- HRVステータスの意味が知りたい
- HRVが高い、低い、が意味することを知りたい
- HRVステータスを活用する方法が知りたい
ランナーが使っている大半のランニングウォッチでは「HRV」を測定することができ、データ上ではHRVステータスとのように表示されます。しかし、HRVステータスを活用できている人は少ないのではないでしょうか。
私自身も、GARMIN(ガーミン)のランニングウォッチを使用している時からHRVステータスを見ていました。ただ、HRVステータスとなにかが相関しているのかを実感できず、あまり参考にはしていませんでした。
しかし、COROS(カロス)のランニングウォッチに変更してから、HRVステータスの数値が身体で感じる状態と整合するような感覚を感じてきました。
改めてHRVステータスを調べ、その数値の意味を理解すると、HRVステータスを活用して身体の状態を正確に把握できるようになってきました。
ここではまず、HRVそのものやHRVの意味について解説していきます。また、HRVステータスにおいてどんな数値が重要なのか、また、HRVステータスがどのような状態だとよいパフォーマンスが発揮できるのかについて紹介します。
本記事を読めば、HRVステータスを活用して自分自身の身体状態を把握できるようになります。
HRV(Heart Rate Variability)とは
HRVとは心拍変動 (Heart Rate Variability) のことです。心臓が拍動する度に微妙に変化する間隔の測定値となります。
心臓は、メトロノームのように正確に一定のリズムで拍動しておらず、拍動の間隔が変化します。
例えばある日の安静時心拍数が60拍だとすると、その間隔は1秒毎に規則正しいわけではなく、1.02秒,1.05秒,0.98秒・・・のように、拍動間隔に揺らぎがあります。
HRVが数値的に高い・低いを詳しく説明すると、次の通りです。
- 心拍変動間の変動が大きい(揺らぎが大きい)=HRVが高い
- 心拍変動間の変動が小さい(揺らぎが小さい)=HRVが低い
一見、心拍変動間の変動が大きいほうがよくないように思えるのですが、揺らぎが大きいということは「心臓が可能な限り休息をとろう」として、鼓動をゆっくりにする機会をうかがっており、可能なときは変動を大きくすることによって休もうとしている、ことを意味しています。
HRVは身体の自律神経系の状態を表しています。自律神経系は交感神経系と副交感神経系の2つに大別されます。
交感神経系が高まる時は興奮、緊張や疲労の状態を表し、HRVは低くなります。HRVが低くなる時は安静時心拍数が高くなる傾向となります。ケガや病気、過度な仕事のストレスを受けた時などもHRVは低くなります。
一方で副交感神経系が高まる時はリラックス、落ち着いた状態を表し、HRVは高くなります。体としては休息しようとしているので、安静時心拍数は低くなる傾向となります。ヨガやピラティス、マインドフルネスなどで一時的にHRVを高めることができます。また、長期的な有酸素運動の継続によってHRVが向上していきます。
HRVの測定について
たいていのランニングウォッチでは、HRVを測定することが可能です。私が使ったことがあるのはGARMINとCOROSのランニングウォッチですが、睡眠時に時計を着用することでHRVを測定できます。
測定したHRVは「HRVステータス」として確認することができます。次の例は、COROSのランニングウォッチで測定したHRVを、COROS Training Hubで確認した時の画面です。
HRV測定方法はメーカーによって異なる
多くのランニングウォッチでHRVを測定することができますが、メーカー毎にHRVの算出方法は異なるようです。また、その測定精度もメーカー毎に異なります。また、同じメーカーでも機種によって心拍の測定精度は異なります。
したがって、異なるランニングウォッチでHRVの数値を比較することはできません。私の例でいうと、2024年11月にガーミンのランニングウォッチからカロスのランニングウォッチに変更しました。
実際、HRVの数値は大きく変わりました。
HRVの数値には個人差がある
安静時心拍数が個人毎に異なるように、HRVの数値そのものは個人差があります。普段の生活リズムや、生活の中で受けているストレスの具合等、HRVに与える影響は多くあります。
他人と比較して自分のHRVが高い・低いの判断をすることはできません。あくまでもこれまでの自分と相対的に比較して数値がどうなのか、で評価する必要があります。
HRV評価の注意点
上で述べてきたことから、HRVは体のリカバリー状態を知ることができる有用な指標です。HRVは自律神経系の状態を反映するため、神経系の回復状態を知ることができます。
しかし、HRV評価には注意点があります。HRVはエネルギー状態や筋疲労などの状態は示していないことです。
身体のリカバリーには、自律神経系・エネルギー補給・筋肉の修復の3つに大別されます。エネルギーとは主に体に蓄えられているグリコーゲン状態です。筋疲労は運動による筋肉の炎症です。
例えば筋疲労の最も一般的な症状の1つが筋肉痛です。これは通常、運動直後には発生せず後日まで残るのが特徴です。HRV評価が正常範囲内であっても筋肉痛が残っている可能性があることを意味しています。
したがって、体のリカバリーを総合的に評価するには、HRV評価とエネルギー状態及び筋疲労を評価する指標を組み合わせる必要があります。
HRVと持久性パフォーマンスの傾向
HRVと持久性パフォーマンスには以下のような関係があることが研究で明らかとなっています。
- 持久性パフォーマンスが高いアスリートはHRVの平均値が高い傾向がある
- 持久性パフォーマンスが高いアスリートはHRVの変動係数が低い傾向がある
HRVの平均値とは、日々のHRV測定値に対してある特定期間における平均値を示します。変動係数とは、「ばらつき」を示すものであり、どれだけHRVの数値がばらついているかを示しています。
持久性パフォーマンスが高いアスリートは、HRVの平均値が高い傾向があることが分かっています。重要なのがある1日の測定値ではなく一定期間におけるHRV平均値との相関が強い、ということです。
また、パフォーマンスが高いアスリートは、HRVの変動係数、つまりばらつきが小さい傾向があります。言い換えるとパフォーマンスが高いアスリートは普段から自律神経系が落ち着いている、と言えそうです。
例として、私自身のHRV測定値をグラフにプロットした例を示します。Mean HRV(HRVの7日間平均値)、昨晩HRV(1日の睡眠時HRV)、CV HRV(HRVの7日間変動係数)です。
特徴的だったHRV測定値の推移と、イベントをまとめてみました。
2024年12月頃は、基礎構築期間で有酸素トレーニング負荷を徐々に増やしていった期間でした。この期間はHRVが徐々に向上していきました。
2025年2月末から3月上旬にかけては、レース出場のためトレーニング負荷を徐々に下げていました。HRVはテーパリング期間で一気に回復する傾向が見られました。
2025年5月1日、ぎっくり腰で腰を痛めてしまった際には、HRVが急低下しました。痛みと怪我に反応しているように見えます。
このように自分自身の測定値からも、HRVの測定値と身体の状態は明確に関係性をもっていることが分かりました。
HRVを活用したトレーニングの調整
HRVの測定値によってあらかじめ計画していたトレーニングを調整するような手法をHRV Guided Trainingと言います。HRVの測定値が一定基準から外れていた場合に、計画していたトレーニングを変更し無理ない計画にするものです。
実際の方法については、参考とした以下の本で紹介されています。インフルエンサーである三津家さんは筑波大学の大学院時代に、HRVとパフォーマンスの関係について自分自身の身体で実験していたようです。
トレーニングにHRVを活用してみたい方はぜひ一度読んでみてはいかがでしょうか。
参考文献
本記事は、以下を参考図書としています。
参考図書に掲載されている論文を参考に、本記事を執筆しています。皆様の参考になれば幸いです。
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