- サブ3まであと少しだけど、記録が停滞してなかなか達成できない
- 将来的にサブ3を達成したいが、どんな練習メニューを組んだらよいかが分からない
- 練習時間が思うように確保できない中、効率的に練習したいと思っている
この記事は、フルマラソンでサブ3を目標にしているランナー向けです。「フルマラソンでサブ3」とは「フルマラソンを3時間以内に走り切ること」を意味しています。
私自身は、本格的に走り始めてから1.5年後にサブ3で走ることができました。しかし、過去の運動歴や個人の長距離に対する素質によってサブ3を達成できるまでにかかる時間や必要な練習は異なります。
ここでは、これまで私が学び経験してきたこと、パーソナルトレーニングでメニュー提供をした結果などを踏まえて、フルマラソンでサブ3を達成するために、どのように練習を行っていけばよいかについて解説します。
本記事を読めば、そのまま自分自身で練習を行えるようになることを意識して解説します。
サブ3に才能は必要なのか?
各個人によって、長距離種目に対する素質は異なります。生まれつき長距離が特異な人もいれば、苦手な人もいます。生まれつきの素質による影響は、約50%程あると言われています。
しかし、私自身の考えとして、特別な才能が無くてもフルマラソンでサブ3は達成できると考えています。ただし、目標達成までにかかる時間やトレーニング内容は、その人の素質や過去の運動歴によって異なります。
記録の伸び悩みには、必ず原因があります。本記事を読むことで、何かしらのヒントを得られることを期待しています。
必要な走行距離と練習頻度
よく、「フルマラソンでサブ3を達成するには、少なくとも月間走行距離が300km以上は必要」などと言われます。一方で、もっと少ない距離しか走っていないランナーでも、サブ3を達成できてしまうランナーもいます。
間違いなく言えることは「ある程度までなら練習量が多いほうがサブ3を達成できる難易度が下がる」ということです。これを踏まえ、サブ3を目指す場合の走行距離と練習頻度の目安は、以下の通りです。
- 月間走行距離:300km程度(75km/週)
- 練習頻度:5回/週
サブ3をなかなか達成できないランナーの中で、300km/月未満で練習頻度が5回/週未満である場合は、まず練習量と練習頻度を増やしてみることがおすすめです。その際、今の練習の内容はそのままにして練習量だけを増やしてみてください。
たとえば、練習の強度を下げて練習量を増やすといった方法にしてしまうと、総合的な練習の負荷は変わらない、もしくは下がってしまう可能性もあります。
目標レースまでのスケジュール
目標レースに向けた練習は主に次の3段階に分けて行います。「基礎構築期」「移行期」「特異期」です。これに加えて、レース前の「調整期間」が必要な場合もあります。それぞれの時期における期間は、およそ以下の通りです。
- 基礎構築期:2カ月
- 移行期:1カ月
- 特異期:1カ月
- 調整期間:2週間~1カ月
すべての時期を合計すると、およそ半年程度は必要な計算になります。10月以降のフルマラソンレースを目標にしている場合、4月や5月から練習を始めることが望ましい、と言えます。
目標レースまで既に半年を切っている場合は、適宜、各時期の期間を短くします。例えば、目標レースまでの期間が残り4カ月である場合は「基礎構築期:1.5カ月、移行期:0.75カ月、特異期:0.75カ月」といった具合に調整します。
トレーニング目標の大前提
トレーニングを進めるうえでの大前提は「目標のレースペース付近でどれだけたくさん練習をこなすことができるか」です。
理由としては、レースペースに近いペースで練習をこなすことによって、そのペースに対するランニングエコノミー、つまり、走るための効率が向上していくためです。
基礎構築期、移行期、特異期と進んでいくにつれ、練習で走るペースは徐々に目標のレースペースに近づいていきます。したがって、目標のレースペースでの練習量を出来るだけ増やしていくことを意識して、トレーニングを進めていく必要があります。
期分け毎のトレーニングメニュー
以下では、フルマラソンでサブ3達成をすることを目指している場合の基礎構築期、移行期、特異期における代表的なトレーニングメニューを紹介します。
これはあくまでも一例であり、最もオーソドックスなメニューです。
基本の練習強度
以下で紹介する練習メニューにおいて、トレーニング強度を示す単語を使っています。例えば、「Easyジョグ」と記載した場合は、以下表における「Easy」強度で練習を行うことを表しています。
運動強度 | 強度名称 | 強度区分 | ※1 %HRmax | ※2 %VO2max | ※3 血中乳酸濃度 mmol/L |
---|---|---|---|---|---|
zone1 | Easy | 低強度 | 60~71 | 50~65 | 0.8~1.5 |
zone2 | Moderate | 低~中強度 | 72~82 | 66~80 | 1.5~2.5 |
zone3 | LT | 中強度 | 83~87 | 81~87 | 2.4~4.0 |
zone4 | OBLA | 高強度 | 88~92 | 88~93 | 4.1~6.0 |
zone5 | VO2max | 高強度 | 93~100 | 94~100 | >6.1 |
Sprint | 高強度 | - | 100~ | - |
- ※1 %HRmax:最大心拍数に対する割合。
- ※2 %VO2max:最大酸素摂取量に対する割合。
- ※3 血中乳酸濃度:血液中の乳酸濃度。専用の測定機器でしか測ることができない。競技レベルが向上すると、同じ強度でも血中乳酸濃度の数値は低下する傾向がある。
各強度における、強度の目安は心拍数(%HRmax)を参考にしてください。
基礎構築期
基礎構築期は、体の基本的な有酸素能力を向上させ基礎スピードを高めるのに適した時期です。基礎構築期は、レースから最も遠い時期に行うことになるため、レースペースとは離れたスピードでの練習を取り入れやすい時期です。
移行期、特異期と進んでいくと、練習の強度が高まっていきます。練習強度が上がっても、トレーニング量を維持できるような、また、怪我をしない体づくりが必要です。
- 月曜:OFF
- 火曜:ファルトレクトレーニング 1min / 1min * 20~30
- 水曜:Easyジョグ 60min
- 木曜:Moderateジョグ 60min + 流し
- 金曜:OFF
- 土曜:坂道ダッシュ 150m * 10
- 日曜:ロングラン(EasyからModerate強度) 90~120min
ファルトレクトレーニングは、ペース設定を決めない練習です。普段から走っているコースで、速く走る、ゆっくり走るを繰り返します。具体的なメニューは次の記事で解説しています。
流しは「軽いダッシュ」を意味します。別名ではウィンドスプリントやストライドと呼ばれることがあります。実施方法は決まっておらず、100m~200m程度の距離を数本走ります。
坂道トレーニングは、傾斜率が5%前後の坂を使って行う練習です。上った後の下る時間を休息時間とします。坂道の傾斜がきつすぎると、平地で走るときのランニングフォームと大きく変わってしまうため注意が必要です。
フルマラソンから遠い時期ではありますが、ロングランは行っておきたい練習です。ペースはEasyからModerateで、比較的ゆっくりなペースで十分です。
移行期
移行期は、基礎構築期の内容を徐々にレースペースに近づけていく時期になります。
- 月曜:OFF
- 火曜:ファルトレクトレーニング 3min / 1min * 10
- 水曜:Easyジョグ 60min
- 木曜:Moderateジョグ 60min + 流し
- 金曜:OFF
- 土曜:インターバルトレーニング 800~1000m * 5 rest2~3min
- 日曜:ロングラン(EasyからModerate強度) 120min
ファルトレクトレーニングのメニュー内容を少し調整したり、基礎構築期に行っていた坂道ダッシュの代わりに、インターバルトレーニングを行います。
移行期に行うインターバルトレーニングは、すべての練習の中で最もきつさを感じる練習です。できれば練習会などで集団の力を借りて行うことが望ましいです。単独で行う場合は、はじめは確実にこなせる設定タイムで練習を計画し徐々にペースを上げていくようにしましょう。
特異期(レース前)
特異期は、出来るだけレースペースに近い練習を取り入れる時期です。
- 月曜:OFF
- 火曜:6000m~12000m ペース走
- 水曜:Easyジョグ 60min
- 木曜:Moderateジョグ 60min + 流し
- 金曜:OFF
- 土曜:Moderateジョグ 60min + 流し
- 日曜:ロングラン(Moderate~LT) 120~150min
ペース走は、フルマラソンペースよりも少し速めのペース設定で行います。6000mから始め徐々に12000m程度まで伸ばしていくように計画します。当然、6000mでの設定ペースと12000mでの設定ペースは異なります。
ペース走は「LT走」や「閾値走」などとも呼ばれます。6000mのペース走はおよそハーフマラソンで走るペース、12000mのペース走は、フルマラソンで走るペースよりも5秒速いくらいが目安となります。
フルマラソンレースに向けた特異期の中で最も重要な練習はロングランです。練習においては、120分から150分程度のロングランをコンスタントにこなしていくことが理想です。
移行期までは、EasyからModerate強度で設定していましたが、特異期においては、ModerateからLT強度へと上げていきます。出来る限り本番のレースに近い強度でこなしていくことを狙っています。
リカバリーを疎かにしないこと
ランナーがよく陥りがちなことは「リカバリーを疎かにしてしまうこと」です。良いトレーニングができても、トレーニングで体に与えた負荷からのリカバリーが上手くいかなければ、走力は思うように伸びていきません。
しかし、「リカバリーが上手くいっているか」を測るのはとても難しいです。私の場合は、安静時心拍数や睡眠中のHRVステータスを活用して、体のリカバリーが十分であるかを判断するようにしています。
主観的に「体の疲労感が抜けない」時は黄色信号です。適切なリカバリーができている時は、練習前にはちゃんと疲労が抜けて、毎練習に臨むことができます。
調整期間について
レースに向けた調整期間については、その人の練習量やレベルによって考え方が異なります。
ここでの「調整」が意味するのは主に「練習量」のことを指します。練習内容は、基礎構築期、移行期、特異期と経ていく中で、徐々に調整されていますが、レースに向けて疲労度を調整していくことで、さらなるパフォーマンスアップを望むことができます。
練習量を落として調整することを「テーパリング」と呼びます。目標レース7~14日前から、練習強度は維持し練習量を41~60%%前後に落とすことでパフォーマンスが最大8%向上することが示されています。
しかし、普段からそこまで多く走っていないランナーはそもそも調整期間が必要ではない場合があります。どのくらい練習量を落とせばレース当日に最高の走りができるかは、自分自身で試しておく必要があります。
レースでの補給戦略
フルマラソンにおいて、補給戦略は非常に重要です。
レース前の補給目的は、主にカーボローディングです。出来るだけ体に糖質を蓄えておくことで、レース当日、ランニングパフォーマンスを最大化することが可能です。
レース中の補給目的は、レース中に消費する糖質の補給と血糖値の維持です。レースでは蓄えてあったグリコーゲンが徐々に消費され、血糖値が低下していきます。グリコーゲンを温存し、血糖値低下を防ぐことで、30km以降のペースダウンを遅らせることが可能になります。
レース中では、主に自分で携帯した補給用ジェルなどを使うことになります。レース当日にいきなり新しいジェルを使用すると、腹痛などの影響が出る可能性がありますので、練習などで事前に試しておくことがおすすめです。
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