- ベースフィットネスってなに?
- COROS Training Hubのベースフィットネスはどうやって計算されるの?
- ベースフィットネスの活用の仕方が知りたい
「ベースフィットネス」は、COROSのランニングウォッチを使っていれば聞きなれていると思います。ベースフィットネスを正しく活用すれば、競技能力を適切に伸ばしていくことができる可能性があります。
私もCOROSのランニングウォッチを使いながらベースフィットネスの数値に注目し、日々のトレーニング負荷を管理しています。ベースフィットネスに関わるトレーニング負荷を管理することで、オーバートレーニングや怪我を予防できます。
ここでは、ベースフィットネスがどのような数値なのか、また、ベースフィットネスの考え方の背景や、ベースフィットネスの活用方法について紹介します。
本記事を読めば、ベースフィットネスの数値を活用して、日々のトレーニング負荷を管理することができるようになります。もしCOROSユーザーでなくても、トレーニング負荷の考え方を理解することができます。
ベースフィットネスとは?
ベースフィットネスとは、COROS Training Hubのデータ分析ページで確認できる数値指標です。同時に理解しておいた方がよいのは負荷インパクトと負荷比率です。それぞれの意味は次の通りです。
- 負荷インパクト:トレーニング負荷の直近7日間の平均値
- ベースフィットネス:トレーニング負荷の直近42日間の平均値
- 負荷比率:「負荷インパクト / ベースフィットネス」の式で算出される比率
ベースフィットネスは、自分が受け入れることができるベースの負荷を定量化した数値と言えます。
トレーニング負荷の決まり方
ベースフィットネスを理解するためにはトレーニング負荷(TL)がどのように決まるのかを理解することが必要です。COROSの公式HPには、トレーニング負荷について以下の記載があります。
各アクティビティに表示されるトレーニング負荷(TL)の数値は、生理学的にどの程度のトレーニング刺激を身体にかかっているかを示します。トレーニング負荷の数値がが高いと、そのアクティビティがハードであったことを示します。
トレーニング負荷は、運動量(運動時間、運動距離など)と運動強度(心拍数、走行ペースなど)の実測値に基づき算出されます。運動量や運動強度を高くすることで、トレーニング負荷を高い数値にすることができます。
ほとんどのアクティビティにおいて、トレーニング負荷は心拍数を強度指標として使用します。ただし、心拍数では正確に負荷を測定できない高強度のワークアウトでは心拍数よりも走行ペースを信頼度の高い強度指標として使用します。
トレーニング負荷を正しく算出するためには、心拍が正確に測れる心拍センサーやCOROS POD 2の利用が推奨されます。
トレーニング負荷については、次の記事で詳しく解説しています。
フィットネス-疲労理論
ベースフィットネスの重要性を理解するためには、「フィットネス-疲労理論」を理解しておく必要があります。
フィットネス-疲労理論とは、以下の通りです。
トレーニングを行うことでフィットネスレベルは向上するが、同時に疲労も蓄積する。フィットネスレベルの向上はパフォーマンスに対してプラスであり、疲労はマイナスである。
リカバリーによってフィットネスレベルは低下するが、その低下具合は小さい。一方でリカバリーによる疲労の回復具合は大きい。フィットネスレベルの低下具合と疲労の回復具合の差の分だけ、徐々にパフォーマンスが向上していく。
以下ではフィットネス-疲労理論を図で説明します。
トレーニングを行うとフィットネスレベルが向上します。同時に疲労も蓄積されます。疲労がゼロである場合は、「パフォーマンス=フィットネス」となりますが、疲労がある場合は、疲労の分だけパフォーマンスが低下した状態です。
パフォーマンスを向上させるために、疲労を抜く場面を考えてみます。疲労を抜くということはトレーニング負荷を下げるということを意味するので、フィットネスレベルも低下します。
しかし、フィットネスレベルの低下具合よりも疲労の低下具合の方が大きいため、疲労を抜くことでパフォーマンスが向上します。
トレーニング1回あたりのパフォーマンス上昇幅はわずかですが、トレーニングを繰り返すことで、わずかなパフォーマンスの上昇が積み上がり、明らかにパフォーマンスが向上した状態となります。
以上がフィットネス-疲労理論の説明になります。
ベースフィットネスを高めていくことの意味
ベースフィットネスとは、フィットネス-疲労理論における「フィットネス」に相当する数値だと言えます。ベースフィットネスはトレーニングを行い負荷をかけることで向上し、休養すると低下します。
ベースフィットネスはトレーニング負荷の42日間平均です。42日で平均を取っているため、1日休んだくらいではベースフィットネスの低下はわずかです。
一方で、1日休めば疲労はかなり抜けます。ベースフィットネスの低下がわずかなのに対し、疲労は大きく抜けるため、その差し引きでパフォーマンスが徐々に向上していきます。
ベースフィットネスを徐々に高めていくには、トレーニング負荷を徐々に上げていくことが必要です。ずっと一定のトレーニング負荷でトレーニングを行った場合、ベースフィットネスもずっと一定になります。
トレーニング負荷を高めることができるということは、自分自身が受け入れることができるトレーニング負荷の総量が増加していくことを意味しています。
高いトレーニング負荷に耐えられるということは、パフォーマンスの向上幅も大きくなります。
レースに向けたベースフィットネスの推移
目標レースに向けたトレーニングは、基礎構築期・移行期・レース特異期・調整期と期間を分けて構築することが理想です。
ベースフィットネスを高めていくのは、基礎構築期にあたります。トレーニング強度と量を徐々に漸増させ、自分が受け入れることができるトレーニング負荷を徐々に高めていきます。
以下の例は、ヤコブ選手の2024年シーズンにおけるベースフィットネスと負荷インパクトの推移です。オフシーズンである冬~春にかけて、ベースフィットネスが徐々に高待っていることがよく分かります。
5月以降、負荷インパクトは急低下し調整期に入っていることが分かります。ベースフィットネスも低下していますが減少量はわずかです。負荷インパクトはトレーニング負荷の7日間平均を表していて、「疲労」に値します。
5月中旬以降は負荷インパクトがベースフィットネスを下回り、体はフレッシュになっている状態です。この状態でレースに出場することで、良いパフォーマンスが発揮できます。
ベースフィットネスは自分の中での「相対値」
ベースフィットネスの数値は、自分自身の実力を基準に計算されるトレーニング負荷によって算出される指標です。したがって、実力が異なるランナーが全く同一のトレーニングを行っても、トレーニング負荷の数値は各個人で異なります。
箱根駅伝の出場するようなランナーが4:00/kmで10km走るのと、サブ3のランナーが4:00/kmで10km走るのでは、後者の方が負荷が高いのは明らかです。
あくまでも、今の自分が受け入れているトレーニング負荷の平均値を表しています。自分の中でベースフィットネスが高まっていくことそれ自体が、自分の実力が向上してきていることを意味していると考えてよいと思います。
目標としていたレースに参加し、自分のランニングレベルが向上すると、新たな基準をもとにトレーニング負荷が計算されるようになります。新たな基準で再びベースフィットネスを向上させ、ランニングレベルを上げる、の繰り返しです。
ベースフィットネスを上げていくペース
ベースフィットネスを上げていくペースは、COROS公式HPにて以下のように説明されています。
42日間(6週間)のトレーニングデータの収集が終われば、直近42日間のトレーニング負荷の平均値であるベースフィットネスの正確な数値が反映されます。そして、その後は1週間にベースフィットネスの数値を2-6ほど向上させるトレーニング計画を作成しましょう。
参照元:ベースフィットネス
ベースフィットネスが急激に上昇することは、短期的なトレーニング負荷がとても高いことを意味します。それが行き過ぎると、オーバートレーニングになる可能性もあるため、注意が必要です。
COROSユーザーであれば、ベースフィットネスを活用して適切なトレーニングを組んでいきましょう。
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