【解糖系の強化】有酸素能力とはトレードオフ?トレーニングのバランスが重要

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こんな疑問を解消
  • 解糖系ってなに?
  • トラックレースでなかなか結果が出ない。何が足りない?
  • 練習で走るペースは速いことに越したことはないんじゃないの?

 練習で走るペースは「速ければ速いほどいい」と思っているランナーの方もいらっしゃるのではないでしょうか?実は、疾走ペースが速いと、逆に有酸素能力強化を妨げることもあり得ます。

 私は社会人から本格的にランニングを始めた市民ランナーです。月500km程を走り、競技志向でランニングに取り組んでいます。

 私自身は、秋~冬にかけてハーフマラソンやフルマラソンに取り組み、春~夏はトラックレースに出場します。

 トラックレースでは、1500m~5000mに出場しますが、特に1500mは無酸素系代謝の重要度が増します。

 無酸素系代謝の中で重要なのが「解糖系」です。特に1500m以下のレースで記録を伸ばしたい場合は、解糖系の強化に力を入れる必要があります。

 本記事では、解糖系についての説明と、解糖系と有酸素能力の関係性、解糖系強化のポイントを解説します。

著者:らんしゅー
日比野就一

社会人からランニングを始めました。
理論に基づいたトレーニングで、
どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
競技志向で取り組んでいます。
自己紹介・記録変遷はこちら

血中乳酸濃度や血糖値も測定。
マラソンへ科学的にアプローチします。

★自己ベスト
 1500m 4:25(2022/08)
 5000m 16:01(2022/09)
 10000m 33:44(2021/12)
 ハーフ 1:12:29(2022/03)
 フル 2:43:55(2024/11)

著者:らんしゅー
日比野就一

  社会人からランニングを始めました。
  理論に基づいたトレーニングで、
  どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
  競技志向で取り組んでいます。
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  血中乳酸濃度や血糖値も測定。
  マラソンへ科学的にアプローチします。

  ★自己ベスト
   1500m 4:25(2022/08)
   5000m 16:01(2022/09)
   10000m 33:44(2021/12)
   ハーフ 1:12:29(2022/03)
   フル 2:43:55(2024/11)

carb-upper
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目次

解糖系とは?

 解糖系とは、グルコースもしくはグリコーゲンからピルビン酸に代謝される過程のことを示します。

糖質代謝のポンチ絵

 解糖系でエネルギーを産み出す過程では酸素を必要としません。そのため、無酸素性代謝と呼びます。

代謝分別

 有酸素系の代謝(糖質・脂質・乳酸)のエネルギー産生速度を1とすると、解糖系は2.5倍の速さでATPを産み出すことができ、エネルギーの産生速度が非常に速いことが特徴です。

 しかし、その持続能力は20~40秒程度でしかありません。

解糖系代謝の位置づけ

 解糖系は無酸素でエネルギーを産み出します。種目別で無酸素系代謝の寄与度合いを以下で示します。

種目別エネルギー代謝寄与率

 陸上種目では1500mレースで無酸素性代謝の寄与率は40%前後、5000mで約10%となります。解糖系の重要度は5000m未満のレースで重要度が増してくることが分かります。

解糖系の強化は有酸素能力とトレードオフ

 解糖系を強化することは、有酸素能力を強化することと、一部トレードオフになります。

 持久性トレーニングを行うことでミトコンドリアの増加及び機能向上が起こる時に重要なのは、PGC-1αという転写共役因子です。

 トレーニングによってPGC-1αの発現量が高まることで、ミトコンドリアの新生が起こります。

 

 

 一方で、解糖系強化のためのトレーニングは最大酸素摂取量を超えた強度で行います。したがって、筋繊維では酸素の供給不足が発生します。

 酸素の供給不足が発生することで活性化されるのがHIF-1(低酸素誘導因子1)です。HIF-1により転写が促進されるのは、グルコース輸送体解糖系の酵素群です。

 したがって、解糖系を強化するためには酸素不足を発生させる必要があるため、最大酸素摂取量を超えた強度でトレーニングを行う必要があります。

 同時にHIF-1は、ミトコンドリアのクエン酸回路で働く酵素群や酸化的リン酸化に関与する酵素群を産み出す遺伝子を抑制します。

 つまり、酸素不足を発生させることで解糖系の強化はされるものの、有酸素能力の向上は妨げることになります。これがトレードオフの意味です。

あくまでバランスが重要

 上で述べた通り、解糖系を強化するために最大酸素摂取量を超える強度でトレーニングを行うと、酸素供給不足が発生し、ミトコンドリアの有酸素代謝を向上させる酵素群の能力向上を妨げます。

 したがって、解糖系強化有酸素能力強化バランスが重要だと言えます。

 競技時間が4~5分で終わる1500mでさえも、有酸素由来の代謝寄与率は60%です。解糖系よりも有酸素由来のエネルギー代謝寄与率の方が高いです。

 これらのことから、自分が取り組む種目によって解糖系強化(無酸素系)と有酸素能力強化はバランスを変える必要があります。

解糖系を鍛えるトレーニング

 これまで述べてきた通り、解糖系を強化するためには酸素不足が発生するような強度でトレーニングを行う必要があります。

 運動強度で言うと、100%VO2maxを超える強度です。速さで言うと3000mレースペース以上での強度です。

 疾走時間が100秒を超えると、有酸素性のエネルギー供給量が急激に増えてくるので、解糖系を鍛えるトレーニングは、高い運動強度でおよそ30~100秒程度継続するものが良いと考えられます。

 解糖系を鍛えるトレーニングとしては、次があげられます。

解糖系を鍛えるトレーニング
  • レペティショントレーニング
  • 坂道トレーニング(ヒルスプリント)
  • 流し

レペティショントレーニング

 レペティショントレーニングは、およそ1500mのレースペースで200m~800m程度の距離を繰り返し走るトレーニングです。

 レスト時間は、走った時間の2~3倍の時間を、ゆっくりジョギング、もしくは歩きます。

レペティショントレーニングの例
  • 200m×20
  • 400m×10
  • 600m×7
    レストは、疾走時間の2~3倍(ジョギングでも歩きでもOK)

 一回当たりの疾走時間が2分を超えるような距離は、レペティショントレーニングには適していません。

 解糖系代謝を効率よく向上させるためには、1回当たり30~60秒程度の疾走時間が理想です。

 また、レストは十分に休んで構いません。レストでジョグをする場合も、とてもゆっくりで行います。

 レストのジョグが速すぎると、有酸素系の立ち上がりが早くなり、解糖系代謝機能への刺激時間が減ってしまうためです。

坂道トレーニング

 坂道トレーニングは「坂ダッシュ」として知られているトレーニングです。

 傾斜率3.0~5.0%程度の坂を使って、繰り返しダッシュを行います。

 疾走時間やレストの考え方は、基本的にレペティショントレーニングと同様です。

坂道トレーニングの例
  • 150m×20
  • 200m×15
  • 300m×10

 坂ダッシュを行う場合、レストは登ってきた坂をジョグで戻るのが基本です。

 解糖系強化が目的の場合、レストのジョグのスピードはとてもゆっくりで構いません。普段のジョギングペースよりも遅くて大丈夫です。

 時間に余裕があれば、歩いても問題ないです。

流し(ウィンドスプリント)

 「流し」または「ウィンドスプリント」と呼ばれるトレーニングは、普段のジョギングに手軽に取り入れることができます。

 正しいやり方が決まっているわけではありませんが、およそ20秒で走りきれる距離を、6~8本程度走ります。

 走る際の努力感としては、90%程度です。普段のペース走やインターバル走よりは速いスピードになります。

 間のレストは、ゆっくりジョグしても、歩いても、どちらでも構いません。

参考文献:

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。

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