【10000m(10km) 練習方法】自己ベスト更新に向けたトレーニングガイド

こんな疑問・悩みを解消
  • フルマラソンで自己ベストを更新するためにスピードを付けたい
  • フルマラソンの通過点として10000mトラックレースに挑戦したい
  • 10kmで記録を出すための練習方法が知りたい
  • 本記事対象の走力:40分切り、35分切り

 10000m(10km)を走ろうと思っている方の中には、5000mや10000mのトラックレースを主戦場にしている方から、フルマラソンに向けたスピード養成のために取り組もうと思っている方まで様々だと思います。

 最終的な目標がどの競技であれ、10000mで記録を出すための取り組みにはほとんど影響がありません。

 私自身は社会人からランニングを始めた市民ランナーです。月500km程走り、競技志向でランニングに取り組んでいます。

 自己ベストは10000mで33分44秒です。ハーフマラソンで持っている自己ベスト1時間12分29秒と比較すると物足りない記録ですが、10kmのレースへの出場頻度が低いためこのような自己ベストになっています。

 ここでは、10000mで記録を出すための練習方法について詳しく解説します。

 私自身が本格的にランニングを始めた時は「ダニエルズのランニング・フォーミュラ」を参考に練習メニューを組み、記録を向上させることができました。

 しかし、運動生理学の勉強などをしてから思い返してみると、本を読んだだけでは理解できていなかったことも多くありました。

 本記事を読めば、10000mで記録を出すために必要な考え方を理論的に理解し、優先的に取り組まなければならないことが分かります。

 また、具体的な10000mで記録を出すための練習法が分かります。

この記事を書いた人
日比野就一

社会人からランニングを始めました。
理論に基づいたトレーニングで、
どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
競技志向で取り組んでいます。
自己紹介・記録変遷はこちら

★自己ベスト
 1500m 4:25(2022/08)
 5000m 16:01(2022/09)
 10000m 33:44(2021/12)
 ハーフ 1:12:29(2022/03)
 フル 2:43:55(2024/11)

この記事を書いた人
日比野就一

    社会人からランニングを始めました。
    理論に基づいたトレーニングで、
    どこまで記録を伸ばすことができるか挑戦。
    競技志向で取り組んでいます。
    自己紹介・記録変遷はこちら

    ★自己ベスト
     1500m 4:25(2022/08)
     5000m 16:01(2022/09)
     10000m 33:44(2021/12)
     ハーフ 1:12:29(2022/03)
     フル 2:43:55(2024/11)

carb-upper
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目次

トレーニング理論の基本

ダニエルズのランニング・フォーミュラ 第4版 本

 ランニングトレーニングは、個人ごとに最適な方法が異なりますが、その中でも多くの人に対して当てはまるトレーニング理論があります。

 私自身は「ダニエルズのランニングフォーミュラ」に出会ってから、劇的に記録向上を達成することができました。ダニエルズ理論では、怪我のリスクを抑えたトレーニング手法が紹介されているため、怪我の頻度も減りました

 他には青山学院大学の駅伝部が採用している「リディアードのランニング・トレーニング」があり、書籍として発売されています。

 これらはある程度ボリュームのある本ですが、今後も継続的に目標を上げていきたいと思うのであれば、一回は読んでおいた方が良い内容となっています。

 本記事では、ダニエルズ理論やリディアード理論、その他世界のエリートランナーのトレーニング例、私自身の実体験を元にしてエッセンスを説明するように心がけています。

練習量の目安

 10000mをメインの目標とする場合、フルマラソンと比較して走行距離の重要性は低下します。

 世界のエリートランナーで言うと、フルマラソンランナーは月間で800km~1000kmの距離を踏むのに対し、5000m~10000mのランナーは640~800km程度の走行距離になるようです。

 私自身が10000mで33分台で走れていた時は、月間走行距離が400~500kmの間くらいでした。

 私自身はハーフマラソンやフルマラソンに向けたトレーニングを行っている中で10kmのロードレースに出場したので、比較的走行距離が多いほうだと思います。

 10kmだからと言って練習量が少なくてもいい、というわけではありません。練習の質と量の適度にバランスをとりましょう。自分の体の回復が間に合う範囲内でトレーニングを行っていくことが必要です。

10000mレース向け 具体的トレーニング

 10000mに限らず、レースで記録を出すためのトレーニングは半年程度の期間で構築する必要があると考えております。

 もし、この記事を読むタイミングでは、すでに目標としているレースまでの期日が半年を切っている場合は、それぞれの段階を多少短く調整しながら取り組んでみてください。

 各Stepでは、以下のような強度別トレーニングを紹介しています。強度別のトレーニング目的と理論を紹介していますので、ご参照ください。

第1Step:基礎構築期

 基礎構築期のトレーニングは、10000mでもフルマラソンでも、大きな違いはありません。

 基礎構築期で意識することは以下の通りです。

基礎構築期における重要なこと
  • トレーニングボリュームを最大化すること
  • 有酸素能力の構築にもっとも時間を割くこと

 基礎構築期は、目標レースに向けたトレーニングの中で、最もトレーニングボリューム(=走る距離)が増える時期です。

 基礎構築期においてトレーニングボリュームを増やすことで、第2Stepや第3Stepで行う10000mレースに特化した高強度なトレーニングでもケガをしない体づくりや回復力の向上を獲得することができます。

 また、トレーニングボリュームを高めることで筋肉におけるミトコンドリアの数が増え、基本的な有酸素能力のベースを向上させることができます。

 10000mが目標の場合の基礎構築期におけるトレーニング例は、次の通りです。

基礎構築期のトレーニング
  • 月曜:OFF
  • 火曜:モデレートラン60min + 流し6本
  • 水曜:LTペース走 or LTインターバル走
  • 木曜:Easyジョグ60min
  • 金曜:OFF
  • 土曜:坂トレーニング
  • 日曜:ロングラン(90min)

 基礎構築期は「LT強度のトレーニング+坂トレーニング+ロングラン」を週1回ずつ取り入れていきます。

 LTペース走は「Tペース走」とは異なります。別名でスイートスポットトレーニング(SST)と呼びます。

 坂トレーニングは150~300m程度の坂(傾斜率3.0~5.0%)を、およそ3000m~5000mのレースペースで駆け上がります。レストはジョグで、上ってきた坂を下ります。合計の疾走距離が2000~4000m程度が理想となります。

 もし、速いペースがきつい場合は目標レースが10000mであることも考慮して、10000mのレースペース程度にして一回当たりの疾走距離とトータルの距離を少し伸ばす、のような調整をしても構いません。

 週1回程度はロングランを入れましょう。10kmは十分な長距離種目です。理想は120minですが、長い距離が苦手で10kmから取り組むランナーいるかと思うので、最低90minは走っておきたいです。

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第2Step:鍛錬期

 鍛錬期で意識することは以下の通りです。

鍛錬期における重要なこと
  • 高強度なトレーニング(88%VO2max以上)を導入してミトコンドリアの機能を高めていく
  • 10000mレースペースに近いトレーニングを徐々に取り入れていく
  • 基礎構築期で培った有酸素能力を維持する

 鍛錬期では高強度トレーニングを導入するべき時期です。基礎構築期で増やしたミトコンドリアの機能を高めるには、高強度なトレーニングが必要です。

 10000mレースに向けて、レースペースに近いペースでのトレーニングを徐々に入れていくことでランニングエコノミーと特異性を向上させていきます。

 鍛錬期のトレーニングメニュー例は次の通りです。

鍛錬期のトレーニング
  • 月曜:OFF
  • 火曜:Easyジョグ60min + 流し6本
  • 水曜:Tペース走
  • 木曜:Easyジョグ60min
  • 金曜:OFF
  • 土曜:ショートインターバル
  • 日曜:ロングラン(90min)

 Tペース走はダニエルズのTペースを示しています。およそOBLA強度(88~92%HRmax)で行う比較的きついトレーニングになります。LTペース走とは強度が明確に異なります。

 ショートインターバルは5000m~10000mレースペースで行います。レースペースに体を徐々に慣らしていくことが目的です。

 週1回のロングランは継続することで、最低限の有酸素能力を維持することを狙います。

第3Step:レースへの特異性向上期

 レースへの特異性向上期がレース前の最終Stepになります。レース直前の時期に意識することは以下の通りです。

特異期における重要なこと
  • レースペースに近いペースでのトレーニングを増やしランニングエコノミーを向上させる
  • 基礎構築期、鍛錬期で培った能力を最低限維持する

 この時期はレースペースに近いトレーニングを入れていきます。

 ハーフマラソンが目標レースの場合、具体的なトレーニングメニュー例は次の通りです。

特異期のトレーニング
  • 月曜:OFF
  • 火曜:Easyジョグ60min + 流し6本
  • 水曜:Tペース走
  • 木曜:Easyジョグ60min
  • 金曜:OFF
  • 土曜:CVインターバル
  • 日曜:Easyロングラン(90min)

 CVインターバルは、およそ10000mのレースペースで行うロングインターバルトレーニングです。5000mレースペースで行うVO2maxインターバルよりも少しペースを遅めに設定し、本数や距離を伸ばしたトレーニングです。

 10000mレースが目標の場合は、トレーニングの一環として3000~5000mのレースに出場することもおすすめです。3000~5000mのレースに出場してある程度の力を出して走り切ることができれば、VO2maxに強い刺激が入ります。

トレーニングでの設定ペースの決め方

 トレーニングでの設定ペースは、VDOT Calculatorで算出します。

 現時点での自己ベストから、今の自分に適した設定ペースを計算できます。使い方については、次の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

レース前の調整方法

 レース前はトレーニング量を減らして調整を行います。テーパリングと呼んでいます。上手にテーパリングができると、最大で8.0%のパフォーマンス向上が望めます。

 テーパリングは、レース前8~14日前から行うとよく、普段の練習量から約50%前後まで落とすと効果的であることが示されています。

 練習量は落としますが、練習の強度は維持する必要があります

 テーパリングの具体的な解説は次の記事で解説しています。

自分でトレーニングを組み立てることが難しい方へ

 トレーニングの組み立て方を詳しく解説してきましたが、実際には今の自分の走力に適したトレーニングを取り入れる必要があり、簡単にはいかない部分があります。

 また、生活スタイルや今の自分の弱点なども把握しておく必要があります。

 「トレーニングを自分で組み立てることが難しいな」と感じている方へ、「ランニングを科学する」では「オンラインパーソナルトレーニングサービス」を提供しています。

 あなたのお仕事や家庭環境、練習可能な頻度や時間に合わせた柔軟なトレーニングメニューの提供を行い、ランニングデータを用いた振り返りとメニューの修正などを都度行わせていただきます。

 パーソナルトレーニングサービスについて詳しく知りたい方は、次の記事をご参照ください。

普段の生活で気を付けることは?:食事睡眠セルフケア

 ランニングトレーニング以外で私が普段意識していることは次の3点です。

食事・睡眠・セルフケアで気を付けていること
  • 規則正しい食生活と睡眠(※細かい栄養計算等は不要)
  • トレーニング後のストレッチ、ストレッチポールによる体のケア
  • 体重測定

 食生活は、炭水化物、タンパク質、脂質をバランスよくとることを意識しています。

 ただ、好きなものは好きなように食べるようにしていました。走っている距離もある程度多いので、少しくらい高カロリーなものを食べても大丈夫だ!と自分自身に言い聞かせて、ストレスがないように生活をしています。

 睡眠は意識して7時間は確保することにしています。忙しくて寝ている時間が無い、という方も多いと思いますが、練習することと同じくらい休養も重要です。

 体のケアも最低限の継続が必要です。怪我無く練習が継続できるよう、トレーニング後のストレッチとストレッチポールでの筋膜リリースは習慣にしています。

 実際にこのセルフケアで脚の痛み(ハムストリングス上部付け根)から回復した経験があります。

 体重測定は毎日行っています。定期的に測定することをおすすめします。

 無理な減量をするためではなく、体重を測定することによって「水分は足りているのか?食事が少なすぎないか?」などを把握する指標にしていました。

 体重はレースの記録とも密接な関係があります。基本的には体重が軽い方が有利です。

 毎回測定するタイミングを合わせることで、体重を日毎に比較できるようにします。おすすめの測定タイミングは起床直後です。

 エリートランナーの記録と体重の関係性を調査した記事を作っています。体重の適正を知りたい方、体重の目標を決めたい方は是非ご参照ください。

※「ランニングを科学する」では、筆者の知識・経験のアップデートと共に都度改定を行っています。

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