強いためです※4。もう1つは、脚の張りやエネルギーの状態と併せて見ること。HRVは自律神経の回復だけを反映し、筋損傷やグリコーゲンの枯渇は捉えません※2※3。
実際の活用方法については、参考とした以下の本でも詳しく紹介されています。インフルエンサーである三津家さんは筑波大学の大学院時代に、HRVとパフォーマンスの関係について自分自身の身体で実験していたようです。
トレーニングにHRVを活用してみたい方はぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。
参考文献
本記事は、以下の参考図書および査読済み論文をもとに執筆しています。
※1 Casanova-Lizón A et al. (2022) “Does Exercise Training Improve Cardiac-Parasympathetic Nervous System Activity in Sedentary People? A Systematic Review with Meta-Analysis” Int J Environ Res Public Health
※2 Buchheit M (2014) “Monitoring training status with HR measures: do all roads lead to Rome?” Front Physiol
※3 D’Amico AP, Gillis J (2020) “Foam rolling and indices of autonomic recovery following exercise-induced muscle damage” Int J Sports Phys Ther
※4 Plews DJ et al. (2013) “Training adaptation and heart rate variability in elite endurance athletes: opening the door to effective monitoring” Sports Med
※5 Buchheit M et al. (2010) “Monitoring endurance running performance using cardiac parasympathetic function” Eur J Appl Physiol
※6 Plews DJ et al. (2012) “Heart rate variability in elite triathletes, is variation in variability the key to effective training? A case comparison” Eur J Appl Physiol
※7 Kiviniemi AM et al. (2007) “Endurance training guided individually by daily heart rate variability measurements” Eur J Appl Physiol
※8 Manresa-Rocamora A et al. (2021) “Heart Rate Variability-Guided Training for Enhancing Cardiac-Vagal Modulation, Aerobic Fitness, and Endurance Performance: A Methodological Systematic Review with Meta-Analysis” Int J Environ Res Public Health








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